2.和歌山県経済について
政府は、平成26年4月から消費税を8パーセント、平成27年10月から10パーセトンに引き上げる消費増税法案を閣議決定しました。わが国の財政状況、そして少子高齢化に対応した税制と社会保障の仕組みの構築を行うための重要課題ですが、県民生活への影響、中小事業者が多い和歌山県からすると、消費税増の影響が出てくることを懸念します。例えば所得が伸びないのに支出が増えること、大手の動向次第ですが地元小売店は消費税分を価格に転嫁しにくいことなどの問題です。
前回、平成9年の消費税増の時は税収が増えませんでした。また消費に与える影響は小さいものとは考えにくく、また消費税率引き上げは、統計上では緩やかな回復基調にある日本経済を、再び失速させる可能性があるような気もします。
結局、導入の時期が問題だと思います。経済が活性化しすぎた時に冷やすための増税であれば問題は少ないと思いますから、経済成長を図ってから増税することが好ましいのです。好景気で税収が増え、その時点で税率を上げると更に税収が増えて財政再建も進みます。
また6月14日の欧州債券市場で、欧州連合(EU)からの支援が決まったスペインの国債が売られて価格が急落(利回りは上昇)しました。債権の危険水域を示す7パーセントルールがありますが、ついに10年物国債の利回りは1999年のユーロ導入以来、初めて7%台となりました。ユーロ圏(17カ国)で、4番目の経済規模を誇るスペインが、市場での継続的な資金調達が困難になる7%台となったことで、欧州債務危機はさらに深まっているなど、世界経済は依然として先行き不透明な姿です。2年先には収束させていると思いますが、こんな欧州危機の中で消費増税導入時期の決定となっています。
また財政再建に関しても複数の見解があります。既に多くの人は日本の借金は1000兆円であること、今も増え続けていることを知っていいます。それだけで財政破綻を引き起こすかもしれないという不安に駆られますし、GDP500兆円に対して1000兆円の借金が、増税を裏付ける数的根拠になっています。
ところが日本は保有資産も大きいのです。平成22年3月末時点の政府バランスシートによると、負債は1000兆円ですが資産は650兆円あります。つまり国の借金は差額で見ると350兆円となっています。そして資産650兆円のうち、400兆円が金融資産となっています。
先月、東京に行って香港からの留学生と財政についての話をした時に、「日本人はマクロ的な視点がありませんね」と言われました。そして経済は、経済全体に目を配って考えること、つまりマクロ的な見方が必要で、その見方が出来なければ一部の現象を取り上げ、経済全体に影響力があると勘違いしてしまうことがある、という話しもありました。
ここ数ヶ月、消費税増税に関して多くの皆さんと意見交換をしました。代表的な意見を述べます。
会社員からは「所得が増えない、しかも増える見通しが立たないのに支出だけか増加する」。サービス業の方は「高齢者のお客さんが多いので、その方たちの生活を考えると、例え10パーセントになっても価格に乗せることはしません」、会社経営者は「増税の理由は理解しているけれど、本音で言うと商売はきつくなりますね」という意見などがありました。
所得が下がる一方では、益々お金を使わなくなります。所得が上がらない経済が成長することはなく耐久生活に入ります。このように消費を減らし貯蓄を増やす循環が続く限りデフレからの脱却は不可能です。このように所得が上がらない、消費税額を小売価格に反映させられないのでは、生活や商売は厳しくなります。
知事に質問いたします。
和歌山県では公共事業による請負契約金額は6ヶ月連続で増加、消費においては既存店は5ヶ月連続で前年を下回っているなど消費が戻っていません。新車登録台数は7ヶ月連続で対前年比を上回っています。
これは台風12号に関る公共事業、エコカー減税による新車登録台数の増加だと思いますが、このように公共投資や補助金があれば経済指標は上向いています。ただし個人消費は低迷しているのは所得の伸び悩みなどが原因だと思います。
つまり政府や県からの何らかの措置があれば経済は上向きますが、市場に任せておけば和歌山県経済は厳しいということかなと思います。
これ以降の和歌山県経済の現状と見通し、また消費税増に対する先行き不安を感じている中小事業者に対する支援策などの考えはありますか。知事の考えを聞かせて下さい。
我が国の経済は、依然として厳しい状況にあるものの、復興需要等を背景として、緩やかに回復しつつあるというのが月例経済報告の政府の見解であります。本県はどうかと言いますと本県の経済状況は、ご指摘のように、実は公共事業がずいぶん出てますから今年に入り台風被害の復興工事が本格化してきた状況下にございまして、また機械工業・化学工業など一部業種の鉱工業生産指数に改善の動きも見られるというところもあります。しかし個別に調べていくと好不調が色々とありまして、県内企業全体の景況は依然として厳しいと私は思っております。
先行きについては、円高の進展とか、欧州政府債務危機とか、この夏の電力需給の逼迫とか、電気料金が上がりそうとか、不透明感が強まっており、本県の経済は、やっぱり楽観できないと思います。今後の景気動向をよく注視していかなければならないと思います。
一方、ご指摘にありましたマクロ経済でありますけれども、資本収支に若干傾向が変わってですね、ひょっとしたら国内だけで国債がファイナンスできなくなっているのではないかというようなデータも出てきてます。
そんな色々と悩ましいことがあるんですが、消費税増税が可決されスケジュールが示されますと、経済学が教えるところによると、税率引上げ前は駆け込み需要が発生し景気は上向いて、引上げ後にはその反動がありますから消費の減少が発生することが予想されます。消費税率の引上げによるこのような経済への影響に対して、国は責任をもって経済運営を行うことが必要だと思っております。
また、中小企業者については、引き上げ後に増税分がきちんと製品やサービスの価格に転嫁できないと経営に影響がでるということですから、国においては適正な価格転嫁の取組が検討されていると聞いておりますけれども、ちゃんとしてもらわないと困る。県としてもその施策の実効性が確保されるよう、同じく事業者に対する情報提供などに努めていきたいと思います。
景気そのものは、国以外は如何ともしづらいのですけれども、県としては、景気の如何に関わらず、和歌山産業の底上げをしないといかんということは、我々の目的でもあります。そこで、技術開発とか、売れる商品づくりとか、販売促進など企業の成長を支援する幅広い事業の実施をいたしまして、厳しい経済環境にある中小企業を少しでも支援してまいりたいと思っております。