5.避難所の問題について
巨大地震や津波などで被災した場合、防災計画通りにいかないことも多いのですが、能登半島地震で被災された皆さんの支援のため、現地を訪れた皆さんから実情を聞かせてもらうと、特に避難所運営の取り扱いを見直す必要があると感じています。
今回の避難所生活で大事なことは「TKB」との指摘があります。災害関連死を防ぐためにも「TKB」が大事だということです。
ところが日本の避難所は長期の生活ができる環境にはありません。トイレが汚い、栄養価のある食料がない、ベッドがないので感染症が広がりやすいなど、欧米の先進国と比較として災害への備えが遅れているようです。
多くの場合、避難所は学校の体育館が指定されているのですが、生活する環境に適しているとは言えません。体育館には快適なトイレ、温かい食事の提供、そして快適な睡眠がとれる環境にはなく、長期に避難生活する環境でもないと思います。
避難所のトイレの問題ですが、これは過去からの大災害で被災した場所の避難所の教訓で分かっていることですが、やはり対応が難しいと感じます。
トイレが汚いので避難している皆さんが使えない、使いたくない状況だと聴きました。そこで倒壊の危険性があるけれど自宅に戻ってトイレを使うなどの行動もあるようです。
さらにトイレも必要数が不足していることや、洋式トイレがない体育館も多いように思います。今回も、過去の巨大災害のときと同じトイレの問題に直面しているようです。
またベッドの問題ですが、能登半島地震の避難所の報道を見た時、体育の授業で使うマットを布団代わりにしている光景がありました。これでは心身ともに疲れが取れることはありません。
今回、能登半島地震の避難所の映像を観た人から多くの意見を聞いています。
- 避難所生活はプライバシー空間、時間がないので、数週間も耐えられないと思います。トイレやベッドも使い辛く、私には避難所生活は出来ないと思います。
- 体育館は生活する空間ではありません。体育館を避難所に指定しているから、と考えるのは時代遅れです。
- 体育館が避難所であれば避難したくないと思います。和歌山県では南海トラフの巨大地震の可能性が言われていますが、逃げたくないと思ってしまいます。
- 避難所生活に耐えられる自信がありません。まして数週間も体育館で生活することは無理です。
以上のような意見を聴いています。僕も今回の能登半島地震によって、避難所に関しての考え方が大きく変わりました。
数日程度は体育館を避難所として利用するのは良いと思いますが、その後はホテルや旅館を避難所として利用すべきだと思うようになりました。
日本の避難所は整備が遅れているだとか、避難所の考え方が遅れているなどの指摘があるように、飲料水や保存用食料、毛布などを備えておけば避難所として機能を有しているというのはあくまでベーシックな考え方です。
避難所で快適な生活空間を保つとまでは言いませんが、プライバシーが確保できる空間や、感染症予防につながる段ボールベッドや、体育館の換気など衛生面での配慮も必要です。
避難所として活用が可能な船舶やトレーラーの配置は可能な対策ですし、避難者に対応したトイレの必要数を確保し、清潔さを保つことは避難所として最低限必要な機能だと思います。
そこでストレスを軽減できる避難所のあり方や、二次避難所への早期移動も考えるべきです。市内外のホテルや旅館との被災した場合に避難所として活用するための提携を進めることも必要だと思います。これら観点とスフィア基準について考慮した避難所のあり方も考慮すべきです。
また、できるだけ数日以内に二次避難所に移動する体制を整えておくことが必要だと思います。市内外のホテルや旅館と災害発生時の避難所協定を結ぶことや、福祉避難所の協定を増やすことも必要です。和歌山県でも飲食店やコンビニと災害発生時に支援を求める協定を締結しているように、さらなる支援体制の拡大も課題です。
元消防署員の方から聞いたことですが、イタリアでは部屋と簡易ベッド、トイレをユニットとした大型トレーラーを州に備えており、被災地に派遣しているようです。また避難所では二日以内に簡易ベッドと冷暖房機、家族単位の部空間も用意することが基本だそうで、衛生面で配慮されたトイレとシャワーが完備されていると聞きました。
加えて周囲の州からはキッチンカーが派遣されて、巨大テントを設置、翌日から温かい食事を提供するそうです。先進国の取り組みを参考にして和歌山県の防災計画の見直しを図って欲しいと思います。
今回の能登半島地震での避難所生活での災害関連死やストレスが問題になっています。一次避難所での生活は「災害救助法」で7日間と設定されているように、それを超えるとストレスを感じ、心身ともにバランスが崩れるなどの問題が発生しています。
先に触れたTKBの問題と合わせてプライバシーの確保を図ることが、先進国の避難所のあり方だと聴くことがあります。災害が発生した時はまずは命を守るための避難行動ですが、避難所の「トイレが汚い」「温かい食事を提供して欲しい」「ベッドが少ない」など、避難所に指定されている学校の体育館は生活する環境に適していないと思います。
能登半島地震の支援活動を通じて、「TKB」プラス「プライバシー確保」の観点から避難所のあり方を見直すべきだと思いますが、知事の考えをお聞かせください。
お答え申し上げます。
これまでの片桐議員のご指摘につきましても、全く同感でございます。その上で、災害から助かった命をその後の避難生活で失わない、大変重要なことだと考えておりますが、そのために、避難所における良好な生活環境の確保は、とても重要であります。
能登半島地震の検証を踏まえ、避難所のあり方について和歌山県としてもしっかりと検討してまいります。
そして、議員にご指摘いただきました、避難所の環境改善に向けた取組として、具体的に「清潔で快適なトイレの設置」、それから「温かい食事の提供」、「雑魚寝ではなくてベッドでの就寝」、それから「プライバシーの確保」、これらについても、私も重要な要素であると考えております。
和歌山県では市町村に対しまして、避難所における良好な生活環境の確保に向けまして、必要な備蓄や資機材を充実させること、さらには個室の更衣室や授乳室を設けるなど、避難者のプライバシー確保に配慮するよう働きかけをしてまいっております。
ベッドにつきましても、簡易ベッドや段ボールベッドなど、各市町村において備蓄を進めていただいておりますけれども、県としては財政支援を行っております。
今後とも市町村に対し更なる備蓄を働きかけてまいります。
また、プライバシーの確保に資するパーティションを県で一括整備し、各市町村に配付いたしました。
さらに、市町村で整備する場合には、その費用に対して財政支援を行っております。
トイレと食事につきましては、簡易トイレや非常食の備蓄は進んでおりますけれども、避難生活のストレスを緩和するための「清潔で快適なトイレの設置」や「温かい食事の提供」は、これは今後の課題として重く受け止めております。
従いまして、来年度の当初予算案でご提示させていただいております、「トイレトレーラー」、それから「防災コンテナ」、この予算を計上しておりますので、ぜひお認めをいただきたいと思います。
今後、県と市町村の役割分担や、平常時と災害時の運用方法などを踏まえ、トイレや食事など避難所の環境改善に向けた施策に取り組んでまいります。
輪島市に支援物資を運んでくれた友人の話を先日聞きましたが、とても感動しました。和歌山市を夜に出発して夜通し走り、輪島市まで残り7キロメートルぐらいの道の駅で宿泊しました。もちろん宿泊は車中です。
翌朝、起きたところ、そこは自衛隊の支援の拠点だったようで、たくさんのテントが張られていました。またシャワートレーラーを設置していたので、隔日に男性、女性がシャワーを利用するために避難所から避難している皆さんに来てもらうために往復をしているようした。その後、支援物資を運ぶために体育館に向かうのですが、生活支援品を届けたときは凄く感謝してくれたそうです。
また帰り道、夜の運転の時は気づかなかったことですが、石川県の千里浜海岸の付近の砂浜に岩が隆起していて景色が変わっていたようです。避難所の現状や地形を変えてしまう巨大地震の凄さを感じて、今まで以上に巨大災害に備える必要があると思いました。
さて、和歌山市では市内のホテルや旅館を避難所として活用できるよう「災害協定締結事業所」の取り組みを進めているようです。災害関連死のリスクやストレスの伴う避難所生活から早い段階で県内外のホテル、旅館などへの二次避難など広域避難を検討すべきですし、災害時要配慮者の方々の二次避難のあり方に関しても考えるべきです。
以上の観点からの広域避難の有効性について、危機管理監にお尋ねいたします。
議員ご指摘のとおり、避難所での生活は、多大な心身負担を伴うものであることから、日常生活に近い環境である旅館、ホテル等への二次避難は、避難者の負担軽減を図る上での有効な選択肢であると考えています。
県では、紀伊半島大水害等の教訓を踏まえ、旅館、ホテル等での二次避難者の受け入れについて、協定を締結しております。
また、災害時要配慮者の避難生活の支援として、「市町村避難所運営マニュアル作成モデル」の中で、一般の居住エリアとは別に福祉スペースを設け、必要とする支援に配慮することや、開設した福祉避難所への避難についても示しているところです。
今後、能登半島地震の被害状況やその対応を検証し、災害時要配慮者の方を含めた広域避難の有効性について、検討してまいります。
今年1月に突然、和歌山市から「災害協定締結事業所」のスタッカーが届けられたホテルがあります。能登半島地震が発生したことから、過去に締結していたホテルなどに届けたと思います。この対応は良いことだと思います。
今回のような大規模災害が発生した時、地域の方々がリーダーを中心として主体的に避難所運営を担うことが必要です。県として避難所運営を始めとする地域防災活動の中核となる人材育成を行い、防災のすそ野を広げることが大事になってきます。
能登半島地震を踏まえ、地域防災活動を担う人材育成のための県の取り組みについて、危機管理監の考えをお聞かせください。
県では、地域の防災力向上をめざし、2005年度から、「紀の国防災人づくり塾」を開催し、自主防災組織など、地域の防災活動の中核を担う防災リーダーの育成に取り組んでいます。
また、地域住民が主体的に避難所運営を進めるにあたり、その中心となる人材育成が重要であるため、2014年度からの5年間で、全市町村において避難所運営リーダー養成講座を開催いたしました。2019年度からは、市町村が人材育成に取り組み、昨年6月時点で合わせて7千人を超える避難所運営リーダーを養成し、地域住民と市町村職員が協力して、避難所運営ができる体制づくりを進めております。
引き続き、地域の防災リーダーの育成に努めるとともに、避難所運営リーダーについては、能登半島地震における被災地支援で得た知見を養成講座に盛り込むなど、人材育成をしっかりと行い、地域防災力の更なる向上を図ってまいります。
(まとめ)
今回、「早ね、早起き、朝ごはん」や「医療的ケア時和支援するためのセンター」「大阪・関西万博」そして「JR和歌山駅の再整備」の問題を取り上げました。令和6年度以降に期待すべき政策なので、強く推進してくれることを期待しています。また避難所の問題は県民の皆さんの安心安全につながることなので、県政としてしっかりと災害に備えておくことをお願いして一般質問を終ります。ご清聴、ありがとうございました。