コラム
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2012/12/10
1159    現場力

同じ日にふたつの興味深い話を聞かせてもらいました。

ひとつは映画「踊る大捜査線レインボーブリッジを封鎖せよ」を観た感想です。私は観ていないのでは内容は把握していませんが、事件を指揮する責任者にキャリアの女性が赴任することになりました。事件は現場で起きているという刑事の意見に対して、事件は会議室で解決するという反対をする場面もあるようです。

そして事件解決のために必要なことはレインボーブリッジを封鎖することになるのですが、事件を指揮する責任者は「判断は本部でする」ことを指示しているため現場の動きが停滞することになります。封鎖できないまま時間が経過していることに対して、警察本部のトップは事件の責任者を更迭します。新しい責任者は現場の理解者であり、全ての判断は現場で行い、報告は事後報告で良いと伝えます。

現場を任され、責任も負かされることになった刑事は、現場で判断を下していき、やがてレインボ―ブリッジを封鎖することができたのです。

責任者が変わると現場も変わるし人のやる気も変わるのです。トップの資質が事件解決に関係していることが理解できる内容です。社会での出来事や会社でのトラブルも同じで、責任者の資質や現場に権限を委譲できるかどうかに解決の道は委ねられています。

「組織に必要な人材、現場で判断することが、事件解決の早道であることを教えてくれたようです。トップの資質について考える契機となりました」と話してくれたように、問題意識を持ってみると観る度に新しい発見があります。

もうひとつは、山本七平氏の武田信玄の研究について書かれた本の感想です。武田信玄と織田信長と徳川家康が組んだ長篠の合戦は、織田信長の軍勢が無敵の武田騎馬隊を破ったことで余りにも有名です。武田家の能力の高い家臣は新しい殿様である武田勝頼に対して、鉄砲隊の強さを進言し、戦うことを一時中止することを求めました。しかし武田勝頼は鉄砲隊の危険を察知することなく戦うことの判断を出します。

武田の家臣は武田信玄に育てられ情報の把握や分析能力に優れていました。織田の鉄砲隊の三重の備えを打ち破ることは難しいことも察知していました。しかしトップの命令は絶対ですから、負けることが分かっていても突入する以外になかったのです。

分かっていてもトップの能力が欠如していれば、組織は衰退または崩壊していくのです。

事件を解決するには現場の意見と判断が重要であり、情報を得て分析してもトップがそれを見る能力や部下の意見を受け入れなければ組織は崩壊するのです。

このように、映画と古い歴史の中から現代の私たちも学ぶことができます。関心のあるテーマを絞って映画や本を読むことで、気づきと学びはあります。また組織のあり方やリーダーのあり方、そして取引相手との関わりなどの実践方法も仕事に取り入れることが可能です。

リーダーは全ての現場に入ることはできません。ですから現場の意見を素直に聞き入れ判断する能力が必要となります。そしては決断した後は能力のある部下に任せることで事件は解決に向かいますし、勝負を切り抜けることができるのです。