3.教科書では分からないこと
今年11月12日から13日にかけて「和歌山ワーケーションファムツアー」が、11月26日と27日は民間主催の「南紀白浜でSDGs×健康経営を学べ」のワーケーションツアーが開催されました。これらはワーケーションを行うことにより得られるメリットに関して検証するために開催されたもので、参加したのは首都圏や関西圏の企業のビジネスパーソンや個人事業主などだったようです。
また令和3年10月21日、第9回プラチナ大賞において和歌山県は優秀賞「ワーケーション先達賞」を受賞しました。受賞した取り組み内容は「都市部と地域の関係性を再構築する日本型ワーケーションモデル」です。このことは和歌山県のワーケーションモデルが全国に認められたもので、コロナ禍においても、着々と積み上げてきたものが評価されたことは誇らしく思います。
これらのツアーは地域の課題は「教科書に載っているベタなもの」ではないことを現地で学び、今後のビジネスに生かしてもらうことを目指したものだと認識しています。
全国的に話題になった情報政策課長のコメントです。「自治体の課題というと『教科書に載っていそうなベタな課題』だと思ってしまう。でも現地に足を運べば、課題の内容や軽重にも地域ごとに違いがあり、現地で解決に向けて頑張っている人の存在もわかる。僕自身がそうだったのように、新しい視座が増えます。
そして和歌山はワーケーションだけでなく、移住してくる人も多い。地域おこし協力隊を経て移住したり、著名なプログラマーが住んでいたりと多様性がすごいんです。もちろん昔から住まれている地元の方も素敵な方ばかりで、よそ者の私にも温かく接してくれます。
東京に住んでいたころは、似たような環境に住む人とばかり飲んでいましたが、和歌山で様々な経験や思いを持つ方々とお話しすることはとても刺激的で、人生の優先順位についても考えるようになった」と語っています。実に和歌山県のイメージを向上させてくれるものです。
このように現地で研修機会を持つことで分かることがありますが、参加者にそれを気づかせることができるロケーションが和歌山県にはあると思います。
現地で「教科書では分からないこと」を学べる和歌山県の「ワーケーションツアー」ですが、今回、ツアーに参加した皆さんの感想を聞かせてもらうと肯定的な意見が大半でしたが、今後の展開については考えるべき課題もあるように感じました。
「自然環境は素晴らしいが廃墟があり、むしろ気持ちが萎えてしまう」「行きたいところでないと行くことはない。行きたいと思わせるコンテンツが必要であり、それを正しく県外に発信することが必要」「ワーケーションの聖地というのは良いが、地域の環境整備などすべきことがある」などの意見です。
これまでのワーケーションツアーの成果と今後のワーケーションツアーの取り組みについて企画部長にお尋ねいたします。
和歌山県が全国に先駆けて取組を開始いたしましたワーケーションですが、初年度である平成29年度には、企業目線でのワーケーションを推進するため、「ワーケーションモニターツアー」を実施いたしました。首都圏企業を中心に約20名に御参加をいただき、参加された方からは、「地域の方々だけでなく、普段は付き合いのない他社の方とも、多様なアクティビティを通じて関係構築ができ、又、ネットワーキングの機会としても有用でありました。」等の前向きな御意見・御感想を数多くいただきました。
続く平成30年と令和元年度は、親子で参加できるワーケーションツアーを学校の夏休み期間に実施をいたしました。
そして、コロナ禍にあった令和2年度には、オンラインを活用しまして「WAKAYAMAオンラインワーケーション」を2日間にわたって実施をいたしまして、初日は、和歌山県内でワーケーションを実施している企業の実例や県の受け入れ体制等を紹介する講演を行い、2日目には「バーチャルツアー」により、県内の受け入れ施設や観光資源を紹介し、2日間で延べ約180名の方に視聴いただきました。
今年度は、11月12日から15日にかけて「和歌山ワーケーションファムツアー」と題し、ワーケーションを実施することで得られる効果を定量的に検証する「効果検証型ファムツアー」を開催したところです。
参加された方には、ツアーの参加前から参加後までウェアラブル端末を付けていただき、バイタルデータにどのような効果がみられるかについて、実施前、実施中、実施後の経過分析を行うとともに、同期間にツアーに参加しなかった方にも端末を付けていただくことで、ワーケーション実施効果を比較検証することとしています。
現在、データの分析を行っているところですが、その結果の中で和歌山県におけるワーケーションの実施効果を定量的に示すことができましたら、それらのエビデンスを活用して引き続き「ワーケーションの適地、和歌山県」のPRを進め、首都圏のみならず京阪神からの人の流れを促進していきたいと考えております。
デジタル媒体では情報政策課長を始め班長や担当の方が登場しメッセージを発信しているので和歌山県の印象はよくなっていることを県外の皆さんから聞くたびに思っています。ワーケーションは企画も大事ですが、巣地域に伝わるストーリーと人を登場させることも大事だと思います。是非、この企画に携わっている人も和歌山県から発信すれば、より効果が期待できると思います。
ところでワーケーションでは「関係人口」という聴き慣れない言葉が重要視されているようです。地域や地域の人と多様に関わる人であることに着目したものですが、ワーケーションによって生じる「関係人口」は、どのような地域活性化につながるのでしょうか。企画部長にお尋ねします。
ワーケーションによって生じる「関係人口」についてお答えいたします。
ワーケーションを活用して来県される方は、観光客と比較をいたしまして、より長期かつ継続的に訪問される傾向にあり、そのニーズは多岐にわたります。
そのため、和歌山県では、当初からワーケーション利用者の方々に対して単に宿泊サービスを提供するだけではなく、テレワーク用スペースや、さまざまな体験型観光、援農体験、更には道普請・海岸清掃などのボランティア機会の提供といった受入れビジネスの創出に取り組んできました。
さらに、ワーケーション受入れサービス登録制度を設け、体制の構築を進めてきたところです。
この登録制度に関しましては、今年11月末時点で「ワークプレイス」41、「宿泊施設」54、「アクティビティ」31のサービスが登録されており、また、問い合わせに応じてワーケーションプランの企画・調整を行う「コーディネート事業者」も9サービスが登録されておりまして、これらを合計すると135サービスまで広がりを見せています。
新型コロナウイルス感染症の影響により、都市部からの人の移動が制限された時期が続いていましたが、コロナ後には、ワーケーションを通じた関係人口の創出が期待されます。
こうした関係人口は、観光的な観点での「県内での消費行動の増加による経済活性化」に加えて、SNS等を活用した情報発信、さらには地域企業との協業や、地域住民への支援等により、幅広く地域の活性化につながるものと考えております。さらに、最終的には「企業誘致や移住・定住」にまでつなげていきたいと考えております。