2.ネットパトロールについて
和歌山県では全国に先駆けて、平成21年6月から「青少年をネットいじめなどから守るため、県教育委員会や県警察本部等と連携したネットパトロール事業」を実施しています。
この事業の概要は次の通りです。
専門パトロール員により各種サイトをパソコンで探索し、県内18歳未満の青少年に関する誹謗中傷記事などの有害情報を内容ごとに専門機関へ連絡しています。
その中で、学校に関係のあるものは県教育委員会を通じて学校に資料提供し、教職員による生徒指導を行うと共にプロバイダやサイト運営業者に削除を要請することで、青少年の被害を最小限に食い止めています。
また刑罰法令に抵触する可能性のある場合は県警察本部に連絡しています。
平成21年7月に知事が定例記者会見でネットパトロールの結果について触れていますが、その時に「以後ずっとパトロールをしていきますので、何かありましたら発表させていただきます」と答えています。
ネットパトロール事業を始めてから8年が経過していますが、この事業の意義と今後との方向性をお聞かせ下さい。知事の答弁をお願いします。
インターネットによるコミュニケーションにつきましては、情報伝達が早いなど非常に有用な半面、有害情報があっというまに拡散するという危険性を内在しています。このような危険から青少年を守るために、県、教育委員会、警察の三者が一体となって総合的に取り組んでいこうと、平成21年6月からネットパトロール事業をスタートしたところであります。
発見した有害情報について、不適切な画像等は、サイト運営事業者に対して削除依頼を行い拡散防止に努めております。また、児童生徒に関係する情報は教育委員会に提供し、学校での児童生徒の指導に利用され、犯罪につながるような情報は警察本部に提供し、青少年の犯罪予防に利用されるなど、青少年の健全育成に寄与してきたと評価しております。
事業開始から8年、当初はこのように結構効果もありましたけれども、その間、ネットにおけるコミュニケーションの仕方がちょっと変わってまいりまして、掲示板への書き込みからラインやフェイスブックなどを利用した当事者間やグループ内に限られた閉鎖的コミュニケーションに変化してきております。そういたしますと、そのグループに属さない人がパトロールにいけないという場合が多くなっていると思います。
閉鎖的コミュニケーションにおいて、やりとりされる有害情報をどうやって発見するか、その対応策を考えていかなければいけないというふうに思っている次第でございます。
ところでこのネットパトロール記録は「大雑把過ぎて現状が分からない」、「件数が少なすぎるように思います。小さな案件を見逃しているように思います」、「データを記載しているだけなので、対応方法や結果、再発防止策が分からないので、防止するための展開が分からない」などの意見が寄せられています。
このネットパトロール記録によると月によって異なりますが100件程度の検出件数が報告されていますが、全体を把握しているのか、それとも漏れているのかは判断し兼ねます。
参考までに。和歌山県内の携帯電話の店舗数は、統計の取り方によって異なりますが、約70軒。一店舗あたり月間2,500人から3,000人の来客があり、その内青少年の来店数は500人から600人と把握しているようです。
ここから和歌山県内では毎35,000人から42,000人の青少年が携帯電話の店舗に来ていると推測しているようです。店舗でフィルタリングの相談や携帯電話による子どもへの悪影響やネット被害などの相談があるのですが、その相談件数は相当数に及ぶと聞いています。
この現状からすると、和歌山県のネットパトロールによる有害情報の検出件数は少ないようにも思います。県が検出している数字には表れていないネット被害が潜んでいるようにも感じます。
和歌山県のホームページのネットパトロールのところにはネットパトロールの件数報告などが掲載されているだけで、保護者に対する啓発活動やネットトラブル研修も学校や保護者などに対して実施された実態も分からない状態です。
この事業をより良いものにするためには、事業スタート当時よりスマートフォンの普及が進んでいる中、件数把握や実態把握のためにネットパトロールの運営方法を時代に即した取り組みにする必要があると思います。このしくみが始まってから8年が経過している中で蓄積されたデータやノウハウがあると思いますから、改善できることがあると思います。
ネットパトロールの見直しについて、環境生活部長からお答え下さい。
これまで、ネットパトロール事業におきましては、ネットサービスの多様化に合わせ、ツイッターなどパトロール対象の拡大や検索システムの活用など、パトロールの強化に取り組んできたところです。
しかしながら、大きな課題である閉鎖的コミュニケーション内の有害情報をチェックする方法は、現在のところ見出せておりませんが、何らかの対応策がとれないか今後研究してまいります。
ネットパトロールの検出件数の掲載をしていますが、これを見た保護者や大人がどの状況にはどんな対応をしたのか、成果のあった対応はあるのかなど分からないため、この情報だけではケーススタディなどで使用できないと思います。
ネットパトロール件数などの掲載だけで防止策につながるのでしょうか。
またデータは平成29年6月14日時点で、平成29年3月度の記録から更新されていない状況でした。この問題を取り上げよう思って再度確認したところ、6月15日に4月分と5月分のデータが更新されていましたが更新が遅いと思います。
環境生活部長からお答え下さい。
ネットパトロールの結果につきましては、学校名、個人名、不適切な内容などが毎月、文書で県に報告されており、このうち、学校種別、問題行動別等の有害情報の検出件数が受託事業者のホームページに掲載されております。
県では、この報告を基に、平成28年度に17回、のべ1,705名の青少年や保護者に対して、ネットの安全利用や被害防止を啓発する県政おはなし講座を実施しました。
ホームページへの掲載につきましては、29年4月分のデータを5月19日に掲載しましたが、システムのバージョンアップの作業過程で消失した模様であり、改めて5月分のデータと合わせて6月14日に掲載されたものです。
受託事業者には、システム改修等の際には、過去のデータの扱いにも十分注意するとともに、必要な情報は遅滞なく掲載するよう指導したところです。
この事業にはもうひとつ、ネット指導教員の養成など、青少年のネツトモラル向上の取り組みがあります。スタート当初から民間事業者への委託を行っていますが、教員向けの指導マニュアルや教材の作成、そして講座の実施状況について、環境生活部長からお答え下さい。
教員向けの指導マニュアル及び教材につきましては、平成27年度から教育委員会と連携して作成しております。
この教材を使って、毎年夏休み期間を中心に県内全ての学校の情報モラル教育を担当する教員を対象とした「ネット指導教員養成講座」を平成28年度には29回実施しており、のべ1,039人が受講しております。
環境生活部長から教育委員会にネットパトロールの結果の情報提供していることや、教育委員会と連携してマニュアルなどを作成し、養成講座を開催しているとの答弁がありました。
ネットパトロール事業から提供された情報や養成講座を受けていることに関して、教育委員会ではどう対応しているのでしょうか。また今後の課題について、教育長からお答え下さい。
ネットパトロールから提供された情報につきましては、学校名や児童生徒の氏名が特定されている場合は、当該の学校にその情報を伝え、関係する児童生徒を指導してございます。
また、各学校では、児童生徒に、ネットパトロールの存在と、ネット上の不適切な情報は書き込んだ本人が特定されることなどを周知し、問題行動の未然防止にも効果を上げているものと考えてございます。
次に、「ネット指導教員養成講座」につきましては、すべての公立小・中・高等学校、特別支援学校の生徒指導や情報教育を担当する教員が受講しており、ネットに関する知識や、問題への対応方法などを研修し、学校での指導に生かしております。
課題といたしましては、日々進歩する情報技術等への対応や、SNS等、仲間同士の閉じられた世界でのトラブルへの対応等が考えられます。
こうしたことから、県教育委員会では、今春、「スマートフォン・携帯電話、SNS等を安全に利用するために」という教員用指導資料を作成いたしました。本資料には、情報モラル教育の進め方や、SNS上のトラブル等に対処するための指導例に加え、保護者への啓発に関する情報等も掲載しております。
各学校においては、学級活動や「技術・家庭」、「情報」等の授業の中で、本資料を活用するよう指導してございます。また、保護者に対しても、本資料を用いて、入学説明会や保護者会等で、情報モラルの向上やネット等の適切な利用について、啓発に努めるよう指導しております。
児童生徒の健全な育成には、保護者も、その役割と責任を果たし、家庭での子供の状況をしっかりと把握し教育することが重要です。このため、今年度から導入する「きのくにコミュニティスクール」等も活用しながら、学校から保護者に、子供のネット利用についての管理を徹底するよう要請し、家庭の協力も得て、児童生徒の情報モラルの向上に努めてまいります。
続いてこの「青少年ネット安全・安心のための環境整備事業実施業務」の委託先選定についての質問です。
事業委託に応募して選ばれなかった応募者に対しての評価結果の通知の中に評価の低かった理由などが記載されていないようです。どの点が評価され、どの点が評価されなかったのか分からなければ次回の応募に反映できません。応募者しようとする意欲のある人達に次回の応募を諦めさせることになり兼ねません。
この分野は専門性の高い分野だと思います。そのため民間事業者の能力をフル活用すべきです。そのような中、優秀な事業者選定に向けて県としての取り組みの改善が必要だと考えます。
例えば、現在、選定にあたってはプロポーザルが行われていますが、選に漏れた事業者への結果通知には落選したことと評価点だけが通知されています。
採点の審査項目は6項目あるようなので、それぞれの項目ごとの点数を通知することで、事業者は自らの提案の弱点を見直し、見直しと改善をすることで再チャレンジにつながると思います。
また、この企画提案事業のプロポーザルは、今年3月15日に実施されています。この事業の応募者、結果として不採択になった方がプレゼンテーションをしている途中に1名の選考委員が退席したようです。正確には、プロボーザルの途中で退席した審査委員は、プレゼン中は最後までいましたが、プレゼンが終わり評価委員の質疑応答の時点で退席したようです。
この点に関して、環境生活部長の答弁をお願いします。
平成29年度青少年ネット安全・安心のための環境整備事業実施業務の公募にあたりましては、審査の基準は、審査項目やその視点、配点などを予め公表しております。
審査の結果は、委託先候補者の名称、評価点及び選定理由をホームページで公表するとともに、応募者には、自身の評価点及び結果を通知しております。
議員ご質問の項目ごとの点数につきましては、応募者からの個別の照会に応じて、お知らせすることといたしております。
もう1点、プロポーザルの時点で退席した委員がいるというご指摘につきましては、平成29年3月15日に実施しました平成29年度事業の審査におきまして、プレゼンテーション終了後の質疑応答の途中で退席した選定委員が1名おりました。
提出書類及びプレゼンテーションに基づき評価が行われており、有効なものと判断したところです。
本来は委員は途中退席するべきではないことから、今後、こうしたことのないよう厳格に審査事務を執行してまいります。
果たして審査の途中で退席した審査員が公平な審査できるのでしょうか。どのような人が審査員に選任され、どのような基準で評価をしたのか。途中で退席した審査員がいる中で公正な審査結果が導けると考えたのか。環境生活部長からお答え下さい。
本事業では、選定委員に、インターネットなどの情報通信技術に関して深い見識を有する方、保護者の立場から青少年の有害環境浄化活動等に関する知識を有する方、義務教育や高等学校等における教育の専門的な知識を有する方、青少年の非行防止・健全育成活動に関して深い見識を有する方を選任しています。
審査にあたりましては、業務実施体制、ネットパトロール実施手法、ネット指導教員育成に係る講座の内容と時間配分、ネット指導教員育成に係る教材及びマニュアル、ホームページ作成運営、事業経費の6項目について、それぞれ各選定委員が5段階で評価してございます。
途中の退席につきましては、提出書類及びプレゼンテーションを聞いたうえで評価しておりますので、有効なものと判断したところでございます。
環境生活部長から答弁をいただきましたが、審査員が途中で退席したような審査で果たして公平性が保たれていたのでしょうか。他の審査員の質疑も参考にしながら点数をつけるべきだと思います。
何よりも事業者はプロポーザルに真剣に挑んでいるわけですから失礼な態度だと思いますし、このような審査であったにも関わらず審査を終わらせてしまった県に対しての不信感が募ったことになります。
県の審査ですから、不信を招くことのないように審査を厳正で公正な場にして欲しいと思います。再度、環境生活部長の答弁を求めます。
契約候補者の選定にあたりましては、公平公正な審査に努めているところでございますが、応募企業から不信を招くことのないよう、今後、厳正な執行に努めてまいります。また、選定委員につきましても指導を徹底してまいります。
【要望】
とにかく、全国に先駆けて実施、データやノウハウを蓄積しているネットパトロール事業ですから、時代の変化に応じた改善を図ることが必要だと思います。
夏休みが近づき、子ども達、特に青少年が時間をもて余し、ネットやスマホに係わるであろうことが予想されますから、携帯電話の店舗と連携を図り、店頭での情報把握や指導を行うことも含めて、ネットパトロール事業を更に効果的なものにして欲しいと思います。