1.和歌山県の明治150年に関する取り組みについて
関西広域連合議会平成29年8月定例会で「来年は明治維新から150年の節目であり、記念すべきこの節目の年を関西の広域観光に生かすべきで、これを現在改訂が進められている関西観光・文化振興計画に観光素材の一つとして取り込み、関西にゆかりのある偉人などを切り口として取組を行ってはどうか」と質問を行いました。
この質問に対し、当時の山田委員(京都府知事)からは、「内閣官房でも明治150年関連施策各府省庁会議において取組が検討され、薩長土肥など明治維新にゆかりのある自治体・地域ではPRイベントが計画されている。
関西はまさに明治維新の中心の地で、関連する歴史遺産が多く存在する。文化庁の関西への全面的移転や、守る文化から活かす文化へと変わっていく時代であることから、これを機に様々な明治を巡る魅力ある資産、遺産、財産を結び付けたルートを作っていきたい」と答弁をいただきました。
明治150年の企画と関西広域観光に期待していた県民の方々から、「和歌山県の取り組みを知りたくて和歌山県のホームページを検索したけれど見当たりませんでした。和歌山県は大丈夫ですか」だとか、「せっかく和歌山県議会や関西広域連合議会で「明治150年」を質してくれましたが、他府県は実施していますが、和歌山県は県内の関連施策はすでに終わっていますし、和歌山県の明治150年の取り組みの内閣官房のホームページに関して、「リンクのミスは内閣官房なのか、和歌山県なのかわかりませんが、気づかないこのままでは恥をかきます」と指摘を受けました。
指摘のあった内閣官房の「明治150年」の関連施策推進室のリンクから和歌山県を開くと「ご指定のページまたはファイルが見つかりませんでした。」と相当期間このエラーメッセージが返される状態でした。
長期間気づかない状態にあったことを残念に思いますし、和歌山県が明治150年に参画している意識の薄さが問題だと思います。
そこで、明治150年に関連した企画、事業の意義をどう考えているか、また広域連合では明治150年記念の取り組みが実施されているところですが、和歌山県での取り組み状況について、エラーメッセージの原因と共に、企画部長にお尋ねいたします。
明治150年に関連した企画、事業を行うことは、明治以降の歩みを次世代に遺す観点から大変意義深いことだと考えております。これまでも本県においては、同様の観点から偉人顕彰事業等を始め各種事業を行ってきたところです。
最近では、明治期に建築された旧和歌山県議会議事堂の移築復元を行い、昨年9月には当議事堂において約300人を集めた陸奥宗光シンポジウムを開催し、多くの方々にご好評をいただいたところです。さらに、本年2月には県立近代美術館におきまして、明治の美しい風景を数多く描いた水彩画家・大下藤次郎の特別展を開催しました。なお、今年度から文書館におきまして、明治期以降の文書や写真を収集・整理したうえで、デジタル化して保存し、順次インターネット上に公開するデジタルアーカイブの構築を進めておるところです。
なお、「明治150年」関連施策に関する内閣官房のウェブページから和歌山県のホームページにアクセスできなかったのは、県ホームページが3月下旬に新システムへ移行した際に、アドレスが変更になったことで、リンク切れが起こり、それに気付かなかったという事務的なミスによるものです。議員からのご指摘を受けて内閣官房にアドレスの変更を依頼し、現在は復旧しておりますが、今回のことを反省いたしまして、今後このようなことが起こらないように取り組んでまいります。
明治150年に備えるべきことを県議会で取り上げたのは平成28年9月議会でした。まだ半年ありますから全国に発信できる企画も考えられると思います。
例えば5月末まで開催されていた外務省外交史料館の「明治の日本外交」展を和歌山県で実施することは是非とも実現したいと考え、「明治の日本外交」展を鑑賞してきました。
素晴らしかったです。明治150年ということもあるのかも知れませんが、ことのほか来館者が多くて評判が良いこともあり、開催期間が延長されていました。
中でも、陸奥宗光外務大臣の外交が明治期の日本のために、どれだけ役立っていたかわかりました。彼の育てた小村寿太郎、林薫(はやし ただす)の活躍などを含めると、明治期の半分は陸奥関係者が明治の日本を支え、守っていたことが分かります。これを和歌山の青少年に学んでもらう価値は大いにあります。県内の中高生に見てもらうべき教材と言える内容で、和歌山県で行うべき展示と感じた次第です。
公平、平等、公正という教育を知ることなく、損か得かしか与えられなかった道徳無き国は争いが絶えません。
わが国でこのようなことが起こらないのは、江戸時代の和学(国学)の中に、人の道、道理という教育が成立していたからです。当時、西欧帝国主義列強による植民地政策から日本国を守るために「新国家」を成立させ、近代国家へと国の衣服を着替えさせました。人の道、道理という教育を受けた「サムライ魂」は「日本精神」として着替えを済ましました。
明治の先人は「サムライ魂」を「日本精神」に変え、次はやさしい言葉「忍耐、辛抱、根性、努力」に表現して明治期を乗り越えのです。
明治150年は、西欧帝国主義国による植民地化からわが国を守り切ってくれた先人に感謝することが本来の意義です。
如何にしてわが国を守るために明治期の偉人が、故郷で言うなら陸奥宗光伯がそのことに「命をかけたか」を次世代に伝えることが明治150年を称える意味なのです。
この精神を継承することが明治150年だと考えますが、その観点から「明治の日本外交」展を開催した外交史料館と連携展示を開催して欲しいと思います。この連携展示は東京に続いて北海道、鹿児島県が開催すると聞いていますが、それは明治の精神をこれらの県は継承しようとしてのことだと思います。外交史料館との連携展示の開催について、企画部長にお尋ねいたします。
議員ご提案の地方における外交史料館との連携展示につきましては、外務省が所蔵する外交史料のレプリカ等を用いて、明治期の歩みを次世代に伝えることを目的とした事業です。和歌山県においても、外交史料に含まれる陸奥宗光の関連資料を紹介し、陸奥が明治期に果たした役割を県民に知っていただくことは大変重要だと考えております。今後、外務省外交史料館と協議を行い、来年度以降の開催を検討してまいります。
今年3月、和歌山市内の岡公園に建立されている陸奥光伯の銅像の後方に外務省からいただいた桜の接ぎ木を植樹したことや、こども園の児童が遠足で見学に行ったことが話題になりました。また外務省への中学校の修学旅行は今年も継続されているように郷土の偉人を思い、明治150年の認識は徐々に高まっていると思います。
多くの人から、明治150年に関わる式典やイベントを待望する声もいただいています。
神奈川県の取り組み事例を紹介します。神奈川県では明治における開港の地である横浜や近代日本を支えた軍港都市横須賀など、明治ゆかりの資料や建築物などが数多く存在していることから活用を考えているようです。
その中でも大磯町では伊藤博文の旧邸宅「滄浪(そうろう)閣」や旧大隈重信邸、そして旧陸奥宗光邸など約6ヘクタールを「明治記念大磯邸園」として整備中で、平成30年10月の一般公開を目指していると教えてもらいました。
神奈川県は大磯を横浜や鎌倉、箱根に次いで第4の観光地と位置付けているようで、「明治記念大磯邸園」の開園を起爆剤とする意向だそうです。
他に横浜市は岩倉具視を正使とした岩倉使節団記念説明板を、象の鼻地区に設置する計画です。ここから使節団が出発したことから、横浜市が日本近代化発祥の地であることを 訴えるようです。
また神奈川県立公文書館では平成30年4月から9月まで、西郷隆盛の書や坂本龍馬の書簡など、明治維新の貴重な資料を展示しています。
和歌山県として郷土の歴史を誇りに思えるような、他府県から来県してもらえるような企画が必要だと考えます。神奈川県の事例のような明治維新150年を契機として、郷土の偉人を称えることで観光につながる施策が必要だと思います。商工観光労働部長の答弁をお願いいたします。
県では、本県の持つ豊富な歴史・文化に、食、温泉、体験などを組み合わせた100の旅モデルを「わかやま歴史物語」として紹介する専用WEBサイトや冊子を作成し、この中で「人物」を切り口に、本県の偉人の業績も紹介しているところです。
議員ご提案の明治150年を契機とする郷土の偉人である陸奥宗光については、「わかやま歴史物語」の中の「“カミソリ大臣”陸奥宗光誕生のルーツを探る」において、その偉業を伝えるストーリーとともに、生家の一部を移築したといわれる「郭家住宅」や岡公園にある「陸奥宗光像」などの足跡を辿るほか、従兄弟である政治家 岡崎邦輔の別荘を改装したカフェやお土産・温泉なども楽しんでもらうコースを紹介しています。
また、新たに「わかやま歴史物語」の専用WEBサイトに明治維新150年にちなんだ特設バナーを追加し、ゆかりの人物を紹介するなどWEBサイトを充実していくとともに、この秋には100のスポットを巡るスタンプラリーを予定しているところであり、リピーターの確保や周遊促進による滞在時間の延長に結びつけてまいりたいと考えております。
ところで和歌山市出身の作家の津本陽氏が死去されました。氏は、昭和53年に古式捕鯨を続ける明治期の和歌山県太地村の人びとの姿を描いた「深重(じんじゅう)の海」で直木賞を受賞して以降、時代小説を世に送り出してくれました。
産経新聞の記事によると、「津本さんが和歌山出身の明治期の政治家・陸奥宗光を主人公に「叛骨」を著した背景には、仁坂知事からの依頼もあった」ということです。
出版された当時、桐蔭高校を訪問し、岸田校長先生と話し合い図書館にも行きました。図書室にあるはずの「叛骨」がなかったので尋ねてみると「貸出中」だということでした。当時「叛骨」は新作だったこともあり、「ほとんど貸出中になっています」という状況だったことを思い出しました。
校長は、どちらかというと中学生に「叛骨」を勧めていました。もちろん、高校生も読んでもらうことに越したことはありません。中学生が修学旅行で外務省を訪問する前に、「叛骨」を読むのと読まないとでは、外務省を訪問する価値・意義が大きく変わります。
よって県内の中学校や高校の図書館に「叛骨」を配置すべきだと思います。それが、本来 知事が津本さんに依頼した責任として成すべきことだと思いますし、教育機関に「叛骨」を配備することが作家に対して、依頼した責任者としての礼儀だと思います。
県内の高校の図書館に「叛骨」を購入して配置するように勧めて欲しいと思います。教育長の答弁をお願いいたします。
県立高等学校の図書館では、平素から、県やその学校にゆかりのある人物等に関する図書を集めたふるさとコーナーや、話題となっている出来事等に関係する図書を紹介する特設コーナーを設けるなど、生徒が身近なことから興味関心を持ち、読書に親しむ取組を行っております。
津本陽氏の作品につきましては、県立図書館をはじめとする公立図書館や、学校においても、このたび追悼の意を込めて、津本氏の特設コーナーを設けているところもございます。各学校には、議員ご指摘の「叛骨」をはじめ、津本氏の作品を充実するよう勧めてまいります。
今後も、ふるさとに関する図書を充実させ、読書に親しみ、ふるさとに愛着と誇りをもつ生徒の育成に努めてまいります。
和歌山市民図書館では5月30日から7月17日まで追悼展の開催を決定しているなど、郷土の誇りの作家であることを示しています。
津本氏は「深重(じんじゅう)の海」で明治時代、古式捕鯨を続けた太地村の人びとの姿を描いていますし、遺作となった「叛骨」でも明治時代の陸奥宗光外務大臣を描いています。まさに明治時代を描いて明治の空気を感じさせてくれた作家でもありました。
心からご冥福をお祈りしていますし、氏の想いを生き続けさせたいと感じます。
明治150年の関連企画として、年内に明治を描いた作品を残してくれたと津本陽氏の顕彰などを考えて欲しいと思います。知事の答弁をお願いいたします。
津本陽氏は剣豪小説や歴史小説など各方面にわたり、実に多くの作品を残されました。県では氏の功績を讃えて、昭和53年に和歌山県文化奨励賞を、平成5年には和歌山県文化賞を贈ったわけでございます。また、平成20年には和歌山県立図書館開館100年を記念して講演も行っていただきました。
和歌山が生んだ大作家でありまして、私も何度もお目にかかっておりますが、大変尊敬をしております。
また、これは実は大河ドラマも作戦のひとつだったんですが、私からお願いして陸奥宗光を題材にした小説を書いてくださいというお願いもいたしました。それに応えていただいて、坂本龍馬とも交友を中心とした「荒ぶる波濤」というのと、それから本格的に伝記である「叛骨」という二つの作品を書いていただいたということは、本当に感謝しておりまして、改めて哀悼の意を表したいと思います。
現在、県立図書館においては、氏の追悼コーナーを設置しているところでございますけれども、更に顕彰のために何かできることがないかどうか、考えていきたいと思っております。