5.ペットとの共生社会の実現について
和歌山県がペットとの共生社会を目指すことは素晴らしいことであり、是非とも推進すべきだと県外の方々から話を聞いています。その理由は、紀伊半島大水害の時、動物を愛する人たちが被災犬の救助を行い、発見した全ての犬達の命を助けてくれたこと。その後、里親を見つけ一匹残らず引き取ってくれています。この取り組みは命を大切にする和歌山県であることを決定づけるものであり、和歌山県はペットの命を大切に考え、動物愛護を推進している県であることを全国に発信できたものだと考えています。
もうひとつの理由として、和歌山県内で発生した中学生のいじめ事件にも関係があります。いじめを無くすための取り組みを、和歌山県も市町村も重点的に実施しているところですが、残念なことにいじめのなくなる傾向にありません。
いじめ防止の条例を策定することや学校での指導も重要な活動ですが、それに加えて子ども達に命の大切さを体験してもらうことも大切だと思っています。命の大切さを学ぶために、ペットとのふれあいや世話をする機会を作ること、そしてペットの寿命が尽きるまで見届けることで、子ども達は命の大切さを学習します。命はたったひとつのものであることを学び、命あるものには優しい気持ちで接すること。いじめは情けない行為であることをペットとふれあうことで学ばせてくれることは、ペットとの共生を図ろうとしている地域や団体の取り組みから分かることです。
各市におけるいじめ防止条例に基づく取り組みとペットとのふれあいで、命の大切さを学ぶことができます。ペットとの共生社会は人もペットも暮らしやすい和歌山県を築くことに加えて、命を大切にする心を強く意識させ、いじめの撲滅にもつなげることを目的としているのです。
この考え方は、ペットとの共生社会を地方創生の取り組みとして考えている他の県にはないものだと確信しています。被災犬を救助した命を大切にする県、いじめ対策として命の大切さを学んでいる県であることを目指すことが、和歌山県が目指しているペットとの共生社会の理念なのです。
紀の国わかやま国体のメイン会場で大川小学校のひまわりを飾ったように、命を大切にする和歌山県だからこそ、真に命を大切にするペットとの共生社会を宣言できると考えています。事実、小さい子供の時からペットと暮らすことにより、他人に優しく、思いやりのある大人に育つことが欧米では報告されています。また、英国では不登校が減るという報告もあります。健康面では、小さな子供の時から動物と接することで、アレルギー疾患や感染症の予防につながると米国の小児学会で発表されています。
ところで一般社団法人ペットフード協会が平成27年1月にまとめた全国犬猫飼育実態調査の結果報告書があります。
動物の飼育を始めたきっかけは、生活に安らぎが得られること、以前飼育していた動物を亡くして新しい動物を迎えたこと、家族のコミュニケーションに役立つことを挙げているように、動物飼育は私達の生活に喜びや潤いを与えるものであることが分かります。これらの動物飼育の効果、とくに高齢者の健康管理や生きがい、健康寿命を延ばす上での効果を地域社会に導入し、動物飼育の認知向上運動に展開することがペットとの共生社会の基になります。
一般社団法人ペットフード協会の調査によれば、犬を連れて散歩する人は、ペットと暮らしていない人と比較して、健康寿命が男性で0.44歳、女性で2.79歳、なんと約3歳も延伸することが分かりました。また、日本の医療費は40兆円を超えましたが、ペットと暮らすことにより、ドイツでは以前7,500億円、オーストラリアでは3,000億円の医療費削減効果があったと発表されています。
このようにペット産業は健康産業であり、突き詰めれば一般社団法人「人とペットの幸せ創造協会の越村義雄会長の言葉を借りれば「幸せ創造産業」であると言えます。
特に、高齢化率26.7%の高齢化社会においてペットは高齢者の生活を豊かなものにしてくれると思います。既に東京にある青梅慶友病院とよみうりランド慶友病院では、患者さんとペットとの面談を可能にしていますし、高齢者施設でも米国のタイガープレイスのようにペットと共生できるしくみを考えている団体もあります。
ペット関連11団体で組織している「ペットとの共生推進協議会」がありますが、平成27年11月14日に大阪でシンポジウムが開催されましたが、この中で、和歌山県のペットとの共生に関する前述の考え方は素晴らしいと評価をされました。そして同協議会シンポジウム実行委員長で、一般社団法人とペットの幸せ創造協会の越村会長が白浜町へ視察に訪れてくれました。
白浜町を視察した越村さんは「和歌山県は気候も食べ物も、人の温かさも感じられ、ペットとの共生社会実現にふさわしい県だと思います」と感想を述べてくれました。
東京の建築家の前田敦さんには和歌山県もお世話になっていますが、シンポジウムにパネリストとして出席し、愛犬と暮らせる住まいや地域について話をしてくれたと聞いています。
地方創生のテーマとしてペットとの共生社会の取り組みを目指している複数の県があります。ペットとの共生社会は、高齢者の幸せな生活、和歌山県への移住誘導施策、白浜空港を活用した首都圏からの誘客などに資すると考えます。米国では機内にペットを連れて乗れる飛行機会社もありますが、日本航空と交渉することも可能です。ペットと共にお客様が白浜空港を訪れるようになれば、空港遊休地をドッグランや犬と遊べる施設でお迎えすることも可能です。
また、和歌山電鐵で人気だった亡きたま駅長に因んで、車両の例えば2両目は猫と乗れるようにすることや、3両目は犬と乗れるようにすることで、人とペットの共生を推進する和歌山ならではのユニークな試みになると考えます。
また、犬のしつけに関しては、和歌山県が試験制度を立ち上げ、認可したペットは公共機関に入れるようにすることも、人とペットの真の共生社会を作るリード役を和歌山県が担い、日本並びに世界から注目されるようになると考えます。
そして11月1日の津波防災の日にちなんで実施された和歌山市の総合防災訓練において、福島小学校では飼い主がペットを連れて逃げる同行避難訓練を行っています。これは和歌山県で初めての取り組みですが、このようにペットと暮らしている人が災害発生時に避難所生活で共生できるしくみも必要な時代になっています。
何よりも環境省は、平成25年11月に「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」を立ち上げています。このプロジェクトは、動物の殺処分をできる限りゼロにしたい。そして、人と動物が共に幸せに暮らし、優しさあふれる人と動物の共生する社会の実現を目指すことを目的としてスタートさせたものです。
ここでは全国の活動報告やモデル事業などが紹介されています。
例えば、埼玉県ではイオンと連携した寄附金(電子マネーによる売上げの一定割合の寄附)を活用した動物愛護推進事業。神奈川県の犬の殺処分ゼロの達成(特にボランティアとの協働について)。千葉県の動物愛護ボランティア制度の取り組みなどがあります。神奈川県や千葉県はペットの共生社会の実現に積極的に取り組んでいる県であり、環境省の狙いに沿った活動を行って全国をリードしています。
そこで質問です。
和歌山市は今年の総合防災訓練でペットを伴った避難訓練を行っています。ペットを家族同様に思っている家族にとって避難や避難所での生活にペットは欠かせないと思います。県内でこれらを意識した避難訓練が計画されてくると思いますが、ペットを伴った避難訓練などについて危機管理監の見解をお聞かせ下さい。
和歌山市では「津波防災の日」にちなんで11月1日に行われた総合防災訓練において、ペットを連れて逃げる避難訓練と避難所運営訓練が実施されたところです。
避難所生活において、ペットは被災者の心の支えにつながるものであり、このような訓練において、災害時のペットの取扱いについて検討することは有意義なものと考えております。
県では、東日本大震災や紀伊半島大水害の教訓を踏まえ、平成25年1月に避難所運営マニュアル作成モデルを改訂し、避難所におけるペットの取扱いについて、原則居住スペースへのペットの持ち込みを禁止しておりますが、施設に余裕がある場合には、避難者とペットが一緒に居住できる専用スペースの設置について、避難所運営本部等で検討を行うよう定めております。
今後とも、様々な価値観を持つ人が可能な限り快適に避難所生活ができるように取り組んで参ります。
「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」に基づいた和歌山県の取り組み事例と今後の活動の考え方についてお示し下さい。環境生活部長の答弁をお願いします。
和歌山県では、平成12年に「動物の愛護及び管理に関する条例」を制定をいたしました。併せて動物愛護センターを開設いたしまして、そのセンターを拠点に、命の大切さや思いやりの心を育み、愛護の精神をかん養することを目的に動物愛護教室や、適正な飼養に関する普及啓発事業など、各種の施策に取り組んでまいりました。
こうした施策の一つの成果の例といたしまして、動物愛護センターから犬や猫の譲渡を受けた方々が「わうくらぶ」というクラブを組織し、インストラクターを招いて、しつけ方や適正な飼養について、勉強会を行っていただいております。この仕組みは、犬や猫の譲渡を受けた方が、地域の模範的な飼い主となって、適正飼養の普及啓発に寄与していただいているものでございます。また、愛護センターが行う出張授業やイベントにも、ボランティアとして協力していただいてございます。こうした取組につきまして、環境省のプロジェクトの中でも、事例として紹介されているところでございます。
しかしながら、県民がペットに対して抱く思いや意識は、千差万別であることも事実でございまして、県民の皆様が同じ意識を持って進めていくには、まだ道半ばであるというふうにも考えてございます。今後、こうした取組を通じまして、動物と共生する社会に近づいていくような取組を一層進めてまいりたいと、そのように考えてございます。
ペットとの共生社会実現は、全ての命を大切に考える和歌山県こそ提唱するに相応しい県だと思います。既に地方創生の取り組みのひとつとして検討している県もありますから、和歌山県も早急に検討に着手して欲しいと考えます。知事の見解をお聞かせ下さい。
本県は、ただ今部長が答弁で申し上げましたとおり、「動物の命を大切にする心豊かな人づくりと共生社会の実現」を県政の基本方針として取り組んでおります。
いわゆるペットと呼ばれる愛玩動物は、私たちの生活を様々なかたちで豊かにし、時には家族と同じように、かけがえのない存在となっております。
このような動物と人が共生する社会を実現するために、飼い主等に動物愛護とペットの飼養に対するルールの遵守を働きかけていくとともに、動物愛護教室や新たな飼い主への譲渡などの取組をしているところでございます。
ご指摘のように、国レベルでも動きがありますように、殺処分というのは最悪だというふうに思います。こういうのをなくそうとして、猫条例を企画したりしたのですが、今度はそれが、またそこから始まった話なのですが、反対に動物をいじめているというような批判もございます。いろいろ難しいのですが、いろいろな方面から考えて制度も作るし、それから議員ご指摘のように、様々な企画をしてペットと共生し、仲良くするような、そういう和歌山を作ってまいりたいと思っております。
例えば、高齢者の健康寿命の延伸につながることの研究や、ペット連れの観光客の増加対策、ペット産業やペットとの共生を目指している企業との連携などが実現すれば、地域振興にもつながります。
和歌山県は人と動物が共生できる社会を築ける県だと思っていますから、日本一の人とペットの共生社会を実現することによる幸せ創造県を目指して欲しいと期待しているところです。
以上で一般質問を終わります。最後までのご清聴ありがとうございました。