平成30年9月定例会一般質問 / 質問内容

議長のお許しをいだきましたので、通告に従い一般質問を行います。

1.台風第21号被害への対応について

和歌山県を襲った台風第21号による被害が多数発生しています。

中でも和歌山県雑賀崎工業団地は高波の影響で工業団地内に海水の浸水があり、建物被害や工場内への海水侵入によって工作機器の補修、点検が必要となり、稼働まで時間を要する会社や、完成した製品が海水に浸かったため納品できなくなっている会社、原材料が浸かったため使用できなくなった会社など、多大の被害を受けています。

現場では想像できない現実があり、一人の経営者から「20年間、ここで操業していますが、こんな被害は初めてです」という言葉がありました。

ここで高波が押し寄せた当日の様子を動画で見せてもらったところ、玄関ドアから波が押し寄せて会社内に侵入し、あっという間にそこにあるものを流していった様子が残されていました。波の早さや侵入の様子は、東日本大震災の時の津波と同じように感じました。「津波のような高波が発生していたのか」と信じられない思いがありました。

護岸まで歩いてみたところ、護岸の一部が破損していて、その部分から高波が敷地内に流入したような状況でした。

また別の被災した会社を訪問したところ工場内に海水が侵入していました。工場内に海水が浸入し床面は土が入り、工作機械は海水に浸かった跡がありました。機械類は海水に浸かると乾かしてもそのまま動かすことはできませんから、点検、必要に応じて補修を行ってから作動させる必要があります。点検と補修をするのに相当の期間を要するため、製造に着手できないのです。休業している間は売り上げが見込めなくなり、また受注している製品の納期が守れなくなることから、災害後の対応に苦慮することになります。

工場内への海水侵入による被害の場合、火災保険が適用されないようです。売り上げの低下、修繕経費や機器入れ替えなどの経費など決算に影響することから、国や県から災害から復旧するための支援の必要があると思います。

和歌山県が造成し企業誘致を行っている雑賀崎工業団地ですから、安心して稼働できる環境整備はすべきことです。台風による高波対策を実施しておかなければ、今後の新規立地は見込めなくなります。

何よりも、和歌山県としてここに進出してくれている会社を大事にしたいと思います。

「工場内を見て下さい。大変な状況になっていますが、土曜日と日曜日で工場内の機器の安全確認ができた製造ラインから動かしています。でもモーターが浸水しているなど動かせない機器もあり対応が必要な状況です。この場所は和歌山県工業団地で、県のお誘いがありこの工業団地に進出しています。

今回、護岸の一部が破損したため高波が侵入していますが、東日本大震災以降、このような高波は予想すべきだったと思います。被害への対応と今後の安全対策を聞かせて欲しいと思います」という意見もいただきました。

企業立地を図るには、自然災害に備え万全の安全確保をしておくことが前提です。護岸の一部破損は果たして想定外だったのか、近年の海面上昇を予想して嵩上げなどの対策を実施しておくべきだったのかなど、そして元の高さで護岸の一部破損堤防を復旧するのではなく嵩上げをすることや、護岸の一部破損した壁を強化し、越波排水路が機能する構造も早急に検証すべき課題です。

そして今回、25年ぶりに上陸した大型台風だと言われていますが、地球規模の温暖化が原因だとすれば、毎年、同規模の台風が到来することは予想されます。今回の被害から復旧しても、また来年も同規模の台風が到来した場合、同じような被害を受けないためにも、最低限、台風第21号の規模を想定した対応を実施すべきだと考えています。

次回、今回と同じ規模の台風に襲われた時、今回と同じような被害を被ることを絶対に回避し、安心して働ける環境と、この場所で工場を稼働できるような対策を講じておくべきです。

護岸の一部破損に関しては、高さが違う堤防があったことや消波ブロックが設置されていなかった箇所があったこと、高波が堤防を越えて護岸の一部を破壊して侵入したことから越波排水路の機能が果たなかったなどの問題が考えられます。

この現実があることを想定外で逃げるべきではないと思います。東日本大震災の津波被害から考えておくべき堤防、護岸の安全対策は講じておくべきですし、県工業団地に進出している企業と共に防災対策を協議しておくべきだったと思います。

巨大災害は何時到来するか分かりませんから、十分過ぎるほどの備えは必要です。そして東日本大震災以降は想定外の出来事はなく、津波や地震、台風や豪雨など、これまで発生した全てのことが想定内になるよう対策を立てておく必要があります。

質問1:雑賀崎工業団地の護岸の一部破損の原因について

台風第21号による雑賀崎工業団地の護岸の一部が破損し、ここに立地している会社に大きな被害が発生しています。護岸の一部破損の原因についてどう分析しているのでしょうか。知事の答弁をお願いします。

答弁者:知事

被災した施設は、まず護岸を築きまして、その護岸の外側に消波ブロックで波を砕き、その飛沫がたまには入ってくると考えるものですから、護岸の背後に越波排水路に溜めるような装置を作って、海に排水する、もう一回戻すという構造になっております。

施設の被災原因は、現在、詳細に調査を進めているところでありますけれども、今回、和歌山市で観測史上最大となる猛烈な風が吹いた、台風が来たということで、非常に大きな波が消波ブロックを越えて、本来、波が直接あたらない越波排水路の内側の壁を波が直撃したことが、民間企業の施設損壊の原因と推測いたします。

この護岸の高さは、あるいは構造は、一定の想定のもとに、台風とか高潮とかそういうものが来るだろうから、それを防がなければいけないということでやっていたわけでございますけれども、今回は時間的にまず潮位が高かった。それから台風がとてもきつかったので、低気圧で潮位が上がった、それから風が吹いたという色々な条件が加わってしまいました。

潮位が上がると言うことについては、テレビなんかで見ておりますと、神戸港とかそういうところでは高潮でザバザバザバザバと水が入っていくというところも映っておりましたが、和歌山港に関しては、そこまではいかなくて、水面だけの問題を言えば今の構造でも防げたわけです。

ところが風がとても強かったので、さらに高くなっている潮位の上から風で吹かれた波がどーんと来て、壊してしまったというのが原因だと思います。先ほど、この辺は消波ブロックがなくてあの辺は、とありました。これも、私が事後に聞いた話ではございますが、想定に基づいて無駄な工事をしないで、ある意味ではキチキチの工事をしているんだというふうにその時は思いました。ところがずっといきますと、そこももちろん越えているのですが、高いところ、護岸が高くなって消波ブロックをたくさん積んでいるところも越えております。

つまり、ある意味では想定の、この島影があるから少なくとも良いと当たっていたのかもしれませんが、全体としての強さが大きすぎたと思っております。

この結果、特に堤防の1列目にある事業者に一番被害を与えてしまいまして、これは大変残念なことだというふうに思っております。

また火災保険に加入していた場合、台風被害の補償は適用されますが、海水浸水による被害は適用外となることを聞きました。

質問2:被害を受けた企業への緊急支援について

台風第21号により雑賀崎工業団地で被災した企業に対する緊急的な支援をどう考えていますか。

県が誘致して立地してもらった企業であることから緊急の対応が必要かと思います。今回の対応が今後の新規立地にも影響するかと思います、知事の答弁をお願いします。

答弁者:知事

被害を受けた企業の支援でございますが、これは最低限しないといけないということで、和歌山県下全体で大変な被害が出ております。第20号では特に豪雨による宿泊施設への浸水被害が大きかったが、今度は、工場等への越波など大変な被害がございまして、商工関係の被害だけで現時点で把握しているだけでも633件、約33億円の被害と把握しております。

こうした状況に鑑み、被災された事業者の方が早期に事業を再開できるように、県内企業の流出防止のための支援制度を作っており、平成23年の紀伊半島大水害の際に創設した被災企業の復旧に要する経費を支援する補助制度を、今回の災害にも適用して、その補正予算を今議会に上程しているところでございます。

具体的には、事業者の工場、店舗、事務所等の修復、建て替え及び事業再開に供する設備の修繕、購入等に要する経費の10%を、2千万円を上限に補助してまいりたいと考えております。

このイメージは、立地奨励金とほとんど一緒でございます。

なお、この補助金は、事業者の1日も早い事業の再開を図るため、申請する前に着手したものについても、補助対象としますので、先にどんどんやってくださいと言う話をしているところでございます。

また、被災した事業者の資金繰りを支援するため、昨年10月に、県の融資制度「経営支援資金(一般)」の対象に、暴風、洪水、地震その他異常な現象により生ずる災害により被災した事業者というものを追加しておりますので、今回も活用できると思います。

当制度は、融資条件が利率1.4%以内、融資限度額8,000万円以内となっておりまして、今回の台風により被災した事業者においても、直ちに本制度を活用いただけるほか、県内金融機関においても相談窓口を設置するなど事業者の実情に応じて柔軟に対応いただいているところでございます。

加えて、融資条件が利率1.2%以内、信用保証協会が通常の融資限度額とは別枠でさらに8,000万円以内の保証を行うという、より有利なセーフティネット保証4号を活用できるように、国との関係がございますので、今要望をしているところでございます。

県としては、事業者の事業再建に向け今後とも取り組んでまいりますので、事業者の方におかれましては、いち早く頑張って事業を再開するようにお願いするとともに、こういう制度は、私も被災地へ行ってすすめてまいりましたが、どうぞご活用してくださいという話をしております。

また、担当を決めましてですね、しょっちゅう考え方が変わると思いますので、その時にも相談できるように、常に決まった人が、ご相談に伺えるようにしております。

続いて、今回、被災した各企業は早期復旧に努めていますが、短期的復旧と共に中期的課題も見えました。改めて言うまでもありませんが、県工業団地に立地している企業の多くはメーカーの仕事を受けている企業だということです。

メーカーから受注した部材などの供給が難しくなったことから、早期の部材の調達を目指しメーカーへの納期の変更も依頼しています。メーカーは雑賀崎工業団地が台風第21号被害を受けていることを知っているため、納期変更に応じるか、または緊急避難的に他の部品会社に供給元を変更しているようです。

今回の事象をメーカーは理解してくれているので、工場が再稼働すればメーカーからの受注を受けられるようなのですが、将来の課題も見え始めました。

それは「今後、今回と同規模の台風が到来した場合、被害に遭わないための対策を取っているかどうか」の問いです。つまり台風第21号と同規模の台風に見舞われた場合、工場が被災することなく台風通過後も継続して稼働できることが求められることになるのです。

自然災害への対応として「事業活動継続計画」、つまりBCP計画を策定しておくことが求められることになります。

これらの企業の工場が復旧し再稼働した暁は、メーカーは「自然災害で工場が稼働できない事態にならないことの説明」を求められることになります。

各企業でできることは実施しますが、例えば護岸の改修や嵩上げなどの高波対策を計画しているかどうか、メーカーとして継続するための取引条件となると考えられます。

ですからこれらの企業はメーカーに対して「自社で対策を実施していること」に加えて「和歌山県が堤防の嵩上げ高波対策」などを実施し企業が安心してこの場所で事業継続できるかどうかを答えることになります。

そもそも、和歌山県自身の「事業活動継続計画」の解釈は2通りあります。ひとつは県行政庁として、県民の生命と財産を守る司令塔としての機能の継続のため。

もう一つは、県が指定した場所、今回は雑賀崎工業団地ですが、信義則に則り県が責任を負うものと解釈し、その土地の被災が最小限になるよう、少しでも減災に導ける事前対策を実施しているか、企業が安心してこの地で企業活動が継続できる環境を整えることが責任の範疇に入るの解釈です。

この大きな、大きな責任を含むものが県の「事業活動継続計画」ですから県の責任は重大なのです。「全ての防災対策を想定内にする」ことを目指すべきと謳い実施すべきだと思います。

厳しい内容になりますが、県民の生命と財産を守るという政治・行政の根底を糺し、目先だけの防災対策から、真剣な実施対策に県庁内の意識を覚醒させることにつながると思います。

「県民の生命と財産を守る」という意味は、元来、事前対策を指すのですが、ややもすると事後対策専門家になっていしまっているので、「守る」という語源は事前対策をしておかないと守れないことを忘れ去っています。

各企業が復旧を終え、再稼働を果たした後の面談の時、メーカーから和歌山県が実施している防災対策の健全性を評価されることになります。今後、台風第21号と同規模の台風が到来した場合、立地している企業の安全確保を図れることが取引継続のための条件になるので、和歌山県が被災した企業を護るための事業活動継続のための取り組みをメーカーは注目しています。

メーカーからすると「台風の度に「大丈夫か」と思うような場所に立地している企業との取引は考え直す」となりますし、地元企業からすれば「ここで事業を継続していくのが良いのかと感じることがあります」という意見になります。

とにかく大型台風発生時でも、安心して事業が継続できる会社環境を整えることを求めており、この場所で工場を再稼働することに不安を持っているなら、今後、雑賀崎で事業を継続するために必要な設備投資などを実施しなくなることも考えられます。

ですから、被災された企業がこの地で事業継続するためには、この工業団地の安全性の確保が必要となります。中でもメーカーに対して「今後、この場所で事業継続ができること」を説明することが求められますから、企業単独でできる「事業活動継続計画」は説明することができますが、雑賀崎工業団地の護岸の一部破損への対応のための嵩上げや消波対策の強化など安全確保のための対策に関しては、和歌山県が被災した企業に対して示すべき問題です。

つまり原状回復ではメーカーへの安全確保の説明は果たせないため、護岸の嵩上げや消波ブロックの強化など、将来も事業継続ができるための対策が必要となります。

質問3:被害を受けた企業の事業活動が継続できるための支援について

雑賀崎工業団地の護岸の一部破損への対応や、事業継続のための支援などの課題があります。立地している企業が事業継続できるよう、その用地が被災した場合、少しでも減災に導ける事前対策を実施しているかが、メーカーの要求対する和歌山県の責任の範疇に入りますから県の責任は重大です。企業が事業継続するために県が実施すべき安全確保のための条件整備について、知事の答弁をお願いします。

答弁者:知事

その次に、根本的にはやっぱり同じことは二度と発生しないということを、ちゃんと県が保証して差し上げないといけません。それは、取りも直さず、被災した防波堤の装置を復旧しないといけないわけですが、これは前の想定通り造っては、また同じようになるかもしれませんので、したがって、被災時の波浪の解析などを行い、その結果に基づき、今度はあれが来てもこうやって跳ね返すということをするような護岸の嵩上げや越波排水路壁の嵩上げ、それとあれは補強が入ってませんでしたので、補強、それから消波ブロックの増設、そういうことをしなければいけないというふうに思っております。

これは災害復旧のジャンルの定義でいきますと、改良復旧ということになるかと思います。これについては、自動的に査定が受けられるというわけではないのですが、この間、こういうことでございますのでと言って、国交省へ行って事前説明をしてまいりましたが、概念としての改良復旧は受け入れてくれそうな感じでありました。一刻も早くこちらで、査定案を持って行って、それで査定を受けて、一日も早く工事をする、ということだろう、というふうに思います。

こんなことで今回のようなことが、発生した場合でも、その護岸とか越波排水路がちゃんと機能するように考えて、それをお示しかつ実現して、企業の方々が発注元に、「もう大丈夫ですから」と、言えるように早くしたい、そんなふうに思っております。

質問4:追加議案について

追加提案された議案第136号に関して質問を行います。今回の台風第21号被害の支援のため2億8千万円が地域企業等事業再開支援として計上されています。

先ほどの知事の答弁のメモを取ったので数字は正確かどうか分からないのですが、被害企業は633件で、被害総額は約33億円だと伺いました。そうすると今回の事業再開補助金の補助率が10パーセントだとすれば、2億8千万円の補正予算では不足すると思います。全ての被災企業を支援対象にすると思いますが、補正予算の考え方につい説明をお願いいたします。知事の答弁をお願いします。

答弁者:知事

被害総額については、大きいものから小さいものまで全部集めて、まだ分かっていないところは別としまして、そういう計算をしております。

この10%の補助金は、うんと小さいところは、手続き的にも、対象としてもふさわしくないので、ある程度大きいもの、議員が見に行かれたような施設は当然全部入ってますけど、そういうようなものに限っております。

従って、それぞれの事業によって、目一杯出たと考えてこれぐらいあったら大丈夫だなと、積み上げをして今のような金額になっております。