コラム
コラム
2013/1/15
1178    今の人も凄い

昔の人が凄くて、今の人が凄くないというのは間違いです。尊敬している経営者からそんな話を聞かせてもらいました。「昔の政治家は偉かった」、「昔の政治家は今よりももっと国を思っていた」「昔の経営者は豪快だった」、「昔の経営者と比較したら、今の経営者の行動や考え方は甘い」などの言葉を聞くことがあります。その度に昔の人は凄くて、今の人は一段落ちているように思います。

しかしそんなことはないと断言してくれました。繰り返しますが、心から尊敬している経営者ですから、誰にも負けてはいない実行力も先を見通す力も持っている人の見解ですから、僕もそう思っています。今の人に能力がないことはない。そして今の人が時代を支えられない筈がないと。

社会全体が成長している段階において、政治家や経営者が語った夢や言葉、政策や経営方針などは実現できました。多くの人がその成果を享受できたのです。戦後経済の高度成長、先進国の仲間入りをしてアメリカに次ぐGDPを誇る国になったこと。そして国土が発展していく中でかつて描いた夢は実現していったこと。マイホームや自家用車など、わが国において持てなかったものが持てる時代になったことで、戦後から高度成長までの政治家や経営者は尊敬される存在でした。国民の私達を導いてくれて、夢を実現させてくれる役割を果たしたからです。語ったことが実現できるなら、その政治家や経営者は一級の人物であり、後世にまで語り継がれることになります。

ところが21世紀の現代、もっと遡るなら日本経済のバブルが崩壊してから以降、つまり1990年代以降の政治家や経営者が、夢、そして政策や経営方針を語っても実現させることは困難な状況に陥っています。語ったことが実現できなければ、それは嘘になります。「語ったことを実現させなかった政治家は嘘をついた」、「経営方針を誤った経営者は無能である」などの批判に晒されることになります。そして語ったことを実現できなかった政治家や経営者は烙印を押されて、程なく退場させられることになります。

語ったことを実現できたら尊敬される人物であり、語ったことを実現できなかったら嘘つきなのです。社会が発展途上にあれば、語ったことは実現に向かって動き出します。それは資金と投資ができる環境があったからです。借金だけで資金がなく、そして投資する先がなければ、政治も起業も前向いて動きません。国債や借入金の返済計画が優先され、資金に裏付けされた投資的計画を実行することは難しいのです。

利息の話もしてくれました。かつて日本の金融は、年利8パーセントもついた時代があったのです。8パーセントの年利だと10年で資産が倍増することになります。ところが低金利時代のバブル期以降は、年利0.03パーセント程度です。その差は約260倍ですから、0.08パーセントの年利で試算を倍にするためには2600年必要となります。夢を実現するための時間に大きな差があるのです。

この差が、語ったことを実現できるか実現できないかの差とも言えます。社会背景の違いがあるだけで、今の人が劣っていることはないのです。だから自信を持って行動しましょう。