2.公共交通について
和歌山市のつつじが丘にある高齢者のご家庭を訪ねた時のことです。
この方は令和3年の誕生日に75歳を迎えたので、運転免許証を返納したのです。度々、高齢者の事故が起きていることや、「高齢者の運転は危険だから返納することか望ましい」と和歌山県からアドバイスをもらったことから、返納する気持ちになったということです。
和歌山県の高齢者への運転免許証返納の取り組みが効果を見せていることは良いことだと思いますが、返納を促進するだけでは施策としては足りないと思います。
この方は、当初、車がなくても生活に不便さはないと思っていたのですが、返納して直ぐに「まだ元気なので、返納しなければ良かった」と思ったそうです。
「車がないと生活に支障があります。もっと返納について考えればよかった」と話してくれました。
自宅から、路線バスを利用してスーパーまで買い物に行った時のことです。出掛ける時はバスの発車時刻が分かるので、その時刻に合わせてバス停に行くので不便さは感じないのですが、問題は買い物の帰り道にありました。
道路事情によってバスの出発時刻がずれることがあるため、出発時刻よりも余裕をもってバス停に行く必要があります。バスの運行本数は少ないので、乗り遅れると相当な時間を、バス停で待つことになります。
さらに問題があります。それは買い物の帰り道なので、たくさん買い物袋を持っていることです。バス停には椅子も荷物の置き場もありませんから、持ったままの状態でバス停に立つことになります。買い物袋を持ちながらバスを待つことは「相当、辛い」ということです。
加えて夏と冬の季節に、バス亭でバスを待つ時間の問題です。
「夏は暑くてしんどくてたまらないし、冬は寒くて待っていられない」と話してくれました。また雨の日は買い物袋を持ちながら、傘をさしてバス停で待つことになります。これも高齢者にとっては「とても辛い」状況です。
高齢者に運転免許証を返納するように指導するなら、公共交通機関、特に路線バスの運行を考えるべきではないだろうか。運転免許証を返納した高齢者の視点で路線バスを考えると、改善すべき課題があるように思います。
和歌山市の路線バスは和歌山バスが運行しているので、利用者数や採算性などを考えると、高齢者が求めるような路線バスの運行本数の増便と「バスまち環境」の改善に向けた投資は難しいと思われますが、高齢社会における路線バスの運行や「バスまち環境」の整備は、高齢者と言うよりも、高齢社会における暮らしを維持する観点から、行政の支援が必要だと思います。
高齢者が運転免許証を返納することで外出機会が減少すれば、人との交流機会が減ることになり、県が推進している健康寿命にも影響があると思われますし、できるだけ人と会うこと、話をすること、外出機会を持つことが健康でいられ、高齢時代の生活を充実させることになるので、路線バスに係る整備は喫緊の課題だと考えます。
この方は「民間の投資に係る問題であり、交通政策として和歌山市全体のバス運行のあり方を考えることになるので、時間を要することは理解しているが、高齢世帯の生活のためお願いします」という意見です。
これはつつじが丘だけの課題ではなくて、これまで同様の話を聞いている地域もあり、市全体の課題でもあります。一部の地域の課題ではないことから、県として公共交通のあり方を考えるべきだと思うのです。
和歌山市では公共交通が少ないので、高齢者が運転免許証を返納すればこれまでの生活に支障か生じることになります。時間的制約を考えることなく外出していた生活がなくなるからです。
そんな路線バス環境なので、対象者に「運転免許証を返納して下さい」と呼び掛けるのと、路線バスなどの公共交通の利便性向上とセットにすべきだと思います。
そこで路線バスの状況はどうなのでしょうか。利便性向上について県はどのように取り組んでいるのか。地域振興監に質問いたします。
路線バスは、現在、県内で11のバス事業者が、187の系統を運行しており、高齢者や学生、運転免許をお持ちでない方などの貴重な移動手段として、非常に重要な役割を担っていると認識しております。
一方、人口減少や新型コロナウイルス感染症の影響により、路線バスの利用者が大きく減少したことから、バス事業者の収益が悪化し、さらに、運転手不足も相まって、路線の維持が困難な状況となっております。
県といたしましては、バス路線を維持するため、国や市町村と連携し、利便性の向上を図るためのキャッシュレスやバス・ロケーションシステムの導入を促進するとともに、効率的な運行を行うデマンド交通の導入などを支援しているところです。
バスや運送事業者から2024年問題の事は聞いています。雇用、労働力確保の問題に対応しているところですが、現在のところ2024年には労働力不足が懸念されています。
路線バスの運行に支障が生じないことを願っているところです。
さて和歌山市内の路線バスのバス停は、停留所の表示があるだけのところが多く、和歌山市役所前や県庁前など以外では、屋根や風よけ、およびベンチ待合用の椅子のない停留所が大半です。
またせっかく路線バス情報を見える化している「バス・ロケーションシステム」を導入していても、利用者が知らないケースがあるので周知することも必要だと思います。
路線バスが市民の皆さんにとって持続可能な公共交通であり続けるためには、高齢者を始め多くの人にとって利用しやすい路線バスの利用環境を整備することが重要です。この「バスを待つ」ための環境、いわゆる「バスまち環境」の整備は高齢社会に必要なものだと考えます。
バス停の待合環境整備について、地域振興監に質問いたします。
議員ご指摘のバス停の待合環境については、路線バスの利便性向上のために大変重要であると認識しており、県が昨年末に実施した県民アンケートにおいても、バス停の風よけやベンチの設置を求める声が多く寄せられているところです。
特に、鉄道や他のバス路線との結節点など、ニーズの高いバス停の環境整備を進めることが重要であることから、バス事業者や市町村に対して、国庫補助金の活用なども含め、積極的に働きかけてまいります。
これまで公共交通の問題は「県ではなく市町の問題なので、県として支援するだと市町から要望があがってくれば予算措置をする」などの回答が多かったと思います。今回、赤坂地域振興監が公共交通を担ってくれるので、2024年問題に対応するようスケジュール感をもって対応してくれることを期待しています。
続いて、路線バスの運行がない地域でのコミュニティバス運行について質問いたします。
高齢化が進んでいる地域では、運転免許証の返納などで路線バスや公共交通のない地域では外出が困難になっています。そのため市町ではコミュニティバスの運行を試していると思いますが、本格的に実現して欲しいと思います。
コミュニティバスなので、乗車時は指定の場所からで良いのですが、買い物などに出掛けたときなどの帰りは買い物袋を持っているので、自宅付近など希望する場所で止まってくれることが望ましいと思います。
県内のコミュニティバスの状況や、高齢社会に対応したコミュニティバスの運行について、地域振興監にお尋ねいたします。
コミュニティバスは、県内22市町村で198の系統が運行されており、県民の買い物や通院などの重要な生活交通であるとともに、高齢者の外出機会の創出など、地域住民にとって貴重な移動手段であると認識しております。
コミュニティバスの運行にあたっては、事業者や利用者、学識経験者、国、県などの関係者が参加する各市町村の地域公共交通会議において、運行ルートやダイヤなどを決定することとされており、県といたしましても、デマンド交通の導入をはじめ、地域のニーズを踏まえた運行に向けて、積極的に助言を行っているところです。
さらに県では、地域交通の専門家派遣や、実証運行に要する経費の一部補助などの支援も行っており、今後とも地域に適した交通の確保に取り組んでまいります。