コラム
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2012/12/4
1155    ダッシュ!

いつも楽しく読んでいます。五十嵐貴久さんの作品ですが、今回は「ダッシュ!」を読みました。青春モノですが何歳の人が読んでも前に進む勇気と与えてくれると思います。

人は困難に直面した時、悩み立ち止まり、自分の心に負けて引き返そうとするものですが、勇気をもってその場所に留まり、困難を押し返そうと粘ることで今よりも前進することができます。後になって思い返すと、大したことがなかったり、何故、困っていたのだろうと思うことがありますが、その事件の当時者は必死なので先が見えていないのです。先が見えていないから自分が望む結果に辿り着けるかも知れないのです。この先の結果が見えていたら人は勇気も持ちませんし努力もしません。青春という季節の中でもがきながら前を向いて歩けることが素晴らしいことなのです。それは成長という階段を登っていることに他ならないからです。

普通に生きている人が、ある日突然何かに夢中になって全力を尽くすことがあります。経験していないことに直面して惑い、悩みながら必死で答えを見つけようとします。青春時代に導き出すその答えは、自分に正直でいることです。自分の心が望んでいることを自分の言葉として発することで周囲を巻き込んで行けるのです。

「ダッシュ!」の主人公たちは困難に直面する中で前に向くための方法を考え、実行して成長して行きます。理由があって高校生が渋谷のクラブに挑戦すること。先輩のねーさんのためにできる全てのことをすること。ねーさんの手術の日までの平凡な日々が、どれだけ大切な日であることかを知ることもできます。そして人生の転機となる手術の日とその前後の精神状態。弱さを克服する過程の中に強さが宿り始めます。

そしてクライマックスとなる、これも理由があっての無免許運転での成田空港までのドライブ。ここでも困難が起こりますが、少年達の正直な気持ちと行動が周囲を動かせて行きます。そして辿り着いた結果は予想通りなのか予想外なのか分かりませんが、温かい気持ちになり、素敵な結末にホッとします。

私達は小さな日々を生きています。小さな日々を大切に生きることが成長につながるのです。特別な日はそれほど多く巡ってきませんし、小さな日々を前進して生きなければ特別な日は訪れません。特別な日は小さな日々の集大成です。それまでの日があるから特別な日、つまりクライマックスが訪れるのです。そして小さな日を生きて迎えるクライマックスの日は一瞬で過ぎ去ります。結果がでた後は拍子抜けするような日に戻りますが、クライマックスを潜り抜けた後は一段成長しているのです。もう同じことで悩むことはありませんし、もし同じような事件に遭遇しても一段高いレベルで判断ができるようになっています。

私達は平凡な日を生き、そして時々訪れる困難に立ち向かい、待ち焦がれた良いクライマックスを生たり、最高の困難となる訪れて欲しくないクライマックスを乗り越えて、成長していくのです。そうして成長した人は、もう以前の自分には戻れません。

そうしてまた平凡な日を生き、次の成長の段階に向けて少しずつ階段を登り始めるのです。人生はそんな日の繰り返しであり、思い出の数だけ人生は詰まっていくのです。