令和2年12月定例会一般質問 / 質問内容

3.洋上風力発電について

和歌山県では「洋上風力発電に係るゾーニングマップ及びゾーニング報告書【中間とりまとめ】を公表しています。これは、平成30年度から令和元年度まで、自然環境の観点からゾーニングを行ってきた結果を「中間取りまとめ」という形で公表しているものです。

「中間とりまとめ」によると、「和歌山県では、地域における地球温暖化対策の推進や、新産業の創出が重要な課題であるとの問題意識に基づき、自然環境と調和した形での再生可能エネルギーを活用した電源開発の促進を推進している」とあります。

和歌山県が導入に向けて、先進的かつ前向きな取り組みをしていることが伺えます。

和歌山県の姿勢からも分かるように、洋上風力発電は、現在、最も期待されている再生可能エネルギーだと思います。

まず世界を見ると、ヨーロッパでは2019年末で、12か国で110か所、発電能力は約22.1GW、5,047基の風車が稼働しています。ヨーロッパで導入されているのは、エネルギーの安全保障、地球温暖化防止に加えて、地域振興と雇用創出につながることが理由です。

特徴的なのは、イギリス、ドイツ、デンマーク、オランダ、そしてベルギーの五か国で、ヨーロッパ全体の99パーセントを占めている点にあり、中でもイギリスは四方が海に囲まれている利点を生かして導入を拡大しています。驚くべきことにイギリスのエネルギー自給率は68パーセントもあります。洋上風力発電所は40か所、総発電量容量は9.9GW、風車数は2,225基もあります。

四方を海に囲まれている日本としても先進事例として参考になる導入事例です。


この洋上風力発電の優れている点は次の通りです。

  • 陸上よりも風が強く安定していること。
  • 土地や道路の制約がないため、大型風車の導入が比較的容易となり、少ない基数で多くの発電が可能であること。
  • 陸地から離れているため、景観と騒音の影響が小さいこと。
  • 長期的に関連ビジネスを生む可能性が高いこと。

再生可能エネルギーの中でも、特に洋上風力発電は、調査、部品機械製造、拠点港での組み立て、輸送、設置工事、運営の過程において、様々な関連ビジネスがあり、経済波及効果は大きいことが特長です。例えば先進国のオランダでは、サプライチェーンの形成によって長期安定的な産業需要が生まれているそうです。

国内においても経済波及効果が算出されています。日本風力発電協会が、2030年までに洋上発電を10GW導入した場合、初期投資と2030年までの累計導入量に応じた各年度運転維持費用を合わせた直接投資額は約5.7兆円、経済波及効果は約15兆円、雇用創出効果として約9.5万人と予想しています。


個別に見てみます。港湾において既に洋上風力発電の建設が始まっており、一般海域においても洋上風力発電を導入する計画のある秋田県では、事業規模が400MWの洋上風力発電を一般海域で建設した場合、県内企業の参入拡大が図られれば、建設、撤去段階における県内経済への波及効果は約2,100億円、雇用創出は約2万人を公表しています。

また、運転・保守段階における県内経済への経済波及効果は、毎年約50億円、雇用創出は約530人と試算しています。


同じく導入を計画している山形県では、事業規模が250MWの洋上風力発電を一般海域に導入した場合、県内企業の参入拡大が図られれば、県内経済への経済波及効果は約534億円、雇用創出効果を4,585人と試算しています。


このような背景があることから、わが国全体では2020年6月末で約18GWの洋上風力発電の環境影響評価手続きが進んでいるようです。

和歌山県も自然環境保護や社会的な事業環境の観点からゾーニングを行うことで、積極的に洋上風力発電を導入しようとしていることは評価すべきことだと思います。


また安全性に関しても、巨大地震や津波にも耐えられる安全性を確保していると聞いています。専門家に尋ねたところ、「津波が発生した時、陸地に近いところよりも沖の方が津波は低く、風車に与える影響は小さいので安全性は高い」と言う見解ですから、陸上と比較しても優位性があるように思います。

また、基本的な考え方としては、風車本体は風荷重が支配的であり、地震荷重や津波荷重は風荷重より小さいので、地震荷重や津波荷重により風車本体が損傷することは少ないことが確認されています。


但し、和歌山県として、環境保全を図りながら再生可能エネルギーの導入を両立させるべきなので、地元の方々との共生を図りながら考えていく必要があります。

和歌山県内の伝統的な産業は高齢化が進んでいることや、後継者が不足していることなどから、このままでは先細りになっていきます。今から将来に備えた収入を確保しなければならないので、新たな産業との組み合わせを考える必要があると思います。

洋上風力の風車の基礎部が人工漁礁の機能を果たすことから、基礎部の漁礁化を図ることや、風車間の海洋空間を活用して養殖施設を設置することなども考えられると思いますから、県内産業と共生関係を築くことは可能だと思います。


加えて観光資源としても活用が図れている事例があります。茨城県の「次世代型エネルギーパーク」では、鹿島港内の漁船を利用した洋上風力発電海上見学ツアーがあり、見学に訪れる人は、年間3,000人以上にも及んでいるそうです。地元、漁業関係者との共生していくためにも必要な取り組みだと思います。

質問1:導入を図ることについて

和歌山県では長期総合計画に基づき、再生可能エネルギーの先進県を目指しています。中でも、地方創生、経済効果、雇用創出、観光振興などの効果がある洋上風力発電は、次世代型の大規模な再生可能エネルギーであり、積極的に導入を図るべきだと考えますが如何でしょうか。知事の考えをお聞かせください。

答弁者:知事

洋上風力発電については、議員ご指摘のとおり、既に欧州を中心に導入が大規模に進んでおりまして、私もデンマークとの交流という時に、数年前ですが、行かしていただきましたが、海という海は風車で埋まっているというような、これが一つの景観なんだなというふうに思いました。もちろん、海は、鏡のように綺麗でありまして、穏やかそのものの上に、ぶんぶん風車が回っている、そんな感じでした。国内でもですね、最近、ヨーロッパに遅れてではありますが長崎県とか秋田県とか千葉県で、これから事業が本格的に進もうとしているところだと理解しております。

洋上風力発電の検討が先行している事例を見ると、開発規模が大きくて、自然環境や景観への影響といった課題に加え、漁業や海上交通など社会的な調整が必要な事項も多くなると聞いております。

和歌山県の周辺海域では、黒潮の流れが速く、浮魚礁が何度も流されてというような過酷な気象とか海象条件でございます。また、海そのものがですね観光資源でございますので、国立公園とか自然公園とか世界遺産からの景観、そういうものにも配慮しなければならない。それから、騒音は遠くにあれば大した事ないかもしれませんが、近くにあれば色々と考えなければいけない。それよりも、漁業者の活動とか船舶の往来、これをどう考えるかということがですね、大事な海域に和歌山県はあるわけでございます。

これらを踏まえますと、洋上風力発電は、地球環境の観点からは大変いいものでございますが、その立地に関しましては、特に和歌山県での立地に関しては、今申し上げましたようなものに支障を及ぼさないように上手く調整をする必要があるので、あまりそういうことを考えなくてもいい箇所に比べると、ハードルは非常に高いかなと考えています。

質問2:ゾーニングマップが公表された後の取り組みについて

知事から答弁を聞いて、地元、漁協関係者ファーストは当然だと思います。ただ聞きながら思ったことがあります。ロケット射場建設に関しては、航空や海域の利用のための地元調整など難しい問題を県が解決してきたからこそ実現したと思います。洋上風力発電も同様に地元との調整などの問題がありますが、県が調整を図ることで事業が推進できると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。そのためゾーニングマップが完成した後は、それに沿って計画が進められるよう考えて欲しいと思います。

この「洋上風力発電に係るゾーニングマップ及びゾーニング報告書【中間とりまとめ】」を行っているのは、洋上風力発電を導入しようとする意思の表れだと思います。そのためこれまでも「和歌山県洋上風力発電に係るゾーニング検討会」によって導入に向けた議論が交わされてきたと思います。


これまでの検討の結果を踏まえて令和2年度に報告書を完成させる計画だと認識していますが、現時点において、県の検討会では以下スケジュールが示されています。

令和2年末3月にゾーニングマップを公表。

令和3年2月頃に、普及啓発フォーラムを開催。

令和3年3月に、事業者向けのゾーニング説明会を開催。

令和2年度末に、ゾーニングマップ最終案を公表する計画になっています。

これ以降につきましては、「作成したゾーニングマップについて、情報更新を行い、必要に応じてエリアの設定の見直しを行う」としておりますが、県が具体的にどのようにして洋上風力発電を設置しようとしているかは示されておりません。

ゾーニングマップが公表された後の手続きの流れについて、商工観光労働部長の答弁をお願いいたします。

答弁者:商工観光労働部長

ゾーニングにつきましては、和歌山県沖において洋上風力発電事業を行おうとする事業者に対し、適正な立地の検討を促すため、2018年度からの3か年間の事業で実施しており、これまで主に自然的条件から評価を行ってきましたが、最終年度の本年度において、海上交通や漁業等の社会的条件に関する調査・検討を行っています。

ゾーニングマップ完成後の取組についてですが、県民の皆様や漁業関係者など海域の利用者に洋上風力のメリット・デメリットを正しくお伝えする必要があるとともに、事業者に対しては、今回のゾーニング結果をもとに和歌山県沖の海域における、自然的条件・社会的条件の課題・懸念事項について個別具体的に十分説明し、正しく理解していただく必要があります。

なお、2019年4月に施行された「再エネ海域利用法」では、地方自治体等からの情報提供や地元関係者からなる協議会での検討結果に基づき、具体的に事業を進めていくエリアを国が「促進区域」として指定するとともに、この区域において、公募に基づき国が事業者を選定することとなっております。

質問3:「保全推奨エリア」の考え方について

答弁をいただいたのでこの項目を続けます。検討中のゾーニングマップでは、「保全エリア」、「保全推奨エリア」及び「調整エリア」の3つのエリア区分としておりますが、これまで実績の多い着床式洋上風力発電は、水深の制限より「保全推奨エリア」でしか設置することができないと思います。

エリアマップでは「保全エリア」及び「保全推奨エリア」も事業実施を規制するものではないとされているので問題はないと考えますが、「保全推奨エリア」での事業であったとしても適正があれば進めることができると考えて良いのでしょうか。商工観光労働部長にお尋ねいたします。

答弁者:商工観光労働部長

議員ご指摘のとおり、比較的水深の浅い海域では、着床式と呼ばれる発電施設の設置が適切であると言われていますが、現在行っているゾーニング調査では、こうした海域の大部分を、自然公園法等で開発が規制されている「保全エリア」、又は自然的・社会的条件から保全することが望ましいと考える「保全推奨エリア」と位置付けているところです。

本県の保全推奨エリアとなる海域は、自然公園の景観や騒音、漁業者の活動や船舶の往来など、多くの懸念事項があるため、事業検討においては、非常にハードルが高いものと考えております。

質問4:事業化に向けた促進区域指定について

続けます。最後に「保全推奨エリア」または「調整エリア」内で複数の事業者が地元との調整を整った場合、和歌山県として和歌山県の海域が複数の促進区域に指定されるために国へ申請する考えはあるのでしょうか。この点に関しても、商工観光労働部長にお尋ねいたします。

答弁者:商工観光労働部長

「再エネ海域利用法」における「促進区域」につきましては、一つの都道府県で複数の促進区域が指定されている例はありますが、和歌山県の沖合は、自然公園や景観、騒音、漁業者の活動や船舶の往来など、多くの懸念事項があると認識しています。

そのため、それらの課題をクリアし、国に対して促進区域指定に向けた情報提供といった手続きを進めることが出来るかどうか、現時点で判断することは困難です。

課題はあるものの、ゾーニングマップができた後に手順に沿って進めてくれるものだと思っています。昨日報道されていますが、政府の「グリーン成長戦略」では、洋上風力発電の発電容量の政府目標として、2030年は1000万kW、2040年には3000万kWから4500万kWを推進目標に掲げています。政府計画に基づいてグリーン成長戦略」としての洋上風力発電は動いていくと思いますので、和歌山県として導入に向けた取り組みを期待しています。