コラム
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2012/11/2
1137    仲買人

仲買人という仕事の役割を知りました。生産者と小売店があれば商売は成立するので、仲買人の存在意義はどこにあるかと思っていましたが、実は仲買人には大きな役割があります。

生産者は仲買人に高く売ることを考えています。それに対して仲買人は、その産品の最終の形を想像して値決めをしているのです。分かりやすいように魚を例にします。魚の生産者は獲った魚を魚として売ります。ですから魚は魚なのでどこに流通していくのか、だれが調理をするのか、日本料理に使うのはイタリアンに使うのか、どんな人が食べるのか、など後工程のことは考えません。

しかし仲買人は後工程まで想像して魚の価格をつけます。日本料理店に持っていこうとした場合、この種類、この品質の魚であれば、料理として提供する価格はこの程度になるので、仲買価格はこの金額になると見通して買うことになります。

そのため高級料亭に売れる魚は比較的高い値段に仕入れますし、そうでないものはそれなりの値段を付けます。消費者が食する姿と満足する姿を想像しているので、魚を食材として見て値段を付けるのです。

そのため仲買人は、生産者に高く売れる商品になるようにそっと教えることも役割のひとつだと考えています。同じ魚でも高級料亭に売れる品質の魚と、そうならない魚に分類されます。元々海で泳いでいる魚の品質は同じですが、魚の絞め方によって品質が変わってしまうのです。一流の漁師になるとに、料亭から仲買人に対して「○○さんの釣った魚」という注文が来るそうです。絞め方によってそれほど品質に違いがあるのです。

同じ魚なのに付けられる値段が違うことに対して、仲買人は漁師に対して○○さんの方法を見て下さいなどのアドバイスを行います。漁師が品質の良い魚を提供すれば仲買人も高く販売できるので、高く仕入れることができるのです。漁師も同じ労力で高く売れるため、技術を高めることで以前よりも利益を得ることができます。

またレストランにとっても仲買人から買う方が有利な面があります。レストランのオーナーが直接市場で魚を買う場合、高いからと言って必要以上に値切ることはできません。「あのレストランは高い料理を出しているのに、市場では値切っている」と噂が流れるとお店の評判が落ちるからです。そんな場合、仲買人が入ることで仲買人が値決めをするので、どこのレストランに卸すのは分からなくなります。仲買人が両者の間を取り持って、流通を機能させているのです。

このように世の中は、利益構造が対立する二人が直接交渉しても、交渉を上手く成立させることは難しい場合があります。生産者と小売店の場合だけではなくてビジネスの場合でも同様です。得られる利益が相対する両者が直接話し合うと、問題が大きくなることがあるのです。人の社会において、利益構造が相反する両者の間に入り交渉する役割を担える人が不可欠なのです。取引や交渉の場面において両者の価値が対立することが多く、間に入れる人が大きな役割を果たします。社会において潤滑油の役割を果たす人は、生産者や小売店と同じ位に大事なのです。