コラム
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2012/6/22
1061    トッピング

必要なのか必要でないのか分かりにくいのがトッピングです。その役割はあくまでも助演であり脇役ですが欠かせない時があります。

国会などでの議会答弁の時のトッピングです。国であれば法律、地方議会であれば条令に基づいた答弁が基本になります。もし法律や条例どおりの答弁ばかりであれば味気ない質疑になります。

仮の事例です。議員が○○について質問を行ったとします。それに対して当局側は「その質問に対しては○○を定める条例第××条に定められた通りですから例外規定はなく、質問の主旨に従った対応はできません」となります。

そこにトッピングをすることで次のように答弁は変化します。

「ご指摘の通り現場ではそのような不具合があると認識しています。但し、わが県のこの問題に対応するための○○条例が定められています。その中の第××条において取り締まることができないとされていますが、現在におけるこの問題に対応する必要性、他と比較して認められるかどうかの許容性などの観点から検討する余地はあると思います。そこでこの問題が今議論されている社会背景なども勘案し、議員ご指摘の問題に対応できないかどうかについては今後検討することといたします」などの答弁になります。

結論としては検討した結果を担保するものではありませんし、やるのかやらないのか分からないのですが、何となく今は対応することは難しいかも知れませんが、将来への対応の可能性が感じられる部分も少しはあります。質問者からすれば明確な答えが欲しいのですが、全くできないと否定されてしまうとこの問題は後に続きませんし、引き続いての議論の余地もなくなります。

しかし答弁の中にトッピングを施すことによって、含みを持たせることができているのです。これがトッピングの妙です。元の形にトッピングをすることで色合いや味付けを変えてしまうのです。直ちに本質部分を変えることができなくても、味に変化を持たせることで本質部分の味付けを変えてしまいます。質問者も本質部分を即座に変えることは困難だと認識していますから、少しだけでも問題解決を進展させられたら良いと思っています。その気持ちに応えてくれる答弁であれば、何とかその場は納得できるのです。

答弁にトッピングをするには条例を知っているだけでは出来ません。現場経験と文書力、相手の立場を理解できる推察力などが必要となります。組織に違ったタイプの人がいることで、その時々に応じたトッピングができるのです。

答弁は複数の意見を統合し、複数人で内容を確認して仕上げています。事務的な仕事の場合は別として、人の感情が交錯する場面では言葉に飾りも必要なのです。ストレートに言葉で応酬すると角が立ちますが、相手の好みに応じたトッピングを施すことによって、その場が収まることがあります。問題を大きくしては解決すべきことも解決できません。大きな問題であっても言葉にトッピングを施し、お互いの好みに応じたものにすることで時間を掛けて解決に向かわせることができます。