2.和歌山市での集中豪雨対策について
集中豪雨時の和歌山市の排水対策について質問を行います。近年では平成29年秋の台風の時の浸水被害、台風第20号の時の浸水など、排水処理の悪さが改善されていないことが問題視されています。
今後も巨大な台風が到来することへの不安が高まり、「和歌山市ではまだ排水対策ができていないので、また浸水するのではないか」などの声が寄せられています。
ある店舗経営者は「大雨の度に店内やお店の外に同じような浸水があります。全く改善されていないのは、行政がそのことに気づいていないのか、それとも知っているけれどやらないのか分かりません。大雨に対する問題意識が欠落しているのではないか、と思ってしまいます」と話してくれました。
また店外の道路も排水ができていないので、川の中を車が走っているような状況になる時があります。経営者に尋ねると「排水管の管口が小さいので大雨の場合、その雨量処理に対応できないのです。毎回こんな状況になっているこの地域の排水対策の必要性を、行政は分かっていると思います」とも話してくれました。
菅口が小さいことで雨量に対応できない地域があることを行政は把握していると思いますが、どの地域も同じ排水能力だとすれば、比較的、雨量の多い地域は毎回、浸水することになります。
過去からの経験によって雨量の多い地域、浸水地域は把握できていますから、その雨量に応じた排水対策を講じることこそ、行政が責任を果たすということです。
飲食店では店内に浸水があると直ぐに営業はできませんし、販売店の場合も商品が水に浸かってしまうと商品価値がなくなってしまいます。浸水した後の店内の衛生管理のための清掃や消毒に数十万円も要することも聞かせてもらいました。
ですから「大雨や集中豪雨への浸水対策は即座に実施すべき対策ですし、浸水対策をしなければ行政の責任を果たしているとは言えません」、あるいは「和歌山市の治水対策は相当遅れているのではないでしょうか。大雨の都度、毎回これだけ浸水している市はないのではないでしょうか。こんな状況が続いていて対応できていないことは恥ずかしいと思います」などの意見がありました。
想定できる大雨に備えた治水対策を施して、災害に強く安全な都市を目指す。それこそ和歌山県が目指すべき都市のあり方です。
集中豪雨が多発し、ゲリラ降雨はもはや異常ではなく恒常化しています。和歌山市の下水管が処理できる一時間あたり、どの程度の計画雨量になっていますか。
これまでの地域毎の集中豪雨による冠水などの状況から地域別に排水処理機能を検討し、これまでの浸水地域への地域が耐えられる計画雨量の見直し対応すべきだと考えますが、県土整備部長にお答え願います。
和歌山市内の下水道・雨水の計画につきましてお尋ねをいただきました。和歌山市が下水道として整備をしております浸水対策についてでございますけれども、その計画の雨量といたしましては、5年確率の降雨強度でございます時間雨量50ミリによりまして事業を実施中でございます。
次にこの計画雨量の見直しについてでございます。和歌山市が市街化区域7,415ヘクタールのうち、整備対象区域としましては、6,087ヘクタールを整備対象区域として浸水対策を進めているということでございます。その整備状況でございますけれども、10年前、平成19年度末時点におきましては、整備率38パーセントということでございましたけれども、その後、浸水対策区域を拡大したということでもありまして、平成29年度末時点10年後のちょうど同じ時点でございますけれども、整備済み面積2,556ヘクタール、整備率にいたしまして42パーセントという状況でございます。
こういったことからまずは、現計画の完成を優先した浸水対策を推進していくということで和歌山市から伺っております。
平成30年7月6日、和歌山市内では大雨警報が発令され、その大雨の影響で家屋内の浸水被害などが発生しました。また和歌山市南部を流れる和田川の水位も上昇し、この周辺には避難準備情報が発令され、公共交通も混乱し、JRや南海電鉄も運行を中止するなど移動や仕事に影響を与えました。
和歌山市は市の東西がJRの線路によって分断されていることから、東部から西部に行く時、西部から東部に行く時は高架道路か地下道を利用することになります。大雨の時は地下道が浸水することがありますから、東西の交通網が分断されてしまうことが弱点です。この時も田中口の地下道が浸水したため、通行することができませんでした。
和歌山市中心部が線路によって東西に分断されていることは、大雨が降るたびに、大きな課題であることを認識させられます。抜本的な対策としては鉄道を高架にすることが考えられますが、莫大な費用を要することや工期を考えると簡単なことではありません。
大雨が降れば都市機能は混乱しますし、和歌山市中心部以外の箇所が浸水するなど、大雨への対応に関しては同じ課題が続いています。
この時は、昭和51年の観測開始以来で最大の雨量を記録したように、予想を超える大雨は私達を不安な状態にさせ、都市機能を低下させます。生活に影響を与え経済活動も止まりますし、南海トラフの巨大地震と津波への備えは大丈夫だろうかと思わされることになります。
県民サービスとは、知事を筆頭に職員さんが広報役を担い、情報を収集して事実を知り、わかりやすいように県民の皆さんに伝達することが原点です。情報発信が県民サービスの基礎なのです。
現場で収集された情報を県民の命を守る対策に結び付けていただき、実現化されますことを期待しています。実現化=情報の正しい活用です。
例えば田中口の地下道の場合、給水ポンプの電源が動かなくなった場合、陸路の援助ルートが途絶えるという現実があります。この現状の責任は誰がとるのかでしょうか。
ところで河田惠昭先生は、「日本の地下街は世界一危険! 災害研究の重鎮が大都市の「水没」を警告」で次のように伝えてくれています。
「地球温暖化とともに集中豪雨の発生頻度が高くなる環境では、地下室や地下街の浸水事故が起こる危険性はさらに高くなる。私たちはそのことに気づいて、自分で注意しなければならない。なぜなら、対策はそれほど容易ではないし、地下街は、周辺のビルの地下階ともつながっており、水が浸入する経路は複雑かつ多岐にわたっているからだ」との指摘があります。
和歌山県には地下街はありませんが、ビルや企業によっては地下施設がありますし、地下道もありますから、地下道などは集中豪雨に備える必要があります。
特に都市部の浸水対策は緊急性を帯びていますから、和歌山市においては、集中豪雨による浸水被害の解消に向けた事業の早期実施が課題です。和歌山県が目指している災害に強い安全、安心なまちづくりの取り組みについて、県土整備部長の答弁をお願いします。
和歌山市内の浸水対策を中心といたしました災害に強い安全・安心なまちづくりにつきましてのお尋ねをいただきました。
近年増加傾向にございます局地的な集中豪雨、台風を鑑みますと、都市部における浸水というのは、都市の機能低下だけでなく多くの経済損失も伴いますことから、浸水対策ということは非常に重要な課題だというふうに認識してございます。
ご指摘の和歌山市内の浸水対策につきましては、主に県が行う河川整備と、それから市が行います下水道整備がございます。
河川整備につきましては、和田川において、これまで和歌川に合流する地点から米田排水機場付近までが概成しておりまして、その上流の石関取水堰の改築、護岸整備を進めるとともに、国直轄で行っていただいております、総合農地防災事業和歌山平野地区におきまして、和田川沿川地域からの排水対策として、現在、米田排水機場のポンプの増強、あるいは農業用水路の改修などに取り組まれているところでございます。大門川におきましては、これまで市堀川合流点からJR橋までの護岸整備や河床掘削が完成し、JR橋から出水橋までの区間について、護岸整備や河床掘削を進めているところでございます。さらに、亀の川や土入川等におきましても、護岸整備や河床掘削等を進めているところでございます。
また、下水道整備に関してでございますけれども、平成29年度までに、雨水ポンプ場15箇所、雨水管渠308.4kmの整備を行ってきたところでございますけれども、現在の主な工事の状況といたしましては、和歌山市神前において和田川雨水簡易ポンプ場の設備工事を、和歌山市西庄において新堀第1排水区支線工事を、和歌山市園部において有功第1雨水幹線工事を実施しているということで和歌山市から伺ってございます。
一方、県道鳴神木広線、JRきのくに線の地下道、いわゆる田中町アンダーの排水対策につきましては、建設当時の排水ポンプ2基に加えまして平成17年に排水ポンプ2基の追加を行いまして計4基のポンプで対応しているところでございます。今後、冠水対策につきましては、今回台風第21号のこういった状況も整理いたしまして、対応について検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
いずれにいたしましても、県といたしましては、引き続き和歌山市と連携いたしまして、災害に強い安全・安心なまちづくりを目指して事業推進を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
今回の台風第21号の被害状況などの情報把握はラジオが有効でした。今回、エフエムワカヤマは、台風第21号の夜はダイワロイネットホテル和歌山にスタジオを午後10時に開設し、翌1時30分まで、翌朝は午前7時30分から午後4時まで、全ての番組の放送を中止し防災情報を放送していました。この放送はどれだけ聴いている皆さんに安心を与えたかを想像して欲しいと思います。
僕も夜間は地元のエフエム和歌山のスタジオで待機して情報を得ていました。このエフエム和歌山は防災ラジオ局の機能を持っていることから、非常時には和歌山市内のダイワロイネットホテル和歌山のサテライトスタジオを基地局としています。今回はこのスタジオを基地として台風情報を発信し続けてくれました。外出も困難な環境の下、放送を続けてくれたスタッフの皆さんの声を聞いた時、「責任ある役割を果たしてくれている」と思いました。
この放送を聴いていた人から「和歌山市にエフエムラジオができてくれて本当に良かったと思います。台風に関する情報を出し続けてくれていたことを頼もしく思います」、「停電している最中だったので、ラジオは必要な情報と安心感を与えてくれました。ラジオは身近な存在であることを痛感し、非常時の必需品だと思いました」、「高齢者は防災ラジオを備え付けることは必須だと思います、ラジオからの情報は温かく届きますし、情報がないことからの不安は緩和されるからです」などの意見がありました。
また台風第20号の時も「すでに避難している人の数を避難所ごとに教えてくれたり、南海フェリーの運航状況、鉄道の状況など事細かく、避難にあたってはスリッパの準備なども含めて丁寧に話してくれるのはとにかく凄い。信頼性の高さを感じます」という声が届いています。
今日のような暴風が吹くと防災無線の声は全く聞こえません。防災対策として防災無線、テレビやインターネットと共に、電池で放送を聴けるラジオは有力なものであることを痛感することになりました。
和歌山県の防災対策として、いま一度、防災対策のあり方を考える必要があると思います。
8月視察に訪れた高知県黒潮町では役場が全戸に非常時に備えてラジオを配布しています。災害発生時は黒潮町にエフエム局を臨時に設置して、ラジオを通じて町民に必要な情報を届けることにしています。和歌山県内各地にはコミュニティエフエム局がありますから、連携することで防災対策として、災害発生時の対策として効果を発揮すると考えます。
和歌山県は、県内のコミュニティエフエム5社と災害発生時の情報提供と放送の提携をしています。そこで、災害時におけるコミュニティエフエムの連携の状況について、また、災害時の情報提供におけるコミュニティエフエムの重要性について、知事室長の答弁をお願いします。
和歌山県では、平成25年11月に「災害時における放送要請に関する協定」を県内の全コミュニティFM放送局5局と締結しております。
この協定は、大規模災害による市町村の機能喪失、若しくはその恐れがある場合などに市町村を代替する形で、県がコミュニティFM放送局に対し情報提供することで、地域住民に発信頂くためのものでございます。
台風第21号通過時においては、市町において滞りなく情報発信がなされていたことから、県では情報提供に至っておりませんが、必要に応じ県から情報を提供してまいります。
今回エフエム和歌山では、通常の番組を変更し、気象情報、避難所情報、道路や交通機関の状況など住民の皆さんに必要な情報を届けて頂いたと聞いており、地域に密着した非常に重要な情報ツールであるとの思いを新たにしたところでございます。
〈要望〉
全ての質問に対する答弁をいただきました。
和歌山市の浸水対策に関しては下水道の整備の進捗が42パーセントですが、まずは計画通りに下水道を敷設することが安全確保のための先決だという考え方は理解できました。
ただ地域毎で対応すべきことも課題だと思いますので、今日の議論をしっかりと確認していただいて将来への備えとして欲しいと思います。
またエフエムとの連携は和歌山県とは情報連携が図れていたようですが、市町の機能が失われなかったことから、市町において滞りなく情報発信がされたため放送養成は行われなかったようです。しかし災害時の情報伝達の方法はどれだけ重複しても実施すべきものですし、実際に台風情報を放送してくれていたエフエム局があり、協定に縛られることなく柔軟に対応すべきだと思います。それが県民の皆さんの安全を守ることになると思いますから、よろしくお願いいたします。
最後になりますが、防災対策は「備えがすべてです。自然災害で想定以上のことはできません」とも言われています。今回の台風第21号を教訓とし、防災対策のあり方として、「これまで経験したことを踏まえて全ての防災対策を想定内にする」ことを目指すべきだ思います。
以上で一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。