コラム
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2012/5/30
1046    歴史から学ぶ

「時代は自然に変わることはありません。変えようとする思いと行動が歴史を変えるのです」。そんな言葉をいただきました。今の日本に何も関心がなければ歴史を学ぶ必要はありませんが、何か関与して変えたいと思う気持ちがあれば、歴史を学ぶ必要があるのです。

しかし歴史とは史実ですから、史実からでは学ぶことはできません。歴史から学ぶとは、歴史の事件の中から真実を洞察すること、その歴史上の出来事の背景にあるものを推論することなのです。洞察力があることが歴史から学べる条件です。資料を集めて語っても、その歴史の表面を知るだけに過ぎないので、現代社会に応用できません。しかし資料とその後の歴史の動きから、そこに何があったのかを推理することが歴史を学ぶことなのです。

資料は時の権力者が書き記したものです。基本的には都合の良いことだけを記すことになります。例えば誰かを刀で切ったとしても、それを書き残さなければ資料として残りませんから、その歴史はなかったことになります。また三人を刀で切ったのに一人を切ったと記した場合は、一人だけ切ったことが歴史になります。一人の悪人と二人の事件に関係のない善人を切ったとしてもそれは歴史に埋没しているので、資料を基にしているだけでは後世の私達は真実を知ることができません。しかし幸いなことに現代に生きる私達は、その事件のあった後の歴史の動きを知っています。結論を知った本を読むようなものですから、結果からその事件の真実を推理することは可能です。その推理力が歴史を学ぶ上でとても重要なのです。

歴史は自然に変わるものではなく、時代の転換期には人が関与していることは間違いありません。ですから誰かが結論を考えて、それに向かって登場人物を選び、必要な資金を作り、事件を起こしているのです。

電気系統の配線で表に赤色、裏に青色の配線がされている場合があります。歴史の表にある赤色の配線のつながりを見るだけでは不足です、青色の配線の先がどこに結合されているかを見なければなりません。歴史も人が創ってきたものです。誰かが好ましい結論を考え、そこに向かっての動きがある筈です。自然の成り行きに任せるような歴史上の英雄は存在していないと思います。

大人の喧嘩はお互いに落とし所を決めてからやるものです。赤色の配線をしているように見えて、実は青色の配線が本命の落とし所だったということもあるのです。リーダーは最前線で喧嘩をすることはありません。リーダーは戦略を練って勝つ方法を考えますから、できるなら博打のような偶然性に左右されるような戦いは避けたいと考える筈です。戦いには情報と人材が必要です。そして歴史に現れませんが、勝つためには資金の調達が最も必要なことです。資金を調達する能力やスポンサーを確保することが勝つための要素なのです。スポンサーの特性としてはリスクを回避し、勝てる見込みのある勝負に限定して投資する傾向にあります。歴史の勝者になるべき人物には必ず資金調達が成されています。

そして資金を得るためには勝つための方法が求められます。勝者は談合ではなく入札で勝負する力が必要なのです。