コラム
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2013/2/25
1202    最後の一日

平成25年2月のある日。間もなく会社を退職する日を迎えるJさんと、懇談および昼食の時間を共有しました。退職の日は58歳ですから定年まではまだ時間があります。しかし次にやるべきことがあり早期退職を決断したのです。今日は会社人生の最後の日となりました。正確に言うと退職の辞令発令の日が残っていますが、実質的に最後の一日となります。

そんな人生の中で最も大切な一日を私と一緒の時間に充ててくれたことに感動と感謝をしています。会社生活の最後の昼食の相手に指名してくれたことは光栄であり、忘れられない日となりました。

これまでの仕事に関するたくさんの思いとこれからの生活への期待感について話を伺いました。「仕事はほぼ自分の思う通りにすることができました。しかし組織の中にあって思いが伝わらない時もありました。会社は常に会社内ではなくて会社の外の皆さんと所に赴き、話し合い信頼を得ることが活動の基本です。簡単なようですが地域の方と信頼関係を構築し、仕事を離れて付合いできることは難しいのです。そんな人脈を築ける人は少なくなっているように思います」と話してくれました。

仕事は、この人がいるから信頼できる会社であると思ってもらえることが成果です。普段は何もなくても、一大事の時に協力してくれる人がどれだけ存在しているのかがその人の実力です。社会から信頼される人になることが会社人としての目標です。

それを目指した会社生活に終わりを告げようとしています。そして新しい人生が始まろうとしています。

ここには希望という文字が輝いています。58歳という年齢は、これから何かを始めるための時間が十分あることを示しています。これまで拘束されていた時間が自由時間として活用できることになるからです。

素晴らしいその夢は、長男と一緒に仕事をすることです。国家資格を取得して現在修行中の長男が独立して地元に戻ってきます。独立開業への支援と、独立後の子どもを支援することを目指しています。そのため、子どもと同じ国家資格は無理だとしても、仕事をサポートできるように初心者向けの学校に通い、長男の仕事の一端を学ぼうとしています。

子どもと一緒に仕事ができることは夢のような話です。これまでの会社生活に別れを告げ、家族と共に新しい人生をスタートさせようとしているのです。ゴールでもありますがスタートでもある一日の今日、昼食と会話を楽しむことができたことは喜びです。

新しい人生に踏み出すためには決断が必要です。決断とは本当に重い判断を下すことでもあり、誰でも下せるものではありません。多くの場合、自分で区切りをつけることは難しいので定年という制度上の区切りに身を任せることになります。60歳を超えての新しい人生と50歳代での新しい人生のスタートでは何か違うような気がします。自分で決めるか、会社に決められるかの違いは、それ以降の人生に影響があるように感じます。

Jさんの新しい人生を踏み出す勇気と決断に敬意を表しますし、子どもと仕事ができる幸せのこれからに拍手を贈ります。

人生は感動するドラマのように素晴らしい。そんな思いで話し合いました。私にとっても忘れられない一日となりました。ありがとうございます。