1.和歌山県の価値向上に向けた企業等への取り組みについて
こんにちは。今週末に東日本大震災から11年目を迎えることになります。当時、和歌山県は被災地の石巻市の大川小学校から受け取ったひまわりの種を県内の小学校などに植樹をして育てました。大川小学校は津波のため生徒74人がお亡くなりになった学校で、子どもをなく失った保護者の皆さんが学校近くにヒマワリを植えて自分の子どものように育ててました。その命のヒマワリの種をいただいて和歌山市内では20の小学校で育て、その後、紀の国わかやま国体のメイン会場の玄関で和歌山県が育てたひまわりで選手団をお迎えしました。東北の皆さんに復興国体であることを示し、和歌山県が東北の記憶を風化させない県であることを発信しました。この取り組みのように強くて優しい和歌山県である答弁をお願いしたいと思います。
それでは議長のお許しをいただきましたので、通告に従って一般質問を行います。
本定例会の冒頭、令和4年度の和歌山県の新政策が示されました。オミクロン株、物流の停滞、エネルギーコストの上昇など経済は厳しい環境にありますが、県民の皆さん、県内事業者の方々が安心して生活できる環境づくりにつながる政策を望むところです。
昨年から今年にかけて、東京とアメリカなどで長くビジネス経験のある方を始め、台湾や韓国とビジネスをしている方々と「和歌山県の価値」について話し合う機会を持っています。
懇談のテーマのひとつに「和歌山県への企業進出や企業活動の可能性」があります。
残念なことに東京に本社のある大企業から見ると、今も和歌山県は大型の投資対象にはならない状況は変わらず、民間投資の機会に恵まれていない現実が浮かび上がりました。
また投資以前の問題として、和歌山市の土地の価値について考えさせられる話がありました。
「リバースモゲージの件です。ある地方銀行の和歌山支店から連絡があり、銀行本部から「和歌山市の物件は扱わない」と言われたことの報告がありました。
これは都市銀行だけではなく関西を拠点とする地方銀行ですら和歌山市の一等地を評価しないという事実、現実をつきつけられたものです。銀行から「東京都や大阪市なら問題はないのですが和歌山市は.....」と言われるのは、つまり「和歌山市の価値が低い、価値無し、将来性無し」と見做されていると云うことです。参考までに、都市銀行でも和歌山市はリバースモゲージの取り扱い対象になっていません。
コロナ禍で意識や考え方が大きくシフトし、密を避けゆとりを求めて東京23区からの転出者も増えている中、ここで巧くタイムリーに動けば、コロナ禍以前はネガティブと見做されていた要因さえポジティブな強みとしてシフトさせ、一気に和歌山県の価値を引き上げる機会に出来るのではと思っているのですが、銀行から現実的な評価を受けたことは悔しいことです。
上場企業や都市銀行が和歌山県は投資の価値が低いと評価している現状があり、関西が拠点の地方銀行さえも「和歌山市の価値が低い、価値無し、将来性無し」と評価されていることは衝撃であり、新しい年度を迎えるに際して「ここまで和歌山市の評価が低いのか」と悔しく、残念に思っています。
次に、ある経営者との懇談したときの話です。
「和歌山県の観光のコピーで「水の国 和歌山」を謳っていますが、和歌山県の長所として豊富な「水」をアピールするのであれば、観光へのアピールだけではなく、住環境における長所としての河川の清らかさや、産業振興の観点から企業誘致の長所としてアピールできる工業団地への工業用水の完備なども同時にアピールできる状態に整えておく、少なくとも整備を進めている必要があります」との意見です。
つまり、県の中で個々別々にではなく、和歌山県の未来をどこに導くのか?と云う壮大かつ現実的、具体的な計画の下に、産業も観光も県民の生活を担う部署も、其々が連携し、創造的に切磋琢磨しながら同じ目標に向かって進む、そして、うねりを捉え波を逃さないよう迅速に動くことが肝心なのです。
続いて元県職員さんと懇談したときの話です。
かつて撤退の話もあった紀の川市にあるパナソニックの電池工場はEV自動車用の新型リチウムイオン電池「4680」工場へと変貌を遂げるために、数百億円を投じて生産ラインを立ち上げる準備を行うことになりました。この新型リチウムイオン電池は、米EV大手テスラへの供給を想定しているようなので私達にとって嬉しいことです。
これは当時、松下電池から工場撤退の情報を得た県職員さんが松下電池とその親会社に出向いて「和歌山県で事業活動をしてもらえるなら、県としてやれることは何でもやります」と交渉を行い、継続して残ってもらったことを聞きました。その結果、テスラ向けのリチウムイオン電池製造のための投資につながることになったことを「当時の仕事が今の県政のお役に立てた」と喜んでくれています。
このときの取り組みが松下電池の工場撤退を回避しただけでなく、それを世界的ネームバリューを持つテスラ向け新型電池の製造工場に繋いだことは「天晴れ!」と称えられるべき成功例です。
ひとつ成功させると、人間はその成功にやり甲斐や面白味を感じ、それが次の成功へ挑む原動力となるものです。情報網を張り巡らし、そこから得た情報に基づき先手を打つ。相手、呼び込みたい企業や観光客などの動向を見て、それに合わせるだけでなく、より積極的に、世界の潮流を読み、産業、観光、人を和歌山へ誘導する作戦を立てる。
つまり、和歌山県が望み意図する方向に導く位の気概を持つ。そのような「気概」こそが、県の職員の心にも県民の心にも「やる気」を湧き起こし、そのチャレンジから生まれる成功が郷土への「誇り」を育くみ、そこに暮らす人の誇りが和歌山県の「価値」を上げる具体策を生み出す。負のスパイラルから正のスパイラルへの転換です。
時代の先端を走るテスラ向けの新型電池の製造工場が地元にあることは和歌山県にとっての価値であり、銀行からや企業の投資を呼び込む力になるものと思います。
今回生まれたテスラとの繋がりという「価値」を他の分野でもどう活かせるか?県職員の皆さん、皆さんの仲間が生み出した価値です、どうか一緒に考えてください。斬新かつ具体的なアイデアを期待しています。
但し、県内の製造業は、部材調達が難しいことによる供給の制約やコスト上昇などによって収益が悪化している状況にあると思います。
さらに原油や天然ガスの高騰によるエネルギーコストの上昇と円安の進行などから仕入れ価格が上昇しているにも関わらず、コスト転換ができないこと。輸送コストや人件費などの固定費も上昇していることから会社経営は相当厳しいと思います。
県内企業の中には、国の経済対策を絡めた有利な融資や、雇用調整助成金を受けていることから企業活動が継続できていますが、実質、債務超過に陥っている企業もあると思いますし、消費の拡大が見られない中、メーカーなどへの必要経費の転換は容易ではないため、益々収益性が悪化する企業もでてくるのではないでしょうか。
わが国はインフレ傾向にありながら賃金が上がらない現状があり、企業が売上を増やすことも簡単なことではなく、売り上げを伸ばせない企業の財務体質はさらに悪化していくことで、今後の事業継続や秋以降の経済に影響を及ぼす可能性はあると思います。
このように厳しい経済環境にあることや、先に述べたように都市銀行や県外上場企業から「積極的な投資はしない」ことを暗黙の決め事のようになっていることを前提として、県政を考える必要があると考えます。
つまり銀行や上場企業から「和歌山県の案件に投資させてください」と言わせるような政策や計画が必要で、和歌山県が一気に注目を集めるためには、日本どころか世界が注目する計画を仕上げるぐらいの意気込みが必要です。
和歌山県の価値を高めることを目指して、新しい産業や先端企業を呼び込む、投資をさせるぐらいの意気込みをもって和歌山県の価値を高めて欲しいと思います。
また「物価が上昇してくるけれど所得が上がらない」。そんな声が彼方こちらから聴こえてきます。インフレ傾向だけれど給与が上がらない。そんなことが日本でも現実になろうとする気配が漂い始めています。これはかつてレーガンのアメリカで起きたスタグフレーションで、ゴーストと言われていた事情が世界で初めて起きたのですが、日本も同じことに直面しようとしています。
もう知っている人が多いと思いますが、2020年の平均年収で日本はOECD出典の資料によると、主要先進国35か国中で22番目の位置にあります。これまでわが国の所得は「高い」と思い続けてきましたが、実際はそうではなかったのです。
2020年の一位はアメリカで6万9,391ドル、この数字、出典時のレートである1ドルを110円とすると日本円で約763万円、2位はアイスランドで742万円、3位はルクセンブルグで724万円と続いています。
日本の平均年収が低いことが分かったのは、日本が3万8,515ドル、約424万円で22位、韓国が4万1,960ドル、約462万円で19位になったことが報道されたことが大きいと思います。
さらに1997年から2020年までの平均年収の上昇率は、韓国は45パーセントに対して日本はわずか0.3パーセントに留まっています。つまり20年以上も平均年収が上がっていないことで、次々と他の先進国に追い抜かれていったのです。
参考までに日本の下の23位以下はスペイン、イタリア、ポーランドと続いています。
日本人の感覚としてはそれほど経済事情が良くない国が続いていますが、日本はそのグルーブに入っているのが世界の現実です。
平均年収の数字が全てとは言えませんが、物価上昇局面にありながら所得が上がっていないことを前提として政策を考える必要があります。
世界はデジタル社会に突入してから久しく、情報通信や半導体を始めとする先端技術に後れを取ってからも久しくなっています。推測するところ、デジタル社会を迎えた世界の潮流に乗り遅れたことも経済力低下の原因の一つだと思います。
しかしまだ、「日本はこれからも大丈夫」、「技術と経済では先進国」と意に介していない人もいると思います。ところが更なるデジタル化や企業価値の中にカーボンニュートラルが組み込まれていることへの対応、そしてハイテク産業誘致などに対応していかないことには、ます世界との差、そして全国との差が広がるばかりです。
ところが和歌山県に漂う空気としては「まだまだ大丈夫だろう」「今まで通り他について行けば何とかなるだろう」というものを感じます。
新政策では「変化する世界への挑戦」を掲げて県政に取り組もうとしています。その中で企業のDX化の推進や和歌山県へ人と企業を呼び込むための企業誘致や宇宙関連産業の集積などによる県内所得の向上に向けた取り組みについて、知事の答弁をお願いいたします。
和歌山県の価値を向上させるためには、なんといっても議員ご指摘のように、たくさん投資を和歌山に持ってこないといけません。「和歌山なんかにお金を出すもんか」と言っていた大銀行なんかが「しまった」と後で思うようなそんなふうにしてやるぞと思って頑張ってるわけでございます。そのために考えられる全ての領域であらゆる手段を講じ、取り組んでいかなければならないと思っております。
そのためには、産業におけるデジタル化とか、起業家への支援の強化などによって、県内産業の成長を図る、これは王道だと思っております。それとともにですね、IR誘致とか、宇宙関連産業とか、ICT企業の誘致・集積などによって、新産業を育成していくということも大事でございます。
さらに、和歌山県は、特色のある農林水産業がございますので、これを振興して、生産力強化などの競争力を高める取組を加速し、観光もなかなか有望ですから、大いにプロモーションや受入環境整備など、数十年前の無敵だった時代から比べると、ちょっとそうでもなくなっていたのを、反転攻勢すると。そういう反転攻勢に備えた取組を進めることで、コロナで随分いろいろと打撃を受けておるのですけれども、特に観光産業の再生・発展を図っていくということも大事でございます。
製造業はいいのかというと、そんなことはございませんので、コロナで製造業の国内回帰もあって、経済安全保障という観点から、やっぱり日本でも生産基盤が必要だという議論が、今、出ております。
その一環として、パナソニック株式会社エナジー社が、和歌山工場で電気自動車向け新型車載電池を量産することについて、ついに、発表できるというところまでこぎつけました。随分前から聞いていたのですけれども、会社の意思決定ですから、ちゃらちゃらやってはいけないということで、ついに、現在はちゃんと我々も議論できるようになりました。もうすでに、水面下も含めて、応援態勢に入っております。
こういうことをきっかけにして、できれば、もっとたくさん、ということで、新たな電池関連産業の集積を目指した取組を進めていきたいと思います。
付け加えますと、さっきあっぱれと言われた経緯がございますが、これが若干短絡しておりまして、正確に言うと、わずか十年ちょっとの間に1波、2波、3波と実は動きがあるんでございまして、現在はその3波目なんですが、ご指摘のご議論の中では1波と2波が短絡してる、ショートしている感じがありました。詳しくはご説明申し上げません。
また、ENEOS株式会社が製油機能停止するということになったのは、大変な打撃であるんですけれども、同社が世界をリードするエネルギー企業として脱皮、飛躍するための新事業を和歌山で実施されるよう取り組んでいってもらいたいということで一生懸命頑張ろうとしているところでございます。
議員が投資を呼び込むようなそういう気概を持って頑張れという話がありまして、その通りだというふうに思っておりますが、実は気概どころか世界的に名の通った企業の投資をということで何度か挑戦をして、具体的なところで、もう一歩とは言いませんが、二歩、三歩ぐらいのところまでいってたのはいくつかあったんですけれども、残念ながらプロジェクト自体が消えてしまったというのが多くて、実現はできていませんでした。
一方、これは新しい雇用を増やす方向の、すなわち競争力をつける投資を増やしていく取組、これに加えまして、県内の所得を向上させるためには、大企業からの富の分配が必要でありまして、取引条件を改善させることが大変重要であると思っております。近年の円安等の効果によりまして、輸出採算のある大企業の雇用・所得環境は大きく改善してるんでございます。その大企業を支える調達先とか下請企業には、影響があんまり及んでいないというのが現状だと私は思っております。
大企業の本社ってのは東京に多くて、下請企業は地方にあることが多いので、地方の企業に富が分配されませんで、地方の従業員の賃金がなかなか上がらないということで、地方の消費が伸びない。そうすると、地方の景気が良くならない。これが地方の低迷につながっていると私はずっと思っております。
大企業が不況の頃、自社を守るため調達価格をできるだけ安くして、というのが、モラルとしてよいことだというふうに固定してしまったのがですね、今も続いていまして、県が実施した調査においても、なかなか価格転嫁がなされていないというのが現状です。中には違法、不当の行為もございまして、県としても取引条件の改善に向けて、企業の声も十分聞きながら、政府に強く働きかけて、政府の取組につなげていかなきゃいけないと思って努力してまいりました。
実は安倍内閣の時にもですね、安倍内閣自身が、政府自身がですね、たいへん好意的にこれに取り組んでくれたことも事実でございます。経済産業省もたいへん熱心に取り組んでくれて、和歌山県でも、経済産業省と和歌山県が共同で取引条件の改善に関するシンポジウムを大変大きな規模でやったというようなこともございました。
ただ、現実にはですね、一個一個の取引に関わる話でございますので、なかなか充分な成果が出ていないなと私はまだ思っております。
今後も、成長を促す投資に結び付くような政策を進めるとともに、取引条件の改善に向けた取組を通じて、成長と分配の好循環が生まれるように、全力で取り組んでまいりたいと思っております。
天然ガスや原油が高騰することから原材料価格が上昇し始めています。プラス30パーセントを超えたものも出ていますし、もうすぐ40パーセント増になる可能性も言われています。企業経営は益々厳しさを増すと思います。すでに消費材の価格は10パーセントほど上昇していますから、実質賃金下がっていますから、県として県民生活を守る姿勢を強く打ち出していただきたいと思います。
また新産業誘致に関してですが、和歌山県の遠隔医療が宇宙医療に使えることの研究を医療メーカー、宇宙関連企業がやりたいという話がありますし、世界が開発競争を進めている6G携帯や、これは企画部長が御存じだと思いますがハップスモバイルの実証の件も宇宙関連作業です。このような状況下、進めるべきものであり、止める理由はないと思いますので、是非、進めることを期待しています。
さて2項目目です。「新しい世界で飛躍する和歌山」の取り組みの一つとしてIRの誘致を進めていることを改めて本定例会の冒頭で知事の説明がありました。本県成長の原動力になるとして、経済波及効果と雇用創出効果を見込んでいます。
「和歌山県特定複合観光施設区域整備計画案」によると、IR施設で直接雇用する従業員の見込み数は6,285人になることが示されています。またこの計画全体の新規雇用は3万5千人と示されているように、施設運営などの委託に関わる雇用創出が見込まれるため、関連事業でも人材が必要になるようです。
計画では優先順位の1番として「UターンやIターン人材を受け入れる」。2番目として「和歌山県民からの募集」となっています。ここでは「既存事業者に配慮しつつ、地元雇用を優先的にかつ積極的に行う」こととし、その後、国内外からの募集へと移るようですから、この点から雇用確保と定住人口は期待できるようになります。
人口流失や現役世代の減少、働く場所が少ないことから地元にリターンできない学生などに対応できるので、この雇用創出は和歌山県が求めることであり重要なファクターになります。
但し、ここに問題があります。
以前、IR施設で働いている方と会って懇談をしたことがあります。その方は元々ホテルマンだったのですが、IRのホテルから話があり転職をしたのです。
転職後は実績を重ねて統括マネジャーの職につきました。そのときの話の内容は「世界からお客さんを迎えられるので、これまで勤務したシティホテルと比較してもやりがいがある仕事です。食事にしても世界中から一流の食材を取り寄せて選定していますし、お客さんに喜ばれるメニューの開発なども行っています。私は転職組ですが研修を受けたときから世界が広がりました。若い人にとってやりがいのある仕事だと思います」と話してくれたことを覚えています。
そして所得についても尋ねました。「給与はホテル勤務とのときよりも高くなりました。私の勤務していたホテルは誰でも知っている一流ホテルでしたが、その時と比較しても年収は倍増しています」と答えてくれたのです。参考までにその年収は一千万円を超えて二千万円に迫る水準だというものでした。ホテル業界の中では、IRのホテルに勤務すると管理職だけではなく、働く人も相当高い給与水準になるという話でした。
若い従業員が直ぐにこの水準になるとは思いませんが、一般的に同業種の中では所得が高くなると予想できます。それはそれで良いことで否定はしません。
ただ地域にとっては問題が発生します。和歌山県IRでアルバイトがあるかどうか分かりませんが、外国のIR施設のパートタイムラバーの時給を基準として、時給2千円になる仮定します。
現在の和歌山県の最低賃金は859円ですから、IR施設内で働くと約二倍の所得を得られることになります。
どちらで働きたいと思うのかは明らかです。もし正社員、アルバイトの募集があれば、現在、和歌山市周辺で働いている人達は、時給の高いIR施設で働くことを希望すると思います。そうすると和歌山市内を始めとする事業所やサービス業で人が不足することになります。人材不足と賃金格差で空洞化が起こり、サービス業を中心に働く人が不足することになるのは必至です。
和歌山IRだけ人が集まり、県内の会社や事業所、特にサービス業では人材は不足することになり兼ねません。
それを防止して人材を集めるため、または引き留めるために事業者は、時給を2,000円近くまで引き上げる必要があるのです。
仕事内容が同じで販売価格や納品価格が抑えられている中、一気に時給を上げられる事業者はいないと思います。もし時給を2千円に引き上げるほど業績の良い会社があるとすれば、もう既に給与を引き上げていると思います。現実問題として、会社の業績が上がらない限り、「給与を上げる」というかけ声だけで議論は成り立たないのです。
では県内の事業者の雇用を守るために「IR施設で働く和歌山県内の人の時給は千円に据え置いてください」とすることは本末転倒で、いつまで経っても和歌山県の所得水準は上がらないばかりか人材の流失は止まらなくなります。
和歌山IRで直接雇用6,285人と雇用創出効果の3万5千人は、大企業が進出してくれたようなものであり、直接雇用と委託事業者の収益向上につながるもので、和歌山IRがあることで県民所得を押し上げる効果があると思いますが、果たして、試算している従業員の給与水準、および県外からの居住者数はどの程度に見込んでいますか。
また和歌山IRを誘致することで県民所得が上がることは歓迎すべきことですが、県内事業所から心配の声があるように、賃金格差が生じることによって問題となる雇用の確保についてはどう考えていますか。田嶋理事の答弁をお願いします。
和歌山IRでの直接雇用や幅広い産業での雇用創出により、県内の雇用環境の充実や給与水準を押し上げる効果が期待できます。
一方で、周辺地域の雇用環境に悪影響が出ないように、事業者公募時においても、市場競合に配慮等を行い、計画的かつ確実に実施するよう事業者に求めていたところです。
議員のご質問にもございましたように、現在お示している区域整備計画(案)においても、従業員の確保の方針として、まずは、UターンやIターン人材を積極的に受け入れることを優先し、その次に、和歌山県の既存事業者に十分配慮しつつ、地元雇用を優先的かつ積極的に行うこととしています。
具体的には、地元雇用に当たっては、経済団体等と協議しながら、地域の同内容の職種の給与水準と極端には乖離しないように給与を設定するなどして、地域の雇用に支障をきたさないように配慮する方針です。
議員ご指摘の和歌山IR従業員の給与水準については、和歌山県の職種ごとの平均給与を基礎に算定しておりますが、従業員に占めるU・Iターン者の比率やその家族等を含めた居住者については目標値を定めているわけではありません。
直接雇用が約6,000人と言っても真水で増えるものではありません。全て県外から雇用する人ではないからです。逆に県外の人だけを雇用するなら県内の雇用機会はなくなりますから、それは良いとは思いません。このジレンマをどう解決していくべきか、計画の中で検討して欲しいと思います。
続いて二つ目の問題です。IR誘致の問題は、これに関わる人にとっては明るい未来が得られますが、それ以外の人にとっては和歌山県で暮らすことの幸せにならないのでは、ということです。
県政は最大多数の幸せを目指すべきであり、最小特定者の特別な幸せであってはいけないのです。IR誘致の本質的な課題は、大多数の幸せを導くための答えを出すことだと思います。
つまり僕が思うのは、多くの人が楽しめて幸せを感じられるようなものを誘致すべきだということです。例えば週末にはイベントが開催されている、先端医療が受けられるなどの環境が整い、観光客が県内観光に向かうなど仕向ける必要があると思います。
それがなくて、特定の人だけが楽しめる施設になってしまうと「それは違うでしょう」となりますし、お客さんを囲い込んでしまうようなら、地域にも、経済界にも受け入れられません。施設周辺地域、県全体が潤う状況にすべきだということです。
田嶋理事の答弁をお願いいたします。
議員ご指摘のとおり、IRは最小特定者の特別な幸せではなく、大多数の幸せを導くためのものでなければなりません。そのため、和歌山IRは、カジノやMICEなど、特定目的での施設来訪者向けの施設だけではなく、プールドームやeスポーツセンター、キッズ広場など、ありとあらゆる人々が楽しめる「ボーダレスな娯楽空間」をテーマにした施設を設置することで、ビジネスからレジャーまで、また、大人から子供まで、幅広い来訪者が満足できる施設とします。
また、IR誘致によりもたらされる経済効果、雇用効果はIR施設内に留まるものではなく、施設外の商業や飲食業、宿泊業はもちろん、農林水産業、交通運輸業、警備業、情報通信業などに至るまで様々な産業に及び、県全体に大きな波及効果をもたらします。その結果、県内産業の給与水準を押し上げることになります。
さらに、日本型IRには、IRへの来訪客に日本各地の魅力を紹介し、日本各地へ送り出す機能も求められております。和歌山IRにおいては、熊野古道や熊野三山など県内の観光資源の魅力を臨場感あふれる形で発信し、来訪者を県内各地へ送り出すことで、和歌山県内での旅行消費額の向上をめざします。
和歌山IRの実現により和歌山県で暮らす、多くの県民の生活が豊かになり、本県が持続的に発展できると考えています。
強力なエンジンを搭載するなら、船長は芯のある人であるべきですし、船体も強くあらねばなりません。経済、雇用、文化、スポーツ、福祉など全ての分野を今より強化、発展させるべきです。和歌山県民の生活、文化が強いエンジンによって解体されないように、県民の皆さんは、リーダーとしての責任と覚悟を見ていますと思います。
この項目、最後の質問に移ります。
県民の皆さんが和歌山県IRを「県の利益」と考える条件のひとつとして、和歌山市から和歌山マリーナシティに至る周辺地域の道路の整備と交通機関の利便性があります。
交通分析結果によると「国道42号」の混雑悪化が懸念されることや「マリーナ入り口」や「琴の浦」交差点においてピーク時に交通渋滞が予測されるとの問題点があります。
また公共交通機関に関しては増便を行うほどの「混雑影響はない」と予測していますが、拠点駅から和歌山IRまでの交通アクセスの強化が必要と問題提起がなされています。
これらの道路の渋滞対策としてハード整備が必要だと思いますし、大阪のIR事業者が公共交通の事業費の負担をするように、和歌山県として事業者に道路整備に関わる応分の費用負担を求めるべきだと考えます。単に混雑時の交通量抑制などで対応すべき案件ではないと思います。
地元の皆さんの理解と「新しい世界に飛躍する和歌山」に相応しい道路整備を行うべきだと考えますが如何でしょうか。田嶋理事の答弁をお願いいたします。
「新しい世界に飛躍する和歌山」に相応しい道路整備を行うべきとのご質問ですが、現時点において行っている「大規模開発地区関連交通計画マニュアル」に基づく交通量の分析では、「マリーナ入口」、「琴の浦」交差点などにおいて交通渋滞が想定されますが、交差点改良などのハード対策や信号現示の調整などのソフト対策を行うことで、周辺住民などへの影響を最小化できると考えています。
一方、区域認定後、より詳細な分析を改めて実施し、追加の対策が必要となった場合は、道路管理者、交通管理者と協議・調整を行いながら、必要な対策の実現に向けて連携して取り組んでまいります。
次に、道路整備の費用負担についてです。議員ご指摘とおり、IR誘致は大企業が進出するようなものですが、和歌山県が企業を誘致する際に、周辺の交通量の増加により道路整備が必要となる場合には、整備に要する費用は行政側が負担し、企業などには負担を求めないことが一般的です。
このため、和歌山IRにおいても、交通アクセス整備にかかる事業費の負担等については、あらかじめ事業者に費用の負担を求めるのではなく、各関係者とIR事業者で協議することを条件に事業者公募を行いました。
現時点では、先ほど申し上げたマリーナ入口などの交差点改良等に約40億円かかると試算しており、うち約20億円を事業者が負担し、残額は、入場料納入金を活用することとしています。
今後、追加の対策が必要となった場合の事業費の負担等については、各関係者とIR事業者で協議してまいります。