コラム
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2013/3/6
1209    情

「政治家にとって一番大事なものは情です。情がない政治家はいつまでも支持されません」。そんな話を聞かせてもらいました。平成24年に叙勲を受けたHさんから聞かせてもらいました。

Hさんが応援していた候補者が相手候補と一騎打ちする選挙がありました。厳しい戦いの結果、Hさんが応援する候補者が敗れました。その後、県の行事に招待されたので会場に入ると、そこに相手候補がいました。その相手候補はHさんを見掛けると即座に寄って来て肩を抱きながら「良く来てくれました」と笑顔で挨拶をしたのです。その情と懐の深さにHさんは感動したのです。

一方、応援した候補はその後、何の連絡もありませんでした。落選したのでもう良いと思っていたのでしょう。しかし4年後再度、同じ選挙に挑戦することになりました。Hさんはどちらの応援に入ったのかは自明の理です。情が結果を分けたのです。「媚びる必要はありませんが情は必要です」と話してくれました。

もうひとつのエピソードを聞かせてくれました。

かつて安倍総理が自民党幹事長だった時代に、Hさん達は地元国会議員に招待されて首相官邸に行ったことがあります。首相官邸にいたその時、偶然に安倍幹事長が通り掛ったのです。Hさん達のことを知らない幹事長ですが、通り過ぎる時に笑顔で手を挙げてくれたのです。つまり、貴方達の存在を確認していますよというメッセージです。Hさん達は、「安倍さんは将来、もっと偉くなる」と感じたそうです。

その時、もう一人の地元選出の国会議員も通ったのです。安倍幹事長と同じようにHさん達のことは知りません。Hさん達に気づく素振りもなく、その横を通り過ぎました。まるでHさん達が存在していないように無視されたのです。国会議員にすればHさん達を知りませんし、和歌山県在住であることも知りませんから挨拶をしないのは仕方ないことかも知れませんが、しかし首相官邸に国会議員でないのに来ているということは、誰かの紹介で来ていること位は分かります。その人のことを思うと、自民党にとって大事な人だと分かるべきです。そうすれば自然に笑顔で挨拶ができると思います。

参考までに、無視して通り過ぎたその国会議員は現在国会を去っています。そして安倍幹事長は二度までも総理大臣になっています。このことが全ての原因ではないと思いますが、一事が万事という言葉があります。その出来事への対処の仕方が、大きな出来事でも同じような対処の仕方になって発生するのです。その小さな行為の差が大きな違いになっています。

こんな話をしてくれたのは、Hさんと会うのが25年振りのことだったからです。25年前にお会いして行き来していたのですが、その後、会う機会がなくなっていました。しかしHさん叙勲の知らせを受けて嬉しくなり、祝電を送ったのです。Hさんも遠い昔の知り合いからの祝電に驚き、お礼を言うために会いに来てくれたのです。

「会っていないのにお祝いをしてくれる情に感謝しています」と伝えてくれたように、損得ではない情を感じてくれたのです。人には計算ではなくて情が必要です。覚えてくれている。挨拶をしてくれる。笑顔で接してくれる。そんな心から生まれる情が信頼につながります。

25年振りに再会したのは情でつながっていたからです。情は人と人をつなぎます。