令和4年12月定例会一般質問 / 質問内容

1.県政16年を振り返って

一般質問

おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問を行います。


平成19年4月、初当選したときの知事は仁坂知事でした。そのため仁坂知事以前のことは分かりませんが、この16年、和歌山県政は着実に進展してきたと感じています。

知事は今年10月下旬に受けたインタビューで「思い残すことはありませんね。思いついたことは全部やった」と話したうえ「他策なかりしを信ぜんとする」と締めくくったと聞きました。これは「自分のやった政策がその時々の最善だったと信じている」と解釈できると思いますが、全てやり切ったと言えることは素晴らしいことだと思います。引用したのは、知事が就任以来、尊敬していると話している故郷の偉人、陸奥宗光伯「蹇蹇録」の最後にある三国干渉への対応についての言葉です。

他に「未練はあるが後悔はない」という言葉がありますが、仁坂知事の心境は「未練も後悔もない」というところでしょうか。僕もそんな仕事をやりたいと思います。


そこで知事と議論を交わした質疑を基に16年の県政を振り返りながら、仁坂知事への最後の質問をしたいと思います。

平成19年6月から令和4年6月までの間、知事と交わした全質疑、46回を読み返してみると「質疑を重ねてきた結果が積み重なって、県政を前進させてきた一員でいられたかな」と思いました。毎回、真摯に答えていただき、政策実現のために行動してくれた仁坂知事に感謝するばかりです。


さて、初登壇の平成19年6月には、「観光医療立県和歌山」を取り上げ、和歌山県は観光医療産業を目指すべきだと提言しました。

それ対して知事は「新たな観光形態として、『観光医療』の分野は期待できるものであり、議員ご指摘のように県立医科大学が全国に先駆け開設した『観光医学講座』の取り組みなども、その実現への一歩と受け止めているところです。本県観光のメニューに『観光医療』が加われば更なる観光の振興につながるものと考えるので、関心をもって育てていきたい」と答えてくれました。


一般質問

次に平成22年12月議会において「和歌山県教育委員会と宇宙航空研究開発機構宇宙教育センターと『宇宙教育活動に関する協定』の締結について」の質問を行いました。

この答弁は教育長でしたが、内容は「JAXAとの連携が始まり、宇宙に関する研修や講演会等を積極的に進めてまいりました。こうした中、JAXAのもつ教育力を生かし、本県の教育を一層充実させることを目的として協定を結ぶに至った次第です。

この協定により、今後様々な事業を通して、理数系教科のみならず、環境教育や外国語教育等、学習活動の充実を図り、児童・生徒の学習への興味・関心・意欲を高めるとともに、宇宙への夢をきっかけとして、子どもたちに広く科学への関心をもたせたい。

具体的には、教師のためのスペース・プログラムへの教員派遣、JAXA筑波宇宙センター職員と連携した授業実践等が実施できる見通しでありまして、今後JAXAとの協定が、市町村にも広がり、宇宙教育プログラムの活用が進むことを期待しています」と答えてもらっています。

この件は令和元年12月議会でも取り上げ、元JAXA理事の上野精一さんと築いてきた宇宙教育について質したところ知事は「上野精一さんのご研修とか、地元の方々の大変な協力とか、それによって培われてきた宇宙教育を更にもう一つの要素、強力な要素がここに加わるわけですので、子供たちにどんどん色々な情報を与えてもらう工夫をしていけば、和歌山全体が海もあり、宇宙もあるというような、他にない教育環境が出来上がってくると思います」と答弁をいただき、その後の宇宙教育が深化していったと思っています。知事の実行力によって、また多くの人が情熱を持って関わったことが、あの頃の未来である今日まで、具体的な形になって行く過程を見ることができました。


平成30年2月議会では「スケートボード練習場の整備について」質問を行いました。これは、2020年の東京オリンピックまでにスケードボード場を設置することを提言したものです。当時は今ほどスケートボードへの理解が乏しかった時代だったと思います。

しかし知事は「スケートボードは東京オリンピックの正式種目になったことにより、ますます関心が高まっており、今後、楽しむ人も増えると思われます。スポーツということのみならず、新しい若者文化の振興にもなると確信をいたします。そのような中、スケートボードを練習できる場所の確保は、県民のスポーツの振興とか賑わいの創出という観点から、非常に有意義であると考えております」と理解を示してくれたうえで、「県庁として、こういう新しい風には積極的に関与していきたいと思っております」と答弁をしていただきました。その後、和歌山市内にスケートボード練習場を設置していただき、現在は子ども達を中心に練習をしている光景が日常的になっています。


平成30年6月。「和歌山県の明治150年に関する取り組みについて」の質疑を交わしました。

ここでは「明治の日本外交展」を開催した外交史料館と連携展示を開催することを要望したところ、「和歌山県においても、外交史料に含まれる陸奥宗光の関連資料を紹介し、陸奥が明治期に果たした役割を県民に知っていただくことは大変重要だと考えています。

今後、外務省外交史料館と協議を行い、来年度以降の開催を検討する」と答えていただき、翌年、和歌山県として明治150年記念事業として「外交史料と近代日本のあゆみ」展を開催してくれました。

これは明治政府の最重要課題であった不平等条約を改正した陸奥宗光伯の足跡が実感できる素晴らしい企画展となり、故郷の歴史と偉人に対する尊敬と誇りを感じることがでるものでした。


その精神は現在も引き継がれ、今年5月13日から令和5年6月14日まで県立文書館では「外交史料と近代日本のあゆみ」のパネル展示展を開催しています。

「外交史料と近代日本のあゆみ」の精神を生かして「条約改正をめざして」、そして「最初の対等条約」として日墨修好通商条約調印書と批准書の写が展示されています。


令和元年9月の知事の答弁が未来志向で素晴らしいのでここでも引用いたします。

「今回開催する外交史料展は、まさにその郷土の大先輩である陸奥宗光が活躍した、日本外交史の中でもとても重要な時期の史料に触れられる機会なのでよく勉強して欲しいと思います。陸奥宗光は、明治政府が抱える、多分、最大の課題であった治外法権の撤廃や関税自主権の確立を実現し、外務大臣として日清戦争を我が国の利益を守るために成功裏に遂行し、その後起きた三国干渉については、彼我の戦力や国力を考えて、「これは今やれない」ということで受け入れた。そのような論理的にも素晴らしい外交をした人だと思います。数々の難局に立ち向かった陸奥の外交での活躍を知ってもらって、それらの業績を讃え、外務省内に唯一銅像が建立されていることの意味を受け止めて、そのような人物が自身と同じ和歌山出身であるということを実際の史料の中で子供達に体感して欲しい」。

知事が故郷の偉人を敬う気持ちが込められた言葉です。この精神が「外交史料と近代日本のあゆみ」展の継続につながっていると思っています。


同じく平成30年6月に「紀淡海峡ルートと四国新幹線の早期実現に向けた取り組みについて」の質疑を交わしました。

「紀淡海峡ルート、四国新幹線は、和歌山県のみならず関西の発展、日本の将来の発展の「要」となる重要なプロジェクトであるとともに、これが出来ると、東京一極集中からの脱却にもなるし、双極型国土構造の構築とか、地方回廊の整備とか、或いは国土強靱化とか全部に役に立つ不可欠なプロジェクトだと思うわけです。是非とも実現しなければいけない」と答えてくました。


そしてこの時、淡路島と四国の間の大鳴門橋が道路と共に、新幹線仕様になっていることを知り、課題は山積しているものの紀淡ルートも将来に実現可能性があると思いました。

知事が関係府県の知事に働きかけて「関空・紀淡・四国高速交通インフラ期成協議会」を立ち上げて活動をスタートさせてくれたのはこの時期からでした。


一般質問

令和2年9月には「わかやま記紀の旅について」ての質疑を交わしました。

歴史に彩られた和歌山県、特に神武東征の足跡が残る和歌山県で「記紀」を記すことは大事なことだと議論をしている中、日本書紀編纂1300年に合わせて発刊しているセンスが素晴らしいと質問の中で伝えました。

知事は「「古事記」や「日本書紀」の中では、建国神話や神武東征などが語られ、ご指摘のように、和歌山県内にも登場する舞台が数多くあります。

日本書紀編纂1300年を記念して、本県に記紀にゆかりのある場所がたくさんあることを、県民をはじめ多くの方に知ってもらって、実際に県内を巡っていただきたいと考えて「わかやま記紀の旅」を作成したところです。

「わかやま記紀の旅」では、「神武東征」について、のちの神武天皇が都探しのため、紀伊国において激戦を繰り広げ、さらに熊野から大和に向かい様々な試練を乗り越え、初代天皇に即位するまでのストーリーを掲載しています。

これらの神話と本県の関わりを「わかやま記紀の旅」を通じて知っていただくことによって、例えば自然崇拝の地である熊野が神話の時代から特別な地域であったことがわかるとか、あるいは、八咫烏とか大きな熊などの様々な神秘的なものが出てきて、この地域が尋常でないような特別な魅力を持った地域であることが印象付けられることになります。

今後も、まだまだ知られていない、地域で守り継がれている資産を掘り起こし、「わかやま記紀の旅」の充実を図りながら、その魅力を発信し、県民をはじめ多くの方々に県内を繰り返し巡っていただきたい」と答えてくれました。

早速、口碑である太刀ケ谷神社もホームページで掲載してくれたので、今後はさらに充実してくれることを期待しています。

参考までに「わかやま記紀の旅」は関西広域連合議会で堺市議会議員の水ノ上議員が、泉南市議会で添田議員が、それぞれ議場にこのパンフレットを持ちこみ「和歌山県が歴史を大事にしている県であり、その歴史を生かした観光の取り組みは素晴らしい」と取り上げてくれたこと。そして泉南地域から和歌山県を、歴史と人でつなぐきっかけとなったことを付け加えておきます。


令和4年に入った2月議会で「和歌山県の価値向上に向けた企業等への取り組みについて」の質疑を交わしました。

知事からは「和歌山県の価値を向上させるためには、なんといっても議員ご指摘のように、たくさん投資を和歌山に持ってこないといけません。「和歌山なんかにお金を出すもんか」と言っていた大銀行なんかが「しまった」と後で思うような、そんなふうにしてやるぞと思って頑張っています。そのために考えられる全ての領域であらゆる手段を講じ、取り組んでいかなければならないと思っていす。そして「新しい雇用を増やす方向の、すなわち競争力をつける投資を増やしていく取り組み、これに加えて県内の所得を向上させるためには、大企業からの富の分配が必要でありまして、取引条件を改善させることが大変重要であると思っています。今後も成長を促す投資に結び付くような政策を進めるとともに、取引条件の改善に向けた取り組みを通じて、成長と分配の好循環が生まれるように、全力で取り組んでまいりたい」と答えて、この課題への対応を継続してくれています。

以上、一般質問での主な質疑を振かえると、着実に和歌山県政が動いてきたことを実感できるものです。

質問1:今後の県政について

そこで知事に質問です。「近年の医療観光の取り組み」について、「宇宙教育への思い」について、「紀淡海峡ルートと四国新幹線」について、「和歌山県の価値を向上させること」について、および「わかやま記紀の旅について」の発行と「外交史料と近代日本のあゆみと故郷の偉人の顕彰」について。

以上、これらの県政の取り組みについて、および、これからの和歌山県政に係る知事の思いについてお答えください。

答弁者:知事【政策審議課】

たくさんの項目についていろいろご質問をいただきましたので、そういうこともあったな、というようなことを改めて思い出しまして、私自身感激をしております。

お答え申し上げます前にですね、陸奥宗光の「他策無かりしを信ぜんと欲す」という「蹇々録」にある言葉をご引用なさいましたけれども、あれをもうちょっとだけ言わせていただきますと、実はこれ「他策無かりし」とですね、「信ぜん」というのと、「欲す」というのと、三連発加わっている訳でございます。すなわち、他に策は無かったんだよ、というのと、無かったんだよと信じたいんだよ、というのと、それから信じたいと思うんだよねというのが、三つ付いておりまして、それで、これは陸奥宗光さんのような頭がとても良くて、それで行動力も素晴らしい人でもですね、いろいろやっぱり悩みながら、他に策は無かったかなと思いながらやってきたんだなというようなことをそこから思うわけでございまして、私なんかましてやでございますから、常に悩みながらいろんな仕事をして参りました。

お答えを申し上げますと、まず、医療観光の件でございます。これにつきましては、海外の傾向とか、海外の人の医療に関する気持ちとか、そういうことを私はたまたま立場上たくさん経験をして参りました。そこで言えることは、日本の医療に対する尊敬の気持ちがものすごい。いくらお金を出しても日本で医療を受けたい。こういう人がいっぱいいるなということでございましたので、これについては前向きに取り上げたいと思っていたわけであります。

ところが、意外と簡単ではございませんで、保健医療の日本の立派な体制を壊してしまわないかという懸念が医療界にはあるわけで、これもごもっともでありまして、県民の医療がおろそかになってはいけない。わたしはそれはそうしないように2つを分けてうまくやることは十分可能だと思ったから、提案をしたわけですが、反対の気持ちも分かりますので、これは粘り強くやっていかないといけないなと思いまして、医療関係者、観光事業者、学識経験者などからなる医療観光協議会というのを令和元年度に立ち上げまして、色々議論の上、まずは中国を対象としたウェルネスツーリズムのモニターツアー、実験でございます。

これをやってみるかと予定しておったのですが、ちょうどコロナになりまして中断をしているということでございます。

今後はコロナの影響を見極めながらも議論をしながら対応を検討していく必要があると考えております。

二番目は宇宙教育でございますが、これはやっぱり串本町に国内初の民間小型ロケット発射場の建設が決定したということで、大きく進展したと思います。

ロケットの打ち上げに向けて機運を高めていこうと思いまして、串本町で決定以来ですね、毎年、宇宙シンポジウムをかなり大きな規模で開催をしてまいりました。全国の人が見てくれています。そのシンポジウムに登壇いただきました、東京大学の中須賀真一先生や、スペースワン株式会社に今行っておられるんですが、元はJAXAの遠藤守最高顧問らと話をする中で、特に遠藤さんから、鹿児島県にはちょうどロケット発射場に近いところにものすごい学校を鹿児島県がつくったんだよというような話をお聞きしました。そこで、さっそく調査に行ってもらいましたところ、ちょっとそのものズバリだと違うなあと。これは要するに、スーパー受験校を県立でつくったというような感じなんでございます。それならば、宇宙という優れた題材を用いて、全国にはない新たな高校教育を串本の地で、他ならぬ串本の地で、実現していこうというふうに考えたわけでございます。

今年の7月に開催したシンポジウムにおいても、まだ、この宇宙のコースを本格的に受検していただく方はもうちょっと後なんですけど、現在いる高校の生徒さんたちが、もうすでに受付や誘導、司会進行、発表など、どんどん協力してくれているわけでございまして、特に発表は素晴らしくて、大変感激をいたしました。今後はこの高校を上手に滑り出させて、育てていかないといけないというふうに思っております。

あわせて、この高校に限らず、宇宙のことについて興味をもって、それで勉強しようという子供たちが和歌山でいっぱい出て、それで大学生になっても、まだ一生懸命研究しているというような、雰囲気をつくっていきたいなあというふうに思っておりまして、そのためには、スペースワンがあるわけですから、子供たちの教育ツアーをしたり、あるいは先ほどご指摘ありましたけれども、JAXAとの協力協定を土台にして、JAXAの方とかスペースワンの方などに来ていただいて特別講演をいっぱいやる、というようなことで、憧れが勉強の気力になるというような循環ができていけばいいなというふうに思っております。

ご指摘の順番から言うと外交史料展と故郷の偉人の顕彰ということになると思いますが、この「外交史料と近代日本のあゆみ」展は、明治期の外交史料等の実物を目にするということで、改めて、歴史の歩みと郷土の偉人の功績を再認識していただくことを意図して開催したものでございまして、和歌山県がこういう展覧会、特に陸奥宗光さんにフォーカスを当てていろいろ勉強しておられるということを聞いてくださったかと思いますが、外務省がとても協力をしてくれたわけでございます。

偉人の功績を知るということは、郷土への愛着や誇りへとつながるものでありますので、本県にゆかりのある偉人について、今後も様々な機会をとらえて顕彰を行い、これら偉人達の志を受け継いでいく中で、和歌山県政がさらに発展していくということを願っております。

また、和歌山のプレゼンスを高めるということでですね、この展覧会とは違いますが、ちょっとコロナで中断をしておりますけれども、明治大学でものすごい規模のですね、偉人シリーズのシンポジウムをやっております。これなんかも和歌山ここに有りというのを多くの人に知っていただくにはいいかなというふうに思っております。最近は二つの新しい動きがございまして、まずは我々全体がよく知らなきゃいけない、あるいは勉強しないといけないということを前提として、新しい動きでございますが、紀州学研究会を発足させようと言って、今、運動中であります。それをまたベースにしてですね、東京大学との連携協定を結ばせていただきました。こういう場で更に知の部分、知の領域というのを深めて、それを県民の行動を通じて県勢が発展していくということになると良いなと思っている次第でございます。

次は、紀淡海峡でございます。紀淡海峡構想はすごくいい話なんでございますが、実は一旦死んでいました。四国本州架橋の時代に乗り遅れたというのが原因でなかったかと思いますけれども、平成19年には調査を打ち切られ断念ということになりました。その時代の背景は、あまり風呂敷を広げすぎると危ないなと、紀伊半島一周の高速道路とか京奈和自動車道とか四車線化とか、すぐやらなきゃいけないものがたくさんあり、また、「コンクリートから人へ」の民主党政権の時代でございますから、自重しておりましたが、再びインフラ投資が軌道に乗ってきて、国土強靭化の時代になってまいりましたので、これは復活させてやるぞということで、従来にない要素も入れてプロジェクトを再構築しました。

これは第二国土軸。もう1つは四国新幹線がございます。

3つ目に関空の機能強化にこの四国新幹線をつなげばものすごく役に立つ。

4つ目は自動車で言えば、関西大環状道路や大阪湾環状道路の構想がある。その唯一のミッシングリンクがまさにここでございます。これが全部できたら関西も良くなるんでございますが、実は和歌山が中心に躍り出るんでございます。ということで、頑張ろうと思ったんですが、昔うまくいかなかった理由の1つは兵庫県との対立があるわけであります。紀淡を通るか、明石海峡を通るか、それは決まっておりませんでしたので、揉め事をやっているうちに見捨てられてしまったというところがありますので、そこで兵庫県知事に一生懸命説得をいたしまして、それで明石海峡はもう放棄すると、紀淡で頑張ってください、というふうに言ってくださったんで、ここで歴史的和解があったんですが、かなりちょっと遅れた和解ではあったかなというふうに思います。

そこで、関係府県の知事に働きかけまして、「関空・紀淡・四国高速交通インフラ期成協議会」を立ち上げまして、国への提案要望やシンポジウムの開催など機運醸成に取り組んでまいりました。シンポジウムなどは東京、大阪の堺、和歌山、徳島などで行いまして、だんだんとものすごく盛り上がりがあったと思います。

政界や官界でもこれは無視できないな、という感じは出てまいりましたが、一方、北陸新幹線を早く完成させなきゃいけないという観点から、有力政治家の方からは、やはり北陸新幹線を先にし、その後ということにいたしましょうという交通整理があったという状態でございます。ただ一方で、億単位の調査費がつきまして新幹線の技術的問題を研究してくれることに国でなっているわけでございます。今後、新知事に多いに期待したいというふうに思っております。

次は、わかやま記紀の旅でございます。これは、令和2年に日本書紀編纂1300年を記念し、「日本書紀」や「古事記」に綴られた建国神話、神武東征などにおいて、ゆかりのある舞台が県内にも数多くあることから、「わかやま歴史物語」という観光プロジェクトがあるのですが、この特別企画といたしまして、「わかやま記紀の旅 周遊スタンプラリー」という商品を出しました。多くの方に参加していただいたところでございます。

この分野はまだまだ人気のあるテーマであります。今後もさらに継承して頑張っていくべきだと考えております。ここで、同じテーマのもう1つのプロジェクトで、奈良県、島根県が中心になって、記紀シンポジウムと立派な研究について表彰するというプロジェクトをやってきたのですが、和歌山県もそれに飛び乗って一緒に参加してきました。島根県が若干消極的だそうなので、これは今、荒井奈良県知事に、奈良県と和歌山県とできれば三重県も入れて、紀伊半島だけでも絶対やりましょうよと言って、けしかけているところでございます。

こういうソフトはぜひ大事にしながら、観光につなげていきたいと思っております。

次は和歌山県の価値を向上させることについて、ということでございます。これは投資を呼び込むこと、というふうにその時に申し上げて、それについて主として申し上げたいと思います。

何が良いというような選り好みをしているようなものではございませんので、一生懸命努力をしてまいりました。

その結果、これはうまくいったなと思いますが、政府の資金を使ってパナソニックエナジー株式会社が和歌山工場で新型車載電池を量産するということを決めてくれました。それからバイオマス発電所もだんだんと、規模の大きいものも含めて立地してくれました。それからICT企業の誘致も、これはそんな巨大なものはないんですけど、有力な企業がどんどんとサテライトオフィスを開いてくれることになってきました。

それからENEOSがですね、製油機能を停止することを発表したのは大変な衝撃でございましたが、和歌山製油所を持続可能な航空燃料の製造に関する事業化調査の対象製油所に決定してくれました。これは将来性がものすごくある話なので、大いに期待できると思います。

IR誘致が実現できなかったことは、投資という点では残念でございましたが、新知事に大いに期待したいと思います。

ここで重要なことは、ただ誘致で一生懸命営業する、それから奨励金を出す、あるいは直接的なインフラを作る、それだけではなくてですね、投資のためには、住まい、あるいは医療、教育、環境、福祉、みんな関係するわけでありますけど、これを一生懸命やっていかないといけませんし、また、地域の成熟度、例えば知事が汚職で捕まったとかですね、とても障害になります。それからたかりが横行しているぞなんていうのも、拡がるとあっという間に企業が逃げてしまいますので、これは全員が心してやっていかないといけないと思います。

企業誘致の取組に加えてですね、県内企業が今、事業拡張のために投資を結構やってくれるようになっています。若い人もそうだし、それから、従来の老舗の和歌山企業も結構色々考えてくれて、新しい事業に投資をする、あるいは事業を拡張する、そういうことをやるようになってくれてまして、これは非常に良いんじゃないか。それから農業でもスマート農業がこれからでございますし、観光においては、ホテル誘致を色々やって、少し成功していることに加えてですね、前からのホテルも、少し前にございました耐震化の強化に併せて設備を新しくピカピカにしてくれたところもございまして、今後に期待したいと思います。

もう一つはご指摘のありましたように、県民の所得を上げるためには、大企業と県内下請企業との取引条件の適正化、これを熱心にやっていかないといけない。これはやっぱり相変わらず大問題であるし、また、円安とか資源高とか、そういう点で余計加速化しているところもございます。引き続き取り組んでいく必要があると思います。実はこれを推進して世の中をリードしてきたところは、わたくしの40年来の盟友でございます三村日商会頭と、知事会を代表して、そっちでは私ということになりましたが、それぞれ引退でございます。後は新知事や、あるいは新会頭、あるいは総理はじめ、全体のリーディングリーダーの方々に大いに期待したい、そんなふうに思っております。

一般質問

議場には卒業論文を作成中の大学生、プログラマーで東京から和歌山市に転宅してくれた人、知事のファンで仕事を休んで来てくれた人などが来てくれています。若い人にとって勉強になると思って議会に来てもらっています。今の知事の答弁を聞いて、16年の県政の動きを感じてくれたものと思います。

さて今朝、議会前に岡公園に立ち寄りました。岡公園には外国からが来たときにお客さんを案内していますが、地元の私達は10分か20分で公園を通り過ぎているのに対して、外国の方は1時間、2時間、見て回ります。陸奥宗光先生乃像、池、石碑など、ここにある由来など関心を持って尋ねてくれます。

人が作った全てのものには、その人の魂が込められていて、作るきっかけがあったはずです。作った人たちの物語は必ずあるはずですが、それが語られていないので物語は消えてしまっているのです。もったいないことです。物語として語られないことは、作った人の思いが失われることなのです。どうして語らないのだろう、何故、素通りしているのだろうと思います。地元にあるものを大切にしなければ物語は語り継がれないですよ。

そんな話を聞くことがありました。知事が話してくれたように、地元が地元の良さに気づいていない。そんな気がします。


さて、現役プロレスラーで今年10月にチャンピオンになったディラン・ジェイムスさんと懇談したときのことです。

ディランさんはニュージーランド出身、世界を転戦して試合をしていましたが、日本が気に入ったので活動の拠点を東京に移し8年間暮らしていました。

その間、日本各地を転戦して周り、断トツで素晴らしいと思ったのが和歌山県で、それなら「和歌山県に住もう」と思い、和歌山市で生活をして4年が経過しています。

彼は「和歌山県は最高です。日本中を回ったけれどこんな素晴らしい県は他にありません。山と海、自然、おいしい魚と野菜などの食材があるのは和歌山県だけです。「Mountain God、Sea God、Food God」、和歌山県の自然にはすべて神が宿っています。

このことは、これまで和歌山県を訪れてくれたビジネスパーソン達が同じような感想を言ってくれています。

「敢えて言うなら新潟県も良いのですが、ヒストリーがある和歌山県には敵いません。和歌山県は日本でナンバーワンの県です。ただ、和歌山県の人は自信がありません。No spiritsだと思います。和歌山県には人生を楽しむ全てありますから、もっと誇りと自信を持つべきです。グッドフーズ、グッドエナジー、グッドライフを受け取れるのが和歌山県です。だからWakayama go upと言いたいのです。自然が豊か、食べ物がおいしい、ヒストリーがある、可能性がある、そしてアメイジングな人生が過ごせる県は他にありません。和歌山県の人だけが、和歌山県が素晴らしい県であり将来の可能性を持っている県であることを知らないのです。そんなアメイジングな県で暮らしているのに「侍spirits」を持たないなんて、とてももったいないと思います。Life is amazingなので、それを感じられる和歌山県で暮らしていることは、毎日、ギフト、贈り物をもらっているようなものです。なのに「Weak、weak、weak、weak」と思っているばかりの生活をしているのではないですか。そんなことを思って毎日は良くならないですよ。人生は今を楽しむことで、明日ではないのです。私達は誰でも明日、この世にいないかも知れないのですよ。今、生きているのに自分の人生を疑うことはもったいないことです。それを分かっていないと思います。どうして疑うのですか、疑って心も体も縛られて楽しいですか。今の時間、今いる人との時間を楽しむことが人生の全てです。私には日本語で好きな言葉があります。「偶然の出来事はない。全ての出来事には意味がある」です。食べることを楽しむこと。この人との会話を楽しむこと。出会った出来事を楽しむこと。明日ではなくて、今が人生なのです。全てがある和歌山県で生きていることに感謝してください」。こんな話を聞かせてくれました。

ディランさんが、和歌山県が有する自然、歴史、神秘性、潜在能力に気づいてくれていることに感動しますし、私たちは素晴らしい和歌山県を語っていくことに自信を持てる考え方です。


もう一人、世界を駆け巡っている経営者の話です。この方は、何度も来県してくれているのですが、その度に「和歌山県が持っている能力は素晴らしい」と話してくれています。

「和歌山県は世界が注目している県ですよ。和歌山県の価値に気づいていないのは和歌山県の人だけかもしれません」と話してくれています。

毎回のように同じ話を伝えてくれています。和歌山県民だけが和歌山県の凄さと能力に気づいていない。そのため潜在能力を顕在能力として発揮できていないということです。

「和歌山県の持つ観光資源はもちろんのこと、国際ビジネスの視点から日本国内での立地条件は優れています。対抗できるのは九州と東北の一部の地域ぐらいだと思います。関西空港は和歌山県のためにあるようなものですし、南紀白浜空港の国際線化は大きなチャンスで、アジアとのビジネスは和歌山県が優位に立つことになります。ここに世界につながる港湾がありますし、陸路でも首都圏とつながろうとしています。九州や東北よりも立地的な優位性があるのです。空路と海路、そして陸路で他県とつながることができる県は少ないと思いますし、これから世界とつながる可能性があるのは和歌山県です。問題であり残念なことは、和歌山県が現状からの変化を好まない保守的な考え方を持っていることです」という話を常に聞いています。

外国企業に対して、僕が自身と誇りをもって「和歌山県に来てください」と対応できている背景になっています。

和歌山県の凄さを知れば、和歌山県が日本で一番の県になる、取り組み次第で世界が注目する県になることは可能です。それを目指したいと思います。

質問2:和歌山県の素晴らしさについて

そこで和歌山県の素晴らしさについて質問します。外国人、そして多くの国際的なビジネスマンが和歌山県の凄さを伝えてくれています。僕もこの指摘の通りだと思っています。和歌山県に足りないのは故郷への自信と誇りです。

和歌山県には将来の発展の可能性がある世界に誇れる素晴らしい県だと思いますが、仁坂知事が思う和歌山県の素晴らしさについて、お聞かせください。

答弁者:知事【政策審議課】

和歌山県にはたくさんの素晴らしいところがあるにもかかわらず、議員ご指摘のとおり県民自身がそれらに気付いていないということがあることも現実だなあというふうに思います。

実は、かつてというか、就任早々でございますが、テレビのバラエティ番組、具体的に言うと「秘密のケンミンSHOW」なんですが、和歌山のタレントはあまり出ないんですけれど、たまたまある大物年寄りタレントがいました。元スポーツ選手ですが、その方が、「和歌山には何もないからね」とか、何が良いですかと言われたら「何もないもんね」とか言われて、私はそれを聞いて何ということを言う人だと思ったのですが、考えてみますと、私の子供時代には、和歌山県では、子供たちに郷土についての知識を全く教えることがなかったなあと思うわけでございます。それを考えて、昔の県政と教育委員会を恨んだわけでございます。

そこで、後世の人達が、また同じことを私に対してとか今の教育委員会に対して思ってもらったら困るなというふうに思いまして、ふるさと教育を始めようということにいたしました。そこで、素晴らしいふるさとを知ることで自らに自信と誇りを持つ、その素晴らしい和歌山で育ったということでエネルギーが湧いてきて、それでやる気が出て、世界で活躍できるようになるんじゃないか。こういうふうに考えました。

具体的には、「わかやま何でも帳」というものを作りました。これを中学生に配って勉強していただいておりますし、物知りの子供を刺激するように「わかやまふるさと検定」などというのを実施したりしております。

問題は大人でございまして、私も含めて昔教えられていないわけですから、今、もう1回勉強し直さないといけないということでございます。そこで、和歌山放送にお願いをいたしまして、この「わかやま何でも帳」を出版してもらって、販売をして読んでもらおうというふうに思っております。

段々と、皆さんの中に、和歌山って素晴らしかったんだねというようなことを、思ってもらえる人が多くなり、歴史についての認識も深まってきたんじゃないかなと。

これも努力をした結果なんですが、テレビなどでいっぱい取り上げてもらえるように、県庁職員全員がすごく頑張っております。すると段々段々出てまいりまして、これもいいことだなというふうに思います。

和歌山県の素晴らしさについて述べよ、という質問でございますが、答えは全部ということでございますので、それじゃあちょっと答えになりませんから、二つばかり申し上げたいと思います。

第一は、自然の美しさ。環境も大変いいと思います。ジオも森も川も海もあります。海産物も果物も野菜も、それからそれらをもとにした食事もおいしいし、温泉もある。こういう自然が文化・伝統・歴史と一体となって、世界遺産とか日本遺産として国内外から高く評価されている。これが和歌山の第一のいいところだと思います。

これらは全て和歌山の資源なんでございます。資源はちょっと軽はずみに間違った開発などをすると、なくなってしまう可能性がございますので、それは毀損させないようにしなければいけないということで、自然保護とか景観条例とか、色々工夫をいたしましたが、皆さま、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

二つ目は、人間だと思っております。

議員ご指摘のように陸奥宗光等々が活躍して、そのほか経済界でも科学の世界でも多くの人達が活躍をしております。陸奥の周辺で言えば、明治維新による近代国家の原型となって、「明治維新は和歌山モデル」。「早稲田も慶応も全部和歌山」。こう言って、私は人を驚かせているわけでございますが、しかし、こういう立派な人たちというのは、こういう有名な偉人だけではございませんで、遭難したトルコ軍艦エルトゥールル号の乗組員を一生懸命救助にあたった串本町の樫野の人々、あるいはデンマーク船エレンマースク号のクヌッセン機関長の遺徳を讃え続ける美浜町や日高町の人々。また、南米の異国の地で日本人としての信用を保ち続けようと誠実に生きてこられた多くの和歌山県移民の人々。こうした市井の人々の献身的な振る舞いや誠実さのDNAも、私たちは受け継いでいるというふうに思っております。

さらに、よそ者を差別しない。これは和歌山県のものすごくいいところだというふうに思います。色々と私は世間を見てまいりましたが、実は世界も日本も和歌山のようではありません。あの人は二代も三代も前からそこにいるのに、よそから来た人やで、とこういうようなことを言うような所も未だにあります。それは、和歌山では非常に希薄であります。これは素晴らしいところだというふうに考えている次第であります。

一般質問

【片桐意見】

ありがとうございました。先日、元メジャーリーガーの岩村明憲さんが和歌山市に来て講演をしてくれました。講演の中で「和歌山県の良さを話してください」という呼びかけに対して大学生は「和歌山県の人は心が温かい」と発言しました。知事の答弁にあったことを感じているのです。講演で「和歌山県の良さを考えてください」とテーマを与えられましたが、同時に岩村さんは、今福島県で独立リーグの監督をしているのですが、「和歌山県の良さを伝える」と話してくれました。

人から人へ和歌山県の良さが伝わっていくことを期待しています。

そして今日の質疑を聞いてくれた方が和歌山県は素晴らしいところだと自信と誇りを持ってくれるきっかけになれば、これから和歌山県に未来へ続く道が伸びることになります。

仁坂知事には16年間、ありかとうございました。心からのお礼を申し上げて、一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。