3.観光産業について
続いては観光産業についてです。和歌山県の観光について、旅行事業者やホテル事業者などから話を伺いました。良い話とそうでない両方の見方がありますが、長所は伸ばし、良くないところは改善することが和歌山県観光につながると思うので、以下に触れます。
最初はホテル事業者から聴いた和歌山県の夕日の話です。
今年、家族で和歌山県を訪れ和歌山マリーナシティホテルに宿泊したのですが、ここから眺める夕日は最高で、家族全員が感動しました。中でも子どもが「夕日がきれい」と言って、ずっと見ていたので「子どもの心も震わせる和歌山県の夕日と海は凄い」と思いました。私も仕事柄、世界のリゾート地を訪ねていますが、和歌山県の海に沈む夕日は世界一だと思います。
マリーナシティホテルから夕陽をずっと見ていましたが、和歌山県はこのきれいな夕日を観光資源として売り出すべきです。和歌山県の皆さんは、毎日、見る夕日なので当たり前になっていると思いますが、本当に凄い夕日ですから外国にアピールすれば、たくさんの観光客が訪れることになります。
ところで世界のリゾート地で共通していることがあります。それは陸地の西に位置していること、つまり夕日が海に沈む光景を見ることができることがリゾート地なのです。
例えば沖縄県のリゾート地は西側に多く存在していますし、カリフォルニアでは半島の西側がリゾート地になっているように、リゾート地の多くに共通しているのが夕日なのです。
和歌山県は西に海があるので、多くの市町で海に沈む夕日を見ることができます。しかも和歌山県の夕日は島影や山影などと混ざり合い、ずっと見ていられる光景です。参考までに東側海岸で見ることができるのは朝日なのですが、これはリゾート資源になりにくいそうです。
ただ外国人が好む高級ホテルが海沿いにないことや、食材が豊富なのに食べたい料理の選択肢が少ないという課題があります。都内のホテルの宿泊費や食費はインバウンド観光の影響で軒並み高くなっています。しかし和歌山県で外国人から高い宿泊費を頂ける高級ホテルはないことが観光産業にとっての欠点です、という意見です。
続いて外国のサービス事業者の話です。
外国人が日本で求めているものにフルーツがあります。おいしいフルーツが食べられる和歌山県は、インバウンド観光客に来てもらえるアドバンテージがあります。
日本で和歌山県に対抗できるのは福岡県ぐらいだと思います。観光には、おいしいものが食べられて、買い物ができて楽しい時間を過ごせることが大事なので、フルーツを始め新鮮な食材が豊富な和歌山県は、充実した時間を提供できるリゾート県だと思います。
和歌山県に必要なものは、人の動きと産品に価値を持たせて流通させることです。
人が動くと利益が生まれますが、デジタル社会では利益を生む方法は大きく変わっています。従来は人の交流があって取引につながり利益を得られるしくみでしたが、現在はインターネットを介在しての取引や流通が主流なので、人を介さずにデジタルツールで利益を得られるしくみになっていて、人と人との交流が割愛されている分野が多くなっています。
ところがデジタルに置き換えられないのがサービス産業です。高いサービスレベルによって楽しい時間や豊かな時間が得られますが、そんなサービスは人が提供してくれるもので、デジタルで代替できないものです。
和歌山県には観光客が求める食材があり、ここに娯楽、エンターテイメントを提供できるしくみを創ることができれば観光産業につながります。
但し、そのためには現状で良いという意識からの脱却と、変わることを受け入れる県民性が必要となります。まちは社会の変化に対応していくことで発展していくものです。
次は三重県の友人から聞いた観光ゴールデンルートの話です。
現在、インバウンド観光で注目を集めているのが「金沢、岐阜のゴールデンルート」です。これは東京から入国したインバウンド観光客は上越新幹線で金沢市に入り、そこから岐阜県の飛騨高山と白川郷に向かうルートです。そこから名古屋市に抜けて東京に戻り、羽田空港から帰国するか、大阪市に抜けて関西空港から帰国するルートが、ここで言うゴールデンルートです。従来の都内観光から富士山、京都、大阪の東海道ゴールデンルートと共に観光客で賑わっているようです。
日本の文化と伝統を感じられる世界遺産の白川郷や飛騨高山は外国人に人気があるのは理解できます。しかも東京から新幹線と高速道路を利用することで金沢市と岐阜県までの周遊は利便性が良くなり、観光ルートに適した地域に変貌を遂げています。
友人は「紀伊半島一周高速道が完成し、熊野白浜リゾート空港を利用すれば、このゴールデンルートに勝てるポテンシャルがある」と話してくれました。
和歌山県には熊野三山と、世界で初めて川自体が世界遺産に登録された熊野川。そして熊野古道とロケット発射場のある串本町と那智勝浦町。入国と出国は熊野白浜リゾート空港を利用できますし、熊野白浜リゾート空港から入国し、紀南を周遊した後は和歌山市に滞在してもらい、関西空港から出国するルートもゴールデンルートになります。
和歌山県の観光の課題である観光地が点在していることによる移動時間の問題も、紀伊半島一周高速道路が完成することで解決に向かいます。和歌山県の世界遺産と温泉、国際空港、おいしいフルーツや豊富な食材がありますから、優れた観光ゴールデンルートに仕上げることができると思います。
最後は旅行事業者からの話です。これは僕にとっても厳しい話でしたが、厳しい意見も観光産業に必要だと思うのでここで紹介します。
- 和歌山市の観光資源はインバウンド観光客を呼び込めるだけの力がないとの評価です。関西空港駅で外国人観光客にアンケートをとったところ、99パーセントが京阪神に行くと回答し、1パーセントが和歌山県に行くと答えたそうです。その1パーセントの観光客も積極的に「和歌山県に行く」というのではなくて、「ホテルが取れなかったから和歌山市に行く」とのことでした。
これは鉄道利用客へのアンケートのため、アクセスが良くない鉄道で和歌山県に来る観光客は少ないことは理解しているものの、少し残念な数字です。 - 和歌山市で観光訪問地は和歌山電鐵貴志川線の貴志駅のたま駅長が一位、続いて和歌山城で他は少ないということです。
- 令和6年12月の南海電鉄のダイヤ改正で、難波と和歌山市を結ぶ急行の本数が減少しています。代わって難波と関西空港を結ぶ急行が増発となり、南海電鉄がインバウンドに力を入れていることが分かります。
これではますます和歌山市にインバウンド観光客が来なくなります。ダイヤ改正で利便性が高まるように和歌山市の力を高める必要があります。 - 旅行商品として和歌山市観光だけの商品はほとんどありません。高野山や熊野古道、白浜温泉や那智勝浦温泉と組み合わせており、和歌山市単体では観光商品になっていません。
- 観光施設は進化させなければお客さんは来てくれませんし、リピート性もありません。ユニバーサルスタジオが人気なのは毎年のように新しい施設を新設しているからです。どんなテーマパークでも進化させる必要がありますが、和歌山マリーナシティの設備は更新されていないので、進化していないテーマパークに人を呼びこむことはできません。
- ベイエリアは観光地になり得る場所です。和歌山市のベイエリアには何がありますか。どんな可能性があるのか考えるべきです。大阪だとユニバーサルシスタジオ、海遊館、「大阪・関西万博」の開催、大阪IRの開設もあり、将来とも人を呼び込める要素かあります。
- インバウント観光客が求めるものは主にグルメと美容です。和歌山市に行きたくなるグルメと美容のお店が必要です。ここに先進医療も入るかもしれません。
以上のことは、インバウンド観光客を呼び込むだけの力に欠けているとの認識を持ち、インバウンド観光を考える必要性を伝えてくれています。グルメなお店、高級レストラン、美容と健康、先進医療、高級ホテルとエンターテイメント、スポーツ施設などを創り上げる必要があります。核となる観光拠点があって、現在ある和歌山城やたま駅長、紀三井寺などが観光に生かせるという構図です。
人が創り上げた壮大なものには価値があります。例えばハワイのワイキキビーチは人工の砂浜ですが、世界が認める観光資源になっています。今から将来を見据えて、和歌山県としてインバウンド観光客に来てもらえるだけの観光資源を創り上げることが必要です。
和歌山県の夕日やフルーツなどの食材は優れた観光資源であり、インバウンド観光に生かせると思います。
これらの見解も踏まえて、令和7年度の戦略的な観光プロモーションの展開につなげていくべきだと思いますが、地域振興部長の答弁をお願いいたします。
議員御指摘のとおり、和歌山県内には、「夕日」を望める絶景スポットや、生まぐろ、みかん、醤油をはじめとした食文化など豊富な観光資源があり、これらを活用した誘客プロモーションに取り組むことが重要であると認識しております。
県では、現地観光プロモーターや職員派遣を通じ、各市場の特性を十分把握した上で、市場毎にその時求められる適切な情報提供を行うとともに、旅行会社やメディアへのセールスコールなどの誘客プロモーションに取り組んでおります。特にアジア市場と欧米豪市場では、観光に対するスタンスや求められるコンテンツの違いが大きいことから、常に各市場の嗜好や特性の把握に努めているところです。
また近年、個人旅行者が増加しているインバウンドの傾向を鑑み、個人旅行者が情報収集に利用する大手旅行メディアや観光WEBサイト、SNSを活用した情報発信にも注力しております。
今後とも引き続き、市場の動向や傾向を注視・分析しながら、各国市場の嗜好や特性に応じたインバウンドの誘客に積極的に取り組んでまいります。
「金沢、岐阜のゴールデンルート」に負けることのない潜在性を持つ和歌山県観光のゴールデンルートを構築し、国内外に発信すべきだと思います。そして京阪神の観光のついでではなく、和歌山県観光をメインとした誘客のためには、熊野白浜リゾート空港の国際チャーター便を就航させることも方法です。観光資源を生かした和歌山県観光ゴールデンルートを構築することについて、知事の答弁をお願いいたします。
お答え申し上げます。
今、片桐議員ご指摘をいただいたとおりでありまして、ゴールデンルートという名前を使うかどうかは別にしまして、県内の周遊ルートを構築いたしますと、当然、訪問者の満足度が高まりますので、滞在日数が増える、そうすると旅行の消費額も増えるということで、大変重要な施策だと考えております。
それで、紀伊半島の周遊ルートにつきましては、紀南地方にどれだけお客様が送れるかということであります。アジアにおいてはですね、そういう周遊のルートについてはある程度認知をされておりまして、商品造成も進んでおります。従いまして、その魅力の紹介や利用の促進に向けた取組みを進めているところであります。一方で、ヨーロッパあるいはアメリカ、オーストラリアということでありますと、高野山とか熊野古道とかピンポイントの認知度は高まっているんですけれども、ゴールデンルートというような形ではですね、まだまだ認知度が低いわけでありますので、奈良県、三重県と組みましてですね、紀南の方のブランド化、あるいは商品造成に向けた取組みですね、これは実は観光庁の予算を使わせていただきながら、今、取り組んでいるところでございます。
それから、今、これも議員ご指摘のとおりでございまして、紀伊半島のど真ん中に位置します熊野白浜リゾート空港を活用するということで、魅力的な県内の周遊ルート、ゴールデンルートを構築できないか、今いろいろ検討を進めております。
実際、今年2月と5月なんですけれども、韓国からのチャーター便をつくりました。ここで3泊4日の周遊ツアーを造成しまして販売しましたところ、大変韓国のお客様に喜んでいただきました。これもこれから一つの目玉になるのではないかと考えております。
今後とも旅行者の求める周遊ルート、ゴールデンルートの構築、あるいは旅行会社への商品造成の働きかけをはじめとします戦略的な誘客のプロモーションに取り組みまして、インバウンドの誘客に向けて前へ進んでいきたいと思いますので、ご指導よろしくお願い申し上げます。
国内観光事業者の中には、和歌山県が観光について厳しい意見もあります。しかしそれは観光資源が劣っているものではなく、生かせていないだけだという愛情のある指摘なので、既存の観光資源を生かすためのリゾート施設や民間投資を求める必要があります。
今後、高級ホテル等のリゾート産業における大型民間投資について、どう取り組むのでしょうか。知事の答弁をお願いいたします。
お答え申し上げます。これも片桐議員の御質問の中に出てまいりましたけれども、リゾート産業の核となる高級宿泊施設が和歌山の場合は致命的に少のうございますので、やはり、インバウンドの富裕層、高付加価値旅行者というネーミングがありますが、何のことだか分かりませんので、私は富裕層という言葉を使わせていただきたいと思いますけども、そういう富裕層の旺盛な旅行消費を通じまして、観光消費額を大きく押し上げることが可能になります。また、その結果、飲食や和歌山の農林水産業などですね、多様な産業にも経済効果が波及しますので、地域全体が活性化します。
なんとしても、県としては高級宿泊施設を立地させたいということで、これはもう県の職員が、一生懸命に誘致に努力をしていただいているところであります。
そういうことで、まさに「紀伊山地の霊場と参詣道」のような世界に発信できる豊かな観光資源がありますものですから、そういうものを見に来る富裕層に向けた高級な宿泊施設を造っていきたいと考えております。
これも、県だけではなくて、地元の市町村あるいは関係の機関と連携して、誘致活動を進め、また、海外も含めた国内外の投資家の皆さまが、かなり関心を持っていただいておりますので、さらにホテル用地、どんなところがいいのか、調査をし、また新たに発掘などもしていきたいと思いますので、積極的に取り組んでいくことをお約束申し上げたいと思います。
答弁をいただき蛇足になますが、外国からのチャーター便や定期便が就航した場合、帰りの便の乗客人数が必要となります。和歌山県から熊野白浜リゾート空港を使って当該国に行く人と共に大阪や関西圏からの利用客も増やす必要があります。そのためにも和歌山県ゴールデンルートを確立し、国内の観光でも来てもらえるようにすべきだと思います。