コラム
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2012/11/14
1143    基礎を高める

ロンドンオリンピック日本体操の代表選手に選ばれた田中三兄弟の父親であり和歌山県立北高校の教諭田中章二先生の話しは続きます。

体操の基礎は長く練習をやる方が、技術が狂わないことを聞きました。次のようなことです。新しい技を覚えるために一日3回の練習を行います。一気に続けてやっても基本が出来ていなければ形が崩れてしまい正確な技にはならないのです。そして一度癖が身に付いてしまうと修正することは困難な作業なのです。一日3回の練習を一月続けると30回練習をすることになります。新しい技に取り組むためには基礎を固めて長期的な練習をすることが良い方法なのです。

急いでしまうと演技力の高い技にはなりません。一日10回、三日間練習をしても新しい技を習得することはできません。完成させたと思っていても試合では使えない技がレパートリーとして加わっただけのことです。試合に際しては完璧に演じられる技以外は使うことはできません。練習において何度かに一度成功できる技を試合で試す選手はいません。成功する確率が低ければ試合で使えないのです。長く練習を続けて自分のモノにして、成功する確率を高められた技だけが試合で使えるのです。試合で演技が狂うような技をどれだけたくさん持っていても、試合では通用しないのです。

そして競技レベルが上がると、やらなければならない基本や基本技術のレベルも上げなければならないのです。どれだけ技術レベルが上がったとしても、基本練習を繰り返すのはそのためです。逆も真なりで、基本のレベルを高めなければ競技力は上がらないことになります。

まだあります。身長や体重増加など身体の変化に応じて、基本や基本技術も変えていかなければならないのです。基本を一度身に付けたからと言って、そのレベルに留めておいてはいけないのです。高校生の基本とオリンピック選手の基本は、同じ動作でも次元が違うことからも明らかです。オリンピック選手でも、高校生の時の基本レベルは超高校級だったとしても、やはり高校生レベルだったのです。基本技術を高め競技レベルも高めていったのです。

基本を学ぶためには導いてくれる指導者が必要です。高いレベルになっても、指導者から学ぶ以外にそのレベルから上達する方法はありません。田中先生の現役時代のレベルの演技であれば、田中三兄弟は小学校6年生で出来たそうです。田中三兄弟のレベルが上がったとしても、田中先生が難度の高い技を演じられなかったとしても、基本は同じですし、他人の技を見抜く目を持っている指導者は教えることはできるのです。

要は指導者が100の力を持っていたとすれば、学ぶ立場の人が指導者に100の力を発揮させるような態度で聞かなければならないということです。生徒が寝ている場合や聞く態度でない場合は、指導者は力が入りません。100の力の内、60位の力で教えることになります。学ぶ人に学ぼうとする力があれば、指導者から力を引っ張り出せるのです。学ぶ立場の人の態度や姿勢が、指導者の力を引っ張り出すのです。自分の成績が伸びないのは、自分の学ぶ態度に問題があります。態度が良い人は一流になれますが、態度が悪い人は一流にはなれません。一流の選手は態度もマナーも良いのが共通です。社会で生きるためのルール、学校の校則などを守ることが当たり前で、そんな簡単なことが守れないようでは一流の人物にはなれないのです。

そして自分で間違っているところを修正できる能力があれば一流になれます。間違っていることを認めないことや直さない人は一流にはなれません。