コラム
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2012/4/10
1015    幅の広さ

人には幅が必要です。幅とは相手の意見を聞けるだけの余力があること。一つを聞いてその次の展開を読めること。相手の言い分を聞いて対応できるだけの度量があること。そして困った相談に際しては全てを知った上で腹に収めることができることなどです。

ある事例があります。平成24年の春、衆議院が解散総選挙になったとします。Aという人が「今の時点であれば自民党が勝つだろうね」と言いました。それを聞いたBは「絶対に自民党は勝つと言えますか」と驚いて聞き返しました。これから先に話は展開しませんでした。

Aさん曰く「今の時点での予想ですよ。絶対と決め込む必要はないと思います。桶狭間の戦いの当時の武将達は、今川義元が織田信長に勝つと思っていたと決めていたと思います。しかし結果は逆でした。戦略、陣立て、駆け引き、度胸、時間の経過などの要素をどう組み合わせるかによって当然結果は違ってきます。今の状況は自民党が勝つとしても、次の瞬間はどんな展開になるのかは分かりません。自分が自民党だったらどう優位を維持するか。自分が民主党だったらどう立て直すかを考えてみることが楽しいことですし、自分が関与できる余地があるかどうかを見極められるのです」。

人の意見を聞き、幅広い考え方を持つことで展開の予測はできます。人の意見を聞かなければ自分の幅を拡げることはできません。幅が狭ければ常に社会から一歩遅れたスタートとなります。責任のない立場の人やこれからの社会の展開について考えることを諦めた人は問題ありませんが、リーダーや部下を指導する立場の役職者、そして社会に参画しようと考えている人は是非とも幅の広さを持って欲しいものです。そうすれば関係する相手の活動の幅を狭めるような言動は起こさない筈です。

幅の広い人は幅の広い道路を歩いているようなものです。状況の変化に応じて幅を使った走り方が可能となります。今は右端を走っていても状況が変化した場合は道路の真ん中を走る選択肢があります。左端を走った方が速く走れる判断する場合は、道路幅を使って進路変更をすれば良いのです。

ところが幅の狭い人は狭い道路を走っているようなものです。常に自分の道路幅いっぱいに走行する以外に選択肢はありません。幅の狭い人は、幅の広い人が先を目指してどう走ろうとしているのか分かることはありませんし、同じ視点で見ることはできないのです。

相手の幅を見極められる人だけが、幅の広い人の行き先を感じ取れるのです。

大きく叩けば大きく響き、小さく叩けば小さく響くような幅の広い人に対して、同じ叩き方しかできない人が意見をしても、相手が持つ違った魅力を引き出すことはできないのです。

これから活躍をする人には、何としても人としての幅の広い人になってもらいたいと願っています。多くの人の意見を聞き学び、必要なものは取り入れられるからです。そして幅が広ければ将来の選択肢は増えます。年齢と共に幅の広がるような人間になりたいものです。