令和8年2月定例会一般質問 / 質問内容

1.財政認識について

こんにちは。議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問を行います。

一般質問

3月2日は県立高校の卒業式だったので、母校の卒業生にお祝いの言葉を届け、感動を共有してきましたが、卒業・就職シーズンを迎えるたびに思うことがあります。和歌山県で生まれ育ち、地域に愛着を持っているはずの多くの若者が、進学や就職を機に県外へと巣立っていく。それ自体は若者の挑戦であり、決して否定されるものではありません。

しかし問題は、一度県外に就職した若者の多くが、再び和歌山県に戻ってこない。この現実が長年にわたり確実に積み重なってきました。単なる人口移動の問題ではなく、本県の将来の担い手の流出、地域経済の縮小、税収基盤の弱体化、そして地域の活力そのものの低下につながる極めて深刻な構造課題なのです。

県内の公立高校や保護者の声を聞くと、「地元に魅力的な就職先が少ない」、「和歌山県が誘致している産業の実績が見えない」、「若者が挑戦できる舞台が県内に不足している」などの声が毎年、繰り返し聞かれます。

これは個々の若者の問題ではありません。地域の産業構造の問題です。

若年層の域外流出が本県人口減少の大きな要因となっていること、そして若者の雇用機会の創出が喫緊の政策課題であることについては、知事も同様の危機認識をお持ちと理解しています。

仮にこの認識を共有できるのであれば、次に問われるべきは極めて明確です。若者が地元に残り、そして外に出ても戻って来たくなるだけの産業基盤と雇用環境を、本県は本当に用意できているのか。人口対策は掛け声では結果は出ません。移住施策や子育て支援だけでは、若者の本格的な定着には限界があります。最終的に若者の進路を決める最大要因は、就きたい仕事が地域にあるかどうか、この一点に尽きます。

(本県財政の危機的構造)

では財政認識です。本県の令和8年度一般関係予算は6,499億円ですが、その内実を見ると、約125億円の県債管理基金の取り崩しに依存した予算編成となっています。

さらに県試算では、令和10年度には財政調整基金と県債管理基金が枯渇する可能性が示されています。

しかも今後を見通すとすれば、金利上昇局面を迎えること、物価高の長期化が予想されること、これはアメリカのイランへの侵攻など国際情勢が不不安定なことも影響を受けると思われるため、社会保障費の自然増が見込まれること、そして中期的にも長期的にも生産年齢人口の減少傾向にあることなど財政面で厳しい環境が同時進行することになります。

これは単なる年度運営の問題ではなく、構造的な財政圧力とも言えることです。

仮に和歌山県の財政調整基金と県債管理基金が枯渇した場合、直ちに財政破綻になるわけではありませんが、県政運営は一気に不安定化することになります。前知事と同様に、これらが枯渇する可能性がある年度を示したのは英断ですが、そうならないため県民の皆さんか不安に陥らないための道筋を示す必要があります。

(税収増なき財政運営の限界)

財政健全化の手段は本質的に二つしかありません。歳出削減と歳入拡大です。しかし本県の人口動態を踏まえれば、歳出削減のみで持続可能な財政を構築することは極めて困難だと言えます。

したがって核心は税収をどう増やすかに尽きます。

税収を押し上げる最大の要因は何か。それは民間投資、企業集積、雇用創出に尽きます。

つまり投資を呼び込める地域かどうかが、税収の将来を決定づけます。

一般質問

ここで重要な点を申し上げます。市場評価の重大性です。

一度IRに挑戦しようとした和歌山県が今回の公募に際してIRに挑戦しないとなれば、和歌山県は挑戦しない県だと判断され、民間の大型投資が期待できなくなる恐れもあります。投資を促すことこそ成長を促進させるために必要な施策です。投資を呼び込めなければ、停滞または衰退への道が待っているだけです。これはIR単体の議論ではなく、投資先としての県のブランド評価の問題です。

IRの要諦は単なる観光ではありません。本質は都市地盤形成のための戦略的インフラ投資であります。これは世界の先行都市が証明しています。

マカオではIR導入後に、国際観光ハブ化、MICE集積、雇用創出、税収の飛躍的増加をが実現しています。IRは都市経済の核インフラであると聞いていますし、教育基金を設立するなど学生の支援にも努めています。

シンガポールでも同様にマリーナベイ再開発、高付加価値観光、国際ビジネス集積が進展しました。同国はIRを、国家競争力強化の戦略装置と明確に位置づけています。

IRは都市形成基盤であるとの認識に立ち、愛知県はすでに次の一手を打っています。

先の2月12日の記者会見では次のように説明しています。

愛知県では人口減少が進んでおり、特に若年層が東京圏に流出している状況が県の人口減少に拍車をかけている。そのため、IRを整備することで、若者が愛知県で暮らしたいと思えるような魅力を高める契機にしたいとの考えを示しました。その上でIRによる国際観光の活性化を通じて、県内経済や雇用の魅力を強化し、若者の地域定着につなげたいという意図があると述べています。

要するにIR誘致は単なる観光開発だけでなく、若者が県外へ出て行く流れを変え、地域にとどまりたいと思える環境づくりの一助にしたいという狙いがあり、首都圏への人口流出が続いていることや若者定着には新産業が不可だとの認識の下、IRは選択肢として重要との趣旨を明確に述べています。極めて現実的な危機認識です。

また知事は検討の進め方について次のように説明しています。

「関心のある民間事業者がいるかどうかをまず聞いてみたい」と述べ、誘致に向けて民間の事業者の関心や意見を把握した上で進めたいという姿勢を示しています。

愛知県知事の説明は、県としてまずIRの可能性について調査を行い、民間事業者の関心・意向を確認する段階から始め、その上で、実際に具体的な計画や審査手続きを進めるかどうかを判断していくというものです。

つまり、やりたくても一緒にやってくれる事業者がいなければできませんから、まず関心がある事業者がいるかを確認したいという姿勢ですから、見習うべき打ち出し方です。

付け加えておきたいことは、愛知県でさえ新しい産業を創出しなければ若者は地元に定着しないので、産業構造の更新こそ人口対策の核心だとの趣旨を明確に述べていることです。自動車産業という強固な基盤を持つ愛知県ですら、危機感を持って次の成長産業を模索しているのです。

愛知県知事の記者会見当日、私のところにたくさんの意見が届きましたので、その一部を紹介します。

  1. ついに愛知県が発表しました。またしても和歌山県は遅れましたね。和歌山県の将来をどう考えているのか知事に聞きたいです。
  2. 愛知県は関心のある事業者がいるかどうかの意向を問いたいとしています。せめて事業者が和歌山県でIRをやってくれるのか意向を聴くべきです。
  3. 愛知県の大村知事の記者会見を見ました。国際観光都市を目指し人口減少に歯止めをかけようと挑戦的です。愛知県でさえ東京圏への人口減少に歯止めをかけようとIRに取り組むようです。和歌山県は人口減少への危機感はないのでしょうか。
  4. 愛知県でさえ必要な施策を進めるための財源捻出は厳しいとのことです。そのためIRを実現することで財源確保を図り、県民の健康と命を護るために医療と福祉の恒久的な財源にしたい旨の発言をしています。和歌山県民が思っている課題は愛知県と同じです。

他の県でも成長戦略として注目される動きがあります。

香川県では、あのNVIDIA(エヌビディア)と政策連携を行いました。AI人材育成とデータ活用基盤そして産業高度化に関する政策連携を進めています。これは明確に次世代産業の布石です。

目指しているところは、NVIDIAのAIインフラや技術支援を活用することで、県内企業がAIを導入しやすくなり、仕事の効率化や新しい価値づくりにつながることが期待されています。

また教育機関や技術機関と連携し、AI分野の高度な人材育成を進める体制が整えることや、GPUを活用する技術系企業やAIデータセンターの立地を促進し、技術集積や雇用の創出、地域経済の活性化につなげること。 そして地域産業全体の高度化・DX化を加速させ、香川県の産業競争力を高めることです。

一般質問

以上をまとめると、香川県とNVIDIAの連携は単なる技術導入だけに留まらず、企業誘致、人材育成、産業高度化、地域のデジタル競争力強化という成果を目指していると言えます。この取り組みは人口規模に関係なく、新産業への参画を明確にした自治体に資本が集まる現実を示しています。

徳島県では「神山まるごと高等専門学校」を立ち上げ、デジタル人材育成、起業家教育そして地方発イノベーションを狙った取り組みを行っています。

先週、仕事のため和歌山県から徳島県に移住している友人と会った時に、この神山高専の話を聞きました。

「私が仕事をしている徳島県の神山町で有名なのが『神山まるごと高等専門学校』です。この学校は講師に現役の起業家を招き起業家を育成することを目指し、卒業生の4割が起業家にすることを目標として掲げています。ここはコンビニが一軒だけの田舎ですが、この学校は全国から注目されています。神山の精神は『やったらええんちゃう』ですから、挑戦する小さな町だからこの学校ができたのでしょうね」と話してくれました。

神山町の挑戦、これは単なる教育政策ではなく、若者を呼び込み地域に定着させる産業政策です。その設立の本質は、「優秀な若者が県外に出て二度と戻らない」という地方の構造問題を教育そのものから逆転させる試みにあります。

従来の地方モデルは「高校まで地元で大学は都市部、そしてそのまま都市就職」という流れでした。神山町はこれを、全国から学生を集め、地方で高度IT・起業教育を行い卒業後も地域で活躍する人材を育成する逆流モデルに転換しようとしています。

つまり地方から人材流出構造を断ち切る挑戦だと言えます。

これらの事例を目の当たりにすると、極めて重要な問いが浮かび上がります。和歌山県は、投資を呼び込む県として市場に認識されているのか。他県が成長投資の旗を掲げる中で、本県のメッセージは十分に明確とは言えません。

投資の世界の評価軸は、政策の継続性、首長の意思、そして事業への本気度です。それがあって資本の流入先が決まります。つまり和歌山県は成長に挑戦する県であり続けるのかという問いに答えることです。

判断を先送りする時間的余裕は、もはや多く残されておりません。財政は待ってくれません。人口減少も待ってくれません。そして投資家の判断も待ってくれません。

民間資本は成長意思が明確な地域、政策の継続性が見える地域、首長の覚悟が読み取れる地域に流れます。

逆に言えば意思が曖昧な地域から資本は静かに離れていく。これが現実であります。

今、本県に求められているのは明確で市場に伝わる意思表示です。

そこで質問です。

質問

県の令和8年度予算6,499億円、県債管理基金の取り崩し125億円、令和10年度基金枯渇見通し金利上昇局面入りという、明確な財政圧力の時間軸の中にあります。これは政策論争ではなく時間との競争であります。

今議論しているのは現在の予算の問題ではありません。10年後、20年後の和歌山県の姿です。若者が戻って来る県にするのか、それとも財政余力を失い、縮小均衡に入る県にするのか。その分岐点に立っていることを議論しています。

先日、元銀行員の方々と会議をしたところおもしろい話になりました。

民間企業の投資や出資を地方自治体の財政に例える視点で捉えたのです。財政構造の本質を企業で例えると、地方債=銀行融資。基金取り崩し=内部留保の食いつぶし。成長投資=エクイティ的政策となります。和歌山県は現在、借入+基金取り崩し型運営であり、税収増の構造改革が弱いと言えます。

地方債とは将来税収の前借りなので、人口減少局面での借入依存は企業で言えば「成長なき借入拡大」になります。

さて「出資」にあたるものは何か、地方自治体におけるエクイティ的発想は国の大型政策資金を呼び込むことに該当します。例えばデジタル田園都市やGX投資、そして観光再生などがあります。また最大規模の事例として大阪市の「大阪IR」は民間の大型資本を呼び込むモデルです。これは「自治体が借金する」のではなく民間事業者がリスクを取る仕組みです。これらから分かるように和歌山県が全部借金するのではなく「民間事業者が収益リスクを持つ」。これが自治体版エクイティです。

もう一つの資金調達方式としてキャプティブがありますが、これを自治体に当てはめると県主導の地域投資ファンドのようなものであり、具体的には宿泊税があります。

和歌山県の場合、県債削減だけでは縮小均衡となる。基金取り崩しは延命措置に過ぎず、成長戦略がないと財政再建は不可能であることが言えます。つまり「借金削減」より「税収創出モデル」が重要となるわけです。

本県財政の中長期持続可能性について、現時点で強い危機認識を有していると思いますが、財政破綻しないためにすべきことは何なのかをお聞かせください。知事の答弁をお願いいたします。

答弁者:知事【財政課】

片桐議員の一連のご質問に答えていきたいと思います。財政認識についてでございます。

県財政を将来にわたり安定的に運営していくためには、総合計画に基づく施策の実施に必要な財源の確保と基金の適切な活用・積立を含めた健全で持続可能な財政運営を両立していくことが不可欠であります。

財政調整基金及び県債管理基金が枯渇し、予算編成が困難となる事態を防ぐためにも、まずは、業務量適正化の観点も踏まえて事業の見直しを行うなど、歳出面で不断の努力を重ねてまいります。

さらに、国庫補助金を有効に活用するとともに、企業版ふるさと納税のさらなる活用や県有施設のネーミングライツの推進などの新たな歳入確保策にも積極的に取り組むことで、歳入基盤の強化を図ってまいります。

特に、県の歳入の中核である税収を増加させる取組として、観光需要の増加を踏まえた宿泊税など新たな観光振興財源の導入の検討を進めてまいります。

加えて、東京一極集中が続き行政サービスの地域間格差が顕在化する中、国においては、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組む動きがあり、県としても積極的に要望を実施してまいります。

その上で、将来世代に対して責任を持った財政運営を行うことが大切であります。決算剰余金なども活用し、借換債の発行抑制など、将来の公債費負担を抑制する努力もしつつ、突発的な財政需要に備え、財政調整基金及び県債管理基金への積み立てを行ってまいります。

今後の財政見通しを踏まえ、新たな行政需要への対応と健全で持続可能な財政運営の両立に向け、より一層の危機感を持って対応してまいります。