コラム
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2012/4/27
1027    標準工程

仕事には期限や締め切りがあります。期限が設定されると、そこに向けて力を入れますから仕事は進みます。ですから仕事において、何時までに何を達成するという期限の設定は不可欠です。

ところが期限という名の標準工程というものがあります。言うなれば、その仕事を達成するために必要な日数の目安です。検討に二週間、企画に三週間、商品モデルを作るのに二週間、検査作業に一ヶ月、引き渡すまでの予備日数が一週間などの細かい決め事です。標準工程が定められている場合はそれに則って仕事を進めます。ところが世の中、何が起きるか分かりません。突発的事項が発生した場合、お客さんに対して「標準工程では半年かかりますので」と言っても通用しない場合が出ています。会社内の決め事が社会で通用する常識ではなくなっているのです。情報化、意思決定のスピード化、変化に対応する力が会社に求められている時代において、過去の経験則から決められている標準工程はそのまま通用しなくなっているのです。

ですから「この製品を提供するのに半年かかります」と会社の規則で対応すると、お客さんは他のメーカーに移ってしまいます。お客さんの期待に応える姿勢を持つことが競争市場で生き残るための条件です。ところが特許を持っている、特殊な技術であるなどの理由で、他に代替性がない製品が存在しています。それは基本的に注文を受けてから製造する製品なので、今現在、ここに存在していないのです。ですから製造過程に「半年かかかります」という回答は一見、納得できるものです。

しかし、情報化社会の随分前に定められている規定に基づく標準工程がそのまま通用しづらくなっているのも事実です。お客さまは何時の場合も神様ではありませんが、必要な製品や技術を必要としている時期に届けることが会社の社会的使命であり、存在意義だからです。

法律が変わろうとしている、その法律に対応して社会に貢献しようとしている会社があれば、その法律が制定された社会変化と参画する企業の対応姿勢に、必要とする製品や技術を保有している企業は応えなければなりません。半年というだけでは社会的に納得されない状況がありますから、どの工程にどれだけの日数を要するのか、そしてその工程内の作業はどんなものなのかをお客さんに知らせて納得してもらうことが必要です。社会の要請に応えられるのが企業の存在価値であり、社会の変化に対応することが企業が生き残るために必要なことです。

そして面白い議論がありました。決裁者が「標準工程と言うけれど、その標準工程の期限いっぱいに使って仕事をして決裁だけを私に求めてくる仕事のやり方は問題がある。私の考える時間や私の意思を反映する時間が残されていないではないか。判を押すだけが私の仕事になってしまうような仕事のやり方は改善すべきである」という意見です。

尤もな意見です。標準工程が万能ではありません。標準工程内で、かつお客さんの要望に応えられる期限内に応えられる仕事をするのがプロなのです。標準工程を守れば良い仕事とは言えないのです。

人は期限や締め切りがあれば、その日までに仕事をやり終えたら良いと思うものです。ですから納期直前に仕上がる仕事は多いのです。個人で企画、作業、提案ができる仕事であれば問題は少ないのですが、組織としての仕事であれば、一人が期日を使い切ってしまうと、意思決定に関わる人の意見や決裁権の持つ人の意思が反映された仕事になりません。

結局、お客さんが望む期限に製品や検討結果を届ける必要がありますから、決裁者の意思は入らない結果が導かれるのです。これでは良い仕事にはなりません。

期限を設定して守ることは重要です。その中にお客さんの希望する期日、仕事をする中で決裁権の持つ人が判断する期日を勘案して、自分の担当する作業を期限内の早い時期に終わらせたいものです。