コラム
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2012/7/18
1077    温度差

それぞれの立場によって感じ方が違うことは多々あります。同じ事象であっても立場が違うと温度差があります。一つの事例を挙げて考えます。

自分が源泉という本があります。この中に自動車販売店での出来事の掲載がありますが、とても理解し易いので紹介します。お客さんの車が動かなくなって問い合わせがあった時の電話に食い違いがありました。その応対を聞いていた社長が気付いたことがありますので以下に要約します。

電話応対をしていた社員にとっては1,800円のプラグを交換するだけの話しですが、お客さんにとっては180万円の車が動かなくなったという問題なのです。価格にして千倍の温度差があります。この温度差が、お客さんは必死に訴えているのに対して、技術が分かっている社員は単にプラグを交換すれば良いだけの話だという違いになって表れているのです。つまりお客さんは車が動かなくなって大変だと思っているため真剣であり、社員にとっては日常的にある修理の話しなので緊張感がなかったのです。

この温度差がお客さんと社員の思いのズレになってくるのです。お客さんはこの自動車販売店に対して不信感を持つのに対して、社員は何も感じていないことになります。この温度差を埋めることが大事なことなのです。

このようなケースが多々あるのは、お客さんの立場の人は素人で、問い合わせを受ける立場の人が専門家であるケースだと思います。専門家はその事象に対応できることが分かっていますから緊張感はありません。一方、お客さんにとっては初めてのことなので大変なことが起きたという焦りがあります。自動車修理の場合もそうですし、パソコンや携帯電話の故障などの場合も同様のことが起きる可能性があります。温度差はその価格が高価なものであればあるほど発生します。

また行政相談に関することも同じです。市民、県民の皆さんにとって行政機関との折衝は初めての場合があり、決して慣れているものではありません。しかし対応する行政職員さんは、毎日同じような問い合わせや申し出の対応をしていますから、その案件には慣れています。市民、県民の皆さんは手続きなどが分からないので、この手続きができなかったら不利益を被るかもしれないと思い真剣ですが、職員さんにすれば多くの案件の一つだという感覚に陥ることがあり真剣さに掛けることもあり得ると思います。

この温度差が行政機関に対する不信感となって表れるのです。即ち「県や市に相談しても真不親切だ」、「職員の態度が悪い」どのなどの声となって表れます。

温度差の違いが同じ事象に対する対応の違いとなっているのです。ですからお客さんの視点で話を聞くことが大切になります。そのことを全く知らない前提に立ち、最初から説明を行うことや、資料に基づいて説明をすることなどを心掛けるだけでも温度差は縮まります。

接する相手に温度差を感じさせないような応対ができれば、不満を感じないばかりか親切な応対だと思ってくれます。それが信頼関係に発展していくのです。