4.学校教育の問題について
和歌山市内で開催された陸奥宗光シンポジウムを聞かせてもらいました。その中で、紀州に人材あり。天下国家のことを考えるスケールの大きな人材を期待したいという主旨の発言もありました。天下国家を論じられる人材育成を目指す一環として、県内の学生には「わかやまなんでも帳」で陸奥宗光を初めとする偉人の生き方を学んでいると聞いています。
副読本による学習も大事ですが、やはりその人物が活躍の舞台としていた実際の場所を訪れることも、その人物の心に触れる大切な学習機会になると思います。中学生ともなると故郷を誇りに思う気持ちや歴史観も醸成ようとする年代です。陸奥宗光が輝いた外務大臣時代の現場を訪れることは、より故郷への誇り、天下第一級の人物になると思う気持ちを芽生えさせてくれるものだと信じています。
シンポジウムで岡崎久彦さんが「間違いなくナンバーワンの外務大臣」だと語ったように、外務省に銅像のあるただ一人の外務大臣は陸奥宗光です。
中学校の修学旅行のコースに外務省を訪れることを以前から提言していますが、果たして実現しているのでしょうか。教育長からお答え下さい。
議員から御提言いただいておりました、陸奥宗光像のある外務省への訪問を修学旅行に組み入れることにつきましては、和歌山を誇りに思う心を育むためにも有効であることから、市町村教育委員会にも紹介し、前向きな検討を依頼してきたところでございます。しかし、外務省の訪問にあたっては、受入人数が50人以下であることや、訪問時間の制約等もあり、現時点では実現するには至っておりません。
今後、こうした体験学習の機会を積極的に修学旅行にも組み入れるよう、引き続き市町村教育委員会に働きかけてまいります。
修学旅行の形態として、全員が同じ場所に行く方法ではなくて調査したい項目で班を編成し、少人数で調査したい場所を訪ねている学校もあります。班単位でも訪問することは可能だと思いますので実現できるように取り組みをお願いします。
さて、和歌山県では知事と教育長が子ども達に向かって「いじめられているあなたの声を届けてください」とホームページで呼び掛けています。教育委員会だけではなくて知事もこの問題に強く関っているという姿勢が分かる対応です。平成24年9月から以前にも増して、いじめを許さない覚悟でこの問題に取り組んでいる姿勢が伺えます。
平成25年度もいじめ対策を総合的に推進する取り組みが計画されています。いじめ問題の未然防止と早期発見、早期対応を図るしくみを強化する考えがあるようです。
ところで、いじめの実態を把握するためのアンケートに基づいて、市町村教育委員会などの協力を得ながら、県教育委員会、市町村教育委員会、知事部局が学校に出向いた上で、直接学校でヒアリングを行い、現場の実情を確認し、対応方法などを指導・助言することで、いじめを許さない学校づくりを推進しています。
この対策によって早期発見や未然防止につなげられていますか。平成23年度の公立学校におけるいじめの認知件数は97件でした。また平成24年4月から8月までの公立学校におけるいじめの認知件数は236件となっていますが、それ以降の認知件数を加えた平成24年度の状況はどうなっていますか。教育長からお答え下さい。
いじめの実態把握アンケートに基づくヒアリングを、県立学校と市町村教育委員会を対象に実施し、いじめの認知や適切な対応、組織としての取組などについて、指導の徹底を図ったところでございます。これにより、従前に比べ、教職員のいじめ問題への意識が高まり、早期発見や未然防止につながっているものと捉えております。
9月以降のいじめの認知件数につきましては、各学校が個々の事案について精査し、3月分までをまとめて報告するよう求めているところですが、こうした取組から、いじめの認知件数は増える傾向にあります。
本年度のいじめの件数が増える傾向にあるようです。どの程度増えているのか集約結果を待ちたいと思いますが、今まで気付かなかった事象や取り上げていなかったような出来事をいじめがあるかも知れないという認識で捉えているのであれば良いと思います。
労働災害における経験則であるハインリッヒの法則と同一視できるかどうか分かりませんが、一つの重大災害が発生する陰には29の軽微な事故があり、その29の背景には300の異常が存在するというこの法則に類似しているような気がします。少しの異常を見逃さないで早期に対応することが重大な事故を防ぐことになるのと同様に、小さな異常を見逃さない取り組みを強化して欲しいと思います。
次に移ります。いじめ対応マニュアルが整備され活用されていると思います。いじめを認知した際、学校の管理職は所管の教育委員会に第一報を入れることになっています。教育委員会の指導の下、学校は体制を整え迅速かつ的確に対応することに。そして市町村教育委員会は県教育委員会と情報を共有し、県教育委員会は必要に応じて学校の支援に当たることになっています。
このよう情報共有と支援体制を整えることで迅速な対応を取ることを定めています。
平成24年11月にマニュアルが完成し運用が始まっていますが、それ以降、いじめ問題があると認識した場合に、このしくみに基づいて迅速かつ的確に対処できていますか。
同じく教育長の答弁をお願いします。
「いじめ問題対応マニュアル」を県内すべての教職員に配付し、これを用いた校内研修の徹底や、マニュアルに基づく適切な対応を求めてきました。この結果、各学校は、子どもの悩みや苦しみを見逃さないように、誠意を持って向き合い、今まで以上に迅速かつ適切に対応されてきていると認識しております。
問題対処の方法を標準化することは良いことだと思います。ただいじめの問題に関らず、人の内心の変化の問題は標準化できないところがあることや、問題に心からの向かい合うことなど個人の資質に関わるところもあります。
形として表れている事象に対しては対応できるかも知れませんが、精神的苦痛、助けを求める声にならない声などを発見し、早期に対応するためには、経験値、気付く力、先生同士の連携、学校全体でいじめは許さない空気を作ることなど学校現場の力が重要となります。
昨年12月にこのいじめ問題対応マニュアルに基づいた研修を実施しているようですが、この後触れますが同じ12月に事故が発生していることも事実ですから、ここに問題はなかったのか、改めて協議して欲しいと思います。
いじめが一因だと思われる自殺未遂が県内の公立中学校で発生しました。
平成24年12月15日の午後、中学校一年生の男子生徒が自宅で自殺を図った事故が発生しました。ご家族の一人が発見をしたことから命は取り留めましたが、入院中している状態が続いています。ご家族の無念と悲しみを思うと言葉はありません。
市教育委員会の説明資料によるといじめがあったが、現時点で事故に直接つながる要因は見つけられていないと報告されていますが、ご家族の見解と市教育委員会での因果関係の認識については大きな隔たりがあります。
ご家族によると、平成24年7月にいじめがあることを子どもから聞き、わが子がいじめにあっていることを認識したご家族が学校に相談したようです。そして生徒、ご家族が学校に赴き三者面談を行ったと聞いています。この時、「大津市のことがあったので強く相談とお願いをした」とご両親は述べています。
事故が発生したのは同年12月ですから相談から事故発生までの間、相当の期間が空いているようです。これが単なるからかいではなく、いじめ問題だという意識と早期対応をしていればと思われます。結果から見ると、いじめへの対応時期や認識の差などに問題がなかったのかと感じるところがあります。
生徒からいじめを受けているSOSが発せられていたのに、どうして未然防止に向けて適切な取り組みができなかったのか残念に思います。いじめの早期発見は生徒とご家族からの申し出によって把握できていますが、痛ましい事故に至ったのは、初期対応や対応の方法などに問題があったのではないかとも思います。
この生徒のご家族は真相究明を求めています。2月26日の市教育委員会からの報告内容には強い不信感を持っていて、ご家族はこの報告内容では納得できないと声をあげています。
この事故の経緯と対応に関る問題点などについてお聞かせ下さい。
加えて真相究明が重要だと考えていますが、県教育委員会としてどのように究明に関わっていくのですか。以上、教育長にお答え下さい。
県内の中学校で発生した自殺未遂事故の経緯と真相究明についてでございますが、この度、子どもが自らの命を絶とうとした事故が発生したことは、誠に残念であり、生徒の一刻も早い回復を心から願っているところでございます。
こうした事案では、子どものサインを見逃さないように、組織的な対応と発生後の迅速かつ的確な対応がきわめて重要であります。
この生徒が通学している学校では、4月から事故発生までに、いじめの実態がないか迷惑調査と二者面談を、それぞれ4回実施するとともに、1学期、2学期末には、振り返りの作文などで子どもの状況を把握するなど、丁寧な対応を努めてきました。
10月には、生徒本人から担任にいじめについての相談があり、担任をはじめ学年所属の教員やクラブ顧問が組織的に対応し、解決に向けて取り組みをしました。
また、事故発生後についても、田辺市教育委員会の指導のもと、それまでに実施してきた迷惑調査や面談等の内容を丁寧に再確認するとともに、2月13日には全生徒を対象にアンケート調査を実施し、その内容についても詳しく検証してきたと報告を受けております。
県教育委員会としましては、田辺市教育委員会との連携を密にしながら、すでに職員を派遣しているところであり、今後も、真相究明に向け、全面的に協力してまいります。
市教育委員会の報告とご家族から聞いた内容には事実関係について隔たりがあるようにも感じています。
そのため第三者委員会を設置して、調査といじめと事故の因果関係などの究明を行う必要があると思います。第三者委員会の設置の考えはありますか。教育長、お答え下さい。
第三者委員会設置についてでございますが、田辺市教育委員会からは、真相究明に向け、第三者委員会の設置を検討していると伺っております。
人が自殺を図ろうとするのは、余程追い込まれているだとか、悩みに押しつぶされそうになっているなどの原因があるはずです。報告されているような理由で死を選ぶとは考えられないことだと思います。そのため、第三者委員会を設置して真相究明に向かうことは極めて重要なことだと思います。県教育委員会としても、委員会を早急に設置すること、人選面などでも最大限の関わりや支援をして欲しいと思います。
では次に移ります。
2月25日に中学校内で実施された保護者説明会と2月26日に行われた田辺教育委員会の記者発表に関して生徒のご両親に対して連絡がありませんでした。そして報告書もご両親に渡されてないことから強い不信感を持っています。
いじめに関する生徒アンケート結果に関しては保護者説明会の前にご両親に説明していますが、記者発表内容は知らされていなかったと聞いています。
どうして報告内容をご両親に説明しなかったのか。何故、保護者説明会や記者発表の日程を知らせなかったのか、ご両親は疎外されたような感じを受けています。このような対応の不味さが学校への不信感を招いているようにも感じます。
これらの今回の学校側の対応ついてどう感じますか。ご家族の気持ちを鑑み、真摯な対応をすべきだと思いまずか、教育長どう思いますか。
今回の事故の学校側の対応についてお答えします。
田辺市教育委員会は、2月13日に実施したアンケート調査の結果を、2月20日に御家族へ報告した際、数日後に保護者会を開催することや、記者会見を行うことについて御家族に説明を行いましたが、日時・場所等の詳細まで連絡はしていませんでした。
今後とも、御家族に対し、丁寧な対応に努めていくことが大切だというふうに考えてございます。
生徒は中学校1年生です。卒業まで2年間中学校に在籍することになります。一人の在校生として学校は関わっていくことになりますから、ご両親がこのまま不信感を持ったままでいることは許されません。生徒に対して、ご両親に対して、これからどのように関わっていく考えなのか。心ある対応方針をお聞かせ下さい。
今回の事故の学校側の対応についてお答えします。
生徒、ご両親にどう関わっていくかという方針でございますが、学校は、在籍する生徒に対して、責任を持って対応することは当然であり、ご家族の不安や心配されることに丁寧に耳を傾けながら、誠意を持って取り組んでいくことが大切だというふうに考えてございます。
少し事例が違いますが、大阪府立高校の久保田鈴の助さんと向かい合った大阪府が提言して院内高校という制度を設けました。高校生が入院した時に、勉強の遅れで不安にならないような制度を作って欲しいという小児がんと闘う一人の高校生の思いに対応した制度です。この高校生の呼び掛けが契機となり、高校生が病院で授業を受けられる院内高校制度を創設しています。
久保田さんは平成25年1月、大学入試センター試験に挑戦しましたが、残念なことに18歳の人生の幕を閉じましたそして先の3月1日、久保田さんの家族に高校の卒業証書を授与され、見事に高校を卒業することができました。一人の学生に真剣に向かい合った府教育委員会の姿勢に感動する事例です。生徒にも家族にも、教育が信頼される行動を取っています。
今回の事故に関して、ご家族の話し合いから、入院中の生徒のために叶えてあげられる何か方法があると思います。生徒一人ひとりの思いに応えられる公教育であって欲しいと思います。
今回のような生命に関わるような重大な問題は他に発生していませんか。今回の事故は事故が発生してから発表までに時間が経過しています。
水面下にある深刻な問題があれば早期に関係者でいじめにあっている生徒を救う対策が必要です。生徒が自ら命を絶とうとする行為は絶対にあってはならないことです。
再発防止策についてどう考えますか。この点に関して教育長からお答え下さい。
再発防止策についての見解でございますが、事故が発生してから発表がこの時期になったのは、当初、御両親はこの件について、公にして欲しくない旨の意向を持っていたと聞いており、これに配慮しながら判断してきた結果であると受けとめております。田辺市教育委員会や学校が、意図的に発表を控えていたわけではないと理解しております。
現時点で把握している限りでは、他の学校においても、意図的に隠している事案はないと考えています。
いじめは、人権を侵害するばかりではなく、人間の尊厳にかかわる問題であり、絶対に許されない行為です。教職員は、日頃からアンテナを高くして、子どもが発するサインをしっかりと受けとめ、丁寧に対応することが重要です。また、子どもたちには、命の教育や道徳教育を通して、自他の命の尊さや人を思いやる心をしっかり身につけられる教育を、一層充実させていく必要があると考えております。
生徒が入院している病院でご両親と話し合いました。残念なことですが、事故にあった生徒は話すことはできません。動くこともてきません。しかし耳は聞こえているようだと伺いました。生徒の前で今回の件について話し合いました。生徒の前で真実を話すのは当然のことです。たくさんのことを聞かせてもらいました。
いじめにあっていたその実態、他にもいじめの問題があること。調査説明資料で示されていないことがあること。ご家族と向き合う学校の姿勢の疑問点など、ここで触れることは控えますが、関係者にはご家族の意見をきっちりと聞く姿勢を求めたいと思います。
学校での今回の事故の保護者説明会の後、保護者からご家族に連絡がありました。「いつ退院できるの」、「いつから学校に出て来られるの」など、ご家族が置かれている事実を知らないで話し掛けてくれているのです。つまり全てではないかも知れませんが、説明会の受け止め方として「もう解決した問題」だと認識している保護者もいるのです。どんな説明になっているのでしょうか。このことに関しても、ご家族はとてもショックを受けています。
命の大切さを感じる感度をもっと上げて欲しいと思います。学校であってはならないことが現実に起きていることを認識すべきです。そして今回の事故について、きっちりと調査して欲しいというのがご家族の切なる願いです。
最後に知事にお伺いいたします。今回の問題に関してはどう捉えていますか。同じような出来事を再び繰り返さないための再発防止について、知事の見解をお聞かせ下さい。
事が起こった時には、その事実ときびしく向き合い、どう取り組んでいくか、ということが大切であります。したがって、しっかりと、そういう意味で、隠し立てなどしないで、ごまかさないで、取り組むように教育委員会には話をしてきたところであります。これまで、私が調べた限りでは、大変な悲劇が起こって本当に遺憾に思いますが、田辺市教育委員会と学校は、隠したり、かばい立てたり、ごまかそうとしたりするような、不適切な対応はどうもなかったように、私は思います。ただ、気の毒な家族への配慮もありますから、これからいろいろ、第三者委員会など作って、調べるようですが、真実と信じていることを法廷のように全て言い立てていいものでもありません。今後も御家族と丁寧に向き合いながら、誠実に対応を進めていってもらいたい、そんな風に思っております。
大事なことは、事件が起ころうと起こらまいと、いじめは絶対許されることではないということであります。いじめに対しては、子どもや保護者の訴えに敏感に反応し、迅速かつ的確に取り組むことが重要であります。そのためには、一人一人の教員に、子どもを守り抜くという姿勢を貫いてもらわなければならないと強く思ってます。しかし、子どものことですから、大変難しい面もあります。教師や学校管理職だけでは対応が困難なケースも起こりうると思います。そのために、市町村教育委員会や県の教育委員会、あるいは、知事部局が一丸となって対応していくことが大切だと思います。そのため、知事メールなどのいわばネットワークを張ってですね、訴えにはそのような意味で全力を挙げて対応しております。また、荒れた学校など、教員の手に余るような場合は、外部のスクールアドバイザー等も活用できるよう、その動員をする予算の手当をしたところです。
また、日常の教育活動の中で、命の大切さや人を思いやる心、卑怯なことを許さない正義感等を、きっちりと身につけさせていくことが大切でありまして、各学校で道徳教育にしっかり取り組んでいってもらいたいと考えております。