コラム
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2013/2/19
1198    卒論発表

大学卒業後、一級建築士の資格を取得するために2年制の専門学校で学んでいる学生が、卒業論文で高速道路のサービスエリアの研究を行いました。昨年、卒業論文の制作過程において和歌山県まで調査に来てくれたのですが、その論文が完成し学校で発表した結果、合格と認定されたことから卒業が決定しました。論文制作に関して協力してくれた機関や皆さんに卒論の発表をしてくれています。今回は先生と一緒に学生が和歌山県まで来てくれました。

論文の中に高速道路の機能は物流と観光、そして防災の3機能があるのに加え、時間軸という考え方もあるよという昨年のアドバイスを反映してくれていました。昨年にはもうひとつ、高速道路は有料が良いのか、無料が良いのかという論点を提示したのですが、その論点も卒論に加えてくれていました。

そのことも含めてサービスエリアのあり方を説明してくれたのですが、建築家らしい提案も含まれていました。サービスエリアのスペースを平坦な場所、緩やかな場所、勾配のある場所の3つに分けて利用者の目的に合わせて交流できるスペースにしようという提案です。

私からは、高速道路が伸びると、その途中の市や町は通過点になってしまうので、人の交流が減少することになっていることを前提に、高速道路沿いに交流機会のあるサービスエリアがあれば産品の売り上げという経済効果と人との交流が生まれること。そして良い産品やサービスを提供できたら、その市や町の印象が高まり、次回はこの市や町で車を降りてみようと考える人が出てくることも考えられるので、それまでのような通過点問題を解消できる手段になれる可能性があることを意見しました。

もうひとつ、勾配地を利用して人に休息とくつろぎの空間を提供できる着想は素晴らしいことを意見しました。

若い学生の論文の発表機会です。自信を持ってもらうことと初めての経験を大切にしたいことを考えて意見交換を行いました。今年3月に卒業して4月から東京の建築事務所に就職が決っています。社会人になればプレゼンテーションの機会が増えてきます。今日のプレゼンの経験を自信にして、大きく飛躍する契機になれば嬉しいことです。

若い人が経験を積める機会に立ち会えたことは、とても嬉しいことです。人が伸びようとする瞬間は関係する全ての人を笑顔にしてくれます。私達にもこのような時代があったと思います。どれだけ多くの人が伸びようとする私を見守って支援してくれたことでしょうか。改めて感謝したくなりました。自分では気付かないところで家族や先輩、上司などが見守り育ててくれていたのです。若い時代はそんな思いや視線に気付きませんでしたが、逆の立場になるとそれがとても良く分かり、そしてこれから伸びようとする人を応援したい気持ちになります。

学生の論文発表の機会に立ち会える機会を得たのは、彼の卒論制作のお手伝いをしたことが直接の原因です。何かの行動や支援をしたことが結果として出現したのです。嬉しい果実を受け取るためにはその種を蒔く必要があるのです。そんなことを感じながら先生と生徒、そして県の職員さんから幸せな時間をいただきました。