コラム
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2013/2/5
1190    ありがとうの言葉

拓殖大学国際学部の呉善花教授は韓国生まれです。呉教授の話の中で「ありがとう」の言葉の素晴らしさを改めて発見しました。

「日本語の「ありがとう」という言葉はとてもすばらしいですね。韓国語には「カムサハムニダ」という言葉はありますが、日常的に使う言葉ではありません。

正式的な場合や、深く御礼を言う時以外は、日常的に身近な関係では使ってはいけない言葉なんです。つまり使い過ぎると水臭いと感じられてしまいますので、韓国では殆ど使われません。私も29年前に来日した頃は、やはり水臭い言葉に感じられましたので、初めの頃は「ありがとう」という言葉は使いませんでしたが、「ありがとうって言った方がいいよ」と言われましたので、できるだけ「ありがとうございます」というようにしましたら、不思議と「ありがたい」と思うようになりました。それでこの言葉は凄いと思うようになりました。

「ありがとうござます」という言葉を聞く度に、私はこれが日本の根源的な、日本人の最高のエネルギーの源ではなかろうかと思っております」という話です。

呉教授が「ありがとう」が素晴らしい言葉だと、私達日本人に伝えてくれているのです。

「ありがとう」の素晴らしさはたくさん言われます。英語のThank youは何かをしてもらった時に気持ちを伝える言葉ですから、対価を求めて実現したことに対する言葉です。

それに対して「ありがとう」は対価を求めての言葉ではなくて、自然や相手の気持ちに対して感謝の気持ちを伝える言葉ですから、英語に有り難いという意味の言葉はないのです。

同じように韓国語の「カムサハムニダ」という言葉も日常的に使う言葉ではないということを知りました。有り難いという意味の言葉は韓国語にもないのです。

他の国の感謝の気持ちを表す言葉の意味は知りませんが、有り難いから来るお礼の意味を持つ言葉はないかも知れません。「ありがとう」は対価を求めないのに相手に感謝の気持ちを表す稀有な言葉であり、世界の中の日本人の役割を示す言葉のように感じます。してもらったことに対する感謝の気持ちだけではなく、現実的に起こり得ないようなことが実現することに対する感謝の言葉が「ありがとう」だからです。

人が自分に親切にしてくれることも有り難いことであり、自然の恵みをいただくことも有り難いことなのです。日本人は自分の下に現れる幸せなことを有り難いこととして受け入れる性質を持っているのです。

ずっとずっと以前、経理の仕事で経理担当から誤りを指摘されたことがありました。その時「ありがとうございます」と伝えると、経理担当から叱られました。「誤りを注意しているのに、何が「ありがとう」だ」と言われたのです。その時の私の心境は「知らなかったことを注意してくれたことで経理の知識が増えたから有り難い」と思っての感謝の発言でしたが、相手には伝わらなかったのです。感謝の気持ちを有している人であったなら「私言うことを分かってくれたかな」と思って「ありがとう」の言葉を受け取ってくれたと思います。

でもその後もその人の教えに対しては「ありがとう」と言い続けていると、私の気持ちを理解してくれ関係が良くなりました。ありがとうの言葉は最高のエネルギー源なのです。