3.国際人育成教育について
文教委員会として沖縄県教育委員会を訪問しました。沖縄県教育委員会では国際人を育成するための外国語教育への取り組みを行っています。目指しているのは英語立県沖縄県で、外国語でのコミュニケーション能力を身につけるための教育を目指しています。
また沖縄県立球陽(きゅうよう)高校も視察してきました。この学校の視察では、ここまで英語教育が進んでいることに驚き、改めて使える英語教育の必要性を強く感じました。和歌山県での英語教育が遅れていると感じるほどでしたから、もっと覚悟を決めた英語教育が必要だと思いました。
ところでこの球陽(きゅうよう)高校は平成元年に創立された新しい学校ですが、沖縄県の進学校として名前を馳せています。ここでは理数科4クラスと国際英語科が4クラス設置されています。教育目標は、創造性、国際性に富み21世紀をたくましく切り拓くリーダーとして地域社会や国際社会で活躍できる生徒を育成することを掲げています。まさにその目標に相応しい英語教育が実践されています。中でも先生の英語を指導するレベルが高いのです。経歴がモノをいうわけではありませんが、ハーバード大学出身の英語の先生もいるなど、高いレベルの授業が展開されています。
視察したのはLL教室で、パソコンを活用した英語教育の進め方は新鮮で衝撃でした。当然、英語の授業は先生も生徒も英語で進められています。英語の質問に対して英語で答えることを当然のように行っています。日本人の先生による英語の授業と、外国人による英語の授業を見させてもらいましたが、質の高さを実感しました。
また名高いスティーブジョブスの伝説のスピーチを授業で取り上げて、その内容について英語で質疑を交わすなど、日本の高校の英語教育とは思えない授業が繰り広げられました。
英語に反応している生徒に尋ねると「理解している」ということでした。理解していなければ質問に答えられませんし、先生の英語に笑いなどで反応できません。また先生にそのレベルを尋ねると「高校2年生でCNNのニュースなら聞き取れています」という回答でした。生徒に尋ねても「CNNなら分かる」ということですから驚きました。
英語を聞き取る力と理解する力を学んでいるこの高校の生徒を見ていると、逞しく、そして優れた学習環境の中で学べることの楽しさを感じました。これから国際社会で活躍し日本を支える生徒に対して使える英語教育の重要性を強く感じました。
ビジネスの世界は交渉力が全てです。英語で交渉できる力と英語を英語で理解する力はこれからの日本を背負う人には不可欠なものです。そんな力を養成しようとしているのが球陽(きゅうよう)高校で、我々は大いに学ぶ点があります。
今回の文教委員会の国際人教育に関する視察について、同行者からどのような報告を受けていますか。沖縄県の外国語教育に学べるものはありましたか。和歌山県として取り入れられるものはありましたか。
国際人教育に係る件で、沖縄をご視察していただき、ありがとうございました。視察に同行した職員からは、沖縄県では、小・中・高等学校の児童生徒の発達段階に応じて具体的な目標を定め、系統だった効果的な指導が行われているとの報告を受けました。特に、視察先の高校では、時事問題を扱ったり、ICT機器を活用したりするなど、本当の生きた英語力といいますか、そういう活用できる英語力の習得をめざしたものであったと、大変有効であったというふうに報告を受けております。こうした取組は、本県の国際人育成プロジェクトにとっても、大いに学ぶべきものがあると感じておりまして、今後、施策を検討する中で、積極的に参考にしていきたいというふうに考えてございます。
今回文教委員会の視察の行程内で、和歌山県の学力が全国の平均値を下回っているのは何故かや、県内国際科のある高校との比較、太田城の歴史などを話し合うなど、教育論議を交わせたことが、とても有意義だったと思っています。
県外視察とその中での議論があって、先の星林高校国際科と太田城の視察につながったのです。
さて、今回視察した先が成果をあげているレベルと同じように、和歌山県でここまでの取り組みをしている高校はないと思います。和歌山県として、外国語教育のあり方について語り合っている段階からもっと先に進まないと、もう留学制度の拡充や英語教育のレベルアップを図っている他府県に大きく遅れを取ることになっています。不利益を被るのは現役の高校生であり中学生、小学生です。
2020年代に世界で戦う学生に対して、英語を武器にできるように教育することが私達の務めです。参考までに球陽(きゅうよう)高校では第二外国語として中国語かスペイン語を必修としています。この取り組みを知って、この高校に学ばないことは考えられません。
国際人育成プロジェクトの考え方を示して下さい。また英語立県沖縄は小中高連携した英語教育に取り組んでいます。
ここでは、小学校5年生と6年生は英語によるコミュニケーション能力の素地の育成。中学校1年生の英語力指標は英語検定5級。中学校3年〜高校1年の英語力指標は英語検定3級。高校卒業時の英語力指標は英語検定3級〜2級を掲げています。目指すところがなければ到達しません。国際人教育成プロジェクトによる小中学校、高校での目標はどこにありますか。教育長にお尋ねします。
国際人育成プロジェクトの考え方についてでございますが、本県の国際人育成プロジェクトは、「外国の人々と対話できる英語力を身につけた、広く世界で活躍できる人材の育成」を目標としておりまして、小・中・高等学校をとおして系統だてた取組を行ってまいります。
小学校では、英語の歌やゲーム、読み聞かせ教材などを活用して、まず英語に興味を持たせ、中学校では、反復練習を徹底し、身近な話題などについて、英語で会話できる生徒を育成してまいります。
さらに、高等学校では、従来の読み書きに加えて、自分の考えや意見を英語で伝えられるよう、実践的コミュニケーション能力を高めてまいります。
沖縄県立球陽(きゅうよう)高校国際英語科の在校生は464名。平成22年度の実績を示します。英検準2級154名、2級83名、準1級2名。平成23年12月現在では、準2級82名、2級23名の実績があり、成果を挙げています。
県内で国際科のある高校の実績と比較して感じることはありますか。世界で広く活躍できる人材を育成するために成果が期待できる取り組みはありますか。教育長にお尋ねします。
県内で国際科のある高校の実績と比較して、成果ができる取組について、ということについてお答えしたいと思います。先ほどご指摘いただきましたように、沖縄の球陽(きゅうよう)高校では、議員のご指摘のとおり、外国語検定試験について、大変大きな成果をあげているというふうに実感をいたしております。本県の国際科のある高校では、検定というよりも、特に姉妹校との交換留学や交流活動に特色を持たせて進めてまいりました。
今後は、ご指摘の点を踏まえ、こうした国際科を持つ高校に限らず、英語の授業にディベートやディスカッション等を取り入れ、その学んだ成果を試す機会として、「和歌山県高校生英語ディベート大会」や「わかやま高校生クイズ in English (イン・イングリッシュ)」を開催するとともに、高校生の海外語学研修や海外留学を一層促進してまいりたいと思ってございます。
国際人育成プロジェクトの予算は1,100万円ですから、教育予算としては確保してくれた方だと思いますが、この予算で小学校から高校までの国際人育成に資することは可能なのでしょうか。
小学校では英語に慣れ親しむことを目指し、中学校では積極的な活用を目指そうとしています。そして高校ではスピーキング力の充実、英語スーパースター育成などを目指し、外国人と対話できる英語力を身につけた、広く世界で活躍できる人材の育成を行う大きな計画です。
この予算内で県も、そして市町村も小学校から高校までの外国語教育の機会を、果たして増やせるのでしょうか。国際人を育成する教育に必要な予算を確保できたと言えますか、
教育の効果は数年先、十年以上先になるかも知れないものです。予算との兼ね合いをどのように考えていますか。仮に、財政面から確保できない現状があるとしたら、和歌山県から国際人を輩出させることは容易ではないと思います。
教育への投資について教育長の答弁をお願いします。
教育への投資についてでございますけども、今回の国際人育成プロジェクトにつきましては、教材の開発、教員の研修、留学促進等を盛り込んでございまして、こうした取組を進めるための予算を一定確保することができたと考えてございます。ご指摘のように、これからの和歌山県を支える、あるいは日本を支える人材育成のためにも、本プロジェクトの目的の達成に向けて必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えてございます。
和歌山市内で実施されている小学校外国語活動支援サポート事業が、平成23年度末で一旦、区切りをつけようとしています。
丁度今週、二つの英語の授業を残す段階になりました。先週末で英語授業を終えた市内のある小学校から、不安を感じながらも1年間英語学習に取り組み、英語に親しんだ生徒達の文集が届けられました。
「英語をぺらぺらしゃべりたいと思います。だから中学校でも英語を頑張りたいと思います」。
「みんなに英語を教えてくれてありがとうございます。来年から英語を見てくれなくなると、英語が楽しくなくなったり、分からない英語があっても分からないままになってしまうかも知れないので、自分は小学校を卒業するけれど、この学校で引き続いて授業をして欲しいです」。
「もっと英語をしゃべれるようになって、先生と英語で会話してみたいです」。
生徒からこんな感想が寄せられています。先生に聞くと「他の府県で英語を習っている生徒と比較しても負けることはありません。関心を持ってくれていますし、これからも伸びると思います」という答えが返ってきました。
また小学校5年生や6年生を担任した先生からも意見をもらっています。
「外国語活動が週に1回の授業になり、どうして良いのか分からなかった。しかし3年間の研修を受けさせていただき、外国語の授業を、自信を持って出来るようになりました」。
「校内サポートをしていただいたお陰で余裕を持って授業をすることができました。3年間の研修のお陰で本校の英語教育の基礎のようなものが構築できたと思っています」。
「外国語の事業は何からの形でサポートが必要だと思います。初任者でも良い経験となりました。少しでも広げていけたら良いと思うので、他の小学校でも続けて下さい」。
「英語の授業の持ち方。楽しみ方などを学びました。この研修がなければ、英語の授業なんて、とてもじゃないけれど出来なかったし、子ども達が可哀想でした。今ではどの生徒も楽しく取り組める英語授業になりました」。
先生方からも真剣に取り組んだ結果、このような感想や意見があります。教育委員会が実施している年に数回程度の研修だけでは、生徒が楽しめる、そして中学校に向けて基礎が身につくような外国語の授業にすることは容易ではなかったと思います。
平成23年度から本格的に導入された小学校の外国語授業について、現時点どう評価していますか。平成24年度の取り組み、先生の外国語授業力の向上や、県全体の外国語力向上を図るべきですが、昨年度までと比較して発展させるべき取り組みはありますか。
小学校での英語教育の成果、および評価について教育長にお尋ねします。
小学校での外国語活動の成果と評価についてでございますけども、小学校の外国語活動につきましては、本県では平成17年度からすべての小学校ですでに実施しておりまして、デジタル教材を活用するなど、外国語に慣れ親しむための工夫が各学校で現在行われております。児童生徒が生き生きと英語を使って活動する姿が見られてきております。
また、本県独自の取組としましては、日本昔話を英語に訳した読み聞かせ教材を作成し、すべての小学校に配付したところでございます。さらに来年度につきましては、現在すすめておりますけど、和歌山県の民話を日常でよく使われている、わかりやすい英語で教材にして、配付することといたしております。
今後も引き続き、教員の指導力や教材開発など、学校現場の求めに応えられるよう支援に努めてまいります。