コラム
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2012/6/19
1058    相手に合わせた取引

香港からの留学生から学んだことの四回目は金銭に関するビジネスの鉄則です。

商取引をする時は現金決済を心掛けることです。大きな取引では現金決済は出来ませんが、個人間の取引では現金決済が感謝されますし、それ以降の取引が長続きします。現金支払いができない場合は、商取引を終えた後、即座に振込みを行うことが信用を確保するために必要なことです。

この留学生は、相手が取引を希望する単価よりも20パーセント高い金額で取引を行っています。「何故そんなことをするのですか」という質問に対しては、「私は学生ですから軽く見られることがあります。そこで信頼をつける意味。取引を継続させる意味。そして良い商品を回してもらうためです」という回答がありました。

20パーセントも多く支払いをすれば、取引相手は次の取引もしたいと考えますし、次回からはこの人に良い商品を回そうと考える筈です。この留学生が扱う商品は品質が良いという評判が出てくると次第に取引量が拡大していきます。利益は自分が独り占めするのではなくて相手先や取引成立に関係した人にも配分すること、そして相手先と自分サイドの関係者の信頼を得ることがビジネスで大切なことなのです。

現在ビジネスで稼いでいる純利益は毎月約60万円だそうです。この収入で学費と家賃の支払いをしています。勉強は自分の力で稼いだお金でするもので、親から出してもらって勉強をする態度は甘いということです。自分でお金を稼ぐ経験をすれば、どれだけお金を得ることが難しいことなのかを理解できます。親に頼っているとお金の有り難さが分かりません。お金が有り難いものだと感じなければ勉強に身が入りません。大学で勉強をするにはお金が掛かっているのです。お金を支払って勉強させてもらっているのに、その価値が分からないので授業をサボったり授業を真剣に受講しようと思わないのです。

この留学生は日本に留学すると告げた時、父親から学費や滞在費など全ての費用は自分で稼ぐことを条件にされています。親に学費を支払ってもらって勉強しようなど甘い気持ちは持っていません。経済学を勉強するということは、社会でのビジネスに役立つ知識を得るためです。学んだことを実践で活かすことは当然のことなのです。

そのため信頼を得るための仕入れの方法を自分の方法で確立させていますし、学業の成果を試すため、そして学費を稼ぐためのビジネスを立ち上げています。学費年間100万円、家賃を含む生活費もビジネスで得た利益の中から支払っています。ビジネスで利益を生み出さなければ留学は成り立たないので、勉強の姿勢もビジネスも真剣さが違います。

もうひとつ。ビジネスの中に空き時間が発生します。その時間を活用するため常にパソコンやノート、経済書などの勉強道具を持ち、空き時間にはレポートを書いています。待機時間や空き時間はもったいないので、少しの時間でも無駄にしない心構えができています。

加えて行動力もあります。勉強していて疑問点が発生すると夜間でも教授を訪ねます。午後8時位までなら研究室を訪ね0時頃まで議論を交わすこともあるようです。教授も熱意に反応してくれています。

ビジネスの取引の相手は利益を得ることが仕事、教授は学生に教えることが仕事です。研究室を訪ねてくれて深夜の0時まで研究室で議論を交わせることを教授も楽しんでいるようなのです。

相手が喜ぶことをすることで相手から受け取れるものがあります。ビジネスでは利益、勉強では本やインターネットでは得られない新鮮な知識です。相手が喜ぶことは自分から先に実施したいものです。