コラム
コラム
2012/8/7
1090    歌とで伝える人生

シャンソン歌手のmiyaさんの歌は表現力が豊かで歌と表情で聴く人を魅了してくれます。今までクラシックやオペラを歌い、そして歌の世界に復帰してからシャンソンへと新しい境地を開拓しています。miyaさんのライブを終えた後に約1時間お話をする機会がありました。今までの人生を聞いて苦しいこともあったけれども素晴らしい人生を過ごしていると感心しました。

中でも素敵な言葉は「今までの人生の中で、今が一番好きな年代」だということです。人生の中で一番輝いていた時代は、という質問に対しては若い年代の頃を話す人が多いのですが、生きている今の年齢が一番輝いていると答えてくれたmiyaさんは、やはり今、輝いています。生きてきた人生の経験が歌で表現されていますし、歌の中には苦労の経験だけではなくて、今が一番楽しいという気持ちが表現されているのです。

上手く伝えられませんが、失恋の歌や別れの歌においても、悲しい経験をしたとしても人生は良いものだというメッセージ性が潜んでいるように感じるのです。別れの経験はやがて人生の中で花が咲く時が到来することを内面で表現しているのです。料理で言うところの隠し味がmiyaさんの歌にあるのです。悲しくても明日は大丈夫、苦しくても将来は大丈夫だという応援歌のように聴えてきます。これは歌の技術だけではなくて生きてきた全てが歌に詰め込まれているからです。

「歌は三分間のドラマです」という台詞も発してくれたように、三分間に人生が詰まっているのです。歌詞は同じであっても歌う人によって伝わり方が違います。歌い方や強弱、表現力によって違うのですが、その裏には歌手が生きてきた中での経験が、歌を媒体として伝えてくれているのです。歌はドラマであり私達に対する応援歌です。

クラシック、オペラ、音楽教師、塾の先生などの経験をした後、シャンソンで再登場してくれました。少し音楽を離れていた時期がありますが、それは後退していたのではなくて歌の養分を蓄えていたのです。

歌は三分間のドラマだとしても、その続きは想像の部分で残ります。歌の主人公は三分後の後の人生はどうなったのだろうかという自問に対して、歌手の力によって違ったものを想像することになります。

恋人と別れた後の主人公が再び恋人と出会い復縁するドラマを想像するのか。それとも新しい恋人に出会って恋を成就させるのか。それとも別れを引き摺って一生、恋をしないで過ごすのか。歌の続きの世界は、歌手の気持ちによって違ったものを想像させることになります。それが歌手としての価値だと思います。歌い手が何を伝えるのかというメッセージを発していますが、それを聴く側に伝えることができる歌手は力量があります。

悲しくても人生は楽しいことが待っていると思わせてくれるのか。悲しみの中に喜びがあることを教えてくれるのか。それは歌手の伝える力なのです。その力は私達にも参考になります。人生経験を積んだ人にとって後輩を指導するのは当然の役割です。自分の経験に基づいて何のメッセージを伝えるのか、人生の先輩にとって大切な役割です。そんな人生におけるメッセージの伝え方を歌で教えてくれたように感じています。

人として込めるべきメッセージは、全ての経験はもう直ぐ今日の日として訪れてくれる明日のためにある。ですから感じたことは全て嬉しい気持ちに置き換えられることが大切だということです。

人生は嬉しい出来事に出会うためにあります。