3.空き家対策について
続いて空き家対策について質問いたします。
言うまでもなくわが国の人口はピークを過ぎており、減少に向かうことは確かな未来として予測されています。経済は成長期から成熟期に入っていることから社会構造を転換させる必要があります。
人口が減少しているのにも関らず住宅着工数は伸びていて、それに関連するように空き家は増えています。そのため、管理されないで放置される空き家も増えますから、建物の老朽化と破損による危険性の拡大、雑草や樹木が茂ることの迷惑な環境、街や周辺の景観に支障が生じることや地域全体の治安悪化につながるなどの問題が発生します。
空き家は全国的に見ると、平成25年の住宅・土地統計調査のデータによると空き家は約820万戸、空家率にすると約13パーセントとなっていますから、実に8軒に1軒程度が空き家だということになります。同データよると和歌山県の空き家率は約18.1パーセントですから約5軒に1軒が空き家だということになります。
価値総合研究所が実施したアンケートがあります。「空き家所有者、空き家利用意向者アンケート」によると、空き家のうち売却や賃貸などを検討している人は24パーセントであり、71パーセントの人は特段の活用は何も考えていないということです。ただ空き家を所有しているだけで、管理もしていない人も12.8パーセントいるようです。
また一戸建ての住宅の比率が82.4パーセントもあり、空き家の所在地は市街地や市街地周辺が59.8パーセントになっています。
空き家が管理できない理由について、国土交通省近畿地方整備局が調査したデータがあります。「住環境整備方策調査業務報告書2012年3月」によると、所有者が遠方居住により定期的な管理ができないことが52.6パーセントで一番の理由になっています。次いで居住者の死亡や相続人不在によるものが50.7パーセント。三番目は、居住者が補修や解体費用を負担できないなどの経済的理由で34パーセント、次いで他地域への住み替え、子ども宅や高齢者施設などへの住み替えが31.2パーセントとなっています。
つまり空き家近くに所有者や相続人がいないことが問題になります。勧告や命令をしても遠方にいるため届かないことや、空き家対応ができないこと、経済的理由などが支障になりそうです。
同データでは「空き家発生に伴う問題」も取り上げています。空き家敷地内での雑草繁殖、樹木の越境の問題が42.8パーセント、現在、問題は発生していないが事故発生の懸念が36.3パーセントとなっています。ここでいう問題とは、倒壊事故、放火による延焼、不審者侵入や不法滞在、ゴミの放置による異臭や害虫の発生、空き家周辺の良好な環境が保たれないことなどです。
つまり空き家の増加は都市環境の悪化や犯罪の温床になることや、インフラ整備やごみ収集などの行政サービスの効率も悪化させることになります。
全国的にも問題になっている空き家ですが、和歌山県の場合は全国でも空き家率が高い県となっています。
そのため和歌山県は空き家問題にいち早く対応するために、通称「景観支障防止条例」を制定し対応しているところです。建物が廃墟となり景観に支障が生じる場合、周辺住民の方からの要請に基づいて除去するなどの措置を可能にした条例です。知事は要請に基づいた対応の必要があると判断した場合は、手続きを経て空き家の除去等の勧告や命令を行うことができると定めています。
ところで和歌山市では「和歌山市空き家等の適正管理に関する条例」が制定されています。これは和歌山市内で適正に管理されていない空き家を発見した人からの情報を受け、所有者に指導や勧告、命令を行うことができるというものです。この条例では空き家の所有者は、「当該住宅等について管理を適正に行い、当該住宅が危険な状態の空き家等にならないようにしなければならない」と、所有者の責任を規定しています。
また空き家の除去に関する補助制度として、国庫補助の対象となる「不良住宅」に該当する空き家の除去費用の3分の2の補助、但し上限は60万円ですが、受けられることになっています。
和歌山県条例の場合は周辺住民の総数の3分の1以上の共同申請が必要であるのに対して、和歌山市条例は一人からの要請に対してでも対応するようになっています。
より空き家に対応するため住民の方々の手続きが容易になっているので、和歌山県としては和歌山市の案件に関して、和歌山市と連携することで成果が現れると思います。
一方、国では「空家等対策の推進に関する特別措置法」の1条で「適切な管理が行われていない空き家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命、身体、財産の保護、生活環境の保全、空屋等の活用のための対応が必要」としているように、いよいよ本格的に空き家対策を推進しようとしています。
まずこの特別措置法では、市町村による空き家等対策計画の策定と協議会の設置、空き家の所有者の調査、データベースの整備などを行うことを示唆しています。県は市町村に対して技術的な助言と、市町村相互間の連絡調整など必要な援助をするように示されています。
和歌山市内で現地を訪問したところ、「道路に路面していない狭い土地なので買い手がつかずに売買もできないと思いますし、駐車場にするには狭いと思います」、だとか「月に一回はこの家に戻り清掃や風通しをしています。仕事があるので最近は忙しくて毎月、和歌山市に戻って来ることができなくなりました。処分をしたいのですが中古物件は売買が難しいと感じています」などの意見を聞かせてもらっています。
和歌山市も強力に空き家対策に取り組んでいますから県としても連携して対応して欲しいと思います。これまでの和歌山市との連携や空き家への勧告や命令などの状況はどうなっていますか。また次年度に向けた和歌山市の空き家対策の補助戸数の拡大や支援方策などに関して和歌山市との連携強化は考えていますか。知事の答弁をお願いします。
和歌山県の空家率は全国的に見ても非常に高く、その対策としては、都市計画の観点から言えば、都市の外縁的拡大をこの辺で止めて、中心部などの再活性化を図っていく中で、空き家の活用・再生・更新といった総合的な取り組みが必要であると思います。
廃墟となった空き家対策としては、県は平成24年1月に「景観支障防止条例」を、市は平成25年4月に「和歌山市空家等の適正管理に関する条例」を施行したところであります。
県と市の条例では、例えば、空き家対策の対象は、県は景観上の支障があるもの、市は危険な状態にあるものと異なっている部分もあるものの、住民の方から相談があった場合には、必要に応じて県市がそれぞれ現地を確認するなど、条例の適切な運用がなされるよう情報共有を図りながら対応してきたところであります。
しかしながら、現時点では、和歌山市内において250件程度の相談はいただいてございますが、勧告、命令した案件はまだございません。引き続き県市連携して廃墟となった空き家の除去対策に取り組んでまいりたいと思います。
また、景観支障防止条例を県で作ったときに、これは県でやるので、市としては補助を出してでも目に余る空き家は除去したらいいのではないかというようなことを事務当局を経由して提案をさせていただいたことがあるのですが、現在では、国土交通省所管の「空き家再生等推進事業」を活用して、和歌山市が不良空家の除去に対する補助事業を実施しております。
こうした空家除去の補助戸数の拡大については、市が判断すべきことと考えますけれども、県としては、必要な国費の確保など、可能な限り市に対しては協力してまいりたいと思います。
さらに、今般公布されました「空家等対策の推進に関する特別措置法」を踏まえて、県としても更なる空き家対策を検討していくとともに、今後法に基づき国から示される指針等を踏まえて、和歌山市をはじめ各市町村と連携を深めていきたいと思います。
和歌山市は空き家の課題に関しては条例化して対応していますが、「空き家が危険なので見に来て欲しい」と依頼をしても、本当に「見に来るだけ」という意見もあります。直ぐの対応はできないことからそんな意見が出されていると思いますが、市民の方々の不安に対応するためにも早期の対応を望みたいと思います。
空き家のうち、売却も賃貸もできない、つまり収益性の低い土地に建設されている家屋が空き家になっていると思います。そのため相続人などに空き家の取り壊しを求めても難しいと思います。
また商業地の空き家と住宅地の空き家では対策が違ってくると思います。商業地であれば近隣の事業者が買い支えることやリノベーションによって再生が可能な場所もありますが、住宅地の場合は再生や活用は難しいと思います。裏通りの住宅や駐車スペースの確保できない狭隘な土地であれば取り壊しても買い手が付かないので対応が難しいと思います。
このように地域別や住宅の形態に応じた対策も必要だと思いますが、検討できることはありませんか。県土整備部長からお答え下さい。
先程知事が説明しましたとおり、まちなかの再活性化を図るためには、総合的な観点から空家の活用・再生・更新を検討することが不可欠であり、まちなかが空洞化・廃墟化するプロセスを断ち切るという方針のもと、劣化していない空家はどんどん使う、劣化した空家は再生してより良く使う、再利用が見込めない空家については更新して新しく使うなど、地域の特性や住宅の形態に応じた対応が肝要であると考えております。
また今般「空家等対策の推進に関する特別措置法」が国会で成立しました。この法律によると、空家対策を総合的かつ計画的に実施するために市町村は「空家等対策計画」を定めることができるとされております。
県としましては、市町村の策定するこの計画が、商業地や住宅地といった地域の特性や、住宅の老朽化の程度に応じたものになるよう、また、行政と民間が連携して空家対策に総合的に取り組むことのできるよう、市町村に対し情報提供や技術的な助言を行ってまいりたいと考えております。
空き家対策に関しては和歌山県や和歌山市では条例化して、危険な空き家への対応をしていますが、更に強力に空き家を減少させるためには固定資産税を触る必要があると思っていました。
現在、空き家を放置しておくと、壊れかけている家屋であっても壊さないでいると、その土地は宅地扱いとなり、更地にするよりも固定資産税が軽減されています。ですから高い解体費用を出して、その結果、固定資産税を高くなっても良いと思う人は少ないと思います。この制度も空き家が増加している原因だと思います。
このほど「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立し、危険な空き家を放置している場合、固定資産税の優遇措置から除外することを検討し始めました。現行制度では、住宅が立つ土地の固定資産税は敷地が200u以下の場合は、6分の1に減額されています。多くの場合は空き家になってもこの減額は変わりません。しかし解体して更地にしてしまうと税率が元に戻るため、所有者が老朽住宅を放置する原因になっています。そこで特定空き家への優遇税制を打ち切ることで、空き家の取り壊しや土地の転売などを促進させ危険な空き家を減少させようとする考え方です。
和歌山県では景観に支障がある空き家対策を、和歌山市では危険な空き家対策を条例で定めて対応しているところですが、税制の問題は県では触ることができないため、今回の国の具体的な動きに注目したいと思います。今後は平成27年2月末までに基本指針を、5月までにガイドラインを策定する予定になっているようですが、県としてこの動きに即座に対応して欲しいと思います。
空き家対策としての固定資産税の優遇措置の除外は空き家対策として有効だと思いますが、特定の空き家に対する優遇措置の廃止についてどう考えますか。この質問は総務部長からお答え下さい。
空き家の除却が進まない要因はいくつか考えられますが、その一つとして、固定資産税の住宅用地特例が指摘されていることは議員御指摘のとおりでございます。
そこで、本年6月に行いました政府提案におきまして、「空き家の撤去の阻害要因とならないように、一定の空き家について固定資産税の住宅用地特例を適用除外とする制度を創設すること」、こういった提言をしてまいりました。
先般成立しました、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の15条第2項では、「対策の適切かつ円滑な実施に資するため、必要な税制上の措置を講ずる」というふうに規定されているところでございます。
今後、国において、この取扱いの議論がなされる見込みであります。県といたしましては、本県の提案が実現されますように引き続き働きかけてまいりたいというふうに考えております。
和歌山市内を歩いてみると空き家が多いことに気づき、また空き家問題の問い合わせが多いことから、今回は空き家問題を取り上げました。空き家の問題は税制と法律をさわることで解消に向かいますから、国の動きに呼応して和歌山県と和歌山市も連携して欲しいと思います。空き家対策については強力に推進いただくことをお願いして一般質問を終わります。