おはようございます。議長からお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問を行います。
今回は宇宙教育に絞って質問しますので、ご清聴、よろしくお願いいたします。
1.宇宙教育とロケット射場立地に伴う取組について
令和元年11月16日、串本町においてスペースワン株式会社主催のロケット射場の建設工事祝賀会が開催されました。
祝賀会は盛大で、知事からは「これまで和歌山で開催された祝賀会の中で最も豪華な参加者だと思います」という挨拶があり、会場の雰囲気はロケット射場建設の期待への高揚が感じられるものでした。
ロケット射場の名称は「スペースポート・紀伊」、紀伊の国(和歌山県)でのロケット事業は世界を目指す鍵になるという意味が込められています。奇しくも南紀白浜空港のコンセプトも「世界のKIIへ」ですから、このロケット射場も南紀白浜空港も世界を目指す紀伊(の国)を掲げることになります。
初号機打ち上げは令和3年ですから、もう2年先には和歌山県からロケットが発射されることになります。本州で和歌山県串本町を超える適地はなく、民間における宇宙進出の分野で他に追従を許さない先進県となります。
また、令和3年は和歌山県誕生150年という年でもありますので、和歌山県の記念すべき年にロケットが発射されることは、この上ない栄華なことであると思います。
さて来賓の中には、JAXA山川理事長を始めとする理事や役職の方が多数参加していました。祝賀会の前日、和歌山県出身の元JAXA役員の上野精一さんの「お別れの会」がJAXA今井理事と東海大学坂田名誉教授が発起人となり、東京で開催されたのですが、そこに出席した山川理事長を始めとする役員や元役員、職員の方々が串本町に来てくれていたのです。
その「お別れの会」では、ご自身も和歌山での宇宙教育に関わってこられた上野さんの奥さんが僕の弔電の内容に感動し、同じく和歌山での宇宙教育を支えてくれた司会担当のJAXA岩本部長が会の最初に読み上げてくれたことを知り、JAXAの方々と宇宙教育についての話を交わしました。
僕が和歌山県における「宇宙」を意識したのは平成21年でした。当時、上野精一さんと上野敦子さんと、次のような話を交わしました。
当時は、宇宙を、そしてロケット発射場を和歌山県の、特に紀南地域の起爆剤にと言う私達の発想を真に受ける人はほとんどいませんでした。「そんな夢みたいなことを」と冷ややかな反応で、最初は地元でも皆に笑われました。
当時、「宇宙が和歌山にやってくる」と命名したプロジェクトを「また夢が始まった」と笑う人が大半でしたが、ロケット射場の誘致が現実味を帯びた現在、「夢が叶ったね」と上野さんは喜んでくれていました。
JAXA宇宙教育センターと協同して和歌山大学が取り組んだ宇宙教育プログラム「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」の設立は、同大・観光学部と宇宙教育研究所がタッグを組んで進め、時間をかけて少しずつ「宇宙」を和歌山に浸透させる結果となっています。
上野精一さんへのオマージュの意味を込めて、この経緯を振り返ります。
和歌山における「宇宙」の始まりは、平成21年5月29日から6月14日、「宇宙が和歌山にやってくる」の開催でした。
「宇宙が和歌山にやってくる」の盛況ぶりと反響の大きさに目を見張ったJAXAの協力を得て、同年12月27日、宇宙へ出発する準備に入る直前の山崎直子宇宙飛行士の参加への許可を取りつけ「宇宙飛行士さん・こんにちは!〜宇宙へ出発間近の山崎直子さんとライブで交流〜」を開催しています。
平成22年3月に打ち上げられたペースシャトル「アトランティス号」で国際宇宙ステーションへ向かった山崎宇宙飛行士と、和歌山の会場にいる子ども達をインターネットでつなぎ、ライブで交流を行うイベントでした。3ヶ月後に宇宙飛行士としてスペースシャトルに乗り込むことが決定していた山アさんが和歌山県の子ども達と交流、和歌山の子ども達は当日が誕生日であった山崎さんにサプライズのバースデーケーキを用意、山崎宇宙飛行士は大感激でした。これから宇宙に旅立つ人とのそのような触れ合いが子ども達の心に残したインパクトは鮮烈で、画期的な経験になったことと思います。
ここでは山崎宇宙飛行士とのライブの交流を通して、子ども達の冒険心や好奇心を引き出し、宇宙への夢や科学する心を育てる宇宙教育「子供の心に火をつける」の一環として行われたものですが、「宇宙」の持つ魅力とインパクトが和歌山の子ども達の心に火をつける瞬間を目の当たりにさせてくれた最初のプログラムであり、これが和歌山に宇宙教育を定着させていくきっかけとなりました。
この企画は宇宙航空研究開発機構、以下、JAXA、と和歌山大学、及び日本宇宙少年団( YAC・ヤック)、日本宇宙少年団和歌山分団らが連携・協力して実現したものです。
平成22年7月31日、和歌山大学観光学部は、JAXA宇宙教育センターと連携し「JAXAタウンミーティング & ユース・スペース・プログラム in 和歌山」を開催しています。
これは、宇宙教育を推進していた和歌山大学の提案により、従来のJAXAタウンミーティングと宇宙教育を融合させたJAXAにとっても初めての試みでした。宇宙を「無限の可能性を持つ教材」と捉え、「宇宙」と言えば「理科・理系・理数」と限定されがちな既成概念にとらわれることなく、広く「外国語教育・環境教育・平和教育・芸術」等の分野にもその可能性を広げ、和歌山県教育委員会、和歌山市教育委員会をはじめとする地域の教育機関、行政機関の協力を得ながら、和歌山発となる「新しい教育システム」の構築を目指すことを目的としたものです。
実施内容は、第一部は「ユース・スペース・プログラム」としてJAXA宇宙教育センターによる宇宙の魅力と宇宙開発に関係する仕事を紹介しています。日本代表として「ボーイング教師のためのスペース・キャンプ・プログラム」に参加した、県教育委員会教師による「宇宙授業」、これは「宇宙が持つ教材としての無限の可能性」、「理系に限らず文系も求められる新しい産業分野としての宇宙の可能性」などを学ぶ機会となりました。
第二部は「JAXAタウンミーティング」で登壇としては仁坂知事、樋口清司JAXA副理事長、そして上野精一JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部事業推進部長でした。ここで役職名は当時のものとして紹介しています。
宇宙航空研究開発全般から宇宙開発が国民にもたらす具体的な利益や新しい産業分野としての宇宙開発の可能性に至るまでの議論を交わしています。
JAXAが手がける宇宙航空研究開発の成果を、宇宙教育研究所も開設した地元和歌山大学が取り組む「宇宙教育を基盤にして地域再生へ活かす」と云う観点から、タウンミーティングと宇宙教育プログラムを融合することで「宇宙をキーワードに教育から地域活性化までをリンクする具体的な形を示す」という新たな試みとして開催したのです。
また平成22年4月に開設された和歌山大学「宇宙教育研究所」が、同年6月13日の小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還の時のカプセルが大気圏に突入した時の様子をインターネット中継して文部科学相から表彰されています。そんな宇宙教育において注目を集める和歌山大学の取り組みを、地元に広め浸透させ、「宇宙をキーワードに教育から地域活性化までをリンクする」という新しく挑戦的な試みもこの場で伝えています。
そこで示された「宇宙をキーワードに教育から地域活性化までをリンクする」という発想こそが、宇宙教育によって「宇宙」への理解や認識、期待が育まれた土壌(和歌山県)にロケットの射場誘致という流れを作ったと言っても過言ではありません。
続けます。和歌山県教育委員会では、平成22年10月8日から10月10日まで、JAXA筑波宇宙センターでの「JAXA教師のためのスペースプログラム」に教師を参加させています。
この取り組みは和歌山大学とJAXA宇宙教育センターとの共同企画で、この宇宙ホンモノ体験プログラムと教員研修を組み合わせることで、教員に対して大きなインパクトをもたらす経験と共に、「宇宙」の教材としての利用を啓発する、「教員のためのJAXAスペースプログラム(JSPFE)」として企画したものです。
ここに参加した教師には、宇宙の持つ教育素材としての無限の可能性を実感し、宇宙教育及び宇宙を切り口とする教育への理解と興味の増進を図り、加えて「宇宙」を教育素材として提供することにより、児童生徒の理解促進及び教員の指導方法の広がりに貢献することが期待されました。
この研修会には私も一部参加しましたが、考までに、研修内容は次のようなものがありました。
講義として、宇宙開発と宇宙飛行士(閉鎖環境心構)、宇宙飛行士訓練体験プログラム、宇宙教育センター長かに「宇宙教育とは。実技として、宇宙教材実習「宇宙服を体験しよう」、「音響体験」など)。講義と実習として、宇宙素材の宇宙教育への活用及び教材実習、宇宙教育の活用方法の提案とレポート作成などでした。
続いて平成22年11月15日の出来事です。
10月の「JAXA教師のためのスペースプログラム」に参加した和歌山の教員等が、つくば宇宙センターでの経験に基づき当初の期待以上に素晴らしい宇宙教育の活用方法を示したことで、「宇宙」と「教育」をリンクさせることの有効性・有用性を納得したJAXA宇宙教育センターと和歌山県教育委員会は、全国初となる宇宙教育活動に関する連携協定を締結しました。
この協定は、それまでも和歌山県での宇宙教育に関する多様なプログラムを実施する元になるものとして、宇宙教育プログラムの開発支援など、JAXAの教育活動に対して協力していた和歌山県教育委員会との協力関係を確固たるものとし、さらなる宇宙教育活動の発展を目的とするため締結したものです。
宇宙を素材とした教員向け研修プログラムの開発及び実施、社会教育支援、学校教育支援などの活動を通じて相互の関係を深め、宇宙教育を推進することを目指す決意の表れでした。
翌、平成23年3月31日、先に締結された「宇宙教育活動に関する連携協定」に基づき、JAXA宇宙教育センターと和歌山県教育委員会は、前年10月に実施した「JAXA教師のためのスペースプログラム」に参加した教師を「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」に委嘱し活動をスタートさせました。
JAXA宇宙教育センターは、さらなる宇宙教育の推進に向けて、全国に波及できるようなモデルとなるよう、和歌山県におけるこの取り組みに協力してくれることになった訳です。
ここで思い出すのは、当時の山口教育長の言葉です。
つくば宇宙センターで行った試験的プログラムで、教師が見せつけたプロの教育者の実力と輝きを目にした山口教育長は「今の先生達は、学級崩壊やモンスター・ペアレンツへの対応などに忙しくて本来の教育に専念できず疲れ切っています。その先生達のこんなに生き生きと幸せな顔をみるのは久しぶりです」と感激され、和歌山県とJAXAの間で全国初の宇宙教育協定が締結されることになったのです。
教師が生き生きする姿は子ども達に伝わります。教師の輝き、教師の意欲と熱い想いがその教師から教えを受ける子どもの心に火をつけるのです。
初代「JAXAスペースティーチャーズ」に選ばれた先生方から宇宙教育を受けた子ども達はきっと楽しく学習をして、宇宙と宇宙教育を通して日本の技術の素晴らしさと日本の凄さ、それを支える日本人の心を学んだことだと思います。
今から10年も前から和歌山県教育委員会が宇宙教育を推進し、今日の基礎を築いているのです。上野さんの呼び掛けに応えた和歌山県教育委員会は、今日を予測するかのように実に先見性があったと思います。
早くから宇宙を取り込んできた和歌山県の斬新な教育が、地元に宇宙を産業として受け入れるための素地を作ったと思います。
今更ながらですが、元JAXA役員の上野精一さんは和歌山県の宇宙教育のために、故郷への熱い想い胸に心ある取り組みをしてくれていたと思います。
子ども達に宇宙に関心を持たせることによって、それを教育に活かす宇宙教育プログラムを作り、そのプログラムを古から日本人の精神性を育んできた地である故郷・和歌山で実践することで子ども達の能力がより高まる、世界に通用する日本人らしい心を持った人材を育てよう、そして和歌山から始まった宇宙教育プログラムが日本の教育の新しいスタンダードになることを目指そうと考えてくれていたのです。
このような上野精一さんの理念で始まった和歌山県の宇宙教育をさらに発展させることが、後を託された者たちの責務だと考えています。しかも民間ロケット射場が実現することになり、和歌山県のこれからの働きかけによって、和歌山県・紀伊半島を宇宙教育実践の場にすることができるのです。
上野さんが描いた宇宙教育プログラムは、全国だけでなく海外も視野に入れています。和歌山県とJAXAとの間での、宇宙を素材とした教員向け研修プログラムの開発は普遍性を持たせ、そこに実地研修の場を持たせることで、和歌山県で宇宙教育プログラムを学ぼうと、全国から、海外からも教師や生徒を呼ぶことが可能となります。
上野さんは、日本を、日本人であることを心から誇りに思えるために、日本を背負って仕事をする日本人には、日本とその文化や精神性に対する確固たる想いと誇りを持って欲しいと願っていました。
今ここに来て、日本には今まで以上に世界の中における立場と存在価値を明確にすることが求められています。それ故に、尚更に、全国で最初に宇宙教育プログラムを手がけた和歌山県教育委員会は、その宇宙教育プログラムを通して立派な日本人を育て、その有効性を全国の教育委員会に示していかなければならないと思っています。
教師がやる気と元気を取り戻し、日本人としての確固たる誇りと自信、精神と哲学を持って教壇に立ってくれれば、それはあっと言う間に全国の青少年に波及し、一気に日本の未来を明るくしてくれるはずです。
わが国が国策として進める宇宙産業を支える社会の意識と担い手を育てることはもちろん、上野さんと交流のあった東海大学坂田名誉教授が唱えられている宇宙に対する「One Japan」の体制を築くためにも、そして、戦後教育ですっかり萎えてしまった日本人としての誇りを取り戻すためにも、教育による啓蒙、啓発は不可欠と思います。
宇宙には人の心を揺さぶるとてつもない力、魅力があることは、和歌山県において試験的に行われた教育プログラムでも明らかでした。ですから宇宙を素材とし文系・理系の枠を超えた「宇宙教育」を和歌山県として継続すべきだと考えています。もちろん、「宇宙教育」は宇宙の事だけを教える狭義のものではないことは言うまでもありません。
和歌山県には「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」が存在しています。なんと言っても「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」は和歌山発で全国初、和歌山県は宇宙教育においては先駆者なのです。この取り組みは和歌山県固有のもので全国に誇れる教育です。
今、中央では、JAXA内でも宇宙関連企業の間でも「上野さんの意思を継ごうと、宇宙教育に注目が集まっているらしい」、「なんと言っても山川理事長は教育者ですから」ということが聞こえています。
ここで伝えたいと思います。この分野で和歌山県は10年前から「宇宙教育」を始動しているトップランナーなのです。
上野さんは、「和歌山県で実施している宇宙教育を教育のシステムとして確立し、全国に、そして世界に展開できる。和歌山県では教育から始まった「宇宙」という希望や夢が10年かけて育まれロケット射場の誘致にまで繋がった。「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」は、このままではもったいない。これを「全国に、世界に」という当初の目的に向かうべき。そうすれば、多くの人が全国から世界から和歌山を目指すようになる」と言われていました。
和歌山県は「宇宙教育」のトップランナーですから、上野さんが伝えてくれているような取り組みになることを目指すべきだと思います。
和歌山県の底力はそれだけに留まりません。紀南には世界遺産の紀伊山地・熊野があります。日本人の心・精神が宿る紀伊半島で研修を受けることによって、あの空海も紀伊半島・高野山で宇宙と繋がったように、和歌山県以外では体験できない宇宙教育を展開できます。全てが包括されている宇宙は「和」なのです。「和」は日本人の精神性の根幹です。その精神が宿る紀伊半島・熊野で宇宙を実感し宇宙に繋がることは、日本人の心を学ばせる宇宙教育に欠かせないことになります。
ここで宇宙飛行士の若田光一さんの話も聞かせてもらいました。若田宇宙飛行士が東洋人初の国際宇宙ステーションのコマンダー(指揮官)として高い評価を受けた最大の理由は「和の精神」を掲げてクルーのチームワークを図ったことにあるそうです。15の国で運用する多国籍の国際宇宙ステーションにおける若田さんのコマンダーとしての成功は、若田さんが日本人であり、外国人同士であっても仲間であるという「和の精神」を持っていたからです。
現在「エデュケーション・ツーリズム(学びの観光)」が観光の新領域のひとつとして注目を集めていると聞いています。もし、宇宙教育プログラムが完成し、実地研修ができる環境を整えることができたなら、全国から、海外からも「スペース・エデュケーション・ツーリズム」の候補地として和歌山県が選ばれることになります。
人の「意識」も植物と同じで、種を蒔き、気持ちを込めて育てればしっかり育つのだと思います。その「種蒔き」が「教育」、しかも「情緒教育」などです。
真、善、美、思いやりの。これ感じることができる日本人独特の感性を『情緒』といいます。
花を見て『綺麗だな』と思うこころが『情緒』です。最近の教育にはここが欠けています。
「情緒」を感じる青少年でなければ、『情緒』を教えておかなければ、正しい『宇宙教育』は理解できません。これをしっかりとしていなければ、本物の人材を生むことはできません。
時は飛んで平成30年10月13日。國學院大學 渋谷キャンパス百周年記念館記念講堂で「古事記に学ぶ日本のこころ〜古事記と宇宙」の講演がありました。本当に素晴らしい内容の講演でした。
上野精一さんの宇宙と宇宙開発に対する理念と想いを上野さんの資料をもって上野敦子さんが伝えています。この時、上野精一さんは病気療養中だったことから上野敦子さんが講演することになったのですが、お二人の合作は聞く人を諭してくれるようで感動の講演でした。
この中で宇宙飛行士の語った言葉が紹介されました。一人はアポロ14号のパイロットのエドガー・ミッチェルの言葉です。
「最高の喜びは帰路に待っていた。窓から2分ごとに地球、月、太陽が見えた。そこには、見渡す限りの広大な宇宙空間。圧倒されるような経験だった。
そして私は気づいた。己の肉体の分子も、宇宙船の分子も、クルー仲間の肉体の分子も、すべてはつながっていて一体なのだと。 他と私ではなく、万物は一体なのだと。
私は恍惚感に包まれた。 真の自己に、悟りに、触れたのだ」というものです。
もう一人がアポロ8号と13号に乗船したジム・ラヴェルの言葉です。
「我々は月を知ることで、実は地球について知った。遠く離れた月で親指を立てると親指の裏に地球が隠れる。すべてが隠れる。愛する人たちも、仕事も、 地球が抱える問題も すべて隠れてしまう。
我々は何と小さな存在だろう。だが、何と幸せなのだろう。 この肉体をもって生まれてきて、この美しい地球で人生を謳歌することができて」という言葉です。
そして感動したのが、JAXAの月探査機「かぐや」が撮影した月の地平線からの「地球の出」の動画です。音も色も何もない荒涼とした月から見た地球。蒼い地球が灰色一色の月面から真っ暗な宇宙空間に姿を見せる瞬間の美しさはまさに感動。感動という言葉以外、適切な言葉は見つかりません。
「地球は宝石のように美しい奇跡の星」。
上野さんが地球を表現した言葉ですが、上野さんの言葉通り地球は宇宙における奇跡であり宝石だと思います。地球から見た月はきれいですが、実際は人が住める星ではなく荒涼とした灰色の星です。しかし月から見た蒼い地球は実に美しく、宝石のようで、真っ暗な宇宙に浮かぶその姿は当に「奇跡の星」だと思います。
その地球に命を与えられている私達が悩むこと、争うこと、言い合いすることなどは取るに足りない小さなことだと気づきます。宝石を包むように、相手を包むような優しい心で接することこそ、私達がすべきことだとも感じさせてくれます。
そして上野精一さんの想いはこう締め括られました。「古からお天道さんを拝み月を愛で、地球の自然に添って有り難い有り難いと感謝して生きてきた日本人、そのような日本人の精神が地球に暮らす全ての人々に浸透すれば、この世界から争いや破壊が消えるのではないでしょうか。宇宙から地球の美しさを見るとそれが分かるのです」と。
宇宙から見た地球は小さな存在ですが、その美しさは他にありません。比類なき唯一無二の美しさです。同様に、地球の中の日本は小さな存在ですが、その凛とした精神とその精神を育んだ深く豊かな自然の美しさは特別です。日本人の価値感が世界に広がれば、平和な世界が実現すると思います。宇宙を知る教育は、日本人の精神の崇高さを知り、それを世界平和へとつなげるものなのです。
日本の中の和歌山県は小さな存在ですが、ロケット射場が実現しますし、JAXAの協力を得て「宇宙教育」を実践している県でもあります。和歌山県は高野山や熊野に代表される古からの崇高な精神と文化を有してもいます。宇宙に視点を置くことで、和歌山県が誇り世界遺産としても認められている「優れた精神性が宿る地」としての価値を、全国に、そして世界に発信できると確信しました。
「古事記と宇宙」の講演を聴いて、地球環境と平和を守れる精神性を有している和歌山県こそ日本の代表県であり得る、「日本人の心を世界に発信する拠点」となるべき県だとも感じました。
僕が紹介したこの講演を聴いた一人の方から、「古事記と宇宙を組み合わせたセンスの良さと未来志向の考え方に感動しました。こんな方がいるのですね。歴史を学び日本人が持っている精神性を理解すること。そして未来にその価値を伝えていくための活動を行うこと。それこそ私達が求めている価値観です。日本人のあり方を実に見事に解説していますし、世界の中の日本、日本の中で和歌山県が存在していることに価値があることを伝えてくれる素晴らしい講義でした」と意見をいただきました。
日本人が日本人であると言えるのは「自然を崇拝する精神性を宿す国と云う世界の中での日本の存在意義を認識していること」だと思います。そして、その日本の中でもその精神性を深く雄大な自然の中で育んできた紀伊半島の存在意義を誇りに思える人でありたいと思います。
平成31年3月25日。前年から上野さんに依頼をしていた講演会を和歌山市内で行いました。東京から来てくれた上野さんは、その時、体調が優れないように見えましたが、90分の講義と参加者からの質疑に応えてくれました。
嬉しいことに講演会場には、平成22年に開催した「JAXAタウンミーティング & ユース・スペース・プログラム in 和歌山」に参加していた少年も来てくれました。当時、小学生だった彼が今では高校生になり、あの時と同じように上野さんに質問をしたのです。そして、彼は講演を終えた上野さんに歩み寄り、宇宙産業の担い手となることを目指していると伝えました。
10年前から実施している「教育の成果が表れている。「宇宙教育」はもっと推進すべきだ」と感じた瞬間でした。
上野さんは僕に「今年3月末でJAXAを退職しますが、和歌山県にロケットの射場がやってきます。だから引き続き故郷和歌山県の「宇宙教育」に関わっていきたい」と話してくれました。
僕が上野さんに会ったのは、これが最後となりました。
串本町で開催された祝賀会に、「上野さんも来たかっただろうな」と思いながら、JAXAの皆さんと上野さんの思い出話、そして、これから和歌山県でその意志を実現させることについての話を交わしました。
以上の経緯に基づいて質問をいたします。
和歌山県の「宇宙教育」は 「宇宙をキーワードに教育から地域活性化までをリンクする」という新しく挑戦的な試みとして、知事も登壇者として出席した「JAXAタウンミーティング & ユース・スペース・プログラム in 和歌山」からその取り組みをスタートさせています。
前回の東京オリンピック誘致に関して、「東京にオリンピックを呼んだ男」と言われているのが故郷の偉人、和田勇さんです。地元が和田勇さんを誇りに思っているように、上野精一さんのことを「和歌山に宇宙を呼んだ男」であることを誇りに感じて欲しいと思っています。
もちろん、JAXAで残した功績も大きく、現在稼働している宇宙からの防衛システム構築の要として上野精一さんの存在は不可欠であったそうです。上野精一さんが日本の誇りを背負って国内外で活躍した人物であることは言うまでもありません。
知事の高校の後輩でもある上野精一さんが、命をかけて和歌山県に残してくれたのが「宇宙教育」です。和歌山県内においてこれまで実施してきた「宇宙教育」の取り組みとその成果について、教育長にお尋ねします。
宇宙教育の取組とその成果について、でございます。
県教育委員会では、JAXAと連携協定を結び、学校への出前授業や、高校生の種子島宇宙センターへの見学を実施してまいりました。また、連携協定にお力添えいただいた、当時JAXAの事業推進部長であった上野精一氏には、県教育委員会主催の講演会において、高校生などに対して、宇宙に関する夢を熱く語っていただきました。さらに、JAXA主催の「教師のためのスペース・プログラム」に本県教員が参加し、これまでJAXAスペースティーチャー和歌山として活躍してまいりました。
公益財団法人日本宇宙少年団の和歌山分団では、水ロケットの製作や打ち上げの指導、勤務する学校では、NASAで評価を受けるような教材を開発し、授業や部活動の指導に生かしております。
今後も、スペース・プログラムのような研修の機会を与え、学ぶ意欲のある教員を支援していきたいと考えております。
また、高校生が模擬人工衛星を打ち上げる缶サット甲子園では、全国5カ所で予選会が開催されていますが、缶サット及び打ち上げ用小型ロケットまでも自作しているのは、和歌山を含め2カ所しかございません。和歌山大学宇宙教育研究推進室の協力を得ながら、近隣府県からも多くの高校生が参加し、高いレベルの競技が行われています。昨年度は桐蔭高等学校が全国優勝し、イタリアで開催された世界大会に出場しました。このとき中心となった先生は、初代JAXAスペースティーチャーの一人です。また、向陽高等学校は、缶サットの技術についての研究を、京都大学サイエンスフェスティバルで発表し、最優秀賞にあたる総長賞を受賞しました。
このように、本県では、宇宙やロケットに関する教育に早くから取り組み、その成果として、旺盛な意欲・関心と高度な知識・技術を有する生徒が育ってきております。
ロケット射場が運用を開始した後は、観光振興と共に宇宙を切り口とした教育に力を入れるべきだと思います。これまで宇宙教育に関する協定や教師の育成、講演会などの積み重ねがありますから、その土壌はできています。
ロケットの実機に触れる機会を持った宇宙教育にすれば効果は更に上がりますし、全国から教育関係者が訪れることなるモデル地域となります。今後の宇宙教育にどう生かそうと考えているのか。教育長にお尋ねします。
今後の宇宙教育にどのようにして生かしていくか、でございます。
こうした取組や成果がある中、串本町が日本で最初の民間ロケット射場として選ばれ、今後、子供たちがロケット発射の様子を直接見ることができるようになります。その迫力や高度な技術を間近にすることで、大いに刺激され、好奇心や探究心、地元に対する誇りが生まれるなど、学習の幅が広がるものと期待します。
この夏に開催された「宇宙シンポジウムin串本」には、近隣の中学生や高校生が多数参加し、地元にできるロケット射場への期待や夢を膨らませたことと思います。
県教育委員会としましては、地元教育委員会や関係機関と連携し、本県の子供たちの、宇宙をはじめとする科学への興味・関心はもとより、地域貢献への意欲や国際的な感覚を培うなど、多方面にわたる学習意欲の喚起に繋げてまいりたいと考えております。
お配りしている資料にあるのが、筑波宇宙センターで研修している時の教師の写真です。この表情、目が山口教育長を感動させたのです。このような教師が「スペースティーチャーズ」として活動していることを知って欲しいと思います。
さて、宇宙教育は和歌山県こそ、その舞台に相応しい地域だと考えています。串本町の背景にある世界遺産「紀伊山地・熊野」が持つ優れた精神性と共に宇宙を学ぶ企画は「エデュケーション・ツーリズム」(教育観光・学びの観光)に適していると思います。
空海が高野山から宇宙に繋がったように「宇宙」は神々に通じるものでもあります。観光面から「宇宙」と「神々の宿る紀伊山地・熊野」を組み合わせた「スペース・エデュケーション・ツーリズム」の企画の実現を図って欲しいと思います。
これまでJAXAとの連携が図れている訳ですから民間ロケットビジネスが開始した後は、和歌山県としてJAXA、そしてスペースワン株式会社との間で「宇宙教育」に関して連携を図って欲しいと思います。
和歌山県としてJAXA、そしてスペースワン株式会社と連携を行い「宇宙教育」として紀伊半島を「スペース・エデュケーション・ツーリズム」の拠点にして欲しいと思います。
ついては、これらを視野に入れた県の教育旅行誘致の取り組みについて、商工観光労働部長にお尋ねいたします。
教育旅行は、将来のリピーターになりうる国内外の児童・生徒に「和歌山の魅力」を知ってもらう絶好の機会であることから、現在、市町村、県及び県観光連盟等で構成する体験型教育旅行誘致協議会を設立し、誘致に取り組んでいます。
これまでも、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の保全活動をテーマにした学習プランをはじめ、和歌山の特色ある観光資源を活用した教育的効果の高いテーマ別学習プランに、地域の人と交流する民泊体験を組み合わせた「和歌山ならではの教育旅行プログラム」をセールスポイントとしてきました。
このため、教育旅行誘致の実績についても、昨年度、国内63校、海外36校の計99校と年を追うごとに順調に伸びてきているところです。
このような状況のもと、串本町にロケット射場ができることは新たな「和歌山の魅力」となり、観光面でも大きなインパクトがあるものと期待しております。
今後、ロケット射場が完成した際には、「宇宙やロケットに関する教育」の取り組みも踏まえつつ、世界遺産をはじめ和歌山の特色ある観光資源を活用した既存の教育旅行のメニューに加え、宇宙をテーマとした学習プランも取り入れることにより、更なる教育旅行の誘致に努めてまいります。
平成21年に企画し実行した「宇宙が和歌山にやってくる」が実現しようとしています。
ロケット射場立地に伴う和歌山県の取り組みについて、次の三点についてお答え下さい。
- 串本町で起工式に出席した知事の思いについて。
- 観光面や施設整備での取り組みについて。
- 「宇宙教育」に生かすことについて
知事にお答えをお願いします。
11月16日、串本でスペースワン株式会社によるロケット射場建設工事の起工式が行われました。県議会議員の皆様や、自由民主党の二階幹事長をはじめとする県選出国会議員、地元関係者、キヤノン株式会社の御手洗会長などにご参加いただき、国家プロジェクト級の陣容となったことから、国内初の民間ロケット射場への大きな期待が表れていると思います。
また、同日、「スペースポート紀伊」という射場名称が発表されました。この名前は「宇宙への扉を開き、宇宙と地球を繋ぐ新たなゲートウエイとしての鍵、KEYとなる射場だ」という意味も込められているというふうに説明されました。紀南地方が宇宙へのゲートウエイになるというのは、大人から子供まで、全ての県民にとって「夢」のある話と考えております。私は聞きながら、アルファベットで「SPK」だから、勝手にSPARKと読んで、紀南発展の点火剤になったらいいなと思いながら聞いておりました。
小型化が進む人工衛星は、これからの世界を変えるようなビジネスの展開が予想されると思います。これは私の意見ですが、たぶん観測と通信・放送のスイッチング、さらに将来的にはいろんなものの制御というのが、衛星を通じて行われていくのではないかというふうに思っております。そうすると、たくさん、どんどん小さいものを打ち上げるということになりますので、ロケットが重要になってくるということになります。宇宙に運ぶロケットという事業は世界でもこれからの最先端の取組でございますので、これが和歌山県で進みつつあるというのは、大変誇らしいことであって、まずは、引き続きスペースワン社の取組を応援していかないといかんというふうに思います。
ロケットの打ち上げといいますと、必ず多くの人が見にまいります。これも県経済には大プラスであります。この際、単なる見学だけではなくて、どういうふうにして見学者・観光客の方々を、元々和歌山県にある、例えば、世界遺産である熊野古道とか温泉とか美しい自然とか、そういう近隣の観光資源と上手く組み合わせて、長く逗留していただいて、利用していただくということができるといいなと思って、PRしていきたいと考えております。
一方で、見学者がたくさんみえると、交通渋滞とかそういうことが予想されます。通常考えると、交通規制ぐらいということになるのですが、それだとあまり効果はないし、ちょっと夢のない話なので、したがって見学場というようなものをつくったり、或いはどこに車を駐めてもらって、どこに泊まってもらって、そこからこう送るとか、多少のインフラの整備を伴う地域の設計をし直しておかないと、いろいろと混乱が起こって不便なんじゃないかというふうに思っております。
そのようなことは、広域的な検討が必要であるということになりますので、県が中心となって、串本町や那智勝浦町、或いは商工団体、交通関係の機関等から構成される協議会を10月に設立いたしまして、議論を現在始めているところでございまして、これは、2021年度中に予定されている初回の打ち上げに向けて、早急に結果を出して、整理を進めたり、用意をしとかないといかんというふうに思っております。見学のための地元全体のシステム作りをしていかなきゃいかんということだと思います。
また、スペースワン社がロケットを打ち上げるということなんですが、単なる射場だけだとちょっと面白くないというところもあります。どのぐらいまでいけるかというのは、企業の問題ですから、無理なことは言ってもダメなんですが、できるだけ地元で関連施設を作ってもらったり、或いは研究部門とか組立部門をできるだけ多くしてもらうとか、そういうことをお願いしていきたいと思っておりまして、既に一番初めからお願いはしているところでございます。そういうものができてきますと、それを核として段々と関連機能や関連業界とかが集結していくはずでございます。そうすると、後で申し上げます、今日、議員がたくさん言われた、覚醒した子供たち、そしてその道を志した子供たちが地元でも働けるというところが増えていくわけでございますので、これもまた層が厚くなってくる原因になってまいります。そんなことも志していかないといかんと考えております。
それから、なんと言っても、今日議論がありました教育であります。串本と言えば、「宇宙」、そして「ロケット」だと思ってもらえるように情報発信をしていくことも大変重要でございまして、そういうことが先ほど答弁申し上げました教育旅行の誘致にも繋がってくると思います。なんと言っても、地元が一番大事でございますので、本年8月にその第1弾の取組として串本で開催した宇宙シンポジウムには、関心の高さを物語って、約600名参加してくださいました。子供たちにも大きな関心をもってもらったと思っております。加えて、同会場ではスペースティーチャーである桐蔭高校の教員に「缶サット」の取組を紹介していただきまして、大変好評でありました。
かつて、といってもちょっと前ですが、新宮がJAMSTECの「ちきゅう」の母港になった時に、JAMSTECの方々にお願いをいたしまして、子供たちにお話をしてくれということで、海洋少年をつくっていこうというふうに思いました。宇宙少年も大事でございますので、上野精一さんのご研修とか、地元の方々の大変な協力とか、それによって培われてきた宇宙教育を更 もう一つの要素、強力な要素がここに加わるわけでございますので、子供たちにどんどん色々な情報を与えてもらうということも工夫をしていけば、和歌山全体が海もあり、宇宙もあるというような、他にない教育環境が出来上がってくるんじゃないかというふうに思います。
何よりも、未来を担う子供たちにとって、ロケット打上げ事業という世界最先端の科学の叡智が集まる取組が紀南地方で実現するという明るいニュースがもたらす影響は大きいと思います。
本事業が、和歌山の子供たちに、希望と夢、故郷の誇りを与え、世界に羽ばたくきっかけとなるように、スペースワン社と連携して、今後も取組を進めてまいりたいと思っております。
【要望】
嬉しいニュースが届いています。日本宇宙少年団から、南紀地方で日本宇宙少年団の支部設立を考えているという申し出がありました。これは答弁にあった串本町の潮岬青年の家で開催された活動が契機となったものです。