令和7年2月定例会一般質問 / 質問内容

2.半島防災対策について

一般質問

関東大震災で約4万人が焼死した東京の陸軍本所被服廠跡(りくぐん ひふくほんしょう)では、多くの犠牲者が出たことは周知のことですが、原因は火災旋風だったことが分かっています。

この火災旋風は、地震などの自然災害、空襲など大規模な火災が発生した時に起きる可能性があるものです。

和歌山大空襲の時も火災旋風が発生したと言われていて、この時の多くの犠牲者が発生した教訓から、和歌山市は災害に強いまちづくりを志向してきたと推測できます。

戦後復興から現在に至る幹線道路網は、火災が拡大しないように、そして避難し易いように整備されていますし、学校と公園が併設されていることも災害に強いまちづくりの証拠になります。

事例として、市内中心部にある旧、大新小学校と大新公園、城東中学校と城東公園、新南小学校と新南公園は学校と公園が併設している事例です。火災旋風は公園では発生しにくいとされていますから、避難所になる学校と公園が併設されたまちづくりをしていることは「当時、戦災の教訓を生かして防災対策を行った和歌山市は、全国で最先端の防災都市であった」ことを示しています。

元自衛隊員で、現在は川西市総務部地域防災マネージャーの猪股倫夫さんから「戦後の和歌山市は道路や公園の構造から防災先進都市だった」ことを学び、改めて現代の和歌山県の防災対策に生かす取り組みを考えさせられました。

さて和歌山県が防災先進県であったことを前提として、今回、和歌山県に東京大学災害対策トレーニングセンター支援会(DMTC-SA)(主たる事務所は、東京大学生産技術研究所)の出先事務所と、法人一般社団法人災害対策支援者協会(D-SSA ディーサ)が設立されたことを取り上げます。

これは東京大学災害対策トレーニングセンター(DMTC)が提供している教育プログラムを修了したことで身につく能力を、一般社団法人災害対策トレーニングセンター支援会(DMTC-SA)が能力認定する制度で、「災害対策士」を全国に分散配置することで防災対策に資するもので、関西では和歌山県を拠点として教育を行います。

DMTCの教育を受け、能力認定試験に合格し災害対策士として登録された人は、日本全国、どこかで巨大災害が発生した場合、被災地へ出向き適材適所で効率よく現場で活躍することになります。

注目点は和歌山県在住の災害対策士は、和歌山県内でのみ活動するのではなく全国で活躍できる人材となることです。DMTCの教育プログラムを受講した者のうち、試験を受け合格した者は、災害対策において、専門知識と技術を持った人材であることを能力認定されているので、地方自治体やインフラを有する企業との連携を図ることで効果が生まれます。

私はコロナ禍以前の5年、6年前から数回、同センターを訪問していますが、ここでは地方自治体や企業の防災担当者が学ぶべき講義がなされています。

分野は8つで「ガバナンス・組織運営」から「避難・被災者支援」「地域再建支援」「社会基盤システム再建」、そして「社会経済活動回復」まであります。防災担当者として身に付けておきたい知識をDMTCが作った教育カリキュラムで学ぶことができます。基礎知識である基礎プログラムは、eラーニングで受講でき、実地訓練が必要な専門プログラムは、東京大学生産技術研究所で受講することができます。

和歌山県内での防災教育機関の設置に関しては5年ぐらい前から取り組みが始まり、コロナ禍を挟んだので時間を要しましたが、ようやく今春、本格稼働する運びになりました。

和歌山県で開設することは県とって人材育成の拠点となることに加え、東京大学の最先端の知見を得られるので防災行政が進むことにつながり、地域の安全安心に資することになります。また巨大災害が発生した時は、和歌山県のDMTC-SAとD-SSAが司令塔の役割を果たすので、現場で得られた新たな経験を蓄積することができます。

和歌山県は日本最大の紀伊半島に位置していることから、能登半島地震の経験からも学んでいるところですが、半島防災の知の拠点になり得る施設です。

質問1:「孤立集落サミット2024」政策提言をどう生かすかについて

さて災害対策トレーニングセンター支援会(DMTC-SA)が主催し、東京大学災害対策トレーニングセンター(DMTC)が協力した「孤立集落サミット2024」が令和6年5月21日および22日の両日、白浜町椿地区で開催されています。このサミットが今回の和歌山での拠点設置の導線になっています。

一般質問

この時のミッションは「能登半島地震の孤立集落から学ぶ」「公助が行き届かないとは実際にどういうことなのか」などでした。

特に「能登半島地震の孤立集落から学ぶ」では、過去何度も発生している孤立化に何故対応できないのかを考え、何を備え、何を訓練しておけば助かるはずだった命を助けることが可能なのかをテーマにしています。

東京大学が半島防災と孤立集落化について現地で訓練を行い、参加者とともに考え、9つの政策提言をしているのです。

例えば「災害対策の全体像を行政、住民が共通認識し、住民が自助、共助で災害を乗り切る環境づくりを行政が主導すること」や「災害対策の全体像を共通言語で論ずる人たちを養成する」ことなどです。

孤立集落サミットでは半島防災に必要なことを提言してくれているので、これらに備えることが半島防災の要諦だと思います。県内で開催された孤立集落サミットの提言についての知事の見解と、どう生かすかについてお聞かせください。

答弁者:知事【防災企画課】

片桐議員のご質問にお答えをいたします。この孤立集落サミット2024の政策提言を拝見いたしますと、「自助や共助が災害対策の主体となる」ということ、それから「地域の課題を認識し、受援体制を構築すること」、「外部との情報伝達、物資輸送手段を確保すること」など、いずれの項目も、南海トラフ地震のような大規模災害による孤立集落の発生に備え、被害の軽減につながる有効でかつ大変的確な対策であるというふうに思いました。

能登半島地震では、多くの集落が孤立しました。本県も紀伊半島ということで、能登地域と同じ、半島という地理的条件は同じであります。高齢化の状況も似ております。決して人ごとではありません。我々、和歌山県としては「半島防災」という観点を交えながら、これまで本県の防災減災対策を検証してまいりました。3月に、今月末に、最終発表を行う報告書を今作っているところであります。

その中で、「目指すべき自助、共助、公助」「応援、受援体制の強化」などを柱としておりますけれども、それぞれの課題はこの2024の政策提言に書かれている内容とかなり重なってまいりますので、その意味ではこの孤立集落サミットの政策提言というのは非常に時宜にかなったものだと考えております。

今後は、官民を問わず関係する機関の皆さんと連携を図りながら、対策を進め、南海トラフ地震をはじめとした大規模な災害に対して、本県の防災減災対策をより一層強化してまいる所存ですので、またご指導よろしくお願いいたします。

質問2:和歌山県に災害対策トレーニングセンター支援会(DMTC-SA)の出先事務所と災害対策士を被災地とマッチングさせる災害対策支援者協会(D-SSA)が設立されたことについて

昨年11月に和歌山県ビッグUに災害対策トレーニングセンター支援会(DMTC-SA)の出先事務所とそして災害対策士を被災地とマッチングさせる災害対策支援者協会(D-SSA)が入居しました。

先に述べた通り、和歌山県で「災害対策士」を養成し、県内のみならず全国の災害現場に派遣され活動することになります。まさに和歌山県が関西の防災活動の人材養成拠点となり、令和の時代において防災先進県になり得ます。

しかも活動した情報や実績はデータとして蓄積されるので、和歌山県は防災の知の拠点になるのです。

和歌山県として、災害対策トレーニングセンター支援会(DMTC-SA)、そして災害対策支援者協会(D-SSA)との連携した活動について、知事からお答えください。

答弁者:知事【防災企画課】

お答え申し上げます。今後、県全体の人口が減っていきますので、行政職員の減少も想定されます。したがいまして、県としても最大限の努力はいたしますけれども、県民の命を守るためには、「自助」や「共助」の力もまた、これはこれとして必要、重要だと考えております。

その意味では、災害対策トレーニングセンター支援会等が、わが県のビッグUに開設されたということは、大変ありがたいことでして、県民に防災に関する知識や経験を深めていただく機会が増えます。また、このセンターで養成された災害対策士、この皆さんが県内外で活動されるということは心強い限りであります。

災害対策士は、行政による「公助」が十分に行き届かないところを「共助」で支えることを前提として、その担い手の役割を果たすと聞いております。しかも、防災士さんも大事なんですけど、防災士は1回受かるとそのままなんですが、この災害対策士さんは3年毎に試験を受けられて、資格の更新をしなければならないということでありますから、常に最新の知識と技能を持つ災害対策士さんが、県内の地域防災活動に従事する皆さんと連携することで、和歌山県の地域防災力が向上するということが期待できます。

我々、先ほど申し上げましたようにいろんな準備をしています。県としても全力で災害対応を行いますけれども、一方で、「自助」「共助」、自分の命を自分で守る、地域で助け合うということも重要でありますので、そのような意味におきまして、今後、災害対策トレーニングセンターや災害対策支援者協会などの民間機関との連携も含めまして、あらゆる手段を総動員して、和歌山県全体の災害対応能力をより一層高めてまいりたいと思っております。

質問3:「災害対応工程管理システムBOSS」について
一般質問

昨年8月に東京大学災害対策トレーニングセンター(DMTC)を訪問したとき、同センターが過去の災害を分析した結果をまとめた「災害対策業務フィールドガイド」の説明を受けました。それはつまり県と市町村と自主防災組織が、このフィールドガイドに基づき、研修を受ければ、非常時にやるべきことの全体像を共通認識でき効果的な災害対策が可能になるというものです。そのうえ活用方法を修得できる専門プログラムとして、「Flow47」というeラーニングプログラムも用意されています。

今回、災害対応力強化として災害対策の流れを的確に把握できる「災害対応工程管理システムBOSS」を導入する予定ですが、どのようなものか危機管理部長の見解をお聞かせください。

答弁者:危機管理部長【災害対策課】

大規模災害時、県職員は、被災者の支援や地域の復旧、復興を迅速かつ効果的に進めるために、地域防災計画に基づく膨大な数の災害対応業務を行わなければなりません。しかしながら、いざ災害が発生した場合、情報が錯綜し混乱する中、優先すべき業務の抜けや漏れ、あるいは担当職員が被災して出勤できないなどにより、業務が滞ることも懸念されます。

議員からお話がありましたが、「災害対応工程管理システムBOSS」は、東京大学の沼田 宗純(ぬまだ むねよし)准教授が、過去の災害事例を踏まえ、災害発生時に行政内でより迅速に状況把握し、多岐にわたる業務をスムーズに行うために開発されたもので、災害対応業務を47種類、500工程に体系化し、業務フローとして整理したものでございます。

これを導入することにより、県が実施する災害対応業務の工程をフロー図で示すことで、災害対応の流れを理解することができ、被災した職員の代替職員などでも「いま何をすべきか」が一目で分かるとともに、フロー図に関連付けられたチェックリストにより実施すべき業務の抜け、漏れの防止にもつながります。

さらに、県全体における進捗状況の一元的な管理が可能となり、滞っている業務などへの適切な人員配置により、限られた人員の中でも効果的に災害対応を行うことができるものと考えてございます。

質問4:災害関連死を防ぐことについて

先月、2月ですが市内の連合自治会会議に参加しました。ここで避難訓練や防災について熱心な議論が交わされました。避難訓練は日常から実施していますが、公助に頼っている部分、つまり医療や福祉の専門的なことは単位自治会で訓練できないので連合自治会で対応できないかという問題になりました。

ところが連合自治会も単位自治会と大きな違いはなく、それらの知識は持ち合わせていません。そこで医療や福祉の専門分野の知識を得られる避難訓練に仕上げることが課題として残りました。

現在、避難訓練では避難、救急法、炊き出し訓練などが主な取り組みで、医療や福祉に関する内容は訓練に含まれていません。巨大災害発生時は、医療チームなどが来てくれると思っていますが、やはり事前に知識を得ておくことで、自分たちが出来ることはやっておけるようになります。そこで、この医療や福祉の対応について今回の質問として取り上げることにしました。

災害発生時に避難所に避難すれば生活に必要なものは全て用意されていると思っていますがそうではありません。

一般質問

では質問に入ります。災害発生時は自助、共助が大前提で、何の備えもなしに公助に頼るべきではありません。参考までに阪神淡路大震災の時、自助共助で助かった事例は全体の90パーセント以上、公助で助けられた人は数パーセントでした。その後の巨大災害では、公助で助けられた人の割合は約10パーセントになっていますが、それでも全体の10パーセント程度ですから、初期行動の自助と共助は大切です。

過去の巨大災害の実績から、災害関連死の比率が大きいことが課題になっています。特に自助、共助で対応できない医療や福祉の分野は公助が必要となります。例えば医療をとっても、口腔や精神面でのケアがありますし、孤立を防ぐことも課題です。

例えば毎日の歯磨きは誤嚥性肺炎を防止するために必要なことですし、災害関連死防止に資する行為となります。これらの医療知識は知らないことが多いので、避難訓練のメニューとして加えるべきだと思います。

巨大災害が発生した場合、避難所には医療専門家チームのDMAT、歯科支援チームのJDAT、福祉支援チームのDWAT、精神医療チームのDPAT、リハビリテーション支援チームのJRATが派遣されると思いますが、事前に県民の皆さんに医療や介護の知識があれば、本来は公助の役割を自助や共助での対応に変化させることが可能となります。

また、これまで災害現場に何度も出かけている経験者から「避難所では食べて、動いて、参加する」ことだと話がありました。栄養を摂る、簡単な運動する、話をすることで健康を維持し、孤立を防げるということです。

そこで質問です。避難訓練などで口腔ケアやエコノミークラス症候群を防ぐための知識付与や講習を実施することで一歩進んだ避難訓練になりますし、自助、共助でできる範囲を増やすことになると思いますが、福祉保健部長の見解をお聞かせください。

答弁者:福祉保健部長【健康推進課】

避難所では不規則な生活や栄養状態の悪化、口腔衛生状態の低下などが重なり、呼吸器感染症や誤嚥性肺炎を起こしやすくなるため、口腔ケアによる予防は大切です。

近年、被災時における口腔ケアの重要性が認知され、非常用持ち出し袋に液体ハミガキや歯ブラシ等を入れることも推奨されています。

県では、平時からの口腔ケアとともに災害時の口腔ケアの重要性について、「出張!県政おはなし講座」等の機会を活用し、地域住民に啓発を行うほか、一般社団法人和歌山県歯科衛生士会が防災の日に合わせて口腔ケアにかかる啓発活動を実施しています。

また、避難所や車中泊などで狭い空間に長時間座り続けると、足の静脈にできた血栓が血液中を流れて肺に詰まり、肺塞栓などを誘発する、いわゆる「エコノミークラス症候群」になる恐れがあるため、定期的に体を動かし、十分に水分をとることが重要であり、周囲からの働きかけも必要です。

県としては、避難所における口腔ケアやエコノミークラス症候群の予防の重要性について、広く県民に知ってもらえるよう、県や市町村の防災担当部局とも連携し、様々な機会を捉え、啓発に取り組んでまいります。

(まとめ)

半島災害への対応として、和歌山県に「災害防災士」の養成拠点ができることは、県民の安心につながります。私たちの知らないところで半島地震に備えてくれている姿を、県民の皆さんに分かっていただけたと思います。

また事前に避難訓練の場で医療や福祉の講習を受け、知識を得ておくことで、基礎的なことは自分たちで対応できるようになります。公助で担うべきところを自助と共助の役割に変えることができると思います。

今回、テーマの関係から難しい用語も出てきましたが、極力、分かりやすく伝えられることができるよう努めました。これで一般質問を終ります。ご清聴ありがとうございました。