4.台風12号被害について
被災地の復旧はこれからです。公共土木施設災害復旧事業による予算措置は3年で終了すると聞いています。先日、その後の状況を確認するために、専門家と現地を調査したところ復旧に向かうまで、予算規模や工事工程にもよりますが、最低5年はかかると指摘がありました。現場を見る限り、とても3年で復旧できるものではないと感じました。
復旧計画を策定するに当たっては長期的な取り組みが必要ですが、3年目以降も復旧財源を確保するための継続した要請をして欲しいと思います。
さて災害復旧事業の考え方は原形復旧、或いは機能回復に限るというものです。しかし今回被害を受けて公共物をそのまま現状復旧させても、同規模の災害が発生した場合、同じような事象を招くことになります。それは絶対に避けるべきものですから、原形回復に付加価値を加えたものにすべきものです。しかし付加価値部分を県単独予算でやりましょうとはならないと思います。
できるなら、今回のような災害であれば対処できると見込まれる機能を持った形で災害復旧事業を行って欲しいと思います。原形回復では不安、付加価値をつけた復旧で安心感を提供できると思います。
また公共土木施設災害復旧事業に関して3年で95パーセントの災害復旧が見込まれるとしても、まちづくりまでには至りません。民有地の扱いが問題なるからです。仮に元の場所に住宅を建設するとしても、土砂崩れなどによって隣地との境界が判らなくなっている場合があります。その場合の堆積した土砂の除去、地籍調査、測量などが必要となり、その費用は誰が負担するかの問題が発生します。
今回の住宅再建を支援する施策は歓迎すべきものですが、土石流で自宅用地が埋まってしまっている、そして隣地との境界が判らなくなっている場合は住宅再建どころではありません。
元の場所または市町村内に民間が戻ってきて初めて、まちが復興に向かっていると実感できると思います。民有地への支援についての不安と不満が、10月中旬から高まっていると聞いています。
民有地を元に戻すための支援については市町村がやるべきことだと思いますが、県としても最大限の協力、配慮をしてもらえるよう、これは要望しておきます。
この項目の質問です。
- 3年間の予算の目処、そして復旧に至るまでの期間はどの程度だと見込んでいますか。
- 災害復旧事業に関して原形回復では不安感が払拭できないと思います。原形復旧に際しては、付加価値をつけた復旧にすることで安心感を提供できると思いますから、検討すべきだと考えます。
これらについて県土整備部長にお伺いいたします。
公共土木施設の災害復旧においては、災害発生後に県など施設管理者の申請に基づき、国土交通省と財務省による災害査定が実施され、復旧範囲や工法、工事費が決定されます。
決定された工事費は、通常発災年を含め3カ年で必要額の予算措置がなされます。
台風12号による災害復旧箇所については、「和歌山県復旧・復興アクションプログラム」において、平成24年度中に95%の箇所を完成させることを目標とし、取り組んでいるところでございます。
残る箇所には、復旧に3年を越える期間を要する大規模な被災箇所もございますが、必要な予算の確保に努めまして、できるだけ早い完成を目指してまいります。
また、公共土木施設災害復旧事業は、その施設の従前の効用を速やかに回復して公共の福祉を確保することを目的としているため、原形復旧を基本としておりますが、今回、特に被害の大きかった箇所については、別途国庫補助費を加えた改良復旧事業によりまして機能向上を図ることとしております。現在、国と協議を行っているところでございます。
昨日の知事の議会での答弁にあったように、経済とくらしの再建を果たしてこそ復興です。くらしを再建できるように支援をお願いいたします。
台風12号被害記録については、後世の人が再び災害に遭遇するような事態になった場合に、今回の私達の経験を役立ててもらう主旨で記録集を作成すると伺っています。ここに昭和28年水害の記録があります。今も教訓になるような記録と復旧に向けての情報が掲載されています。一昨日、この記録集に係った当時の県庁広報担当の人を捜し当て意見を伺いました。「今回の台風12号被害も大変だと思いますが、当時も大変な被害でした。この被害への対応を残すために現地入りして、意見を聞いたり写真撮影をして現状の記録と、次の世代がこの教訓を活かせるように作業をしました」という意見でした。当時22歳だった方ですが、今回の対応も気に掛けてくれていますし、自分たちの記録集を超えるものを作って欲しいと意見をいただきました。
また知事の津波の日シンポジウムの挨拶にありました「安政の大地震の際、濱口梧陵さんが広村で稲わらに火をつけて避難先を示し、大勢の村民を救った時点においては、濱口梧陵さんは、津波に勝ったとは思っていなかったのではないかと思います。その証拠に、あの直後から私財を投げ打って、将来に備え人々を元気づけるために、有名な広村堤防を築くのです。濱口さんが本当に津波に勝ったのは、昭和21年の南海地震の津波をこの堤防がはね返した時だと思います」と話しています。
その精神が今回の台風12号への対応と今後の道筋について全てのノウハウを詰め込み、記録集として後世に伝える役割を果たしたいと考えた主旨ではないかと思います。
その中には平成24年度の新政策として掲げられている風水害対策事業に関しても県の素晴らしい取り組みとして掲載されると思います。これらの政策は、今後の県の大災害発生時の指針となるもので、住宅再建や事業者の再建支援など、万が一の時は県が守ってくれると皆さんに安心を与えるものでもあります。
災害に強い和歌山県の実現を目指す指針となる台風12号被害への対応に関する記録集の考え方について、危機管理監にお答えをお願いします。
今回の紀伊半島大水害を後世に伝えていくため、その気象状況や被災状況の記録とあわせ、県・市町村の対応、自衛隊ほか関係機関の活動状況、応急対策や復旧・復興対策などについて記録することとしてございます。
また、編集を行うなかで、今回の災害対応の課題についても改めて検証し、今後の災害対策に活用できるものとして作成したいと考えてございます。
記録集は単に置いておいて価値のあるものではなくて、使えるもの、後の指針となるものにして欲しいと思います。22歳の時に28水害の記録集作成を担当した元県の職員さんは、80歳になった今もその時の仕事に誇りを持っていますし、今も大切に記録集を手元に保管しています。災害に立ち向かったことを誇りに思えるような仕事、そして記録集を作成し下さい。以上で一般質問を終わります。ご清聴、ありがとうございました。