2.県内企業の人材確保について
東京工業倶楽部や交詢社で講義をした時ですが、参加してくれた経済人からたくさんの質問がありました。しかもこれまでなかった質問なので対応に苦慮しました。例えば「陸奥宗光が幽閉されていた時に何を思っていたのですか。幽閉されていた時に考えていたことが蹇蹇録にどう結びついているのですか」だとか「陸奥宗光はイギリスに派遣された経験がありますが、欧米にわたった経験が新政府の中でどのように生かされたのでしょうか」といった質問です。
これまで読んで本や議論の中から回答をしたのですが、勿論、推測を交えて答えるわけですが、正解なきことに答えるためには、偉人の志や行動を学ぶことで、何を考えたかを推測する以外にないと思います。和歌山県に歴史好きの人や経済人が来られた時は、知識を仕入れて丁寧にお迎えできるようにしたいと考えています。
次に「県内企業の人材確保について」の質問に移ります。
地元企業を訪ねて、地元での仕事と人材確保などについて意見交換を行ったところ、益々、厳しい経営環境であることが分かりました。
- 新卒者や若い人を採用したいと思っていますが、募集をかけても全く集まりません。若い人は一度、県外に進学してしまうと地元に戻って来ないのが現実です。
このまま県外に進学した若い人が戻ってくれないと、和歌山県はさらに疲弊していくと思います。若い人が地元で働いてくれないと、和歌山県の将来に不安に感じます。
若い人を採用しようと考えていますが、今の人たちが重視しているのは、賃金よりも決まった休日と労働条件に変わっています。週休二日は絶対要件になっていますし、時間外の仕事はしたくないようです。週休二日と定時で仕事が終わることが希望なので、雇用する側としては採用が厳しいと思っています。
このことは2024年問題とリンクしているので、会社として対応を考えているところですが、週休二日と勤務時間の制約がでてくるので、仕事量は同じだとしても新規に人を増やさなければならないと思っています。
その場合、人件費が増えるので請け負う仕事の金額も増えることになり競争力の問題が発生しますから、社会として2024年問題で発生するコスト増を認めるように仕向けて欲しいと思います。 - 仕事を公募しても若い人が集まらないので、シルバー世代の方に働いてもらっています。定年などで一旦、仕事をリタイアした人は真面目で熱心であり、期待を上回る戦力になってくれているので、とても有り難いと思っています。
企業では若い人を雇用する代わりに、高齢者雇用をせざるを得ない現実があります。高齢者の社会参加と生きがいの観点から、この地域の現実は肯定すべきことだと思っていますが、地域の将来を考えると喜んでばかりいられないと思います。
若い人に地元に戻って来てもらえるしかけや、雇用創出を和歌山県に期待していますが、これは私の会社に来て欲しいという願いではなくて、地元企業に就職してくれないことには経済や人材確保などで相乗効果が生まれないことからの意見です。
社会は自分の会社だけが発展することはありませんから、どの業種であっても若い人が戻って仕事をしてくれることが、和歌山県全体の発展につながると思います。
また和歌山県には福祉関係の学校や仕事はあるのですが、情報通信系の企業や仕事は少ないのです。若い人が望んでいるのは情報通信系の仕事です。この分野の企業や学校があれば若い人は地元に留まってくれる、または地元に戻ってくれると思うのです。
県外に進学した人たちは、就職で地元に戻る場合は情報通信系の仕事に就くことを希望している人が多いようなので、この分野の企業を誘致することや、技術を学べる専門学校などを誘致することも必要だと考えます。
情報通信系の会社を誘致することで雇用が増えてくれたら、それに付随して周辺産業の会社も増えていきますから、地域経済と人材確保にも好影響を与えてくれると思います。
県政においては若い人材が戻って来てくれるよう、情報通信系の企業誘致とこれらの人材育成のための学校の誘致などか必要と思います。
以上の意見を基に質問いたします。
現在、雇用環境は売り手市場であることや、若い人の仕事に対する価値が変化しているため、県内事業者にとって新卒者の採用は難しい環境にあるようです。若い人材が戻ってくれるための施策について、商工観光労働部長の答弁をお願いいたします。
県内企業における若手人材の確保が難しい要因は、若年労働力人口の減少に加え、議員ご指摘のとおり、近年、若年層の希望する労働条件が多様化し、企業側とのミスマッチが生じているためと認識してございます。
このことを踏まえ、県では、県内企業に対し、セミナーの開催などあらゆる機会を通じ、多様な働き方ができる社内環境整備や従業員の定着、採用力の向上が図られるよう取り組んでいるところです。
一方、若年者の就業に向けた取組として、高校生・県内外在住の大学生に対し、ホームページやSNS、就職ガイドブックにより、県内企業の就職関連情報を提供するとともに、企業の魅力や県内で働くメリットなども掲載し、県内企業への就職に関心を持ってもらうよう働きかけています。
また、第2新卒者やUターン希望者等を含む若年層に対しては、県が設置する「わかやま就職支援センター」において、就職関連情報の提供はもちろんのこと、個別相談への対応や再就職に向けたセミナーの開催を通じ、県内企業への就職が円滑に進むよう取り組んでいます。
さらに、学生や一般求職者を対象とした合同企業説明会の開催など、企業と学生のマッチングの機会を設け、切れ目のない支援を行っております。
引き続き、学校、企業等と連携・協力し、これからの和歌山の産業を担う若手人材の確保・定着に向け、取り組んでまいります。
今、部長答弁を聞いて思ったことがあります。渋谷のAIとITエンジニアの友人が和歌山市に事務所をイ移転して仕事をしてくれています。和歌山市に来て良かったことは家賃が格段に安くなったことです。仕事は首都圏の企業から受けているので単価は変わらないので利益が増えていることになります。
和歌山市に来ていますが、地元の仕事は受けていません。理由は二つあり、一つは東京の企業の仕事を請け負う方が仕事の規模が大きいこと。一つは地元の仕事を請けてしまうとクラウディングアウト、つまり地元の仕事を奪わないようにしています。
県内で数百万円のプログラムの仕事を伝えたことがありますが、数千万円単位の仕事でなければ受けませんと話してくれました。逆に首都圏の企業から依頼のあった仕事を地元に振っていますから、情報系の事業者が来てくれると効果があると思っています。
和歌山県では情報通信系の企業が少ないように思います。情報通信系企業は首都圏に集中していることから、エンジニアは首都圏で就職することが多いようです。
和歌山県の情報通信系企業誘致の取り組み、および情報通信系人材を確保するための取り組みについて、商工観光労働部長の答弁をお願いいたします。
IT企業誘致については、テレワークが急速に進んだことで、場所を選ばない働き方が企業・個人で広く認識され、優秀な人材を求め、IT企業の地方進出の意欲が高まっていると実感してございます。
本県ではこの動きをチャンスと捉え、首都圏等からのアクセスの良さなどの「ビジネス環境の強み」と「安全で快適な生活環境の良さ」を「New Work×Life Style」として企業に提案し積極的な企業誘致に取り組んでいるところです。
その結果、現在、和歌山市や田辺市、白浜町に45社が立地しています。
本県では進出企業の人材確保のため、教育機関とのマッチングも積極的に行っており、意見交換の場を設けるほか、特に県外に進学した情報系の学生にUターンで戻って頂けるよう、IT企業研究オンラインセミナーを開催し、本県で活躍するIT企業を知ってもらう機会を提供しているところです。
11月27日には、IT人材育成と県内企業のIT人材確保を支援し、情報産業の活性化を図ることを目的として、フランス発のエンジニア養成機関「42」の東京校を運営している一般社団法人42Tokyoと連携協定を締結しました。
IT企業の進出は、将来を担う若者の雇用の受け皿になると共に、県内でのDXの推進や地域活性化にも大きな役割を果たすものと期待しておりまして、企業が求める人材育成や人材確保の支援を行い、全力でIT企業の誘致に取り組んでまいります。