コラム
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2012/4/12
1017    生きる力

「今日働けて、友人達と会話ができていること、そして美味しい食事ができていることは幸せなことです」。素敵な言葉が飛び込んできました。仕事も余暇も充実しているDさんの言葉です。現在東京に事務所を持ち、大阪、韓国、香港などを仕事で飛び回っています。

東京から仕事の打ち合わせのため出てきてくれた時の懇談は印象に残りました。

小さい頃から自立した子どもになるように育てられたそうです。中学校1年生の時に父親から「東京に行って池袋のサンシャインと東京ディズニーランドを見てきなさい」と言われたことがあったのです。九州出身の方なのでバスで博多に出て、そこから新幹線で東京に向かったのです。何故池袋のサンシャインかというと、当時注目スポットとしてオープンしたからです。この教えは、実際に見ることが大切であること。行動することによって、自分で何かを得ることができることを確かめさせること。そして自分で確かめたことが信頼できるものであることを知らせるためでした。

父親は不安でなかった筈はありません。実は中学生の子どもを一人で初めて東京に行かせた父親は不安感でいっぱいでした。しかし「不安は私が感じるものであって子どもは感じるものではない。私が我慢したら良いものであり、子どもの成長を後押しするのが父親の役目である」と思い、一人で東京に行かせたのです。

また小学生の時には「これからは情報が大切である。仕事をする上で情報を制した者が仕事を制する」と教えられ、誕生日にラジオのプレゼントをしてもらったのです。

まだあります。小学校1年生の時の誕生日プレゼントはデール・カーネギーの「人を動かす」だったのです。誰もが読んでおきたい本ですが、流石に小学校1年生には早いと思います。Dさんは読めない漢字が多くて内容の理解はできなかったそうですが、父親から「分からない漢字があれば飛ばして読めば良い。ページ全体を見て印象に残せば良い」と教えられたのです。ページ全体を見て写真を撮影するように頭の中に映像として残す訓練が役立っているそうです。読んだり見たりした記憶は残っているようですが、その記憶を引き出す訓練ができていない人が多いので、忘れてしまっている状態になるのです。

そして中学校1年生になった時の誕生日プレゼントも、デール・カーネギーの「人を動かす」だったのです。同じ本のプレゼントだったのです。今度は漢字が読めますから内容は理解できたのです。大事なことは繰り返すことで理解が深まることと、記憶に定着することが体験できたのです。

聴くことよりも体験することの大切さ。ビジネスをする上で情報を早く得ることが有利になること。そして大事なことは繰り返すことが大切なことを、小さい頃から学んでいるのです。

今では事業家として全国とアジアの国をビジネスで走っています。高校を卒業する時に、「人として必要な知識や経験は全て教えたので、これからは自分で自分の生き方をしなさい」と言われて自力でここまで辿り着きました。生きる力の源泉は家庭内の教育にあります。子どもに生きる力を与えることが、大人として大切なことです。