4.若者の県内就職について
地元の和歌山大学の卒業生の就職について話を伺いました。これまでの実績で、同大学のうち和歌山県出身者は、約60パーセントの学生が県内に就職をしているようです。和歌山県出身者は県内で働きくことを希望している学生が多いようなので、もし希望する就職先を多くマッチングできれば更に県内就職率は増加すると思います。
ところが県外出身者の94.9パーセントは卒業を機会に和歌山県を離れ県外に就職しています。せっかく和歌山大学に進学してくれた学生ですが、卒業すると同時に県外へと戻っている現状があります。
これが故郷に戻って就職するのであれば気持ちは理解できますが、大半の学生は東京や大阪など大都市を志望しているようです。県外の学生で故郷での就職を志望している学生はわずか3.5パーセントですから、もし和歌山大学で学んできた学生が4年間の間に和歌山県に愛着を持ってくれていたら、県外出身者でも和歌山県内での就職を選択する可能性があると思うと、残念な結果になっています。
参考までに、和歌山県の高校卒業者の場合は約75パーセントが県内に就職しているようです。
和歌山大学で学ぶ学生あっても卒業と同時に和歌山県を離れるケースが多くあり、県外大学に進学した学生も和歌山県に戻って来ない傾向にあることから、和歌山県で18歳から20歳代の若い層の人口が減少していることが顕著に表れています。
和歌山県の現状は、まさに地方から都会へと若者が流出している日本の縮図と言えるものになっています。
そのため学校を卒業した後に、和歌山県内で就職するような環境を整えることが必要だと思います。また和歌山県で学んだ学生が卒業した後に東京や大阪に出て行ったとしても、企業で学んだ経験をもとに起業する時などにUターンで戻れるようなしくみづくりも必要だと思います。
和歌山県が故郷だという意識を醸成することや、和歌山県で学んだことで愛着を持ってもらうことで卒業時などの県内就職につながると思います。
また県外に就職した社会人として働いている人が、社会経験と実力を身に付けた後、「故郷に戻って働きたい」と思うことがあると聞くことがあります。
経験を積んだ20歳代の社会人が和歌山県に来て働いてくれることは、貴重な経験を故郷で生かしてくれることにつながります。
高校生や大学生が卒業後に、また社会人として県外で働いている人が故郷に戻って働きたいと思った場合などにおける、和歌山県で働くための取り組みについて質問します。
高校生や大学生が卒業後、和歌山県で就職してもらうための方策について、また一旦社会人として就職した後、和歌山県で働きたいと思った場合の受け皿となる環境を整えて迎え入れることについて、商工観光労働部長にお尋ねします。
県内産業の成長を支える人材の育成・確保を図るため、平成24年度から「わかやま産業を支える人づくりプロジェクト」として、高校生や大学生等の県内就職を促進しております。
高校生に対しましては、5つの工業高校と県内ものづくり企業130社が連携して「企業の経営者から学ぶ」、「企業の技術を学ぶ」、「企業の現場で学ぶ」などの取組で企業が必要とする人材の育成確保を図っており、平成27年度からは、この取組を全ての高校に拡大しています。
加えて、就職希望の全ての高校3年生に県内企業を知る機会を提供する「応募前サマー企業ガイダンス」を毎年6月に開催し、今年度は、生徒1,983人、企業136社の参加を得ました。
さらに高校生のみを対象とした企業説明会を始め、県内企業との出会いの場を多く提供し、より多くの高校生が県内に就職するように取り組んでいます。
次に、大学生等につきましては、進学する県内の高校3年生を登録し、就職活動時期に和歌山県の就職関連情報を届けることとしており、平成29年3月の高校卒業生は、進学者の9割以上が登録しています。
登録した学生には就活前に、新卒者の採用予定がある県内企業の情報や、和歌山で就職する魅力などをまとめた「UIわかやま就職ガイド」を送付しており、掲載企業は平成24年度の108社から平成28年度は235社になりました。
また、県内企業でのインターンシップや、県内外での合同企業説明会の開催など、SNSも活用して広く周知を図り、取り組んでおります。
一方で、平成28年度からは、関西の各大学と就職支援協定を締結し、大学が開催する企業説明会への県内企業の参加やUIターン相談会への参加等、協定のメリットを活かした取組を行っており、現在9大学と締結しております。
和歌山大学におきましても、県内企業トップからの経営理念や県職員による県内就職を勧める講演を毎年行い、本年は15回開催しています。
次に、和歌山での再就職を進めるために、様々な就職説明会の開催や、情報発信などを行ってまいりましたが、今年度から「和歌山就活サイクルプロジェクト」に取り組んでいます。
具体的には、再就職希望者に対する就活サイクルを全国に先駆けて構築し、結婚等で一度離職した女性、定年退職された方、都会で働く方で和歌山へ帰りたいと考える方の再就職を支援するもので、2月を「就活強化月間」として、合同企業説明会を県内3カ所で開催し、4月の再就職を目指すこととしています。
今後も、高校生や大学生の県内就職を始めとした、県内産業を支える人材の確保に取り組んでまいります。
山西部長は田辺高校の生徒を対象として、「卒業前に和歌山県の魅力を振り返って欲しい」と考え、県として初めて講演会を行っていることからも、本気さをうかがい知ることができます。
ところで和歌山大学では、学生に和歌山県内で就職してもらうために「紀の国大学」の取り組みを行っています。和歌山県に親しみを持ってもらうための授業として一年生を対象として「わかやま未来学」を開講し、地域志向科目の「わかやま」学群を必修科目にしています。和歌山大学の学生には、県外出身者であっても和歌山県を第二の故郷のように愛着を持ってもらうことを目指しての履修を義務づけているのです。
「紀の国大学」では、大学卒業後は県内就職の定着を図ること。和歌山に関心を持つ人材を育成すること。既卒者にもIターンやUターンで和歌山県に戻れる創業支援を目指しています。
この「紀の国大学」には和歌山県や和歌山県経営者協会や和歌山県中小企業団体中央会、紀陽銀行が連携していることから、卒業後も地元で働ける環境整備をして欲しいと考えます。
「紀の国大学」は、当該地域が求める人材を養成するために必要な教育カリキュラムの改革断行する大が期の取り組みを支援することで、地域創生の中心となる「人」の地方への集積を目的とする文部科学省の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」の一つで、若者の県内就職や定着率向上により地方創生の一助となることを目指すものです。
和歌山大学は「和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略」に呼応して事業を実施しているものですが、地方創生の観点から、和歌山県のこれまでの関わりと今後、期待する成果について企画部長にお尋ねいたします。
「紀の国大学」につきましては、平成27年度に和歌山大学が主体となって計画し、文部科学省に申請するにあたって、県では、和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略に掲げる「人を増やす」という基本姿勢に沿って、事業の参加機関について大きな事業効果が見込めるよう、県内に限らず、県外の多くの大学が参加する事業となることを、また、事業の内容においては、より地域指向の高い学生を育成する教育カリキュラムとなることを強く求めた上で、協働機関として、参画したところです。
事業は、平成31年度までの5カ年事業であり、事業成果が明らかになるのは、「わかやま学群」を基礎科目で学び、地域協働実習として専門科目を終えた学生が卒業を迎える平成31年度以降となっています。
県では、参画している大学に、より深く地域に魅力を感じるカリキュラムを提供すること、地域協働実習にあたっては県内各地域と大学との協働により、より多くの県外学生が県内で実習を行うことなどを求め、学生が和歌山の魅力を感じ、和歌山での就職や定住に結びつくよう、そして県外から県内に人を呼び込む一つの流れとなるよう、働きかけてまいります。