コラム
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2012/5/21
1039    花の気持ち

何度かコラムに書いた「トイレの神様」の話ですが、まだまだ嬉しい話として物語は続きます。ご存知のとおり和歌山市内の某企業のトイレにはいつも季節の花が飾られています。春の日の晴れた朝の出来事です。この会社の玄関前の花壇を通りかかりました。すると建物を管理してくれている会社の女性が花壇の花を摘んでいるのです。

この女性達が植えて水をあげて育てている花が咲く季節が訪れたのです。そして毎朝、きれいに咲いた花を摘んで事務所のトイレに飾ってくれているのです。

「おはようございます。とてもきれいな花ですね」と、朝の挨拶を兼ねて声を掛けました。

「きれいに咲いているでしょう。花たちはみんなに見てもらいたがってくれていますよ」と笑顔で返事を返してくれました。

「このお花をいつもトイレに飾ってくれているのですね」と尋ねました。

「お花が頑張ってきれいに花を咲かせているのです。きれいに咲いた花を見てもらうことを望んでいると思います。花もみんなに見てもらいたいのです」と答えてくれました。

その通りです。厳しい冬を耐えて春の季節に花を咲かせています。そんな花ですが、朝の通勤時にきれいな花が咲いていることに気づく人は少ないのです。仮に気づいても、朝の時間帯に花壇を見て「きれいだなぁ」と時間を確保して花を見るだけの余裕のある人はいません。

せっかく咲いた花なのに、ほとんどの人に気づかれないまま会社の玄関で存在することになります。人に声を掛けてもらえないことは花にとって寂しい出来事です。動物も植物も、人から優しい声を掛けてもらいたいと思っていると聞くことがあります。モノをいわない植物も人間から「頑張って咲いたね」と声を掛けてもらいたいと思います。

人間のやさしい言葉がきれいな花を咲かせるのです。きっとこの花たちは、育ててくれている女性達の気持ちと言葉を聴いて、きれいに咲いてくれたのです。

そんな頑張って咲いた花ですから、育ててくれた女性達によって摘まれ、人間のいる空間に飾られることを喜んでいるに違いありません。きれいな花が飾られた空間は、どんな場所でもきれいな空間に変化します。人はきれいな空間に入ると気持ち良くなり、きれいな状態でその空間を出ようとする意識が働きます。きれいな場所はきれいに保とうとします。人はきれいなものを汚すことを歓迎しません。逆に汚い場所は更に汚しても平気なのです。このようにきれいな空間にはきれいな気持ちか宿り、汚い空間には汚れた気持ちが溜まるのです。

ですから、花が飾られているトイレにはきれいな気持ちが入り、きれいに保たれます。トイレに花が飾られると無意識のうちにトレイをきれいに使用するようになるのです。きれいさは隅々まで行き渡り、トイレ内の洗面所も水が飛び散らないように気をつけるようになります。

花があると人間の行動にも良い影響を与えてくれます。花は人の気持ちを神聖なものにしてくれる作用があります。花のような気持ちになることで周囲はきれいになります。