令和2年2月定例会一般質問 / 質問内容

3.宇宙・ロケット産業の集積について

令和2年度は「成長分野の企業誘致・集積」が重点施策として掲げられ予算案として計上されています。和歌山県がこれまで産業構造の変化に対応しきれていない状況を鑑み、ICT企業の誘致・集積、ベンチャー企業の誘致と共に、宇宙・ロケット産業の集積を政策として進めようとしています。

この政策の中に 昨年12月議会でも取り上げた「宇宙」に関して「宇宙・ロケット産業の集積について」として、ロケット・衛星開発部門の企業誘致と同部門への県内企業の参入促進について、および高等教育機関等と連携した宇宙教育の推進が記されています。更に目指すべき指針として「和歌山を「宇宙産業の基地」としていくために」が掲げられているなど挑戦的な取り組みになっていることを頼もしく思います。

高等教育機関等との連携を図ろうとしている視点を持ってくれていることは頼もしいことであり、既に和歌山大学は宇宙教育では全国的にも進んでいますから、連携することによって和歌山県イコール宇宙を強く印象付けることができますし、成果も期待できると思います。

例えば全国の「共同実験場」運営は、実質的に和歌山大学と千葉工業大学が運営しているものです。そしてプロジェクトを通じた人材評価システムの確立と企業人事部との連携を図るなど、企業連携の形も模索しているようです。

また和歌山大学では、個人としての専門家育成に加え、今の社会が必要としているのは集団として協力して力を発揮できるプロジェクトや問題対応型の人材だと考え、現場を支える技術者やマネジャー養成を主眼とした教育プログラムを開発し、高校生、大学生、社会人に向けて提供できるつくみをつくっています。

これらのことから県が中期的に考えている「高等教育機関等と連携した宇宙教育の推進」の土台は確立できつつあり、県の対応次第で、意外と近い将来において県内のみながず、全国や海外への宇宙教育プログラムの展開が可能になると思います。


宇宙教育に関わっている方が先日、イタリア在住の歴史作家・塩野七生さんの話を聞く機会があったそうです。「日本的な秀才は予測していた事態への対処は上手いが、予期していなかった事態への対処は下手なのが特徴であるらしい」と仰っていたことを伝えてくれました。

「宇宙」はそのスケール故、その未知さ故、「宇宙」を相手にするほど予期できない事、不測の事態の多いものは無いのではと思います。

そんな「宇宙」だからこそ、それを教材として学ぶことで、物の見方が広がり、スケールが大きくなり、挫折を超えてこそ身につく「免疫力」=危機管理能力のつけ方を学べるのではと思うのです。

本来、日本人は高い感性を持っていたはずです。多民族よりシナプスの数が多いのか?と思えるほど静かで深い感性を持つのが日本人であったはずなのに、今の日本人にはまるで受容体が麻痺しているかのような人が増えています。「宇宙」には、その感覚を呼び覚ます力があると思いますので、今回、中期的に人材育成、教育に生かす方針を示してくれたことは大賛成です。


宇宙・ロケット産業の集積について

ところで先ほどの関係者から、経済産業省が「宇宙産業分野における人的基盤強化のための検討会」の報告書が公表されていることを教えてもらいました。ここでは次のような指摘があります。

「近年、宇宙産業においても、技術革新や新規参入企業等の増加等を背景に宇宙由来のデータの質・量が抜本的に向上しています。「宇宙産業ビジョン2030」でも、従来の宇宙機器産業に加え、今後は宇宙利用産業の拡大のための取組を強化することで、宇宙産業全体の市場規模を2030年代早期に倍増することを目指すこととしており、そのためには宇宙分野全体での人的基盤強化を行う必要があります。

他方で、宇宙分野では、将来的な宇宙産業の拡大に必要な人材の絶対量の確保や、人材流動性の低さなどの課題が存在しており、宇宙分野のみの議論に閉じることなく官民一体となって必要な措置を講じていくことが急務となっています」とあります。

具体的には、宇宙産業分野における人的基盤強化の必要性が指摘されています。第四次産業革命における宇宙産業として、宇宙産業は2015年では世界全体で30兆円以上の規模であり、これに対し、わが国宇宙産業の市場規模は約1.2兆円に留まっていること。

「宇宙産業ビジョン2030」(2017年5月)において、宇宙利用産業も含めた宇宙産業全体の市場規模を2030年代の早い時期までに倍増を目指すためには、宇宙分野の専門人材不足が課題で、早急な対応の必要性が指摘されています。

参考までに、現状の宇宙産業分野における従事者数及び将来推計は次の通りです。

利用産業は、地球観測、衛星放送・通信、測位分野で、少なく見積もって約1,900名が従事していること。機器産業として約9,000名が従事、研究・開発が約5割、約3割が製造、残りが事務・管理部門。ベンチャー企業では、主要企業12社で約260名が従事しているようです。

今後、宇宙産業全体を倍増するためには更に人材を確保する必要があると指摘されていますから、和歌山県として宇宙教育を推進する方向性は、実に的を得ている政策だと思います。

また平成29年6月から、スタートアップ等と投資家・事業会社とのマッチングを円滑化するための場として「宇宙ビジネス投資マッチング・プラットフォーム(S-Matching)」の運用を開始しているようですから、県として考えて欲しいと思います。

質問1:ロケット・衛星開発部門の企業誘致と同部門への県内企業の参入促進と高等教育機関等と連携した宇宙教育の推進について

以上の背景から新政策として打ち出した「ロケット・衛星開発部門の企業誘致と同部門への県内企業の参入促進について」、および「高等教育機関等と連携した宇宙教育の推進について」、商工観光労働部長の答弁をお願いいたします。

答弁者:商工観光労働部長

串本で実施されるロケットの打ち上げは、日本では民間で誰もやったことがない、また世界でもあまり例を見ない最先端の事業であり、この事業を成功させることが何よりも重要であることから、まずはスペースワン社の取組をしっかり支援していきたいと考えております。

また、宇宙関連企業や宇宙に興味をもつ人材に本プロジェクトへの関心をもってもらうためには、串本、和歌山といえば「ロケット」「宇宙」と思ってもらえるような情報発信をしていくことも重要です。このため、昨年に引き続き、今年も串本で宇宙シンポジウムを開催し、この分野における著名な専門家等にお越しいただいて、県内外の関心を高めてまいります。

ロケット打ち上げ事業の成功により、中長期的には、宇宙・ロケット分野の産業が集まることが期待され、和歌山の経済を刺激するとともに、そのような産業と従来から地域経済を担う地元の産業が交流することで、新しいビジネスのアイディアが生まれることが期待されます。また、地元の子供たちにとっても、新たな産業に触れ合うことができ、大いに刺激になるものと考えられます。

このため、県としては、県外への情報発信や企業誘致活動など継続的に行い、ロケット・衛星開発部門などに関する企業誘致や県内企業の参入促進を進めるとともに、和歌山大学や東京大学、JAXAなどと連携しつつ、世界をリードする人材の育成に繋げていきたいと考えております。


昨年の県議会を終えてから早速、県からYACを訪ねてくれたように県の対応に感謝しています。宇宙関連産業も新型コロナウイルで企業活動が止まっている部分がありますので、それ以降に関連企業とも連携を図って欲しいと思います。