コラム
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2012/9/24
1114    限界は幻想

陸上界で歴史に残るランナーがロジャー・バニスターだと聞きました。それはライフ誌が発行した20世紀の「ミレニアムを作った重要人物100人」の中に陸上選手でただ一人選ばれているのがロジャー・バニスターだからです。このことを教えてくれた人から、ではどうして選ばれたのでしょぅかという質問がありました。

それは次のような回答です。

ロジャー・バニスターは1954年5月6日に、1マイルを3分59秒4で駆け抜けました。当時の世界記録は1923年の記録である4分10秒3。実にこの時まで31年間も破られなかった記録なのです。しかもその当時は、人は1マイルを走るのに4分を切ることは医学的に考えられないとされていたのです。

ロジャー・バニスターが4分の壁を破ってから不思議なことが起こりました。それまで4分は切れないと考えられていたのに、一人のランナーが壁を突破した1954年に23人のランナーが4分の壁を突き破ったのです。ですから世界で最初に1マイル4分の壁を破ったロジャー・バニスターの1954年の記録は24位に終わっています。

「ミレニアムを作った重要人物100人」の中に入っているロジャー・バニスターは不可能を可能にしたから選ばれたのです。しかしそれはロジャー・バニスター個人というよりも人間の可能性は限りないことを証明した人物であるという理由で選ばれたとでもいうべきです。

選定の理由については次のような記述があるようです。

「極めて遠い将来まで、永遠に人間は1マイルを4分以内で走ることはできないだろうと考えられていた。それは途方もない壁だった。なぜ人々がそのような実際には存在しない壁があるがごとく暗示をかけられていたのかはわからない。しかしロジャー・バニスターがそれを達成した時、夢は勢いを得て、人間の潜在能力は突如無限のものとなった。バニスターは我々に人間の可能性という概念を疑わせ定義させなおしたのだった」という評価です。

1954年に突如として24人の歴史に残るような名ランナーが現れたのではありません。誰もが不可能だと思っていると、それは達成されない。誰かがその壁を打ち破れば誰もが達成できるようになるという現象があります。そこから目標設定の重要性が分かります。

自分で限界を作るのではなくて目標を高くすることが限界を超えるために必要なことなのです。この歴史に残ったロジャー・バニスターは2012年のロンドンオリンピックに登場しています。この時83歳。人間の限界は自分で限界であると決めているだけであって、限界はないんだということを教えてくれた人物です。

できたという事実は何よりも大事なものです。人はできたという事実を見て、できないとは思いません。できないという思いは想像上の壁に過ぎないのです。できているものはできると思うのに、できていないことはできないと思っているだけです。

できると思うと、できるために必要な方法や情報、協力者が集まってきます。逆に心配や無理だと思っていると、その方向の情報を引き寄せてしまいできないと思ってしまうのです。

壁は存在していません。単に自分が作り出している幻想に過ぎないのです。