4.「医療的ケア児」とご家族の支援について
続いて「医療的ケア児」とご家族の支援についての質問です。医療的ケア児のご家族の皆さんとの話し合う機会やZOOM会議の機会がありました。
この「医療的ケア」とは、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰(かくたん)吸引その他の医療行為と定義されています。法律で定義されている「医療的ケア児」とは、普段の生活をしたり、学校などに通うために常に医療的ケアが必要な子どものことを言います。
「医療的ケア児」はこの医療的ケアが原因となり、学校に通うことさえ困難なケースもあります。環境が整っていないから近い学校に通学できないことや、通学できたとしても保護者が常に付き添わないと通学できないといったケースもあるように聞いています。
子どもの通学のために、ご家族が仕事の時間を割いて送り迎えや学校内で対応をしているため、ご家族には大きい負担がかかっているのです。
そんな中、関係者の皆さんの取り組みが実って、今年6月11日「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が成立、今年、9月18日から施行されています。
この法律の目的は「医療的ケア児」とその家族への支援について、国や地方公共団体の責任と義務を明確にして「医療的ケア児」の成長を見守ること。そうすることで家族も仕事を続けられるので、安心して子どもを育てることにつなげることです。
この法律では都道府県に対しては、就学前から社会参加までの間、切れ目なく支援を受けられる体制の整備を行うことを求めています。
そのひとつが、保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、そして特別支援学校など全ての学校において、「医療的ケア児」の受け入れに向けて支援体制を拡充していくことが必要とされていることです。
そのため「医療的ケア児」が家族の付き添いなしで希望する施設に通えるように、保健師や看護師、または喀痰(かくたん)吸引を行える保育士などの配置が必要となっています。このように看護師などを配置することによって「医療的ケア児」の支援をすることを法は求めているのです。
二つ目として都道府県において「医療的ケア児支援センター」を作ることを求めています。「医療的ケア児」のご家族は、悩みごとをどこに相談すれば良いか分からない場合があるので、ご家族の相談に対応する役割を「医療的ケア児支援センター」が担当します。
この支援センターの設置と相談業務は都道府県が行う場合と、社会福祉法人などと役割を分担して実施することも可能となっています。
ここでは教育委員会と学校、および福祉部局との連携体制を整備することや、「医療的ケア児」の就学、進級、進学、および就労などに個別の教育支援計画が有効に活用されるしくみをつくることや、連携支援コーディネーターを配置することが求められています。
ここまでをおさらいします。法律の制定において、国や地方公共団体などの責務が明確となりました。
都道府県においては「医療的ケア児」とそのご家族への支援にかる施策の実施が求められています。国においても「医療的ケア児支援センター」の設置の推進と「医療的ケア児」への支援者の養成「医療的ケア児」の家族への支援を総合的に実施するための予算の拡充が図られることになっています。
これらの施策は「医療的ケア児」のご家族は「医療的ケア児」が心身の状況に応じた適切な支援や教育を受けられないことや、ご家族が24時間、ケアを担うために就労機会を失うことや、子育てなどで悩みごとの相談するところがないという山積する課題を解決するためです。
「医療的ケア児」に関わる課題を聞く機会を持つことで早期に解決に向かわせるため、早く法律の主旨に沿った形で「医療的ケア児支援センター」を作るべきだと思います。
「医療的ケア児」の子どもを持つ親御さんから「子どもと「楽しい」「嬉しい」「おいしい」と同じ感情を味わうことが出来ないことは本当につらいと思うことがあります。でも内心は誰にも相談できないのです」と話してくれたことがあります。本人も辛いけれど親も身体的、精神的に苦しい時があるのです。福祉保健に携わる県として、そんな言葉で言い表せない苦しみに心から寄り添うべきだと思います。
そこで質問ですが、和歌山県として「医療的ケア児」のご家庭が安心して子育てを行い、仕事が出来るような支援をすべきだと思いますが「医療的ケア児支援センター」設置の考え方についてお示し下さい。
また法律に基づく支援をするために「医療的ケア児」に対応できる人材を養成する必要があります。「医療的ケア児コーディネーター」の養成についての考え方をお示しください。福祉保健部長の答弁をお願いいたします。
「医療的ケア児」の支援につきましては、議員お話のとおり、本年9月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行され、県に設置する「医療的ケア児支援センター」において、相談や研修の実施が位置付けられました。
本県におきましては、平成30年度より医療、保健、福祉、教育に関係する課室で情報連携等を図るとともに、各障害保健福祉圏域において、保護者等からの相談があった際には、市町村や医療機関、サービス提供事業所等による「医療的ケア児」一人ひとりの状況に応じた個別の支援会議を行うなど、支援の充実に取り組んできたところです。
また、医療的ケア児コーディネーターの養成も行っており、これまでに127名が研修を修了していますが、地域的な偏在もあり、引き続き養成が必要な状況です。
県では、医療的ケア児とその家族を支援する各障害保健福祉圏域の体制整備を優先すべきであると考えており、そのためには、地域で中心となる医療的ケア児コーディネーターの育成が重要であると考えております。
そうした各圏域での体制整備を進めた上で、「医療的ケア児支援センター」の設置につきましては、令和5年度を目標とし、引き続き市町村や関係機関と連携し、取り組んでまいります。
部長からの答弁で「医療的ケア児支援センター」の設置時期が令和5年度であると回答をいただきました。これまで明確にされていなかったので、時期を明らかにして取り組むことは歓迎です。令和4年度は和歌山市を含む8つの圏域で支援の準備を進めることになると思いますから、県と市町が連携してくれることをお願いします。
この項目に二つ目です。保護者からは医療的ケアの体制の充実は勿論のこと「運動機会が少ないことや運動施設が少ないことから太る子どもが多い」ことや「運動のサポートのしくみがあれば嬉しい」などの意見があります。
保育所や学校、特別支援学校など全ての学校において「医療的ケア児」の受け入れのための看護師の配置や増員なども含めた支援体制を拡充していく必要があるとし考えています。福祉保健部長の答弁をお願いいたします。
またこの点に関しては、教育長の答弁もお願いいたします。
保育所における医療的ケア児への支援体制についてお答えします。
保育所の実施主体である市町村においては、保護者等から保育所の利用について事前に相談を受け、看護師等の配置を行い、医療的ケア児の支援を行っております。
県では、国の補助制度を活用し、看護師を配置する経費等について市町村に対し補助を行っているところです。
引き続き、医療的ケア児の支援を適切に行うよう市町村に対して助言を行うとともに、必要となる経費の補助を行ってまいります。
学校における支援体制についてお答えします。
県教育委員会では、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の多くが在籍する特別支援学校に、看護師を配置しています。本県では看護師と教員が、幼児児童生徒の主治医から直接指導や助言を受け、協働してケアを実施する体制を整え、学校生活を支えています。
また、各市町村教育委員会においても、ケアを必要とする児童生徒が在籍する学校に看護師を配置し支援が行われております。県教育委員会から学校の支援体制等について助言を行ってもおります。
今後も、すべての学校において、医療的ケアの必要な幼児児童生徒が安心・安全に学ぶことができるよう、支援体制の充実に取り組んでまいります。
ご家族の方に健康の不安があった時など「医療的ケア児」を預けるための短期入所事業所が少ないなど、ご家庭の身体的、精神的な負担は、私達の想像以上のことだと思います。特に東牟婁圏域においては、一時的に「医療的ケア児」を預けることのできる事業所が不足しているとも聞いています。
短期入所事業所の県内の状況と、とりわけ東牟婁圏域の状況、またその状況を踏まえた県の認識についてお聞かせください。
また子どもの成長に合わせ、社会とのつながり方も学校から地域へと変化していきます。保護者の方にとっては高校卒業後の進路や支援について、卒業が近づくにつれて不安を募らせていることを聞いています。学校生活においては「担任の先生が十分良くしてくれている」ことや「和歌山大学のボランティアの生徒がとてもよい」などの満足ある意見を聞くことが出来ている反面「卒業後に不安を感じています」や「就職できても適応しなければひきこもりにならないか」などの不安を感じていることも聞かせてもらいました。
今後の「医療的ケア児」とご家族への支援の充実について、どのように取り組んでいるのか。 福祉保健部長の答弁をお願いいたします。
県内にある短期入所事業所の状況ですが、全体では67事業所あり、そのうち児童への対応が可能な事業所は19事業所ありますが、そのうち東牟婁圏域にあるのは、2事業所となっています。
県としましては、医療的ケア児支援に対応できる障害福祉サービス事業所の充実が、必要であると認識しており、国に対し、課題となっております看護師配置の更なる加算の増額などについて、必要な改善を求めているところです。
引き続き、医療的ケア児とその家族がそれぞれのライフステージに合わせ、希望される社会生活が送れるよう、市町村が行う医療的ケア児一人ひとりに合わせた支援に対し、県としても連携して取り組んでまいります。
子どもと一緒に生活がしたい。制約条件のある中で仕事をしている。時には安らぎを求める。保護者の皆さんはそんな思いを持っています。和歌山県においてはそんな寄り添う、思いやりのある気持ちで接して欲しいと思います。これは仕事ですが、仕事ではなく寄り添うパートナーとしての役割を果たしてくれることをお願いして一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。