コラム
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2012/9/7
1106    回答の無い世界

宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授の講演を聞く機会がありました。聞けてとても良かったと感じています。はやぶさの挑戦には人間の夢と成長が詰まっていました。はやぶさの挑戦の影には長い時間の知識の蓄えがあることが分かりました。はやぶさの話は聞いている人も多いと思いますので、それ以外の教訓を中心に話を進めます。

教科書は過去の記録であり未来のことは書かれていないことを知るべきです。学校の教科書や会社のマニュアルなどは全て過去の記録なので、それを全て覚えたとしても未来にはつながりません。過去からの学べることはそれを土台にして自分で未来を作る力を養うことにあります。未来は自分で創るものであり、それをするために勉強しているのです。単語を覚えて喜んでいる場合ではありません。公式を使えても偉くはないのです。知識を基にして自分で前に進む推進力を得ることが学ぶことの意味なのです。

もし自分が進むべき仕事に関して、過去からの全ての記録を読んで理解してから「さぁ、これから自分で何かを創り上げよう」と思っても、過去からの資料は莫大な量になります。そんな資料を集めて読破したところで何にもならないのです。莫大な資料集めやその分野の文献の全てを読まなくても大丈夫です。まず自分が創り上げたい未来がある、自分で進みたい方向があることが大事なことです。進むべき道を見つけてから、それに必要な資料を集め勉強すれば良いのです。極端に言えば自分が望んでいる文章やデータ、記録だけを引っ張りでして引用、活用すれば良いのです。少しずるい表現ですが、都合の良い言葉やデータだけを引っ張り出して自分の未来創りに役立てれば良いのです。

学校での勉強とは全て人生における練習問題です。学校の勉強は決して本番の試験ではないのです。何故なら、学校の全ての試験には回答が用意されているからです。誰かが回答を用意してくれているものに辿り着く方法を考えるのが勉強です。予め回答が用意されているものは練習問題に過ぎません。社会で遭遇する出来事や仕事は回答がないのが当たり前です。

予め回答が用意されている問題は社会には存在していません。つまり社会で発生する問題には自分で対応し回答を導く以外にないのです。そしてその回答はひとつではありません。一つの問題には無限の回答があり、どれが正解でどれが不正解なのかは分かりません。先生でも経験者でも正解は何なのか分からないのです。先生や経験者は、恐らく正解に近いと思われる回答をあなたに教えてくれているだけです。

英語の試験で単語の意味が分からなくてその問題が正解でなくても、何の問題もありません。社会人なら単語の意味が分からなければ、辞書で単語の意味を引けばそれで解決です。

教科書は過去の記録のコピーですから、必要な知識として所有できればそれで良いのです。

現実社会で対応する問題はコピーではなくアートです。芸術作品を創り上げていく感覚を持って対応するのが現実社会の問題です。芸術作品には正解はありません。自分で創ることに意義があるのです。私たちは誰もが回答のない社会を生きています。回答が無いということは自分で正解を探っていくか、正解と思われるものを創り上げていく作業が必要だということです。回答の無い世界に生きている。そう思うと楽しくなります。