平成29年2月定例会一般質問 / 質問内容

2.偉人を教育に生かす

知事が答弁してくれたように、熱い思いと行動が人を動かします。人を動かす力を持った言葉で偉人の功績を県内外に発信して欲しいと思います。

次に「偉人を教育に生かす」です。これまで何度か「和歌山県内の中学校の修学旅行先として外務省を選定したらどうか」とう提言をしてきました。その結果、平成28年に加太中学校が外務省を訪問しています。

今年も加太中学校が修学旅行で外務省を訪れてくれると聞いていますし、県内の複数の中学校が外務省を訪れる計画を立てているようです。

検討している学校の一つである県立桐蔭中学校を訪問してきました。ここでは生徒の自主性を高める社会活動を実践していて、三年生には修学旅行の中の一日を生徒が行きたいところを選ぶことを義務付けています。

その中に外務省を修学旅行先にと考えているグループがありますが、それは日頃から、郷土の偉人に接する機会を設けていることも要因になっています。

そのひとつは、桐蔭中学校・高校をつなぐ廊下にはモニターが設置されていて、このコンテンツの一つとして陸奥宗光を紹介する映像があること。二つ目は、図書室にはキャリア教育推薦図書のコーナーと郷土の維持に関する本を揃えていることです。ここには津本陽氏「叛骨」もおかれています。

このように日常から郷土の偉人に触れる機会を設けることで、生徒が修学旅行先として「外務省に行って見たい」と思うようなしくみがありました。

ところで外務省には和歌山市出身で、外務省・北米局・北米第一課長の和田幸浩(わだ・ゆきひろ)さんがいます。昨年、和歌山市内で、有志によって開催されたシンポジウムでは、「いま日本が世界のリーダーとして存在するのは、陸奥宗光のおかげだ」と、その功績を称えてくれました。和歌山市出身の先輩が外務省にいるのですから、場合によっては生徒が和田課長から直接話を聞くことができるかも知れません。

質問1:修学旅行における外務省訪問について

桐蔭中学校と同じように、全てとは言いませんが、他の中学校の修学旅行先として外務省の訪問を検討すべきだと考えますが、郷土の誇り持たせるような教育方針を志向している教育委員会として、これからどんな働きかけをしくのでしょうか。教育長の答弁をお願いします。

答弁者:教育長

修学旅行は、各学校において、ふるさと教育や平和学習、国際理解教育、文化学習等のテーマを設定し、そのテーマに合った訪問先を計画に取り入れ実施してございます。ふるさと教育の一環として、郷土の先人の足跡を訪ねたり、その功績を調べたりする学習活動を取り入れている学校もございます。議員からお話の桐蔭中学につきましては、キャリア教育の視点からも実施したものであり、私が校長の時代には官庁街の案内役を務めたこともございます。

次期学習指導要領では、改訂の基本的な考え方の中に、体験活動の重視が明確に示されており、自然の中での集団宿泊活動や職場体験、ボランティア等の体験活動が引き続き重視されております。そのような中、修学旅行で、ふるさと教育の一環として、陸奥宗光像のある外務省やふるさと和歌山にゆかりのある史跡等を訪問することは、より有意義な体験活動の機会だと考えてございます。

このような意義については、先日開催いたしました、公立小中学校長会において、私から全校長に伝えたところですが、今後とも、市町村教育長会議や指導事務担当者会議等、様々な機会をとおして、修学旅行における訪問先の選定も含め体験活動を重視させるよう、市町村教育委員会とともに進めてまいります。

質問2:陸奥宗光を郷土の偉人教育にどう生かすか

昨年の陸奥宗光シンポジウムに参加して、文部科学省や教育者の陸奥宗光を教育に生かす講演などを聞いて、公立中学校に対しての郷土の偉人教育にどう生かそうとしているのですか。教育長からお答え下さい。

答弁者:教育長

陸奥宗光シンポジウムにつきましては、県教育委員会からも出席しており、「陸奥宗光の数々の功績を改めて聞き、その時代に果たした役割の素晴らしさや、時代を越えて学ぶべきことがあることを再認識した。」と参加者からも聞いてございます。

県教育委員会では、ふるさと和歌山の先人について学ぶことはふるさと教育の重要な柱の一つであり、ふるさと教育副読本「わかやま何でも帳」に、陸奥宗光をはじめとした和歌山ゆかりの先人を掲載してございます。この副読本は、自ら学習できるよう中学生一人一人に配付しております。

また、本年は、陸奥宗光没後120周年であり、この機会を捉え、陸奥宗光を含む先人を紹介する学習資料を作成してまいります。

今後も、ふるさと教育を推進し、児童生徒がふるさと和歌山について学ぶことを通して、ふるさとを誇りに思う心情を育ててまいります。

質問3:学習指導要領改訂の趣旨を踏まえた高校教師の指導の視点について

自国の近現代史を学ばず卒業する生徒は少なくなく、今年2月21日に配信された「わかやま通信」に知事の体験が記されていたように「郷土の事を何も教えなかった当時の教育委員会を、どうして子供達にこの和歌山の素晴らしさを教えなかったか、と恨んでいます」と思っている人が沢山いると思います。

特に郷土の歴史の中で、陸奥宗光のように、現代の日本の基礎を作ったと言われる人物を輩出しており、近現代史において、本県の果たした役割は、大きいと感じています。

しかし、今日までの歴史教科は、歴史の前半部分に時間をかけ、近現代に入るところで授業時間がなくなり、近現代史をしっかり学ぶ機会はほとんどありませんでした。

自国の近現代史を学ばないで卒業する生徒がいることもあり、近現代史の知識定着状況が低いことが課題となっています。

こうしたことから、中教審が答申した次期学習指導要領では、高校科目において、世界史と日本史を融合させた「歴史総合」が新設され、これまで重要視されてこなかった近現代史を見直すようになります。

先ほど、近現代史をしっかり学ばなかった生徒が少なくないと申し上げましたが、現在の高等学校の教員も同様であろうと思います。郷土の偉人を活用した教育を行うに当たっては、歴史教科に関わる教師だけでなく、高校教師として他の教科の教師にも、「歴史総合」が導入されるに至った今回の趣旨を踏まえて、生徒への授業に臨むべきだと思いますが、教育長の考えをお聞かせください。

答弁者:教育長

次期高等学校学習指導要領の歴史分野については、これまでの世界史必履修を見直し、世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉えて、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する「歴史総合」という科目が、全員が学ぶ必履修科目として設定されます。

今後、「歴史総合」において、近現代史を考察する際、これまで以上に、地域の歴史や文化等を学ぶ機会が多くなると考えられます。まず、地理歴史科の教員が、郷土の偉人、先人から学ぶという視点を持って指導にあたるとともに、他の教科等においても、地域の学習資源を活用した学習を実施する場合は、こうした視点を持って指導することが大切であると考えます。

高等学校新学習指導要領は平成34年度から年次進行で実施されるまでに、その趣旨やねらい等について周知することとなっており、その中で、すべての高等学校教員は、学習指導要領の全体像を把握し、各教科での指導に生かせるように準備するとともに、「歴史総合」を導入する意図についても認識しておく必要があると考えてございます。