コラム
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2012/6/1
1047    5パーセント

ソニーの経営者が「ソニーは幸運だった」という話をしたことがあると聞きました。ソニーが成長カーブに入った当時、日本の人口は1億人に到達したそうです。ソニーにとって1億人の5パーセント。つまり500万個の商品が売れるかどうかが採算分岐点でした。これ以上売れると投資したコストが回収できる。これ以下だった場合は研究費をかけても資金を回収できないという数字が日本の市場にあったのです。予断ですが韓国の場合、人口は3,000万人ですから国内市場だけで勝負できないのです。そのため必然的に外国市場に進出しなければ企業は生き残れないのです。日本の企業と韓国企業の戦略の違いはここから来ています。

数字と言うものは大事なもので、成長曲線とコスト回収曲線の交点を探すことから新製品の企画を始めます。企業は数字で利益を出せるかどうかを検討する必要があります。

そして5パーセントの地点に到達すると、それまで見えなかったものがチラホラと見えるようになったそうです。5パーセントの市場に立つと、部分的ですが「この商品はまだ売れる」、「この部分を改良すればより広い市場が待っている」などの推理が働くようになるそうです。

何もない地点にいると、山の頂上はおろか、頂辺りもどうなっているのか分かりません。

ところが5パーセントの地点に上ると山の見え方が違うのですから、何としても5パーセントの地点に立つ努力をしなければなりません。5パーセントに辿り着くまでは何が何でも努力です。立つ地点が違うと見えるものが違いますから、これからの道筋は下から見るよりも正確に予測することが可能となります。これから先のことを正確に予測できると、それまでよりも成功の確率は高まります。

こうして5パーセントの位置に到達すると成長曲線に乗ることが容易になるのです。曲線は細かく区切って見ると、急カーブを描くポイントがあります。そこでこの商品には何が必要なのかを見つけることがポイントです。5パーセントの利用者の声を直接聞くことができます。500万人の利用者が存在していると商品の認知度は高まっていますから、アンケートなどで市場に問うこともできます。ブランド力が見え始めると外国市場にも進出することが可能となります。

このように裾野に立っている時は見えなかったものや方法が、この地点では見え始めるのです。立つ位置が違うと、見える範囲、情報量、付き合う人や人数が今までと全く違ってくるのです。

最初から100パーセントの位置を目指そうとすると「とてつもなく遠い地点まで行かなければ」と思い、嫌気や諦めの気持ちが芽生えますが、「まず5パーセントの仲間入りをしよう」と考えると、第一歩を踏み出すことは容易になります。5パーセントの地点まで行けたら視界が開けますし、それまで苦労した方法よりも実は簡単で効果的な方法が見つかります。兎に角、何かの分岐点に辿り着くことで、そのもの自体が見えてきます。目指すべきことはトップから5パーセントの仲間入りをすることです。