コラム
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2012/4/6
1013    付加価値

初心者は基本に忠実が大原則。最初から上級者の真似をしても上達することはありません。基本をマスターしてから次の段階に進むことになります。そしてその分野のことを仕事に出来たら、それはもうプロの領域です。ところがプロになると基本に忠実なだけでは成り立たなくなります。仕事の場合、相手に採用してもらえるためには納得してもらうことや、時には感動を与えなければなりません。

スポーツや文化を教える立場になれば、お金を支払って教室に来てもらっている人に、楽しみや感動を与えなければなりません。教えるだけでは生徒は集まらないのです。プロは生徒達に技術を教えることと教室に行くことが楽しいと思わせる必要があるのです。

歯を食い縛って上達だけを目指すのではなくて、楽しく笑顔のある教室にすることがプロの仕事です。

トレーニングを受ける立場からすると、何もかも基本通りに、そして四角四面に指導されたら文句もないけれど、感動やもっと受けたいとは思わないものです。やはり心に響かないと 芸術などと同じように運動も続きません。達人と言われたる人は自分の尺度を周りの人の尺度に合わせ、それを更に大きくもしなやかに、自由自在に操れる人なのです。

プロですから相手よりもその分野の技術の容量が大きいのは当たり前です。相手の技術や容量に自分を合わせて同じレベルで話し合うことが大切なのです。つまり相手と同じ目線ということです。同じ立場で話をして、少しだけ上達するためのアドバイスをすること。今まで気づいていなかった上達のコツを教えられると、それは感動になります。

出来て当たり前の指導では感動は起こりません。出来なかったのに出来るきっかけをつかめることが感動となり、続けられる力になるのです。

参加者の表情が笑顔に変わったら、明るい話し声が響いてきたら、それはプロの仕事なのです。講演会や歌手のライブに行くことがあります。会場を楽しませ沸かせられる人はプロなのです。事実を述べる講演者や歌の上手な歌手はたくさんいますが、笑いと感動を与えてくれる人は多くはありません。だからプロとしてやっていけるのです。

最初からプロはいません。自分もその領域を通過してきた経験があることからプロとして仕事ができるのです。基本動作を教えるだけではなくて、経験からくるちょっとしたコツや、それに関わるエピソードなどを話の中に織り交ぜながら指導をして欲しいところです。後々まで記憶に残るものは笑ったことや感動したことです。基本動作は身体で覚えるもので、頭の中には喜怒哀楽と感動体験が残ります。

自分が何かの分野で教える立場になったら、解説書を読むように進めるのではなくて、極力自分の言葉で、そして楽しいエピソードや裏話などを話に挿入して、笑顔になる機会に仕上げたいものです。

その分野のプロだったら教えられて、指導できて当たり前です。そこに楽しさや、例え一つでも心に残るエピソードを話したいものです。人は付加価値も求めているのです。