4.和歌山市中心市街地再生の進め方について
続いて和歌山市中心市街地再生について質問します。和歌山市再生に向けて県も和歌山市もそのあり方の検討がなされています。和歌山県ではこの都市のあり方に対して本年度は予算化を図り、和歌山市と協調した姿勢を取っていることに期待しています。
ところが中心市街地の空洞化は依然として進展している状況だと思います。時折、中心市街地を歩いて商店主の皆さんと話をすることがありますが、「あの事務所は移転して今は空いている」だとか、「あの店舗は売りに出しているが買い手がない」、「買っても活用方法がない」などの話をよく聞きます。
移転した後の事務所用地のほとんどは買い手がなく、あったとしても駐車場以外に利用方法はないようで、中心市街地が今では収益をあげられる魅力的な土地ではなくなっている現状に危機感を感じます。
中心市街地に駐車場ばかり増えても活性化にはならないのに、現状は再生すべき方法が見つからない状況にあります。
そこで特に期待すべき地域はJR和歌山駅周辺の再開発です。人口減少、高齢社会において特に鉄道は利便性の高い公共交通であり、単なる移動するための玄関口ではなく、交流や居住においても利便性が高い場所になっています。
先日、和歌山市と同じ城下町である金沢市を訪問しました。JR金沢駅周辺の再開発の状況を視察して、同じ城下町なのに活気も人の流れも違うことに驚きました。JR金沢駅構内にファッションと飲食が楽しめる金沢百番街があり、これまで以上に活気づいています。金沢駅構内はファッションゾーンと食物販ゾーンで構成され、「エキマチ新都市」というコンセプトで金沢市だけではなく福井県や富山県などからも人を引っ張る力を持たせています。
また東口にはイオンが手掛けるファッション街「金沢フォーラス」があります。これはJRとイオンが手を結んだ商業施設で駅前再開発につなげ若い人を中心に集客しています。
これらの商業施設があることで、JR金沢駅だけで一日中楽しめるゾーンを形成しています。鉄道の駅は通勤通学で通り過ぎるだけの機能ではなくて、ショッピングや食事、交流できるスペースとしての機能を持たせていることは、石川県と金沢市、そしてJRがまちづくりを進めた成果であると思います。
ところでJR和歌山駅に同じ機能を求めても無理だと思います。大阪市までの時間距離が近いことから、ショッピングゾーンを形成できたとしても、天王寺のハルカスや大阪駅周辺のシッピングゾーンに勝てるようなものを配置しなければ、JR和歌山駅周辺にお客さんが来て賑わうことはありません。つまり余程の商業施設を持ってこなければ、JR和歌山駅周辺はショッピングゾーンとして周辺都市と勝負することはかなり困難だと思います。
それでもJR金沢駅の集客の考え方は参考になります。まちの特徴に合わせた機能を持たせること、つまりショッピングだけではなくて、医療、福祉、託児所などを集めることで、それを必要とするお客さんを和歌山駅周辺に呼び込むことができるからです。
今の時代、人口が減少している和歌山市内だけで集客しても賑わうことはありません。賑わうためには周辺の市から人に来てもらえるゾーンが必要となります。和歌山県外から、周辺の市や町から和歌山市に来てもらうためには、高いレベルの医療機関、利便性の高いレジデンスマンション、和歌山市内に通勤する女性のための託児所などを設置することが有効だと思います。また金沢市の名産が何でも揃うJR金沢駅のように、和歌山県の産品を数多く取り扱うお店が駅周辺にあるとお客さんが来てくれると思います。
居住スペースと医療施設、社会福祉施設などが出来ると、それに見合った商業施設の進出も考えられますから、今よりも賑わいは創出できると思います。JR和歌山駅周辺は中心地としての役割を果して欲しいところですから、賑わいを取り戻すためにはこのような事業者が進出できるような支援をして欲しいところです。
そこで質問です。和歌山市再生のための中心地再開発は県にとっても重要課題だと思います。JR和歌山駅前活性化や南海和歌山市駅の活性化にあたっては、まちなか居住を推進していくことが大事であり、そのためにも医療施設や社会福祉施設などの都市機能施設の立地も必要と考えますが、県としての考え方について知事からお答え下さい。
中心市街地の衰退、それを何とか立て直すためにということで、日本中いろいろ知恵を絞っている訳ですが、商業施設等々の誘致だけでは不十分だと思います。
人口が爆発的に増えるということではない状態で、都市が外縁的に拡散してしまうと、土地に対する需要と供給の関係で不動産価格は当然下がります。そうすると市民の資産が減ってしまう訳であります。また、拡散された広いところに下水道や市道とかの都市施設を造らないといけない。これは市の義務ですが、それをやっていると維持費と整備費が多くかかって、市の財政が無茶苦茶になる訳であります。さらに、外縁部で車で生活をしていた方が、うんと年をとって、それで車に乗れなくなったら、急に生活が苦しくなる。そういうような懸念も将来発生すると思います。
ですから、都市の問題というのは、適切な都市計画で外縁部の発展をリーズナブルなところで抑えるということと、それから中を再開発していくということが多分処方箋だと思います。
このようなことは、街の設計にかかることですから、実は権限的にもほとんど市役所の仕事であります。ただ、何十年にもわたって県も手をこまねいてきたというか、放置してきた責任は免れないというふうに思っており、和歌山市に働きかけて、この和歌山市の再生をしていかないといけない。
ついては、先ほど言いましたような処方箋について、特に最近は私なりに努力をしてきたつもりでございますが、なかなかうまくいきませんでした。
もう一度申し上げますと、和歌山市の再生のためには、都市の外縁部への拡大をこの辺で止めて、それで荒れた中心部の再開発を行って、まちなか居住を進めていくことが大事であると思っております。
それには公共交通機関の存在ということもありますし、行政機関との関係で、ある程度ターゲッティングしていく必要があると思います。
そういう意味では、和歌山駅とか和歌山市駅、お城周辺、市役所周辺あるいは県庁周辺が、大事なところであり、とりあえず手を付けやすいところだというふうに思っています。
こういったことについて、市役所に提案を行っていこうということで、尾花市長が県土整備部長だった頃に、事務的にはいろいろ準備をしてきたところですし、担当してきた人ですから尾花市長も十分ご理解いただいていると思っております。
その際に、まちなか居住を推進するためには、住宅だけではなく、おっしゃるように医療施設とか福祉施設とか子育て支援施設とか教育文化施設とかといった居住者が便利だと思うようなもの、あるいは、居住者がそことの関与のもとで生活ができるようなものを、だんだんと集約していくということが必要ではないかと思います。
そういうことも含め、これからもいろいろ検討をさらに進め、かつ市役所とよく相談をし、県として必要なアドバイスをしたり応援をしたりしていきたいと思っております。
本年2月議会で県土整備部長から答弁では「都市再生の実現に向けて自ら様々な構想を検討・提案し、和歌山市に強く働きかけるとともに、関係事業者等と連携を密にして進めてまいりたいと考えております」と答えてもらっています。まちづくりの構想の検討にあたっては、都市機能の立地も含めた検討が必要であると考えますので、関係事業者などとの連携をより密にして進めていただきたいと思います。
また今般、和歌山市では、まちなか再生の本気度を示すように、まちなか再生を推進するために部長級の都市再生専門監を配置する方針が示されました。和歌山県として待ち望んだ和歌山市の姿勢だと思いますので、これを機に県市連携をより一層密にして、和歌山市の都市再生に向けて一丸となって取り組むよう要望しておきます。
以上で一般質問を終わります。