平成28年6月定例会一般質問 / 質問内容

4.巨大地震への対応について

熊本地震に関して和歌山県の初期対応は素早く、しかも継続した支援活動は効果的で地元から感謝されていると認識しています。

先日、和歌山県で初めて行われた第五管区海上保安本部の救難・テロ対策訓練を視察した時、一緒に訓練会場に来ていた和歌危機管理監と話をしました。大震災に関して興味深い話がありました。

「今回の熊本地震によって和歌山県全体が危機感を持ったと思います。これまでは海岸部の人の危機感が強かったけれど、海岸部以外に住んでいる人も自分のことのように感じていると思います」という意見です。

全く同感で、私も海岸部以外の方々から、防災のためにすべきことの質問を受けています。津波への備えではなくて直下型地震への不安を感じ、そこに対応しようと考えているように感じています。ただ不安と恐れが、逃げようとする意識よりも高くなってしまうと行動につながりませんから、片田先生がこれまでも指摘してきたように「正しく恐れる」ことを説明する必要があると思います。

そこで質問です。

質問1:熊本地震に対する初動対応から現段階までの県の対応状況と今後の支援について

熊本地震に対する初期対応から現段階までの和歌山県の対応状況をお示し下さい。また今後の支援についてお示し下さい。和歌山県民が今回の支援状況を知ることで、「和歌山県の防災対策を信じて行動すれば安心だ」思ってもらえるような説明をお願いします。知事の答弁をお願いします。

答弁者:知事

熊本地震における本県の初動対応につきましては、大規模災害発生直後は、特に市町村では混乱が生じるため、本震発生の4時間後には緊急派遣チームを現地に向け派遣し、熊本県庁・益城町(ましきまち)役場において災害対応の助言・支援等を行ったところであります。

また、発災直後から警察災害派遣隊、DMAT等医療関係者が現地に入り、救助・救急活動にあたっております。

現在は、避難所運営要員等の継続派遣に加え、復旧・復興に向け公共土木施設復旧事業を支援する土木技術職員を熊本県庁に派遣するなど、これまで県や市町村職員、各種民間団体等の人的支援は、延べ約2,000人に及んでおります。

特に、紀伊半島大水害の教訓から創設した2つの支援制度により、養成してきた職員が、即戦力になっております。

一つは、紀伊半島大水害の経験者など廃棄物行政の経験豊富な職員である「災害廃棄物処理支援要員」で、これは益城町(ましきまち)で大量に発生いたしました、がれき等災害廃棄物処理の制度設計に大いに貢献できたものと考えております。

二つ目は、「住家被害認定士」でございまして、被災者の生活再建の第一歩となる家屋被害認定に係る調査において、益城町(ましきまち)では全家屋の調査が行われることとなりましたが、この膨大な調査に貢献できたものと考えております。

また、人的派遣に併せて、本県が整備を進めてきた「災害時緊急機動支援隊」用のタブレット端末や「移動県庁」システムを搭載したパソコンを現地に配置いたしました。

これにより、リアルタイムでの現地映像の伝送やWEB会議の開催等が可能になりまして、関西広域連合の現地事務所や避難所、そして和歌山県庁という遠隔地間においても、情報の収集と共有を確かなものとし、迅速かつ効果的な被災地支援につながっております。

これらは、これまで築いてきた本県の施策が奏功したものと考えております。

被災地は、ようやく復旧・復興の入り口に立った状態であり、ボランティアバスの運行など、今後もその時々の状況に応じ、適時・適切に息の長い支援を行っていく所存であります。

東日本大震災、紀伊半島大水害を経て、いろいろ教訓を得ましたので、そういうのを活かして対策の強化に努めてまいりました。この対策については、こうして格段に強化されましたが、今回、その実用性が証明されたものと考えております。

とはいえですね、また新しい知見もあるかもしれません。それは不断に取り入れて、今度は対策の方を強化していかないといけない。また、せっかくできあがった対策が、マンネリになりまして、弛んでおるとですね、実際には役に立たないということでございます。

ただし、「逃げる」とか、「備える」とか、こういう県庁はじめ公共機関の対策だけではなくてですね、住民の方々にも進んでやってもらわなければいかん。という面もございます。

特に、今現在、憂慮しているのは住宅の耐震の遅れ、これがですね、心配であります。これができてまいりますとですね、今回いろいろ役立った対策も含めて、避難のところなんかはちょっと違いますけれども、これもできておりますので、まぁ、だいぶ心配が軽減されるのではないかと。そんなふうに思っております。

質問2:新たな防災対策として直下型地震への備えについて

和歌山県の防災対策は南海トラフの巨大地震による津波対策が中心になっていると思います。この対策は最重要ですが、直下型地震に備えることも新たな防災対策として必要だと思います。熊本地震支援から学ぶ対策があればお示し下さい。

危機管理監に質問します。

答弁者:危機管理監

熊本地震においては、他の活断層と比較して、特別に危険性が高いと考えられていなかった活断層が、震度7の地震を2度も起こし、甚大な被害が発生いたしました。改めて直下型地震の恐ろしさを実感するとともに、地震は、いつ、どこで発生しても不思議ではなく、県民1人ひとりの防災意識を高め、常に準備を怠らず備えることが重要であるというふうに考えているところです。

中央構造線断層帯による直下型地震だけでなく、紀伊半島は南海トラフ地震においても震源域に近く、南海トラフ巨大地震では県内のほぼ全域が震度6弱以上と、直下型と同様の非常に激しい揺れが想定されております。

そのため、東日本大震災直後から、「防災・減災対策の総点検」を実施して、公共施設の耐震化を進めるとともに、住宅や大規模建築物の耐震化について、全国トップクラスの制度を用意するなど、地震に備える対策に強力に取り組んでまいりました。

しかしながら、先ほども知事の方からも強く訴えていただきましたけれども、住宅の耐震化は、他の先進県と比較して決して進んでいるとは言えず、住宅の耐震化、家具の固定、ブロック塀の安全対策を「県民減災運動」として、より一層推進するとともに、併せて発災後に初期消火や救出・救助等の防災活動を担う自主防災組織の充実による地域防災力の強化などにも取り組み、地震などの災害にも備えてまいります。

質問3:「感震ブレーカー」の普及拡大について

和歌山市を中心に各地を訪問して熊本地震について意見交換をしている中で気付いたことがあります。「熊本地震では火災が少なかったように思います」という意見があり、調べたところ熊本地震では通電火災発生がゼロ件だったということです。熊本地震が原因とみられる火災は4月14日から20日までに16件ありました。火災による死者は1人で、通電火災はゼロでした。阪神淡路大震災や東日本大震災で発生した火災は三桁もあり、原因が特定された火災の60パーセントが通電火災だったことと比較すると、熊本県がとった過去の大災害から学ぶ防災対策としての火災予防は効果があったと言えそうです。

通電火災を防ぐためには、避難する際に部屋のコンセントを抜くことや、家屋内のブレーカーを切ることで防ぐことができますが、非常時にそんな余裕がある人はいないと思います。

そこで有効なのが「感震ブレーカー」だと知りました。「感震ブレーカー」とは、地震を察知すると自動的にブレーカーが落ちるものです。経済産業省によると、「感震ブレーカー」は大規模災害に対する多重防護の観点から通電火災の発生抑制効果をより高めることが期待されています、とあります。

阪神淡路大震災や東日本大震災から教訓を得て、これまで以上の防災対策を実施していることは熊本地震では通電火災がなかったことからも分かります。

例えば経済産業省が普及啓発している「感震ブレーカー」の導入については県内の町が補助制度の創設をすることを検討中だと聞いています。経済産業省も通電火災防止の観点から推奨している「感震ブレーカー」の普及拡大を図ることは多重防護のため必要だと思いますが如何でしょうか。危機管理監からお答え下さい。

答弁者:危機管理監

感震ブレーカーの普及拡大につきましては、議員御指摘のとおり、地震の揺れに伴う電気機器からの出火や、停電が復旧した時に発生する出火を相当程度防止できることが期待されることから、春と秋の「全国火災予防運動」において、自動消火装置を備えたストーブ等とともに、感震ブレーカーの普及啓発を行っているところです。

また、県が実施する「出張!減災教室」において、住宅の耐震化や家具固定の推進とともに、自宅から避難する際にはブレーカーを落とすことや、感震ブレーカーの設置、そしてブレーカーを元に戻す際には電気機器や配線の安全性を十分確認するよう啓発しております。

今後も市町村や消防機関と連携を図りながら、効果的な普及に取り組んでまいります。

「要望」

熊本県の事例に学び県内市町村でも「感震ブレーカー」導入のための呼び掛けをお願いしたいと思います。これから新築する場合、通電火災予防のために「感震ブレーカー」を取り入れる人はあると思いますが、既存の家屋で進んで取り替える人は少ないと思います。「感震ブレーカー」のことを知らせ、導入するための広報やしくみづくりについて県から市町村に依頼してくれることを要望します。

質問4:住宅の耐震化と空き家除却を促進するための対策について

熊本地震での家屋倒壊を見た人からは、住宅の耐震化の促進や空き家の除去の取り組みの必要性を聞いています。中でも空き家が住居に隣接している人からは、除去を促進して欲しいという意見が強くなっています。

平成32年度までに住宅の耐震化率の目標を95パーセントに設定していますが、耐震化を加速させるための方策についてお示し下さい。また空き家の除却を促進して欲しいと思いますが、その対策についてお示し下さい。県土整備部長の答弁をお願いいたします。

答弁者:県土整備部長

本県では、平成16年度に住宅耐震化の補助制度を創設し、市町村とともに住宅の耐震改修の促進に取り組んでいます。

また、耐震ベッドや耐震シェルターを平成27年度から補助対象に加えるなど、制度の拡充を図るとともに、建築関係団体との連携による広く県民の皆様を対象とした住宅相談会の開催や、事業者等を対象とした説明会などを実施してまいりました。

先般発生した熊本地震で、住宅の耐震改修への県民の関心も高まっていると考えられ、住宅耐震化の補助制度への申し込みが昨年同時期を大幅に上回っております。

県としましては、市町村と連携し、それらの申し込みに的確に対応してまいりたいと考えます。

また、この機会をとらまえて、今後住宅の耐震化の必要性をご理解いただけるような方策を早急に具体化し、耐震化が加速されるよう努めてまいります。

空き家の対策につきましては、昨年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、市町村は特定空家等の所有者などに対し除却や修繕をはじめとする必要な措置をとるよう、助言・指導・勧告・命令することができるようになりました。県内でも、この法律に基づく勧告等を行った事例もすでに出ておりますが、さらに、市町村が積極的に取り組んでいただけるよう、機会あるごとに働きかけてまいります。

加えて、今年度の新たな取り組みとして、再利用が見込めない空家対策を一層推進するため、県・市町村・学識経験者等から構成される協議会を設立することとしております。この協議会において市町村間の情報交換、県が持つノウハウの伝達、学識経験者等からの助言を得ることにより空き家の除却等を促進してまいります。

質問5:高齢者など避難所生活に不安のある方々への避難所体制の整備について

今回の熊本地震を見た高齢者の方々から、「巨大地震が発生した時に遠くの避難所まで逃げることは出来ないと思います、みんなと一緒の場所にいると迷惑を掛けてしまう」という意見を聞きます。人に迷惑をかけるぐらいなら「それなら逃げないでおこう」と思っている人もいるようです。

避難所生活に困難さを感じる高齢者が避難所生活について不安に思っているようです。高齢者など避難所生活に不安のある方々については、二次避難場所である福祉避難所への誘導や、旅館やホテルへの避難なども実施すると思います。高齢者の皆さんが災害発生時にみんなの迷惑になるからと思わないで「逃げよう」と思うような避難所の体制を整えていることについて説明して下さい。福祉保健部長の答弁をお願いします。

答弁者:福祉保健部長

災害時に、高齢者などの特に配慮を要する方々を受け入れるための福祉避難所については、これまで、県から市町村に対して、地域ごとのニーズを把握して必要数を確保するよう働きかけてきたところであり、平成27年8月末現在、社会福祉施設と協定を結ぶなど30市町村で210箇所が指定されています。

災害時には、高齢者なども含めて、まず近隣の市町村の一般避難所へ避難し、その後、その避難所での避難生活が困難な方については、開設準備の整った福祉避難所へ順次移っていただくことになります。

また、県では、避難所生活を余儀なくされたことにより、健康を損ない、又は健康を損なうおそれがある方を旅館、ホテル等へ受け入れることが可能となるよう関係団体と協定を結んでいます。

福祉避難所については、必要数の確保、専門的人材、ボランティアの確保などの課題があると考えていますので、引き続き、市町村に福祉避難所の必要数の確保を働きかけるとともに、市町村と協力して円滑に運営するための人材養成を行うなど体制整備に取り組んでまいります。

以上、全ての答弁をいただいたので一般質問を終わります。今回、時間の限られた中、熱心に議論を行った結果を、遅くまで掛かってでも問いに対する結果を伝えてくれたことに感謝しています。ご清聴、ありがとうござました。