令和元年6月定例会一般質問 / 質問内容

3.メガソーラーの動向について

現在、和歌山市の和泉山脈に数か所のメガソーラーの計画があります。これらの事業者はこれまでも地元に対して地元説明を実施していたようですが、同意が得られないまま推移していたと思います。ところがこの時期に来て条例に基づいた地元説明会を開催していますし、法律に基づいて現在、事業計画の公開縦覧中のものもあります。

これらの事業計画は、準備が整い次第、事業者から和歌山県に対して本申請が届くことになります。現在、進展を見せているのは、事業者は調達価格を維持するために、地元説明と本申請を急いでいるのではないでしょうか。再生可能エネルギーへの事業参画が地球環境の保全と、地元の貢献を前提としているのであれば、調達価格に拘ることなく地元同意を取り、地元を始めとする皆さんが納得できる形で事業開始をすればよいと思いますが、とにかく、地元説明会急いでいるのは間違いないと思います。

現在、国民に負担のある形でのFIT制度の見直しが図られていますし、和歌山県としても、令和二年度の政府要望にあるように、事業終了後の後始末も含めて、再生可能エネルギー事業のあり方を再考している時期だと認識しています。

昨今の集中豪雨や大型台風など自然災害が増加していることから、山林の大規模開発を伴う太陽光発電などの事業計画は、数字に表れていない過去からの地元の災害の歴史を知る方々の意見を尊重すべきだと思います。

これらのメガソーラーの計画に対して地元と事業者の思いが一致していないことから、計画の賛否を含めて問題になっていると認識しています。当初、一定規模以上の開発を伴うメガソーラー計画に対して県は、和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に基づいた対応をしていましたが、「和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例」制定以降は当然のことですが、それに基づいた対応をしています。知事は「この条例は、これまで行っていた様々な問題を一挙に解決しうる画期的なものであると思います」と語り、「住民や環境と仲良しの太陽光発電を進めていくために正しいルール」としています。

今後のこれらのメガソーラー計画に関して、和歌山県としてどのような対応をすることになるのか。地元の意向の反映度合を中心に確認を含めて、以下、質問いたします。

質問1:地元の意見の反映度合いについて

地元に暮らしている自治会、皆さんの意見は果たして反映されるものなのか質問します。地元同意がなくても説明会を開催した後に本申請を行い、意見集約を行った後に県が審議することになりますが、これらの案件に対して県条例では地元の皆さんの意見を十分に反映できるものになっているとお考えでしょうか。

環境生活部長の答弁をお願いいたします。

答弁者:環境生活部長

太陽光発電について、規模や設置場所の関係から環境影響評価や森林法等の適用を受けない場合や、事前に地域住民等に説明が行われないまま事業が実施され、トラブルが生じた事例があったことから「和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例」を制定し、太陽光発電事業を行う者は、あらかじめ計画を策定し、知事の認定を受けることとし、認定申請の条件に関係自治会等への周知義務を課したところです。

事業者から事業計画の認定申請があった際には、県が1か月間申請書等を縦覧し、関係自治会や住民等利害関係者は自然環境、生活環境、景観等、環境保全上及び災害の発生の防止上の見地から意見を述べることができることとし、出された意見に対して知事は事業者に見解を求めなければならないこととしています。

認定の可否を決する場合は、こうした意見や見解、さらに市町村長の意見、和歌山県太陽光発電事業調査審議会の意見も踏まえ、安全面、環境面、景観面及び市町村の条例等も含めた法令上の認定基準に適合しているか、科学的かつ総合的に判断することにより、これまで意見を述べる機会がなかった住民の意見が反映される仕組みとなっていると考えております。

質問2:林地開発許可制度における地元同意について

平成29年6月県議会一般質問で、農林水産部長から和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領の見解を示してもらいました。その内容は「事業者からの申請に地元自治会や隣接する土地所有者、水利組合等の同意書の添付を求めており、事業者からの申請書に同意書の添付がなければ、その申請書は受け付けません。地元自治会等が反対している限り、当該太陽光発電ができることはありません」と答弁をいただいています。

県議会における部長答弁のこの見解は変わっていないと認識していますが、農林水産部長の見解をお示し下さい。

答弁者:農林水産部長
林地開発許可制度における地元同意についてですが、平成30年3月23日に「和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例」が公布され、透明性・客観性・理論性を備えた科学的な仕組みが整えられたことにより、同条例に規定する住民の意見を反映させるための必要な措置を講じたことを証する書面をもって同意書に代えることができるとしたところです。 したがって、この条例の手続きを進めることで、これまでどおり地域住民等の意見が反映されるものと考えています。
質問3:地元同意の要否について

平成29年6月県議会一般質問で、農林水産部長は「地元自治会等が反対している限り、当該太陽光発電ができることはありません」と明言しています。

事実、太陽光発電の事業者が申請に来たけれど補正期限の延長について記者発表をしたこともあります。地元の同意書が添付されていなかったことが歯止めになっていたのです。

メガソーラー案件に関して、県条例では地元説明会の開催と意見聴取を求めるものであり同意書の添付は必要ないということです。それに対して従来は、和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領では地元自治会や隣接する土地所有者、水利組合等の同意書の添付を求めていました。

しかし現在、和歌山県の林地開発許可に関しては、条例の手続きを経れば、住民の意見を反映させるための必要な措置を講じたことを証する書面をもって同意書に代えることができるとしているという説明がありましたが、このことに関して知事の見解をお示し下さい。

答弁者:知事

「和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例」では、事業者は事業計画案を示し、関係自治体や住民に事業内容を説明し、その後、縦覧に供した上で、市町村や地域住民がその開発計画が不適当だと思えば、県に意見を述べる機会を設けるという制度にしました。

その際、県は必要に応じて専門家に意見を聴くなど、客観的かつ理論的な視点において審査されるよう手続きを制度化し、透明性・客観性・理論性を備えた仕組みを整えました。

同意という無限定なものから、住民の懸念に対して、科学的に判断をすると言うふうにしたわけでございまして、これによって地元とは何を指すんだと言うような不明瞭なものも排することができるし、かつてこの議場で提起されたように同意を得るために金銭が動くというような不合理な面も排除できると考え、同条例に規定する住民の意見を反映するための必要な措置を講じたことを証する書面をもって、同意書に代えることができるとしました。

必要な措置を講じたことを証するというのは、勝手に事業者がやりましたと言っても全然ダメでございまして、県の審査があって、審議会などで議論した結果、これだと言うふうに県が考えて、これをやりなさいと言ったものをハイやりますと言って持って来たら、それで結構でありますということになってございますので、一番初めには勿論県の考えもありますが、地元の方々、一人でも良いわけです。そういう方々の議論には全部答えるようなものでなければいけない。

ただし、住民の意見といっても、チョット不合理なものもあるかもしれません。それについては、これはチョットおかしいと言うことで、審議会などで意見が出たものについては反映できないかも知れない。

そういうような形で全部解決されたら、それで結構ですというのが新しい制度でございます。

したがって、この条例の手続きを進めることで、これまでどおり地域住民等の意見は反映されるというふうな仕掛けになっております。

質問4:地元同意について

平成29年10月16日に、ある事業者から太陽光発電所建設工事を実施するための林地開発許可申請書の提出があり、同年10月25日付で、海草振興局長から添付書類がないことから許可申請書を返却していますし、許可申請書の補正の必要性を伝えています。その後同意書の添付されることなく、平成30年3月29日付で本申請は提出されていますが、その後、取り下げられていると認識しています。

このように事務取扱要領は地元意見を聞き、地元の意向を反映する役割を果たしていたのです。このことが当時の農林水産部長の答弁の根拠であったわけです。

ところがこの要領がいつの間にか改正され、地元同意書の添付は不必要になっています。地元自治会等が反対している限り、当該太陽光発電ができることはありません」ととう答弁はその後、根拠を失い覆されたことになります。

条例制定以前は地元同意書の添付が本申請受付の要件となっていたのに対して、条例制定後は同意書がなくても受付をすることになっている。これは地元の意向を反映できないことになっていませんか。知事の答弁をお願いします。

答弁者:知事

太陽光発電条例では、関係自治会や利害関係のある住民は開発計画に対して、自然環境、生活環境、景観等環境の保全上及び災害の発生の防止上の見地から、県に自由に意見を述べるということが出来ることにしています。

これは、従来の地元同意書の場合と異なりまして、例えば自治会の多数が賛成の場合であっても、理由がおかしいと、何か自治会費を出すから黙ったとかですね、そういうのあるんじゃないか、なんていう人はですね、誰でも意見を述べることができるように門戸を開放したつもりであります。

従来は入り口のところだけで、形式要件で要件が整わないから排除しておりました。だけど、その中身についてひょっとしたら、そんなものは不合理だといって、色んな司法手続きなんかに入られると、ひょっとしたら乗り越えられる可能性もあります。したがって、もうちょっときちんとしたやり方で本県はやらないと、後で電気事業法の規制なんかでギリギリとした規制があるわけじゃありませんので危ないな、というようなことも考えて、今のような制度に変えたわけであります。

その上で、意見は勝手に出しなさい、これで終わりというわけではなくて、事業者の意見ももちろん、それに対する反論も求めますし、それが合理的かどうかについて、専門家の意見も踏まえて総合的に判断をするわけでありまして、したがって、科学的根拠のある意見であれば絶対止まるということになるわけであります。

このように、条例の手続きを進めることで、従来ありました地元とは何か、というような議論が不明瞭であるところがなくなりますし、反対を出せないようにお金が動くというインセンティブもなくなります。したがって、住民のまっとうな意見については審査に十分反映される、と考えておりまして、合理的な地元の意向はむしろより通りやすくなる、というふうに私達は思っております。

質問5:知事の見解について

仮に認定基準に適合していたとしても、地元の皆さんが不安を感じたり、生活を脅かされると感じるなど、地元自治会長の同意書がなければ、事業者からの申請があっても受け付けないのが従前の取り扱いでした。ところが条例制定以降は、地元同意が要件でなくなっていることから、地元の皆さんの意思を十分反映させることができなくなっていると感じます。

今回、地元連合自治会からメガソーラーに関して土砂災害や環境破壊の懸念があることから反対の要望が来ていると思います。また意思を表すための署名活動も行っています。知事は地元自治会からの要望があることについて。また署名を持ってきた場合、どう取り扱おうとしているのか、また認定審査においてどの程度、地元自治会からの意見を尊重するつもりなのか、知事の答弁を求めます。

答弁者:知事

片桐議員がおっしゃった、なんとなく不安、それで、よくわからないけど反対しておこうか、という風に出した反対が、制度的に安定なものかということは、たぶん片桐議員はちょっとあぶないかなという風に思われると思います。

まだ、これは、司法の問題になったことはありませんけど、とても不安定な制度です。

従って、その時に一気にやられるというわけではなくて、なんとなく不安な状態で、大丈夫かなと思ったら意見を出していただければよい。そうしたら、県庁の方は、県庁の能力があるし、申請者にもぎりぎり聞けるし、それから第三者もお雇いしてですね、そういう日本のトップクラスの方々にちゃんと判断してもらう。それによってなんとなく不安というのが、本当に不安かどうかということがわかってしまうわけでございます。

だから、なんとなく不安だったらどんどん出しなよ、というのが、今のスタイルで、それでぴしゃっと止めて、手続的にこれですということはできませんが、その代わり極めて安定的な制度を作ったということなんでございます。

で、住民の意見というのは大事なことで、自分で実証できなくても、これは危ないんじゃないかとか、それはどうよという話は当然ちゃんと聞いて議論しなきゃいけない。そういうことを可能にするような制度を作った、というのが今回の制度でございます。

まして、さっきちょっと申し上げましたように、例えば町内会で出さんといてくれ、町内会費たくさん出すからと、これで出さなかったら、むしろおかしいですよね。そういうような不合理な誘因というのは、一切廃しているわけでございますから。

従って、堂々とした議論ができて、それで、住民の漠然とした不安が正しければ、それは認められないということになるというのが今回の制度でございます。

質問6:事業者からの「申出書」について

ところで株式会社鈴鹿代表取締役から地元連合自治会に対して令和元年6月13日に「申出書」が届けられました。内容は「署名活動に法的拘束力がないこと」、「不適当な発言、内容での署名を募ることにより事業者が被る風評被害は計り知れないことから、不穏当な署名活動は到底容認できず、その署名活動の停止を求めること」、「署名活動が継続され行政に提出されたとしても、正確な情報に基づかないことから、無効であるとの弊社の見解」を申し出していることにあります。この「申出書」が届けられたことから、地元では事業者の抑圧的な姿勢に一層不安を感じているようです。それでも署名を継続して今月24日に締め切ってから以降、知事に集まった署名を届ける予定にしています。

地元連合自治会が不安に感じて和歌山県知事、和歌山市長に対して「不許可」を求める署名に対して、署名活動の停止を求める、無効を訴えている事業者からの「申出書」が届けられていることに対して。また事業者が指摘しているように、今回の署名を知事に届けても意味のないことと判断するのか。知事の見解をお示し下さい。

答弁者:知事

たぶんこれまでの答弁で、私が答えることは必要ないくらいの状況になっているとは思いますが、もう一度繰り返しも含めて申し上げたいと思います。

まさに今起こっている事態というのは、住民の例えば、同意がない、そういうものについて、それが全てであるという風なところにフォーカスされているので、それを妨害に来るというようなことだと思うんですね。そうではなくて、署名があろうがなかろうと一人でもおかしいという意見があったらそれを十分尊重してですね、審査の対象に加えていきながら、それが本当かどうかということをやっていくわけですから、漠然とした不安でも、十分実証されてないものでも、どんどん出してもらえばいい。例えば、洪水が起こらないかとか、景観がこうなるじゃないかとか、そういうのはどんどん言っていたければいいというのが今回の条例の趣旨でございます。

そういうことを権利としてむしろ定めているわけでありまして、意見の提出は住民の正当な権利であります。

それを「やめよ」というようなことを、仮に事業者が言っているとすれば、それは明らかに間違いであると思いますし、意見の提出と署名は同義ではありませんが、署名についても明らかな間違いであると思います。

署名の形でなくても結構なんで、利害関係を有する個人は意見を提出できるわけでございますから、署名をやめよという行為は、全く本当は無駄なことで、たぶん昔の旧制度を念頭に置いて、あまり賢くないことをやっているという風に私は思います。

逆に言うと、そういうことを働きかけるという業者の不健全さをよく物語っているのでないかというのが、私の感想であります。

また、署名があろうとなかろうと、意見書として取り扱うべきなのでございますので、ちゃんと署名を添えて出していただいても結構ですし、どんな形でも、例えば代表者のお名前でも個人でも、誰でも出していただければ、条例に基づいて専門家の意見を聞いて厳正に審査をしようということになってるということでございます。

質問7:地元不安のある中での計画について

そもそもメガソーラーの事業計画において、事業者が認定基準を満たさずに提出するはずはありません。地元自治会の皆さんは、事業計画が認定基準に適合していたとしても、地元として大きな不安を感じているから県への要望があるのです。

地元の皆さんが災害への備えに「不安を感じること」は、合理性があるとは言えないかも知れませんが、生活の安全、安心を求める地元の皆さんの切なる思いを聞いて平穏な生活を守りたいという願い、例え財産権の主張があったとしても、憲法上の権利として幸福追求権を尊重し衡量することも知事の責務だと思います。

地元が大きな不安を感じている中での、しかも知事が「和歌山県が守るべき」と考えておられる和泉山脈でのメガソーラー計画について、再度、知事の考え方をお聞かせ下さい。

答弁者:知事

何度も申し上げておりますが、この意見というのは司法上の裁判上の原告と被告の立証責任というものではないです。条例も意見の正当性について住民に、つまり提出者に立証しろと、どこにも書いておりません。

だから、そういう意味でいろんな意見を申し述べればいいんで、もちろんその根拠が書いてあれば、それは説得力が高くなるわけですけども、漠然としとした不安で、洪水が起こるんじゃないかとか、そういうことで十分なわけでございます。

それで、そういう不安がある中で、事業計画が進むのは如何なものかということでありますけど、事業計画が進むのと事業が許可されるのとは全然違う。

ですから、我々は事業の許可主体として、不安のあるような問題が本当にあるならば、条例上の手続きにより合理的な判断をしますから、従って、どんどん出してくださいと、思っておりますので、一切遠慮無くどんどん出していただければ、むしろ従来よりは楽になるという風に思います。

以上で一般質問を終わります。ご清聴、ありがとうございました。